鍼灸師になるには資格が必要?取得の道筋と具体的な仕事内容を解説

鍼灸師は、鍼治療を行う「はり師」と灸治療を行う「きゅう師」の総称です。どちらも国家試験に合格しなければ得られない国家資格で、少なくとも3年以上の養成期間を経る必要があります。鍼灸師になるルートや費用、卒業後の活躍について解説します。

鍼灸師になるには資格が必要?

鍼灸

(出典) pixta.jp

鍼灸師(しんきゅうし)は、鍼や灸を使って、病気の予防・健康増進を助ける職業です。東洋医学では、経穴(けいけつ)と呼ばれるツボを刺激することで、人間が持つ自然治癒力が高まると考えられています。

鍼灸師になるには、どのような資格が必要なのでしょうか?

参考:(得)けんこう教室/家庭でできるツボ療法(上)/ツボをおさえて健康チェックを – 全日本民医連

「はり師」「きゅう師」の試験合格が必要

「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」の第1条には、以下の記述があります。

医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。

鍼灸師を名乗るには、はり師ときゅう師の国家試験を受け、はり師免許およびきゅう師免許を取得しなければなりません。はり師またはきゅう師の単独受験も可能ですが、大抵の人は両方の免許取得を目指すようです。

国家試験を受けるには、所定の養成施設に入学し、決められたカリキュラムを修了する必要があります。

出典:あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 第1条 | e-Gov法令検索

通信教育は不可

鍼灸師は、患者の皮膚に直接鍼を注入したり、火のついた艾(もぐさ)を経穴に載せたりといった施術を行うため、実地での研修が不可欠です。通信教育や独学では、知識・技術の習得はできない点に注意しましょう。

はり師・きゅう師の受験資格を得るには、厚生労働省・文部科学省が指定する鍼灸師の養成施設に入り、所定のカリキュラムを履修する決まりです。高卒以上の学歴がある社会人の場合、主に以下の2つのルートが選択できます。

  • 鍼灸専門学校で学ぶ
  • 鍼灸学科がある大学で学ぶ

養成課程は3年以上と定められているため、最短ルートで受験を目指す人は、鍼灸専門学校に通うのが望ましいでしょう。

参考:はり師国家試験の施行|厚生労働省
  :きゅう師国家試験の施行|厚生労働省

学校で学ぶ鍼灸師の治療内容

鍼灸

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鍼灸師の養成施設では3年以上の時間をかけて、鍼治療・灸治療・診断法などをしっかりと学びます。習得できる治療内容の一例を紹介します。

鍼治療

はり師の資格を取得するには、鍼治療の技術を習得する必要があります。東洋医学の考えでは、人間の体には気血が通る経絡(けいらく)があり、経絡の上には通称「ツボ」と呼ばれる経穴が点在しています。

鍼治療では、細いステンレス製の針を患者の経穴に刺し入れ、軽く刺激を与えるのが基本です。経穴に鍼を施すことで気血の滞りが改善し、人間の自然治癒力が回復すると考えられています。

養成施設のカリキュラムでは、東洋医学や経絡経穴、鍼の手技などを体系的に学んだ後、学生同士で臨床実習を行います。

参考:(得)けんこう教室/家庭でできるツボ療法(上)/ツボをおさえて健康チェックを – 全日本民医連

灸治療

きゅう師の資格を取得するには、灸治療の技術を習得しなければなりません。灸治療では、よもぎの草から作られた艾(もぐさ)を経穴の上に載せて火をつけ、熱の力で刺激します。

一口に灸といっても手法はさまざまです。鍼の柄に丸めた艾をつけて燃焼させる方法もあれば、スライスしたショウガ・ニンニクを間に挟む方法もあり、学べば学ぶほど灸の奥深さを実感するでしょう。

養成施設では、艾の丸め方から灸の据え方までしっかりと学びます。

脈診・望診など

鍼灸では、脈診(みゃくしん)や望診(ぼうしん)などで患者を診察します。脈診とは、患者の手首(親指側)にある脈に直接触れ、脈位や強弱、速さなどを調べる方法です。

西洋医学では主に患者の心拍数を調べるために脈を測りますが、鍼灸治療では患者の体の状態・気血のバランスを見るために脈診を行います。脈象は20種類以上あり、特定の体質状態と関連性があります。

一方の望診とは、肌の色つや・舌の状態・体型・動作・目の輝きなどの視覚的情報から、健康状態・体質などを判断する方法です。鍼灸をはじめとする東洋医学では、患者が診察室に入った瞬間から診察がスタートしています。

参考:脈診で何が分かるのか | 倉敷平成病院だより
  :望診とは 〜観て診断情報を得る〜 | 漢方ブログ | 明徳漢方内科【京都・漢方専門クリニック】

鍼灸師のなり方・就職先は?

鍼灸の道具

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鍼灸師は不調の改善・病気の予防を行う医療技術職であるため、指定されたルートで知識・技術を身に付けなければなりません。近道はなく、最低でも3年以上の学びが必要です。鍼灸師になるまでの流れや、活躍できるフィールドを解説します。

鍼灸師になるための流れ

鍼灸師として働くには、厚生労働省・文部科学省が指定する養成施設で3年以上学び、はり師・きゅう師の国家試験を受験します。免許取得までの大まかな流れは以下の通りです。

  1. 所定の養成施設に入学する(3年~)
  2. 鍼灸課程の修了後、はり師・きゅう師の国家試験を受験する
  3. 試験合格後、はり師・きゅう師免許を申請する
  4. 免許証の交付を受ける

2023年2月26日に実施された国家試験の合格率は、はり師が70.4%・きゅう師が71.7%でした。合格率が一桁台の国家資格も多い中、はり師・きゅう師はどちらも70%以上で、難易度はそれほど高くはないといえます。

ただし油断することなく、しっかり準備して試験に臨む必要があるでしょう。

参考:第31回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格発表について|厚生労働省

鍼灸院・スポーツの現場と活躍の場は幅広い

はり師・きゅう師の免許取得後は、鍼灸院・鍼灸整骨院に就職する人が大半ですが、病院・クリニック・助産院などの医療機関で働く人も少なくありません。

鍼灸は身体機能の維持・回復を助ける施術のため、老人福祉施設・リハビリテーションセンター・保健施設・スポーツジムでの需要も増えています。

ある程度経験を積んでからは、独立して鍼灸院を開くという選択肢が加わります。実績を積んで実力が認められれば、プロスポーツチームやアスリート個人との契約もあり得るでしょう。近年は、美容に主眼を置いた美容鍼灸を始める鍼灸師もいます。

鍼灸師になるためのQ&A

鍼治療

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資格取得までにかかる費用や仕事のやりがいなど、鍼灸師にまつわる疑問点を解消しましょう。自分に合った鍼灸師養成施設の選び方のポイントも紹介します。

鍼灸師になるまでに費用はいくらかかる?

費用の大部分は、鍼灸師養成施設に支払う授業料・入学金です。金額は学校により異なりますが、3年制の専門学校であれば400万~500万円、4年制の大学であれば500万~600万円が目安です。授業料のほかに、教材費・実習費がかかります。

在職中で雇用保険に加入している人は「教育訓練給付制度」を活用し、自己負担を減らしましょう。厚生労働大臣の指定する講座を受講・修了した場合、本人が支払った費用の最大70%がハローワークから支給されます。

はり師・きゅう師の国家試験の受験手数料は、それぞれ1万4,400円です。免許登録時は、1免許につき5,600円の申請手数料と、1免許につき9,000円の収入印紙(登録免許税)がかかります。

参考:教育訓練給付制度|厚生労働省
  :はり師国家試験の施行|厚生労働省
  :きゅう師国家試験の施行|厚生労働省
  :新規登録申請の方 | 免許登録等の実施 | 公益財団法人東洋療法研修試験財団

学ぶのは専門学校と大学のどちらがよい?

学歴が高卒以上の社会人は、専門学校または大学のいずれかを選択します。鍼灸師のカリキュラムが完備された学校であれば、どちらを選んでも構いません。自分が目指すキャリアやライフスタイル、経済状況などを考慮して選択しましょう。

専門学校の養成課程は3年間が基本です。4年制大学よりも通学期間が短く、国家試験合格後はすぐに鍼灸師としての一歩が踏み出せます。夜間コースを設けている学校もあり、仕事と学びの両立が可能です。

4年制大学を選ぶメリットは、鍼灸以外の教養を幅広く学べる点です。大卒の資格を取得できるため、大卒以上を対象とする企業に就職しやすくなるでしょう。一方で、専門学校よりも学費が高いのに加え、仕事との両立が難しい可能性があります。

鍼灸師のやりがいは?

鍼灸治療は、患者と施術者の1対1での施術が基本です。コミュニケーションの中で不調・悩みを探っていかなければならず、なかなか結果が出ない場合もあります。

「痛み・こりが改善した」「よく眠れるようになった」と元気な姿で帰っていくのを見るたびに、多くの鍼灸師はやりがい・喜びを感じるようです。

はり師・きゅう師の国家資格は、一度取得したら一生涯使えます。活躍できる場が多く、自分の努力次第でさまざまなキャリアパスを描けるのも魅力でしょう。

男女ともに活躍の場がある鍼灸師を目指そう

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東洋医学に基づく鍼灸治療は、人間が本来持つ自然治癒力に着目したもので、西洋医学ではなかなかアプローチできない部分もカバーしています。

鍼灸師が活躍できるフィールドは多方面にわたり、今後もさまざまな領域で需要が増えていくでしょう。鍼灸師の国家資格は一生ものです。

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