メイクアップアーティストになるには?資格の取り方や進路を解説

メイクアップアーティストは、人をより美しくする職業です。ヘアセット・メイクアップを担当する上では、美容師免許を取得するところからスタートします。メイクアップアーティストを目指す方法や学校卒業後の進路、転職に有利な資格を紹介します。

メイクアップアーティストになるには?

メイクさん

(出典) pixta.jp

メイクアップアーティストとは、ヘアメイクアップアーティスト・ヘアメイクとも呼ばれ、顔の化粧だけでなく、ヘアセットも担当するのが一般的です。プロを目指すには、どのようなルートをたどればよいのでしょうか?

美容師免許の取得が前提

メイクアップアーティストという国家資格・免許は存在しませんが、他人にヘアセット・メイクアップを施す上では、国家資格である美容師免許の取得が必要です。

美容師免許というと、美容師に必要な資格というイメージがありますが、美容師法には以下のような記述があります。

美容師の免許を持たないものは美容を業として行うことはできない。なお、業とは反復継続の意思をもって行うことで、有料・無料は問わない。

美容とは「パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」とされており、染毛やまつ毛エクステンションも美容行為に含まれる。

メイクアップアーティストを志す人にとって、美容師免許を取得することが最初のステップです。

出典:美容師法の概要 |厚生労働省

美容師養成施設への入学が必要

美容師免許は、独学では取得できません。「厚生労働大臣または都道府県知事が指定した美容師養成施設」への入学が必須です。免許取得までの流れを確認しましょう。

  1. 美容師養成施設に入学する
  2. 美容師国家試験を受験する
  3. 美容師名簿に登録する(免許申請)
  4. 美容師免許が取得できる

美容師養成施設は専門学校がほとんどですが、短大や4年制大学もあります。専門学校の中には、夜間課程・通信課程もあるため、仕事をしながら免許取得を目指せます。

参考:理容師・美容師免許の取得まで
  :美容師法 | e-Gov法令検索

美容師養成施設の種類

メイクをする女性

(出典) pixta.jp

美容師養成施設には、昼間課程・夜間課程・通信課程の3種類があります。卒業までの年数やカリキュラムの進め方に若干の違いがあるため、目的やライフスタイルに合った課程を選択しましょう。

昼間課程(2年以上)

美容師養成施設の多くは、2年の昼間課程です。全日制の学校と同じ週5日で、履修時間は計2,010時間(必修課目1410時間以上・選択必修課目600時間以上)です。

夜間課程に比べてカリキュラムの選択肢が幅広く、ヘアセット・メイクアップのほかに、エステ・ネイルなどが学べます。

他の課程に比べると学費は高くなりますが、充実したカリキュラムと講師の手厚い指導の下で、技術をしっかりと習得できるのがメリットです。

夜間課程よりも生徒数が多いため、たくさんの仲間に囲まれたスクールライフを送れるでしょう。

夜間課程(2年以上)

夜間課程は、平日の夕方または夜間から授業が始まります。仕事がある人でも参加しやすく、少人数のクラスでみっちりと学べるのがメリットです。昼間課程よりも学費が数十万円ほど安いため、経済的な負担を抑えたい人に適しています。

カリキュラムの内容は昼間課程と同じですが、選択できるコースが少ない傾向があります。1日に学べる時間が少ない分、卒業までに2年以上の年数を要するケースもあるようです。夜間課程がある施設はそれほど多くないため、事前に確認しましょう。

通信課程(3年以上)

通信課程は、日本理容美容教育センターの配本計画を基にした、レポート提出とスクーリングで構成されています。

必修課目は8課目・選択課目は5課目で、3年間で合計36通のレポートを提出します。レポートには提出期限があるため、計画的に進めましょう。

またスクーリングとは、各施設が行う面接授業です。法令では、3年間で600時間以上(理容所・美容所の従事者は300時間以上)のスクーリングが義務化されています。

カリキュラムの内容は、昼間課程・夜間課程と大きく変わりません。卒業までに要する期間は3年間で、レポートとスクーリングの成績によって卒業の可否を判断します。

卒業後の代表的な進路は?

メイクをする女性

(出典) pixta.jp

美容師免許を取得した後は、それぞれが自分の道を進むことになります。企業に就職する人もいれば、プロに弟子入りする人もおり、活躍の場面はさまざまです。代表的な進路を見ていきましょう。

ブライダルサロンや美容関連企業に就職する

卒業生の進路として多いのが、ブライダルサロンや美容関連企業への就職です。

ブライダルサロンとは、結婚式場や披露宴会場の斡旋・相談を受け付ける窓口で、多くはホテル・百貨店などに併設されています。就職後は、花嫁や出席者のヘアセット・メイク・着付けがメイン業務となるでしょう。

美容関連企業の代表格は、化粧品メーカーです。ビューティーアドバイザーとして売り場に立ち、顧客に最適な化粧品・メイクを提案します。

企業に就職するメリットは、勤務時間・収入が安定している点です。プライベートと仕事の両立ができる上、福利厚生も享受できます。

メイク専門のプロダクションに所属する

メイク専門のプロダクションとは、テレビや雑誌、映画などに出演する人のヘアセット・メイクアップを受託する組織です。

クライアントの要求・イメージを忠実に再現しなければならないため、就職後すぐに新人が施術を担当するケースは多くありません。入職後は、先輩のアシスタント業務からスタートします。

現場では多くのことが学べ、人脈も大きく広がりますが、勤務時間が不規則なのがデメリットです。撮影が深夜・早朝にまで及ぶ場合もあるため、体調管理に気を付ける必要があります。

給与は、月給と歩合制を合わせた形を取るプロダクションが多いようです。

美容室でヘアメイクを担当する

美容室に勤務するヘアメイクアップアーティストは、ヘアセット・メイクアップ・着付け・ネイルなどを幅広く手掛けます。

ブライダルサロンや結婚式場と提携がある場合は、現場で花嫁のヘアメイクを担当します。冠婚葬祭では、和装とドレスの両方に対応しなければならないため、高い技術とセンスが求められるでしょう。

給与体系や勤務時間は、勤務する美容室によって異なります。美容室はヘアカット・ヘアセットの需要が高く、美容師兼ヘアメイクアップアーティストとして活躍する人も少なくありません。

プロに弟子入りする

会社や団体に所属せず、プロのメイクアップアーティストに弟子入りするパターンもあります。最初の数年間は、以下のようなアシスタント業務がメインになるでしょう。

  • メイク道具の準備・現場の後片付け
  • 仕事のスケジュール管理
  • 関係者への挨拶
  • タレント・モデルへのお茶出し
  • その他の事務作業

アシスタント業務はいわゆる「雑務」で、ヘアメイクに直接的に関係のない仕事も含まれます。高い報酬は期待できませんが、プロの仕事ぶりを間近で見られるのは、大きなメリットです。アシスタント業務が何年続くかは、本人の努力と能力によります。

フリーランスで活躍するのは難しい?

メイクをする女性

(出典) pixta.jp

メイクアップアーティストの中には、フリーランスとして活躍する人もいます。フリーランスを選択すれば、働く場所・時間を自由に決められる上、自分の真の実力が試せます。卒業後、組織に所属せずに働くことは可能なのでしょうか?

現場経験を積んで人脈を広げることが重要

美容師免許の取得後、すぐにフリーランスとして活躍できる人はまれです。

基本的な知識・技術は習得していても、メイクアップアーティストとしての就業経験がないため、「固定客がいない」「プロに比べて技術が未熟」という点で、安定収入を得るのは難しいでしょう。

多くの人は、プロダクションや美容関連企業などに就職して実務経験を積み、知識・スキルを磨きます。仕事を1つずつ丁寧にこなしていくうちに、自分を指名してくれる顧客が増えていきます。独立はそれからでも遅くはないでしょう。

収入は能力に応じて大きく変わる

メイクアップ業界は完全な実力社会です。美容室や美容関連企業に在籍すれば、月々の収入は比較的安定しますが、フリーランスの収入は本人の能力・ポジションに応じて大きく変わります。

年収が1,000万円を超える人もいれば、仕事がなくて1円も稼げない人もおり、収入の差は大きいといえるでしょう。ヘアメイクの単価も、能力・人気の程度によって異なります。

知名度が上がると、メイクアップの仕事依頼のほかに、テレビ・雑誌の取材や企業とのタイアップ、書籍の出版といった仕事も舞い込みます。

転職やキャリアアップに役立つ資格を紹介

メイク道具

(出典) pixta.jp

美容師免許の保有者で、ヘアセット・メイクアップの技術がある人は、誰でもメイクアップアーティストを名乗れます。自分の実力・スキルを客観的に証明したい人や、転職活動を有利に進めたい人は、民間資格を取得しましょう。

日本メイクアップ技術検定試験

日本メイクアップ技術検定協会(JMA)が実施する検定試験です。基本的に実技試験のみで、メイクアップを職業とする人の技術力・接客力・知識力を審査します。

3級は誰でも受験できますが、2級は3級の合格者または同日受験者、1級は2級の合格者のみが対象です。試験は年2回で、東京をはじめとする全国数カ所で受験できます。

2020年冬期の合格率は、3級が68.1%、2級が54.3%、1級が31.1%でした。1級の有資格者は就職・転職が有利に進むでしょう。

3級は、スキンケアからベースメイクアップ、チーク・ハイライト・ローライトまでの基本技術を審査する内容です。2級では、スキンケアからフルメイクアップ、1級ではイメージメイク技術が試されます。

参考:全国一斉日本メイクアップ技術検定試験 合格率 | JMA新着情報 | 一般社団法人 JMA|日本メイクアップ技術検定協会

一般社団法人 JMA|日本メイクアップ技術検定協会

IBF国際メイクアップアーティスト認定試験

国際美容連盟(IBF)は、国際的に活躍するメイクアップアーティスト・スペシャリストによって立ち上げられた組織で、ニューヨークと東京に連盟事務所を構えます。

IBF国際メイクアップアーティスト認定試験を受験するには、IBFが指定するスクールで所定のカリキュラム修了が前提です(所属スクール修了証のコピーが必須)。独学による受験はできない点に注意しましょう。

試験は筆記と実技の2本立てで、合格後に登録料と年会費を支払うと「国際メイクアップアーティストライセンス(正会員)」を得られます。「国際メイクアップアーティスト」の肩書で、幅広く活躍したい人におすすめの資格です。

メイクアップアーティストの育成支援団体-IBF国際美容連盟

一流を目指して経験を重ねよう

モデルとメイク

(出典) pixta.jp

メイクアップアーティストになるには、所定の美容師養成施設で知識・技術を学び、美容師の国家試験を受けて合格するのが正規ルートです。

メイクアップ業界は実力主義のため、誰もが思うような活躍をしているわけではありまません。自己研鑽を積み、人脈を広げ、一流を目指しましょう。

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