金融業界とは?職種から基礎知識、仕組み、必要なスキルまで

金融業界は、複数の業態から成り立っています。職種や仕事内容も多様で、事務職や営業職もあれば、高度な業界知識を要する専門職もあります。異業種から転職する場合、どのようなスキルが必要なのでしょうか?金融業界の仕組みや役立つ資格を解説します。

金融業界とは

現金を渡す

(出典) pixta.jp

金融業界というと、銀行員や証券会社の営業員を思い浮かべる人は多いでしょう。文字通り金融に関する業務を幅広く扱う業界で、さまざまな職種の人によって支えられています。業界の特徴や業態など、金融業界に関する基本を確認しましょう。

金銭のやりとりを媒介する業界

金融には、金銭を融通するという意味があります。より具体的には、利息の支払いを条件に、お金が余っている人から不足している人に金銭を融通することです。

金融業界は、金銭のやりとりを媒介する業界であり、業界に属する全ての業態は、間接金融または直接金融のいずれかに分類されます。

  • 間接金融:お金を借りる人と貸す人の間に、第三者が介在する仕組み
  • 直接金融:お金を借りる人と貸す人が直接的に取引する仕組み

間接金融の代表例としては、銀行預金や融資などが挙げられます。第三者が存在しない直接金融は、株式・債券の取引などです。

金融業界の業態の基礎知識

金融業界は間接金融と直接金融に大別され、さらに以下のような複数の業態(ビジネスモデル)に分かれます。

  • 銀行
  • 証券会社
  • 保険会社
  • クレジットカード会社
  • 信販会社
  • その他の金融機関

信販会社とは、信用販売を生業とする会社です。利用者の信用に基づいて商品代金を立て替え、後から金銭を請求する仕組みを構築しています。

その他の金融機関には、物件や設備を貸すリース会社や、資産運用を専門に扱う資産運用会社、スタートアップ企業に積極的に投資するベンチャーキャピタルなどが含まれます。

金融業界の仕組み

銀行の窓口

(出典) pixta.jp

銀行や証券会社を日常的に利用している人でも、どのように金銭が融通されているのかについて知らない人も多いのではないでしょうか?お金は私たちの生活と切り離せないものです。各業態における取引の仕組みを、しっかりと理解しておきましょう。

銀行の仕組み

銀行の主な業務には、預金業務・貸出業務・為替業務があります。預金業務は、個人や企業から金銭を預かり、預け入れられた金銭に対して銀行が利子を支払う仕組みです。

銀行に預けられた金銭は、お金が必要な人に対して貸し出されますが、お金を借りた人は銀行に一定の利息を支払わなければなりません。預金業務で銀行が支払った利子と、貸出業務で得た利息の差額が、銀行の収益(利ざや)です。

為替業務は、口座間の資金移動を行う業務で、国内為替と外国為替に大別されます。

さらに、銀行によっては、大企業・機関投資家に資金調達・資産運用の提案を行うホールセール業務や、M&Aの実務をサポートするM&Aアドバイザリー業務に従事するケースもあります。

証券会社の仕組み

個人が株式投資を行う際には、証券会社に証券口座を開設する必要があります。銀行の預金口座では、株式の売買はできません。

証券会社とは、有価証券の売買や取次業務を担当する会社です。有価証券の発行者(会社)と個人投資家をつなぐ役割を担っており、株式売買を仲介して得られる仲介手数料が収益の柱です。

業務内容は、個人向け業務と法人向け業務に大別されます。個人向け業務はリテール業務とも呼ばれ、株式や投資信託、債券などを個人の投資家に販売する仕事がメインです。

法人向けの業務はホールセール業務と呼ばれ、株式や債券の引き受け、資金調達の支援、M&Aの助言などを行います。

保険会社の仕組み

保険業は、保険契約者からあらかじめ保険料を徴収し、事故・病気・死亡などが生じた際に、受取人に保険金を支払う仕組みです。

保険会社は、取り扱う保険商品の種類によって、以下のように生命保険会社・損害保険会社・第三分野の保険を扱う会社に区別されます。

  • 生命保険会社(第一分野):終身保険・養老保険・個人年金保険など
  • 損害保険会社(第二分野):自動車保険や火災保険など
  • 第三分野の保険を扱う会社:医療保険・介護保険・がん保険など

保険会社の収益の源泉は、保険契約者から支払われる保険料です。保険料は、保険金や給付金に充てられる純保険料と、保険会社の人件費や宣伝費に使われる付加保険料で構成されています。

クレジット会社・信販会社の仕組み

クレジットカード会社は、カードの利用者とカードの加盟店をつなぐ役割を担っており、以下のように双方から手数料を受け取ります。

  • カード利用者:カードの年会費・リボ払いや分割払いなどの手数料
  • カード加盟店:加盟店手数料として決済金額の数%を徴収

クレジットカード会社の主な業務は、イシュア・アクワイアラ・プロセシングに大別できます。

  • イシュア:カード発行・会員への代金請求・不正利用の監視
  • アクワイアラ:カード加盟店の開拓および審査、管理
  • プロセシング:会員管理や加盟店管理

前述のように信販会社とは、信用販売を行う会社の総称であり、ショッピングローンやショッピングクレジットなどの個別信用購入あっせんのほか、ローンや保証業務、クレジットカード業務なども幅広く手がけています。

金融業界の職種

窓口

(出典) pixta.jp

金融業界にはさまざまな職種がありますが、大きく「専門職」「営業職」「事務職」に分けられます。金融業へのキャリアチェンジを検討している人は、自分にどの職種が向いているのかチェックしましょう。

専門職

金融業界の専門職とは、ある特定の分野に精通したプロフェッショナルを指します。代表的な職種は以下の通りです。

  • ファイナンシャルアドバイザー
  • 証券アナリスト
  • ファンドマネージャー
  • プライベートバンカー
  • トレーダー
  • エコノミスト
  • アクチュアリー
  • ディーラー

専門知識を必要とする専門職は、一般的に他の職種よりも高収入です。未経験からの転身も不可能ではありませんが、人一倍の努力が求められるでしょう。

職種によっては、経営者に対する資産運用やM&Aのアドバイスを行うため、経営や投資、ビジネスに関する知識も身に付ける必要があります。

営業職

金融業界の営業職には、個人営業と法人営業があります。

個人営業の職務は、顧客のライフイベントを把握した上で、適切な金融商品を提案することです。勤務体系は、顧客先を訪れる「外勤」と、本支店に勤務する「窓口」の2パターンに分かれます。

法人営業では、金融商品の提案や資金調達の支援、株式・債券の引き受けに関わる営業活動を法人に対して行うのが一般的です。保険会社では、企業や団体に対し、団体保険・退職年金・損害保険などを提案します。

営業職には、ノルマが課されるケースが一般的です。タフで向上心があり、目標に向かって努力できる人に向いているでしょう。

事務職

事務職は、窓口対応・電話対応・データ作成・備品の管理・書類のチェックなどがメイン業務です。厳密には、窓口で顧客対応をする「窓口事務」と、事務所の後方で事務作業をする「後方事務」に大別されます。

金融機関の窓口事務は、以下のような業務を担当します。事務といっても、顧客対応がメインとなるため、コミュニケーションスキルは欠かせません。

  • 出入金・送金の対応
  • 口座の開設・解約の手続き
  • 金融商品の提案・相談

後方事務は、書類のチェックや電話応対、入金・出金の処理などがメインです。細かい作業を手際よく遂行する必要があるため、几帳面で責任感がある人に向いています。

金融業界の現状や今後の動向

ATMから出てくる通帳

(出典) pixta.jp

金融業界というと安定・高収入というイメージがありますが、コロナ禍の影響やデジタル化の進展、FinTechの台頭などによって、業界全体が大きな変化を迎えようとしています。現状と今後の動向を把握し、これからの時代に求められる人材を目指しましょう。

市場規模が大きい

金融業界の特徴の1つとして、市場規模が大きい点が挙げられます。複数ある業態の中でも、銀行と生命保険会社が大きなウェイトを占めているのが特徴です。

銀行業界は、三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行などのメガバンクが業界全体をけん引しています。新規企業が参入しても、地位が大きく入れ替わることはほとんどないでしょう。

業界全体の業績は安定していますが、マイナス金利政策の長期化で、金融機関の利ざやが減少しているのが現状です。

参考:当面の金融政策運営について|日本銀行

大きな転換期を迎えている

新型コロナウイルスの影響やテクノロジーの発展により、業務内容やサービスの提供方法を大幅に見直す時期に差し掛かっています。

近い将来、一部の事務作業や窓口業務がAI(人工知能)に置き換わったり、事務職が営業職の仕事を割り当てられたりといったケースも多くなるでしょう。

近年は、金融サービスと情報技術を結び付けた「FinTech」が注目されています。仮想通貨やキャッシュレス決済などが代表例で、FinTech分野には金融業界以外の企業も参入しています。今後は、加速するFinTechにどう対応するかが課題となるでしょう。

また、銀行業界や保険業界は国内市場が飽和状態にあることから、海外進出を目指す動きも盛んになると見られています。

金融業界に必要なスキル

プレゼンをする女性

(出典) pixta.jp

必要な資格は業態・職種によって異なりますが、金融業界で働く人にとって欠かせない共通のスキル・資質があります。どれも一朝一夕で身に付くものではないため、日々の業務の中でコツコツと磨いていく必要があります。

情報やトレンドなどをキャッチするスキル

金融業界といっても含まれる分野は幅広く、求められる知識やスキルは多方面にわたります。どの職種においても、業界の最新情報やトレンドをキャッチし、常に知識をアップデートする姿勢が求められるでしょう。

株価や為替は社会・経済の状況を反映するため、商品知識だけでなく、国際情勢や政治、経済についても幅広く学ぶ必要があります。

今後は、金融業界のDXが加速し、AIやIoT(モノのインターネット)といった最先端技術が導入されます。新たな技術にも関心を持ち、積極的な情報収集を心掛けましょう。

コミュニケーションスキル

金融業界で働く人にとって、コミュニケーションスキルは不可欠です。特に窓口業務や営業では、顧客との信頼関係の構築が求められます。

金融商品や保険商品を一方的に紹介するだけでなく、顧客の本音をくみ取ったり、適切な質問でニーズを深掘りしたりするスキルは欠かせないでしょう。

金融の知識が浅い人に対しては、専門用語をできるだけ使わず、分かりやすい言葉に言い換えて説明しなければなりません。

後方事務のような顧客対応がない職種でも、社内・社外の関係者と円滑に業務を進めていく上ではコミュニケーションスキルが欠かせません。

忍耐力やメンタルの強さも必要

金融業界の営業職には、ノルマが課せられるケースがあります。顧客の都合に振り回されたり、クレームを受けたりすることも日常茶飯事なので、肉体的・精神的にタフな人でなければ務まりません。

失敗したときは気持ちを素早く切り替え、いかにPDCAのサイクルを回すか考えられる人は、どのポジションでも大きく成長できるでしょう。

逆に、忍耐力がない人や失敗を引きずってしまう人は、営業職に向いていません。金融業界にはさまざまな職種があるため、自分の向き・不向きをよく考えましょう。

金融業界へ転職するには

経理のイメージ

(出典) pixta.jp

金融業界での転職は、業界経験者が優遇される傾向がありますが、異業種からのキャリアチェンジも不可能ではありません。転職を成功させるには、どのような準備をすればよいのでしょうか?

金融業界の情報を集める

企業の採用選考では、「なぜ金融業界に転職したいのか」「これまでのキャリアやスキルをどう生かせるのか」といった点が問われます。業界知識がないとありきたりな答え方しかできず、採用担当者に効果的にアピールできない可能性があります。

仕事への情熱を伝えるためにも、普段から業界に関する情報収集はしっかりと行いましょう。

金融業界のトピックやニュースにはできるだけ目を通し、気になる話題があれば一歩踏み込んで調べます。金融に関するセミナーやイベントに参加すれば、金融業界の最新動向もキャッチできるでしょう。

金融業界で役立つ資格

金融業界で役立つ資格は数えきれないほどありますが、以下のような資格試験に合格すると、転職が有利に進みます。

  • ファイナンシャル・プランニング(FP)技能検定
  • 中小企業診断士試験
  • 外務員資格試験
  • 銀行業務検定試験

ファイナンシャル・プランニング技能検定は、日本FP協会が実施する国家検定で、税金・保険・年金・投資といった幅広い分野の知識が証明できます。

法人向け業務を希望する人は、中小企業診断士試験に挑戦しましょう。中小企業支援法に基づく国家資格で、経営の診断および経営に助言ができる者として一目置かれます。

外務員資格試験は、金融商品の販売・勧誘を行う上で必須の資格です。銀行・証券会社・保険会社への転職を希望している人は、事前の取得をおすすめします。

銀行業務検定試験は、金融機関の業務に必要な知識・スキルを問うものです。23系統36種目の試験があり、興味のある種目をピックアップして受験できます。

FP技能検定 | 日本FP協会

中小企業診断士試験

外務員資格試験 | 日本証券業協会

銀行業務検定協会|検定試験要項

金融業界への理解を深めよう

プレゼンをする男性

(出典) pixta.jp

金融業界にはさまざまな職種があり、中には高度な専門知識とスキルを要する専門職もあります。異業種から金融業界に飛び込む人は、業界情報を幅広く集め、自分に適した職種や仕事内容を絞り込みましょう。

未経験の職種であっても、自分のこれまでの経験が役立つ場合があります。スキルの棚卸しをしっかりと行った上で、志望する企業や組織がどのような人材を求めているかを探ることが重要です。

求人検索サイト「スタンバイ」は、金融業界に関する求人情報が豊富です。転職を目指す人は、職種や仕事内容をチェックしてみましょう。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら