会計年度任用職員とは?導入の背景や概要、勤務条件を詳しく解説

地方公務員には非常勤職員の採用枠があり、2020年から「会計年度任用職員」の運用が始まっています。制度の特徴や仕組み、基本的な勤務条件を見ていきましょう。導入後の変化や問題点、一般の地方公務員との違いも解説します。

会計年度任用職員とは

働く男性

(出典) pixta.jp

地方公務員の中には、「会計年度任用職員」と呼ばれる職員がいます。比較的新しい制度ですが、具体的にどのような役割を持っているのでしょうか?主な概要と、特徴を見ていきましょう。

新たな非常勤職員の制度

会計年度任用職員は、地方公務員法の改正に伴って新設された非常勤職員の制度です。2020年から導入され、従来の非常勤職員・臨時職員・パート職員は会計年度任用職員へと移行しました。

任期が定められており、一般的には4月1日~翌年3月31日の1年間です。職種によって1年より短いケースもあり、勤務成績や希望に応じて更新もあります。

勤務形態はフルタイムおよびパートタイムですが、原則パートタイムとしている自治体もあるようです。例えば茨城県結城市の場合、採用から1カ月は条件付き採用期間となっています。常勤職員と同様の規程もありますが、非常勤職員特有の条件での勤務です。

会計年度任用職員の現状

総務省の「地方公務員の会計年度任用職員等の臨時・非常勤職員に関する調査結果」によると、会計年度任用職員の7割以上を女性が占めています。

職種は一般事務職員が多く、約3割です。技能労務職員や保育所保育士の割合も高く、特定の職種が突出しています。会計年度任用職員の多くは、一般事務職に就く女性と考えられるでしょう。

原則パートタイムとしている自治体もある通り、フルタイム勤務は1割程度です。更新の有無は求人によって異なりますが、更新なしでの募集もあり、臨時職員の扱いも多いといえるでしょう。

参考:地方公務員の会計年度任用職員等の臨時・非常勤職員に関する調査結果|総務省

会計年度任用職員制度の導入の背景

働く人々

(出典) pixta.jp

地方公務員の非常勤職員の制度が見直され、会計年度任用職員制度が導入されたのは、なぜなのでしょうか?導入の背景となった実態と、制度導入後の変化について解説します。

参考:『会計年度任用職員制度』の導入について|飛騨市役所

非正規職員の勤務条件を見直すため

会計年度任用職員の制度は、全国的に非正規職員の採用や待遇を適正化する目的で導入されました。過去には地方自治体が独自の解釈で賃金や採用基準を決めており、条例で定められていない運用も見受けられたためです。

地方公務員の非常勤職員には、特別職非常勤・臨時的任用・一般職非常勤の3種類があり、それぞれの捉え方に自治体によってばらつきがあったのが原因と考えられます。

政府は2009年、2014年にも非正規職員の勤務条件を統一するため、各自治体に対して総務省が要請を行っていますが、要請だけでは完全な統一化が果たせず、会計年度任用職員の導入に至ったと考えられるでしょう。

導入後の変化とは

制度の導入により、賃金の設定や昇給制度、休暇の取得など一部の待遇において明確なルールが設けられました。給料は常勤職員の初任給月額をもとに計算され、昇給や前歴換算も導入されているのが、以前までとの違いです。

時給制で報酬が支払われていたときと比べると、フルタイム勤務の職員にとっては大きな変化があると考えられます。

さらに、週15時間30分以上の勤務であれば、期末手当の対象です。フルタイム勤務の場合、地方公務員等共済組合保険への加入や退職手当の支給も導入されています。

休暇に関しても、国の非常勤職員と同様の待遇が認められ、年次有給休暇に加えて特別休暇の取得も可能です。

会計年度任用職員の勤務条件

働く女性

(出典) pixta.jp

地方公務員の会計年度任用職員として働く場合、勤務条件はどうなるのでしょうか?現在、会計年度任用職員制度で定められている、主なルールと条件を解説します。

会計年度任用職員の種類

会計年度任用職員には、フルタイム勤務とパートタイム勤務の2種類があります。福岡県飯塚市の例では、パートタイム勤務は2級と1級に分かれ、2級は専門的事務、1級は定型的事務です。フルタイムは定型的事務である1級のみとなっています。

専門的事務は知識や経験を求められる業務内容に限られており、定型的事務は比較的簡単な内容が中心です。

フルタイムとパートタイムでは、賃金の支給形態が異なります。フルタイムは給料と各種手当が支給され、パートタイムは報酬としての支払いです。

手当の有無も変化するため、非常勤職員として勤務を考えている場合は、どちらに該当するか求人情報を確認しておきましょう。

参考:「会計年度任用職員」のしおり|飯塚市役所

会計年度任用職員の待遇

会計年度任用職員の待遇は、フルタイムとパートタイムで異なります。給料は責任や業務内容に応じて計算されるため、常勤職員の初任給月額を基準として個別に設定されると考えておきましょう。

期末手当の支給基準は、週15時間30分以上の勤務かつ任期6カ月以上の勤務です。通勤手当や各種手当は、勤務状況に応じて支給されます。パートタイム勤務では、「手当」ではなく同等の費用弁償となる仕組みです。

時間外勤務手当や宿日直手当、休日・夜間勤務手当など、追加報酬に関しては月額・時間額支給を問わず支払われます。

退職手当はフルタイム勤務のみですが、要件を満たしていれば社会保険にも加入でき、非常勤職員とはいえ、ある程度の待遇は保障されています。

会計年度任用職員の服務規程

地方公務員には、以下のように独自の服務規程が定められています。会計年度任用職員も、原則的に同様の服務規程を守らなければなりません。主な服務規程は以下の通りです。

  • 服務の宣誓
  • 法令等および上司の職務上の命令に従う義務
  • 信用失墜行為の禁止
  • 秘密を守る義務
  • 職務に専念する義務
  • 政治的行為の制限
  • 争議行為等の禁止
  • 営利企業への従事等の制限(パートタイム職員を除く)

細かいルールではありませんが、一般的な社会的ルールを守り、職務に専念することが義務付けられていると考えておきましょう。規律に違反した場合は、懲戒処分の対象となります。

参考:地方公務員法 | e-Gov法令検索

会計年度任用職員に関する気になる疑問

考えるスーツの男性

(出典) pixta.jp

会計年度任用職員は、地方公務員とどう違うのでしょうか?勤務形態や服務規程の特徴について、疑問点を解説します。

会計年度任用職員は公務員?

常勤職員ではないといっても、会計年度任用職員は一般職の「地方公務員」として扱われます。新地方公務員法第24条に基づいて給料や報酬が決まり、全国的に統一されたルールで運用されている制度です。

一定の昇給や更新もあり、状況によっては常勤職員とそれほど差がない扱いもあるでしょう。

ただし、地方公務員と同じ試験を受けるわけではなく、会計年度任用職員向けの採用試験が設けられているのが特徴です。正式に地方公務員として働くには、公務員試験を受けるか経験者採用を実施している自治体で試験を受けることになります。

参考:地方公務員法 | e-Gov法令検索

参考:【資料4】地方公務員の臨時・非常勤制度について|総務省

会計年度任用職員は副業可能?

公務員は国家公務員・地方公務員を問わず、服務規程により原則的に副業・ダブルワークが禁止されています。非常勤職員である会計年度任用職員としての採用であっても、フルタイム勤務の場合は副業禁止です。

パートタイム職員も基本的な服務規程を守るようルールが定められていますが、営利企業への従事は制限されておらず、副業が認められています。

フルタイム勤務をしながら副業を考えている場合は、副業を認めている企業への就職を検討しましょう。副業先とのシフトの兼ね合いも考えられるため、パートタイム勤務であっても、事前に相談しておくと無理なくダブルワークを続けられるでしょう。

参考:地方公務員法 | e-Gov法令検索

会計年度任用職員の問題点は?

一般の地方公務員とは異なり、会計年度任用職員には任期が定められています。更新があるとはいえ、求人情報であらかじめ「更新なし」と記載されているケースも多いでしょう。

産休職員の代替であったり、退職に伴う一時的な人員不足であったり、非常勤職員を必要とするシーンはさまざまです。長期勤務を希望する場合、せっかく採用されても任期が終わると更新されないという問題があります。

また、これまで独自に高い報酬を設定していた自治体では、賃金の計算方法にルールができたことにより、年収が下がってしまう問題も発生しています。

あくまでも常勤職員の初任給月額が参考となるため、資格があっても収入が増えにくい点はデメリットといえるでしょう。

会計年度任用職員制度には課題が多い

オフィスを眺める男性

(出典) pixta.jp

地方公務員の非常勤職員制度として導入された「会計年度任用職員」は、任期や報酬形態のルールが定められています。服務規程や業務内容は地方公務員とほぼ同じですが、新しくできた制度でもあり課題は多いようです。

地方公務員を目指し、非常勤職員として働くことを考えているなら、一般の常勤職員との違いを理解した上で採用試験を受けましょう。短期間やパートタイムでの採用を希望している場合は、メリットもあるといえます。