言語聴覚士とはどんな仕事?活躍できる職場や資格取得の方法も

言語聴覚士は、障害のある人の機能向上を図る専門職です。活躍できる場所や具体的な業務内容を知っておけば、目指すための計画を立てやすくなるでしょう。言語聴覚士の仕事や資格取得方法について詳しく解説します。

言語聴覚士とは

カルテに記入する白衣の人物

(出典) pixta.jp

言語聴覚士を目指す人のために、まずは概要を紹介します。訓練や指導の対象となる主な障害についても、理解を深めておきましょう。

会話や嚥下の問題改善を図る専門職

言語聴覚士は、会話や嚥下(えんげ)が難しい人を対象に、問題改善を図るための訓練・指導を行う専門職です。嚥下とは、口の中で食べ物を咀嚼(そしゃく)し胃に流し込むことを指します。

スムーズな会話が困難な人は、言語・聴覚・発声などの機能が損なわれている恐れがあります。問題の本質を明らかにし、適切なサポートを行うことが、言語聴覚士の役割です。

言語聴覚士は国家試験に合格し、資格保有者として登録すると名乗れるようになります。医療機関や介護・福祉の現場、教育機関など、言語聴覚士はさまざまな場所で働くことが可能です。

言語聴覚士が対象とする障害

話すことや食べることが難しい人には、それぞれに何らかの原因があります。言語聴覚士が対象とする主な障害と症状は次の通りです。

  • 摂食・嚥下:食べ物をうまく飲み込めない
  • 成人言語・認知:言葉にできない、文字が読めない
  • 発声・発語:うまく発音できない
  • 音声障害:声が出にくい、いつもと違う声になる

言語聴覚士が専門とする領域は、働く場所により異なります。例えば、高齢者が多い病院や福祉施設では、摂食・嚥下に対する訓練や指導が多くなるでしょう。

言語聴覚士が活躍する職場

カルテを手にしている白衣の女性

言語聴覚士

言語聴覚士が働ける代表的な場所は、医療機関や介護・福祉の現場、教育機関です。職場ごとの働き方や主な仕事内容について解説します。

医療機関

言語聴覚士の勤務先として最も多いのが医療機関です。総合病院などのリハビリテーション科・口腔外科・耳鼻咽喉科が、代表的な配属先となります。

言語聴覚療法はリハビリテーション医療の過程で異なるため、仕事内容も勤務先により変わります。例えば、認知症専門病院ではコミュニケーション障害に対するリハビリがメインになるのに対し、脳神経外科では脳卒中による失語症のリハビリが中心です。

医療機関では幅広い年代の患者と接することになるため、さまざまな症例を経験しながら成長できます。言語聴覚士の配置が必須となった領域も増えており、活躍の場はますます広がるでしょう。

介護や福祉の現場

老人福祉施設や通所施設など、介護の現場で働く言語聴覚士の仕事は、摂食・嚥下に関するリハビリがメインです。自ら食事のリハビリ指導を行うほか、介護スタッフへの食事介助における指導も行います。

子どもを対象とした福祉施設では、障害を持つ子どもや発達が遅れている子どもを支援するのが一般的です。家族や教育機関とも連携を取りながら、普段の生活の中でリハビリを行います。

言語聴覚士は、自治体が運営する保健所や地域包括支援センターで働くこともあります。これらの施設では相談業務を担当するのが基本です。

教育機関

教育機関で働く場合、言語聴覚士の養成所で講師として働くスタイルと、特別支援学級や特別支援学校で教師として働くスタイルの2種類があります。

養成所の講師の仕事内容は、国家資格取得に向けた講義がメインです。臨床実習や学生指導、養成所の雑務もこなさなければなりません。

特別支援学級や特別支援学校で働く場合は、幼稚園や小中高等などの教員免許が必要です。子どもたちのさまざまな障害に対するサポートを行うほか、学習指導を行うケースもあります。

最近は児童デイサービスや児童発達支援施設も増えており、言語聴覚士が小児分野で活躍できる範囲も広がってきています。

言語聴覚士の仕事内容

カウンセリングをする女性

(出典) pixta.jp

仕事内容を理解しておけば、転職後の働き方をイメージしやすくなるでしょう。代表的な仕事の具体的な内容について解説します。

言語や発語、認知の訓練

声が出にくい人やスムーズに話せない人には、言語聴覚士による評価・訓練を行います。声帯・唇・舌などに問題がある構音障害の回復も、言語聴覚士が行う仕事の1つです。

失語症・記憶障害・認知症など、成人の言語障害に対しては、患者ごとの症状や発生メカニズムをチェックし、それぞれに対応したプログラムを作成して訓練を実施します。

子どもの「言葉の遅れ」の主な原因は、知的発達の遅れや対人関係の障害です。単語や文法など言葉の獲得を支援し、言葉やコミュニケーションへの関心を促します。

摂食、嚥下の訓練

摂食・嚥下は高齢者によく見られる障害であり、主な原因は加齢や脳卒中です。摂食・嚥下障害を抱える患者に対しては、検査による嚥下機能の評価や食事時の観察を行います。

食べ物をうまく飲み込めない原因を特定できたら、咀嚼して飲み込むときの口・舌の動かし方の指導や、飲み込む際の反射を高めるための訓練などを実施します。

患者の口腔ケアも、大変重要な仕事です。食べかすが口の中に残っていると、細菌の増加を招き病気を引き起こす恐れがあるため、口の中を衛生的に保つためのケアを行います。

聴覚の訓練

聴覚障害の主な種類は、伝音性難聴・感音性難聴・混合性難聴の3つです。加齢や事故などにより、後天的な聴覚障害を持つ人もいます。

聴覚障害を抱える患者に対する言語聴覚士の仕事は、検査による障害の程度の把握と聴覚回復訓練です。必要に応じて補聴器や人工内耳の提案・フィッティングも行います。

補聴器や人工内耳でも障害をカバーできないケースでは、文字や手話によるコミュニケーションの訓練を行います。言語獲得期にある幼児が対象となる場合は、「言葉の獲得」のサポートも必要です。

言語聴覚士の資格を取得するには

資格の勉強をする女性

(出典) pixta.jp

言語聴覚士になるためには、国家資格を取得しなければなりません。試験の概要と受験までのルートについて解説します。

言語聴覚士国家試験の概要

言語聴覚士資格は、1997年に国家資格となった比較的新しい資格です。試験は年1回、毎年2月に実施されます。試験地は北海道・東京都・愛知県・大阪府・広島県・福岡県です。

試験形態は5肢択一式の筆記試験、試験問題数は200問、合格ラインは正答率60%以上に設定されています。2023年2月に実施された試験の合格率は67.4%でした。

試験内容については、医学・心理学・言語学・社会福祉・教育・障害学など、幅広い領域から出題されます。試験日から逆算し、計画を立てて勉強を進めることが重要です。

参考:言語聴覚士国家試験の施行|厚生労働省

受験までのルート

国家試験の受験資格を取得する方法には、一般的に3通りのルートがあります。高校卒業後のルートは以下の通りです。

  • 文部科学大臣が指定した3~4年制の大学・短大を卒業
  • 都道府県知事が指定した3~4年制の専修学校を卒業
  • 一般4年制大学を卒業後、指定の大学・大学院の専攻科または2年制の専修学校を卒業

一般大学を卒業した会社員から言語聴覚士へ転職する場合は、まず2年制の専修学校に入学するのが現実的なルートになります。

参考:言語聴覚士 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))

多くの人を支える言語聴覚士

白衣を着た女性

(出典) pixta.jp

言語聴覚士は障害の機能向上を図る専門職です。摂食・嚥下や成人言語・認知、発声・発語などの障害が仕事の対象となります。

活躍できる主な場所は、医療機関や介護・福祉施設、教育機関です。また言語聴覚士になるためには、所定のルートを経由して国家試験に合格する必要があります。

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