刑務官とは?具体的な仕事内容や働き方、採用試験について解説

刑務所や拘置所などで受刑者の監視や教育をする刑務官は、一般的なイメージ以上に仕事内容が多岐にわたります。受刑者の社会復帰のサポートを含め、さまざまな仕事を担うので、具体的な業務や働き方などを知っておきましょう。採用試験についても解説します。

刑務官とは?どういう仕事?

刑務所

(出典) pixta.jp

刑務官は刑務所の中で受刑者を監視するイメージが強くある職種ですが、実際にはどういった仕事なのでしょうか?刑務官の制度について理解しておきましょう。

刑務所・拘置所の管理や受刑者の指導を担う

刑務官は全国の刑務所や拘置所などで、受刑者の指導や施設の管理を担う仕事です。罪を犯した者を更生に導く役割を持っており、法務省の公式サイトには以下のように記載されています。

国民生活の基盤である治安を支え、罪を犯した者を更生に導くことにより再犯を防止し、もって安心・安全な社会を築くという使命を果たす国家公務員です。

このように刑務官制度の究極的な目的は治安の維持であり、犯罪で刑務所や拘置所に収監されている者を更生に導くことです。犯罪者を更生させて国の治安維持に寄与する役割を持っているため、ある程度は社会的なイメージ通りの仕事といえるでしょう。

ただし後述するように、刑務官の具体的な仕事内容はさまざまです。これから刑務官を目指す人は、どういった業務があるのか、よく理解しておくことが大事です。

出典・引用:刑務官とは|法務省 刑務官採用試験

刑務官の仕事内容

刑務所のフェンス

(出典) pixta.jp

刑務官の業務は受刑者の監視や教育をはじめ、収監施設の管理や点検から受刑者の社会復帰のサポート、さらに日誌や報告書の作成など多岐にわたります。それぞれ具体的に見ていきましょう。

受刑者の監視や教育

受刑者が刑務所や拘置所などで、ルールに従って生活しているか監視する役割や、更生に向けて教育を施すのが刑務官の代表的な仕事です。

ドキュメンタリー番組などでも、よく受刑者を教育する姿が放映されるので、刑務官といえば受刑者を厳しく監視するイメージを持っている人が多いでしょう。

しかし、単に監視しているだけではなく、受刑者が日常生活で事故やトラブルに遭わないように取り計らうのも、刑務官の重要な仕事です。受刑者に社会常識に準じた教育を施すと共に、適宜生活の指導やカウンセリングなども施します。

施設の管理・点検

刑務所や拘置所の管理や点検業務も、刑務官の重要な仕事です。受刑者の脱走はもちろん、外部からの侵入も許さないように巡回業務をこなし、受刑者がきちんと監房の中で生活しているか、定期的に確認・点検をします。

点検業務には、毎日受刑者が所定の時間に起床しているか確認する開房点検と、刑務作業を終えた受刑者が所定の場所に戻ったか確認する閉房点検があります。刑務官は受刑者が規則正しい生活をしているかチェックすると共に、問題やトラブルが起こらないように配慮しなければいけません。

受刑者の社会復帰のサポート

刑務官の仕事は受刑者を監視するだけではなく、受刑者の社会復帰をサポートするのも大切な業務です。刑務を通じて仕事への責任感を身に付けさせたり、受刑者の資格の取得を支援したりもします。

さらに、生活指導やカウンセリングを通じて、社会に戻ってから問題なく生活できるようなケアをするケースも珍しくありません。特に、少年刑務所や少年鑑別所などで未成年者を相手にする刑務官は、精神的なケアにも注力しています。親代わりとして、厳しく教育指導する場面も少なくありません。

日誌や報告書の作成などの事務作業

刑務官は毎日忙しく動き回っているイメージもありますが、デスクワークが多めの職種でもあります。受刑者に関する報告書や日誌の作成など、こまごまとした事務作業もこなさなければいけません。報告書の内容をほかの刑務官と共有するケースも多いので、必要な情報を毎日書き残しておく必要があります。

また、受刑者に届けられる郵便物の確認も刑務官の仕事です。中身を確認して問題ないと判断した上で、当該受刑者に渡さなければいけません。刑務所や拘置所には事務作業を担う職員もいますが、受刑者に関わる事務作業に関しては、主に刑務官が担当します。

刑務官の年収や働き方

旭日章

(出典) pixta.jp

刑務官は警察官や裁判所の職員などと同様に、国家公務員であり、基本的な給料や勤務形態はある程度決まっています。刑務官の年収や働き方について解説します。

国家公務員の基本給や各種手当が支給

刑務官は国家公務員なので、基本給に加えて扶養手当や住居手当など、各種手当が支給されます。

法務省の公式ページには、東京都特別区内に勤務する場合の初任給の例として、21万3,600円(大学新卒採用の場合は24万3,840円)が適用されると記載されています。これから刑務官を目指す人は、参考にするとよいでしょう。

また、人事院の「令和4年国家公務員給与等実態調査の結果」によると、刑務官に適用される公安職俸給表(一)の平均月額給与は、2022年の時点で37万9,615円です。年額にすると約456万円であり、年2回のボーナス(月給の3~4カ月分程度)などを含めると600~700万円程度の年収となります。

国家公務員は原則として、年齢が上がるに従って収入も増えていくので、50代になると年収800万円を超える人も珍しくありません。

出典1:給与・諸手当|法務省 刑務官採用試験

出典2:職員数、平均年齢、平均経験年数及び平均給与月額|令和4年国家公務員給与等実態調査の結果|人事院

参考:国家公務員の給与【令和5年版】(P16)|内閣官房内閣人事局 

刑務官の勤務形態

刑務官は1週間あたり38時間45分の勤務時間と定められており、24時間の交代制で仕事をしています。週休2日制ではありますが、刑務所は夜間の巡回や点検業務も求められるので、昼間の業務と夜間業務のどちらも経験しなければいけません。

ただし、年次休暇や特別休暇などがあるのに加えて、近年は育児休暇の取得も推奨されています。定期的に夜間勤務が回ってくるものの、いわゆるワークライフバランスの実現しやすい職場といえるでしょう。

刑務官の1日のスケジュール

刑務官は日中勤務の場合、朝7時から仕事を開始します。受刑者の手本となる存在なので、ほかの公務員以上に遅刻は許されません。まずは、夜間業務に就いていた刑務官からの引き継ぎを受け、開房点検や刑務作業の指導などの業務をこなしていきます。

また、受刑者の運動や入浴、面会などの予定がある場合は、受刑者をその場所に連れて行き、監視や確認をしなければいけません。それに加えて、定期的に事務作業をこなす必要もあります。

勤務時間の中で2時間の休憩時間が用意されていますが、1度の休憩時間は30分程度です。さらにイレギュラーな事態が発生すると、休憩時間を返上して仕事をし続ける場面も珍しくありません。強い責任感が求められる仕事なので、常に自分を律することが求められます。

刑務官になる方法は?

試験を受ける

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刑務官になるには、刑務官の採用試験に合格しなければいけません。受験資格や受験内容を確認しておきましょう。

刑務官採用試験を受験する

刑務官になるのに基本的に学歴は必要ありませんが、刑務官の採用試験に合格する必要があります。採用試験(1次・2次)に合格後、一定の研修期間を経ると施設に配属され、刑務官として勤務することになります。

刑務官採用試験の受験資格は年齢や性別によって異なるので、法務省の公式ページなどで事前に確認しておきましょう。1994年4月2日から2006年4月1日までの生まれの男性であれば「刑務A」および「刑務A(武道)」、女性であれば「刑務B」および「刑務B(武道)」といった受験資格が設けられています。

参考:受験案内|法務省 刑務官採用試験

身体測定や体力検査もある

刑務官の採用試験では、公務員として必要な知識を問われる筆記試験や作文試験に加えて、第2次試験では面接、身体測定や体力検査もあります。

筆記試験の結果が合格基準に達していても、身体検査の項目が基準に満たないと不合格になるので注意しましょう。体力や瞬発力などは、特に身に付けるのに時間がかかる面もあるので、事前に計画を立てて、万全な状態で試験に臨むことが大事です。

刑務官を目指すならしっかり準備しよう

警棒を手にしている警察官

(出典) pixta.jp

刑務官の仕事内容や働き方、採用試験について解説しました。刑務官は刑務所や拘置所などで、受刑者を監視・監督したり、施設を管理したりする役割を持っています。

一般的に受刑者を見張っているイメージを持たれていますが、受刑者の社会復帰のサポートや、さまざまな事務作業をこなすのも仕事です。

刑務官になるのに学歴は問われませんが、採用試験に合格する必要があります。刑務官を目指している人は、受験資格をよく確認し、十分な準備をした上で試験に臨みましょう。