ファシリテーターは、会議・商談などの場で参加者に発言を促して話をまとめながら、より望ましいゴールに導いていく存在です。ファシリテーターの役割や求められるスキルのほか、会議を円滑に運営するためのポイントについて解説します。
ファシリテーターの役割とは?
ファシリテーターは、会議を円滑に進めるために欠かせない存在です。ファシリテーターの役割や、会議に必要な理由を説明します。
会議・商談をゴールに導く存在
ファシリテーターは、会議・商談などの話し合いを円滑に進めて、ゴールへと導く存在です。
もともとは1960年代のアメリカにおいて、体験学習などの現場で用いられてきた手法とされています。その後ビジネスの場にも導入され、日本では2000年代から注目を集めるようになりました。
ファシリテーターの主な役割は、参加者に発言を促したり、出された意見をまとめたりしながら進行することです。
会議や話し合いでは意見の対立が起きる場合もありますが、そのような場面でもファシリテーターが中立な立場から意見をまとめ、合意を促します。
司会との違い
司会者は、進行表に基づいて会議を時間通り進めていく役割を果たす存在です。会議の目的を説明したり、メインスピーカーを紹介したりすることはありますが、基本的には参加者から一歩離れた立場で進めていきます。
会議の進行に沿って質疑応答などを求めるケースはあっても、参加者に意見を求めたり合意を促したりしないのが、ファシリテーターとの大きな違いです。
ファシリテーターが会議の参加者に積極的にアプローチするのに対し、司会者はあくまでも進行役・タイムキーパーとして会議を管理する役割を担います。
ファシリテーターが必要とされる理由
ファシリテーターが必要とされる理由として、組織の多様化が進み、個々の価値観を尊重することが重視されるようになった点が挙げられます。
権威を持つ人物が決定するという従来の縦割り型のやり方ではなく、組織全体で答えを出すことが求められるようになりました。
バックグラウンドや組織内での立ち位置の異なる人が参加する場で、意見を調整し合意へと導く役割として、ファシリテーターの存在が必要になったのです。
ファシリテーターは、参加者の意見を引き出して話し合いを建設的に進め、誰もが納得するゴールへ到達するために重要な存在といえるでしょう。
ファシリテーターがいるメリットは?
ファシリテーターは、会議や話し合いの場に欠かせない存在です。ファシリテーターがいることによるメリットを、より具体的に見ていきましょう。
参加者が意見を出しやすい
ファシリテーターがいる会議では、参加者が意見を出しやすくなります。参加者の意見を引き出す役割はファシリテーターが担い、参加者が安心感を持って自由に発言できるような雰囲気作りに尽力します。
バックグラウンドや立場の違う人が自由に発言できることによって、さまざまな視点からの意見が出され、より多くの情報・アイデアを共有できるでしょう。積極的に会議へ参加する参加者が増えることで、建設的な意見交換が可能になります。
意見が偏らない
ファシリテーターは、中立的な立場で参加者の話をまとめるため、会議全体の意見が偏らないというメリットがあります。
全体の調整役を果たすファシリテーターがいない会議では、発言が一部の人に集中してしまったり、まったく発言しない人がいたりという状況になるケースも珍しくありません。
ファシリテーターがいると、発言していない人にも意見を出してもらうように促すので、さまざまな考えが出やすく、斬新なアイデアが生まれる可能性があります。
適切な合意形成に導ける
ファシリテーターがいると、参加者が納得できるような合意形成に導けるのがメリットです。
通常の会議ではさまざまな発言があった場合に、多数決で決めてしまったり、発言力の強い人の意見が通ってしまったりして、全員の合意を得られないまま終わるケースもあります。
ファシリテーターは意見をまとめて整理する役割も果たすため、最大公約数的な合意形成は図りません。異なる意見が出たときも、お互いが納得できるポイントを見極め、建設的な結論へとまとめていきます。
ファシリテーターに必要なスキルは?
ファシリテーターには、会議の内容・目的によってさまざまなスキルが求められます。ファシリテーターの基本的な役割を果たすために必要なスキルを、確認しましょう。
発言を引き出すスキル
ファシリテーターには、中立な立場で参加者から発言を引き出すスキルが求められます。例えば、発言が特定の参加者に集中して、意見を表明できていない人がいる場合は、「〇〇さんはどう思いますか」のように話を振ることが大切です。
多くの人に発言を促すには、まずは意見をよく聞き、ほかの参加者がどう思っているかなどを察知するスキルも必要になります。
参加者が答えにくいような聞き方をしないなど、質問の仕方にも注意しなければなりません。参加者が自信を持って発言できるように、発言者の意見を尊重し、肯定的に受け止めるなどのサポートも必要です。
意見をまとめるスキル
参加者が納得できる合意形成へと導くために、会議で出された意見をまとめるスキルも必要です。
さまざまな発言から必要な情報を抽出し整理するには、ロジカルシンキングのスキルが役立ちます。意見が対立した場合には、両者の感情を理解し、お互いが歩み寄れるような妥協点を見つけることが大切です。
会議の目的に合わせ、優先すべき項目を決めるための判断力も必要とされます。また議論が白熱した際にも、ファシリテーターは感情的にならず、あくまでも中立的な立場を守って話をまとめなければなりません。
時間を管理するスキル
ファシリテーターとしての役割を果たす上で、時間管理のスキルは欠かせません。時間管理のスキルを身に付けることによって、会議が無駄に長引く事態を避け、効率的に進められるようになります。
例えば、決められた時間の中で会議を進めていくためには、議題ごとに時間配分を決めておくことが大切です。時間配分を決めておくことによって、議論がバランスよく進むようにコントロールできます。
会議の進行と時間管理を同時に行うのが難しい場合は、タイマー・時間管理アプリなどを活用したり、タイムキーパー役を別の人物に任せたりしてもよいでしょう。
ファシリテーターに向いている人
ファシリテーターに向いているのは、どのようなタイプの人なのでしょうか?特徴を2つ挙げて紹介します。
自己主張を抑えられる人
ファシリテーターは、自分の意見があったとしても、会議の場では自己主張を抑えられる人に向いています。自己主張が強いと、ほかの人の意見に対して閉鎖的になりがちなので、活発な議論が交わされにくくなるからです。
ファシリテーターは、会議に参加している人の発言を引き出してまとめる役割を担っています。自己主張を抑えられる人は、自分の意思を通すより発言者の意見を尊重できるため、参加者が自由に発言しやすくなるでしょう。
自己主張が強く、自分の意見を表明したいという人は、ファシリテーターではなく参加者の方が向いています。
中立の立場を維持できる人
話し合いの場で中立の立場を維持できる人も、ファシリテーターに向いています。参加者の間で対立が起こった際には、双方の意見を聞き、公平な解決策・合意へ導くことが必要です。
また、会議の公平性・客観性を保つためには、意見が偏らないように意識しながら進行していく必要もあります。
人の意見に左右されてしまいがちな人には、ファシリテーターを務めるのは難しいでしょう。会議の場に偏りがないか、常に客観的に見る意識が必要です。
ファシリテーターを果たす上での注意点
ファシリテーターとして会議を効率よく進めるためには、いくつかポイントを押さえておくことが大切です。ファシリテーター役を果たす上での注意点を3つ解説します。
会議のゴールやルールを決めておく
会議のゴールやルールを明確に決めておくのが重要です。その会議でどのような結論を出したいのかを決め、参加者にも共有しておくことで、ゴールに向かって建設的に話し合いを進められます。参加者にあらかじめ意見を準備しておいてもらうのもよいでしょう。
開始から最終的な合意形成までのプロセスを、分けておくのもおすすめです。時間が十分に確保できない場合にも、「時間の都合があるので、今回はここまで決めることを目指そう」と、会議のゴールを決めやすくなります。
また、「発言者の話を遮らない」など、意見を表明する場合のルールを決めておくことも大切です。
参加者全員が発言しやすい雰囲気を作る
会議では特定の人ばかりに発言が集中しないよう、参加者全員が意見を出しやすい雰囲気を作ることが大切です。多くの意見を出し合って議論を活性化することで、より生産的かつ実効性のある結論につながります。
参加者が発言しやすい雰囲気を作るには、発言者の意見を尊重し、どのような意見にも意義があると伝えることが必要です。1つの意見に対して別の参加者の発言を求める際にも、いったん受け止めた上で次の発言を促します。
場全体の雰囲気を和らげたい場合は、本題に入る前のアイスブレイクを設けて、参加者が興味を抱く話題からスタートするのもよいでしょう。
話の流れを確認する
話の流れを確認しながら進行していくことも重要です。発言の論点が分かりにくい場合には、内容を分かりやすく整理して、ほかの参加者に伝え直す必要もあります。
話が本筋から逸れたときには、参加者の気持ちに配慮しつつ、いったん議論を止めて軌道修正しなければならないケースもあるでしょう。
議論が盛り上がっている場合でも、常に話の流れを把握して「論点がずれていないか」「本題から逸れていないか」といった点に気を配ることが大切です。
ファシリテーターは円滑な会議運営に不可欠
ファシリテーターは、会議を円滑に運営していくために不可欠な存在です。単なる司会進行ではなく、よい意味で参加者全員を巻き込み、議論を活発化させて最終的な合意形成を促す役割を果たします。
発言を引き出す力や、異なる意見が出たときにまとめる力など、ファシリテーターにはさまざまなスキルが必要です。知識・スキルを身に付けるためには、実践できる機会を活用して経験を積みましょう。
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