臨床心理士とはどんな仕事?資格の取得方法や仕事の内容を紹介

臨床心理士は、心理面の問題に対処するために必要なサポートを提供する職です。臨床心理士の仕事内容や活躍できる職場、他の心理職との違いを解説します。心理職のスペシャリストを目指してキャリアアップしたい人は、転職を検討してみましょう。

臨床心理士とはどんな仕事に携わる職業?

問診をする女性

(出典) pixta.jp

臨床心理士は、精神面に不調を抱える人をサポートするために、さまざまな業務に携わります。臨床心理士が担当する業務範囲を見ていきましょう。

心理アセスメント(検査・面談・観察)の実施

心理職において、アセスメントは重要な業務です。心理学におけるアセスメントには、以下のような業務が含まれます。

  • 面接や観察によって心理状態を把握する
  • 必要な情報を知るために心理検査を行う

心理面の不調を抱える人に対してどのような治療を提供するか判断するには、状態を正確に把握することが欠かせません。クライエントの状況を把握するだけでなく、今後の計画を策定するために行う一連の業務が、心理アセスメントに含まれます。

臨床心理学的技法を用いた課題解決

臨床心理士は、クライエントの心理状況を把握したら、具体的な解決策を考えて実行します。個々のクライエントが抱える問題を解決するために用いられる施策の一例は、以下の通りです。

  • クライエント中心療法: ヒアリングを重視し、自ら解決策や今後の行動を考えるように促す
  • 認知行動療法: 臨床心理士側が積極的に提案し、提案に基づく行動を取るように促す
  • 箱庭療法: 箱庭を活用して自由に表現してもらい、心理面のバランスを取ることを目指す

カウンセリング以外にもさまざまな手段を活用し、クライエントが抱えている課題の解決を目指します。

公的機関・民間企業と連携したサポート

心理職のスペシャリストとして、地方自治体や医療機関、民間企業と連携し、心理面のケアに携わるケースもあります。この分野における具体的な仕事内容は以下の通りです。

  • 教育機関でスクールカウンセラーとして働く
  • 民間企業で産業カウンセラーとして働く
  • 地方自治体の相談窓口で働く

どのような場所であっても、そこで働く人のメンタルケアは重要です。臨床心理士はメンタルケアの専門家として、スタッフのカウンセリングを担当したり、不調を抱えている人からの問い合わせに対応したりします。

臨床心理学に関する調査および研究

臨床心理士としてのスキルアップを目的として、臨床心理学に関する調査・研究に携わるのも、臨床心理士の重要な仕事です。調査・研究の内容には以下のものが含まれます。

  • 勉強会や学会に参加して臨床心理学に関する最新の動向を学ぶ
  • ケーススタディを通じて効果的な取り組みや手法を学ぶ
  • 自分が携わった業務を振り返って効果を検証する

上記の調査・研究活動は、心理アセスメントの効果を高める上でも欠かせません。臨床心理士としての専門性を高め、幅広い分野で活躍できるようになるために大切な業務です。

臨床心理士になるまでのプロセス

資格の勉強をする女性

(出典) pixta.jp

臨床心理士として現場で活躍するためには、資格を取得しなければなりません。臨床心理士としてのキャリアをスタートするまでのプロセスとして、受験資格を獲得する方法から、資格を得る方法まで紹介します。

指定大学院を修了して受験資格を獲得する

2023年6月時点において、臨床心理士試験を受験するには、指定された大学院のカリキュラムを修了する必要があります。

大学院で心理学関連の研究科を修了すればよいというわけではなく、専攻やコースが指定されている点に注意が必要です。

大学に在籍中でこれから臨床心理士を目指そうと考えているのであれば、臨床心理士の受験資格を獲得できる大学院への進学を目指しましょう。

進学する大学院や専攻・領域を間違えると受験資格を取得できず、今後のキャリア形成に大きな影響を与えます。

参考:臨床心理士受験資格に関する指定大学院・専門職大学院一覧|公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会

臨床心理士の資格審査を受けて合格する

無事に大学院を修了して受験資格を獲得したら、日本臨床心理士資格認定協会が実施している資格審査を受験しましょう。

資格審査が実施されるのは通常年に1回です。万が一不合格になると翌年まで受験できないため、十分に準備を整えて受験することが大切です。

受験の申し込みは、定められた期間内に日本臨床心理士資格認定協会から申請書類を取り寄せ、必要な手続きを行う必要があります。期限間近になって慌てないように、早めに行動しましょう。

資格認定証書の交付手続きを行う

臨床心理士の資格は、資格審査に合格したことによって自動的に獲得できるものではありません。

臨床心理士としてのキャリアをスタートさせるには、合格通知を受け取った後に資格認定証書の交付を請求する必要があります。交付手続きにも期限が定められているため、合格通知を受け取ったらすぐに手続きした方がよいでしょう。

手続きが完了すると臨床心理士の資格認定証書が交付され、名簿に掲載されます。上記の手続きが済んだ段階で、晴れて臨床心理士として実務に携わることが可能です。

臨床心理士試験の内容

試験を受ける人たちの手元

(出典) pixta.jp

臨床心理士を目指す人にとって、資格審査の内容は気になるポイントです。2023年時点において、臨床心理士の資格審査は1次試験と2次試験に分かれています。それぞれの試験内容を確認しましょう。合否は、それぞれの試験結果を総合的に考慮して判断されます。

多肢選択方式試験・論文記述試験

1次試験は、筆記試験として多肢選択方式試験と論文記述試験を実施します。それぞれの試験で問われる内容は以下の通りです。

  • 多肢選択方式試験: 心理学の基礎的知識、臨床心理士の業務内容に関する知識、倫理・法令に関する知識、基本的な姿勢・態度に関する設問
  • 論文記述試験: 臨床心理に関する指定テーマについて論述する

筆記試験の対策では、臨床心理士として求められる基礎的・専門的な知識を学ぶだけではなく、必要事項を盛り込んだ論文を簡潔に記述するトレーニングが欠かせません。2つの試験は同日に実施され、試験時間は計4時間です。

口述面接試験

1次試験で実施した多肢選択方式試験の成績が一定水準に達している受験者に対し、2次試験として口述面接試験を行います。

この試験は、2人の面接委員と対面して行うものです。合格するには、臨床心理士としての業務を遂行する上で求められる基本姿勢を理解しているとともに、専門家として備えておくべき最低限のコミュニケーションスキルを有していなければなりません。

実際の臨床心理面接で必要とされる技能を問われるため、試験は試験であると考えるのではなく、臨床現場であると考えて対策することをおすすめします。

臨床心理士と混同しやすい職種

カウンセリングの様子

(出典) pixta.jp

心理職の専門家は複数存在するため、臨床心理士との違いが分かりにくいと感じる場合があります。臨床心理士と混同しやすい職種として、公認心理師と認定心理士の2つを確認しましょう。転職を考える際には、自分が望むキャリアを実現できる職がどれかよく考えることが大切です。

公認心理師

公認心理師は、2023年時点において日本にある心理職の国家資格として唯一のものです。公認心理師が担当する分野の一例には、以下のようなものがあります。

  • クライエントの心理状態を観察し、状況を分析する
  • クライエントに必要な支援を与える
  • メンタルケアに関する教育・情報提供活動に携わる

クライエントと対面する業務は、臨床心理士と共通する分野といえるでしょう。しかし、臨床心理士が研究活動に携わる一方で公認心理師は教育・情報提供活動に携わるなど、一部に違いがあります。

認定心理士

心理関連の基礎資格に位置付けられていて、心理職を目指す人の登竜門とされているのが認定心理士です。

大学で心理学を学んで卒業した後に申請すると資格を取得できますが、心理職のスペシャリストを目指すことを考えると、認定心理士だけでは不十分といえるでしょう。

心理職の求人は臨床心理士か公認心理師を対象にしているものが多いため、いずれかの資格を取得して専門性を高めるのがおすすめです。

すでに大学を卒業して認定心理士の資格を取得している場合、大学院に進学して臨床心理士を目指す道と、2年以上の実務経験を積んで公認心理師を目指す道があります。

臨床心理士が活躍するフィールド

カルテに書き込む手元

(出典) pixta.jp

メンタルケアの重要性が高まっている状況を受け、臨床心理士の需要は増大しています。臨床心理士が活躍する主な職場を、詳しく見ていきましょう。就職先によって具体的な仕事内容が異なるため、自分が何を目指すか明確にすることが大切です。

医療機関で患者の心理面を援助

精神科や診療内科など、メンタルケアを取り扱う医療機関にとって、臨床心理士は欠かせない存在です。医療機関で働く場合、訪れる患者のカウンセリングや医師の指導に基づいた心理療法の提供に携わることになるでしょう。

医療機関で働くと、うつ病や双極性障害、統合失調症の患者に接する機会が多くなります。ほかにも、アルコール依存症や薬物依存症、引きこもりの相談に応じるケースもあるでしょう。

さまざまな精神疾患に対する知識や、クライエントそれぞれの状況に応じた柔軟なサポートが求められます。

福祉機関で社会的支援を与える

障害者福祉施設や児童福祉施設などで働く臨床心理士も存在し、福祉分野でも重要な役割を果たしています。児童福祉施設で働く場合は、発達障害を抱えている子どもや精神面の問題で不登校になっている児童生徒に接する機会が多くなるでしょう。

ほかにも、DVや虐待によって精神面に深い傷を負った人をサポートするケースもあります。医療機関を訪れる患者と同様に、福祉施設の利用者が抱えている問題の種類や背景もさまざまです。

カウンセリングを通じて抱えている問題や精神状態を可視化し、適切なサポートを与える必要があります。

教育機関でカウンセリングを担当

臨床心理士には、学校や教育委員会をはじめとした教育分野で働く道も開かれています。学校で働く場合はスクールカウンセラーになるのが一般的で、不登校になっている人や問題行動を起こしている人に接することになるでしょう。

教育委員会や相談機関で働く場合は、生徒や保護者に加えて教師のメンタルケアを担当するケースもあります。教育分野で働くのであれば、就職先によってはカウンセリングだけではなく臨床心理学に関する研究も重要な仕事です。

司法機関で加害者・被害者をサポート

裁判所や拘置所、刑務所などの司法機関でも、臨床心理士が活躍しています。刑務所や少年院などの刑事施設では、被収容者のカウンセリングや心理面のサポートを担当します。再犯防止を目的とした教育プログラムの策定、実行を担当する場合もあるでしょう。

ほかにも、警察関連施設で少年犯罪に関する相談を受けたり、犯罪への発展を予防するためのメンタルケアを担当したりするケースもあります。司法機関での仕事も多岐に渡ることが分かるでしょう。

一般企業で社員の心をケアする

一般企業においては社員のメンタルケアが必要とされているため、この分野で臨床心理士が活躍しています。精神的な負荷が大きい業務を担当している場合、社員が精神面の不調を抱えるケースがあり、適切にケアしなければなりません。

そのような企業では、臨床心理士や産業医が協力してメンタルケアに携わっているケースがあります。そのため、一般企業に心理職として入社し、社員のカウンセリングを担当するのもキャリアプランの1つです。

臨床心理士のやりがいと大変な点

カウンセリングの様子

(出典) pixta.jp

臨床心理士は、心理職のエキスパートとしてさまざまな業務に携わり、やりがいがある仕事です。一方で、精神面に問題を抱えた人に日々接するため、大変だと感じる場合も多いでしょう。

臨床心理士を目指すのであれば、やりがいと厳しいポイントを知っておくことが大切です。

人の心を扱う仕事ならではの特徴がある

臨床心理士はクライエントの心に直接向き合う仕事です。そのため、以下のようなやりがいがあります。

  • コミュニケーションを通じて信頼関係を培える
  • 日々の業務を通じて自らも成長できる
  • クライエントから感謝される機会がある

自分の取り組みがクライエントの役に立ち、精神面で元気を取り戻していく様子を見るのは大きなやりがいになるでしょう。一方、人の心を扱う職であるからこそ、以下のように厳しく感じるポイントもあります。

  • 精力的にサポートしても解決できない場合がある
  • 大きなストレスを感じやすい
  • 効果的な施策が見つからないケースもある

人の心は複雑なため、努力しても問題を解決できなかったりより悪化したりする場合もあります。状況によっては、適切な施策やアドバイスが見つからないケースもあるでしょう。

取り組みの成果が思ったように現れないときには大きなストレスを感じ、厳しいと思う可能性があります。

臨床心理士は社会的なニーズが高く将来性にも期待

白衣の女性

(出典) pixta.jp

臨床心理士は心理職の専門家として、幅広く活躍できます。医療・福祉・教育・司法など、さまざまな分野で臨床心理士が求められています。一定の学歴が求められるなど、資格を取得する難易度が高いものの、それだけの価値がある職種です。

心理職のエキスパートを目指してキャリアアップしたいと考えているのであれば、臨床心理士を目指すとよいでしょう。すでに資格を取得しているのであれば、自分に合った求人を探すことが大切です。

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