正社員の平均労働時間は?短時間正社員制度のメリット・デメリットも

労働時間の上限や、正社員の労働時間制度について、詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。労働基準法にも定められている正社員の労働時間の基本を押さえておきましょう。平均労働時間・短時間正社員制度についても解説します。

正社員の労働時間は?

労働時間のイメージ

(出典) pixta.jp

一般的な正社員は、1カ月にどのくらいの時間働いているのでしょうか。正社員の平均的な労働時間や、法制度などについて見ていきましょう。

2022年の月間平均労働時間は162.3時間

厚生労働省の「毎月勤労統計調査 令和4年分結果確報」によると、正社員を含むフルタイムの労働者(一般労働者)の総実労働時間は162.3時間でした。総実労働時間とは、会社が規定した所定内労働時間に所定外労働時間を足したものです。

調査結果による労働時間の内訳は、所定内労働時間が148.5時間・所定外労働時間は13.8時間となっています。出勤日数は平均19.4日です。これらの数値を基に計算すると、正社員の1日の平均実労働時間は、約8.4時間になることが分かります。

参考:毎月勤労統計調査 令和4年分結果確報|厚生労働省

法定労働時間の上限は週40時間

労働基準法第32条では法定労働時間の上限を、休憩時間を除いて1日に8時間、1週間に40時間までと定めています。これは正社員・パート・アルバイトなどの雇用形態にかかわらず適用されるものです。

企業が自社の所定労働時間を定めるときは、法定労働時間を超えないようにしなければなりません。休憩時間に関しては同法第34条に、労働時間が6時間を超える場合は最低45分、8時間を超えるときは1時間以上設ける必要があると定められています。

また、労働基準法第35条によると、休日は1週間に1日もしくは4週間を通じて4日以上必要です。

参考:労働基準法 第32条・第34条・第35条 | e-Gov法令検索 第四章 第三十二条・第三十四条

特例措置で週44時間まで認められるケースもある

法定労働時間は、原則として週に40時間が上限とされています。しかし、特例措置として、週に44時間までの労働が認められる事業もあります。

特例措置が認められるのは、商業・映画・演劇業・保健衛生業・接客娯楽業の4種類の業種で、従業員の規模が常時1~9人までの事業場です。事業場とは企業全体を指すのではなく、個々の営業所のことを指します。

<特例措置が認められる事業の例>

  • 商業:卸売業・小売業・理美容業・倉庫業など
  • 映画・演劇業:映画の映写・演劇など
  • 保健衛生業:病院・診療所・社会福祉施設・浴場業など
  • 接客娯楽業:旅館・飲食店・ゴルフ場・公園・遊園地など

参考:法定労働時間|厚生労働省

時間外労働の上限規制は月45時間

労働者と雇用主の間で、いわゆる「36協定」を結んでいる場合は、週40時間の法定労働時間を超えた時間外労働も可能です。時間外労働の上限は「月45時間・年間360時間まで」と定められていますが、特別の事情がある場合、年間6カ月までは月45時間を超えた時間外労働が可能とされています。

しかし、その場合も「年720時間以内・月100時間未満(休日労働を含む)・複数月の平均80時間以内(休日労働を含む)」と定められています。上限を超えて労働させた場合は、罰則が科される恐れもあります。

なお、時間外労働とは、法定労働時間を超えた分の労働時間のことです。残業時間とは異なるので注意しましょう。

参考:
労働基準法 第36条 | e-Gov法令検索
時間外労働協定(36協定)|厚生労働省

正社員の労働時間制度の違い

女性社員

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正社員の労働時間制度には、大きく分けて「固定労働時間制」「変形労働時間制」「フレックスタイム制」「みなし労働時間制」の4種類があります。それぞれの制度の違いを見ていきましょう。

固定労働時間制

固定労働時間制とは、1日8時間以内、1週間40時間以内の法定労働時間を守った上で会社の就業規則に従って「週5日・9時~18時・土日祝日は休日」など、勤務日数や時間などが固定されている制度のことをいいます。企業側にとってのメリットは、勤怠管理しやすいことです。

労働者側にとっては、予定やスケジュールを立てやすいメリットがあります。しかし、勤務日が月~金に定められている場合、平日にしか空いていない行政機関や金融機関などに行きにくいのが難点といえます。

変形労働時間制

1日の労働時間を決めるのではなく、週・月・年などの単位で労働時間を設定するのが変形労働時間制です。

1カ月単位・1年単位の変形労働時間制を導入すると、ある週の労働時間が40時間を超えてしまっても、別の週で調整して1週間あたりの平均労働時間を40時間以内になるように調整すれば、法定労働時間を超えて働かせることができます。

一部の事業所のみに認められる週単位の変形労働時間制は、週40時間を超えないよう調整すれば、1日の労働時間が8時間を超えて労働させられる制度です。

変形労働時間制のメリットは、業務量に合わせて労働時間を設定することによって効率的に働ける点です。しかし、反対に、繁忙期は労働時間が長くなってしまうケースもあります。

フレックスタイム制

フレックスタイム制は、一定期間の1週間当たりの平均労働時間が法定労働時間を超えない範囲内で、従業員が自主的に始業と終業の時間を決められる制度です。とはいえ、いつでも出勤してよいわけではありません。

企業ごとに、必ず出勤していなければならない「コアタイム」と、自由に出退勤できる「フレキシブルタイム」が定められているのが基本です。

フレックスタイム制には、ライフスタイルに沿った働き方ができるメリットがあるものの、社内のコミュニケーションが不足したり顧客対応が難しくなったりとデメリットもあります。

みなし労働時間制

みなし労働時間制とは、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定められた労働時間を働いたと見なす制度です。

みなし労働時間制には「事業場外みなし労働時間制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の3種類があります。

  • 事業場外みなし労働時間制:事業場以外の場所で働くため労働時間の算定が困難な場合の制度。
  • 専門業務型裁量労働制:業務遂行の手段や時間配分などを労働者の裁量で決めさせる制度。研究開発・情報処理システムの設計・デザイナー・公認会計士・プロデューサーやディレクターなど19種類の業務に適用される。
  • 企画業務型裁量労働制:企業で、企画・立案・調査・分析を行う業務を担当する労働者が労働時間の配分を決める制度。実働時間にかかわらず、労使委員会で定めた時間を働いたと見なす。

短時間正社員制度とは?

オフィスで働く男性

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企業の中には、正社員の労働時間に「短時間正社員制度」を導入しているところもあります。どのような制度なのか、詳しく解説します。

所定労働時間が通常より短い正社員

短時間正社員とは、同じ企業内のフルタイムで働く社員より、勤務時間が短い正社員のことをいいます。労働基準法では勤務時間の上限は定められていますが、下限は明確に定義されていません。

そのため、短時間正社員の労働時間は企業によって異なります。勤務時間は短くても、期間の定めのない労働契約を結んでおり、時間当たりの基本給・賞与・退職金などの算定方法も他の正社員と同一です。

有休や育休などの待遇もフルタイムの正社員と同様で、時間外労働や休日出勤をした分の手当も受け取れます。

条件を満たせば社会保険や雇用保険も適用可

短時間正社員でも、一定の条件を満たせば社会保険や雇用保険が適用されます。

<社会保険が適用される条件>

  • 会社の規約に短時間正社員に関する規定がある
  • 期間の定めのない労働契約が結ばれている
  • 時間当たりの基本給や賞与・退職金などの算定方法が他の正社員と同一

同じ短時間労働者でも、アルバイトやパートの場合、社会保険へ加入するには1週間当たりの労働時間も条件の1つとされています。

なお、雇用保険の加入に関しては、週の所定労働時間が20時間以上の場合に対象となります。

参考:短時間正社員に係る健康保険の適用について(◆平成21年06月30日保保発第630001号)|厚生労働省保険局保険課長通知

短時間正社員制度で働くメリット

退社する女性

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短時間正社員制度で働くと、どのようなメリットがあるのでしょうか。2つ挙げて紹介します。

ワークライフバランスを重視できる

短時間正社員になると、ライフスタイルに合わせた働き方が可能です。1日の所定労働時間のうち、短縮できる時間数がいくつか設定されていることもあり、育児や介護などによってフルタイムで働けない人でも働きやすいのがメリットです。

企業によっては、月内の労働時間数を満たせば、毎日同じ時間数を短縮する必要がなく、時間と日数を組み合わせて減らせるケースもあります。正社員として働きつつ、ワークライフバランスも重視したい人に適した働き方といえるでしょう。

キャリアを継続しやすい

結婚や出産・子育てなど、ライフステージの変化があっても、仕事を続けやすいのも短時間正社員のメリットです。出産や育児・介護などの事情で、キャリアを諦めなければならない人は少なくありません。

育休制度を利用しても、復帰後に子育てと両立させながらフルタイムで働くのは、身体的・精神的な負担が大きいものです。育児中は非正規雇用として働き、その後正社員に復帰する方法もありますが、正社員としてのキャリアはいったん中断されてしまいます。

短時間正社員制度を活用すれば、時短労働しつつ正社員として働き続けられるため、それまで培ってきたキャリアを損なう心配もありません。

短時間正社員制度で働くデメリット

オフィスの様子

(出典) pixta.jp

短時間正社員制度には、働きやすさやキャリアの継続といったメリットがある一方で、働く人にとってマイナスになる点もあります。短時間正社員制度で働くデメリットを2つ挙げて解説します。

収入が下がる可能性がある

短時間正社員は、勤務時間が短い分、収入が下がる可能性があります。短時間正社員の基本給は、労働時間を短縮した分だけ減額されるのが特徴です。

例えば、1日当たり1時間の労働時間を短縮すると、1時間分の基本給が減額されるという仕組みです。賞与はフルタイムの正社員と同じ計算式で算出されますが、基となる1カ月分の基本給が低くなる分、金額は減ってしまいます。

任される仕事が制限されることも

労働時間が短くなることにより、責任者などのポジションに就きにくくなるのもデメリットの1つです。会社の就業時間中に退勤することになるため、顧客対応が難しくなる可能性もあります。

また、どうしても残業が必要な業務などから外されてしまうこともあるでしょう。正社員とはいえ、担当できる仕事がある程度制限されてしまうケースもあるため、フルタイムで働く正社員と同様に仕事をしたいと考えている人には不満が残るかもしれません。

まとめ:正社員・短時間正社員制度の労働時間の仕組みを知ろう

退社する社員

(出典) pixta.jp

正社員の労働時間制度には、さまざまな種類や仕組みがあります。最近では、労働時間を短縮して働く短時間正社員制度を導入する企業も増えています。

それぞれの労働時間制度にはメリット・デメリットがあるため、どの働き方が最適なのか一概には語れません。現在の働き方を変えたいと考えている人は、まず労働時間についての仕組みを理解し、自分のライフスタイルに合った制度を選びましょう。

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