スクールカウンセラーとはどんな職業?必要な資格や向いている人とは

スクールカウンセラーは、心理学の知識を活用し、学校現場で児童・生徒や保護者、教師を支援する仕事です。しかし具体的な仕事内容については、あまり知られていないかもしれません。スクールカウンセラーの仕事内容や、必要なスキルについて解説します。

スクールカウンセラーとはどんな職業?

スクールカウンセラー

(出典) pixta.jp

スクールカウンセラーは、学校内で働く心理学の専門家です。具体的にどのような仕事をしているのでしょうか?スクールカウンセラーの役割や働き方について解説します。

学校で心理的な支援をする専門家

スクールカウンセラーとは、小学校・中学校・高等学校・特別支援学校などで、児童・生徒や保護者、教師の相談に乗り、心理的なケアを行う専門家を指します。

学校と直接雇用関係を結ぶのではなく、都道府県・政令指定都市の教育委員会に採用され、各学校に派遣される制度です。

1995年に国の「スクールカウンセラー活用調査研究委託事業」によって設置されたのが始まりで、その後徐々に重要性が広まり、2020年時点で全国2万9,939カ所に配置されています。

参考:スクールカウンセラー等活用事業に関するQ&A|文部科学省

非常勤として雇用される職員

スクールカウンセラーは、原則非常勤として雇用される職員です。1校当たりに配置される時間は、年間35週・1週間に8時間以上12時間以内と決められています。特に必要な場合は、1週間に8時間以上30時間以内というケースも可能です。

多くの自治体では、1人のスクールカウンセラーが掛け持ちできるのは2校までと制限されています。そのため、2校以上の学校で働きたい場合は、異なる自治体の学校を掛け持ちして勤務しなければなりません。なお私立の場合は、学校が直接募集して採用します。

参考:資料6 「スクールカウンセラー」について:文部科学省
  :スクールカウンセラーの募集と待遇 - リソースポート|茨城県守谷市

スクールカウンセラーの主な仕事内容

児童のカウンセリング

(出典) pixta.jp

スクールカウンセラーは、カウンセリングを中心としたさまざまなアプローチによって、相談者の悩みを解決するサポートに従事します。代表的な仕事内容を5つ見ていきましょう。

参考:5 スクールカウンセラーの業務:文部科学省

カウンセリング

カウンセリングは、スクールカウンセラーの中心的な業務です。カウンセリングを受ける相手は、児童・生徒だけでなく、保護者・教師も含まれます。

カウンセリングを実施するタイミングは、相談者が自主的に希望してきたり、定期的な面談が義務化されていたりなど、学校によってさまざまです。

相談内容も、友人関係・家庭の悩みから学習に関する項目、担任との関係性まで多岐にわたります。学校生活で困っている発達障害の子どもをサポートするのも、スクールカウンセラーの役割です。

コンサルテーション

コンサルテーションとは、相談内容に対して何らかの的確なアドバイスをすることを指します。カウンセリングとコンサルテーションの違いは、相談者が指示を必要としている状態かどうかという点です。

コンサルテーションを必要としているにもかかわらず、カウンセリングのように受容的な対応をしてしまうと、相手は不満を残したまま終わることになります。コンサルテーションを行う際には、臨床心理学的な観点から適格にアドバイスすることが必要です。

カンファレンス

カンファレンスとは、特定のテーマについて関係者が連携し、情報を共有しながら対処の方向性を話し合うことです。医師・保健師などの専門家が参加するケースもあります。

場合によっては、協議のコーディネーター役を務めることもありますが、スクールカウンセラーが中心となってカンファレンスを進めるわけではありません。

担任・生徒指導担当者などと同様に関係者の1人として参加し、専門的な立場からの意見を求められる場合もあります。

研修

スクールカウンセラーは、保護者・教師に対して、学校生活の問題に対する理解を深めるための研修なども行います。教師の中にも、不登校・発達障害の児童の心理に対する知識が不十分なケースがあるからです。

研修は、講演や参加型・体験型ワークショップなどの形式で行います。講演やワークショップでは多種多様なテーマを扱うので、どんなケースにも対応できるように日頃から準備しておかなければなりません。

アセスメント

スクールカウンセラーは、心理検査を用いたアセスメント(査定)も行います。すべての心理検査を実施できる必要はありませんが、YG性格検査・エゴグラム・ロールシャッハテストなど、代表的な検査についての知識を持っていることは必須です。

ただし、診断は医療行為に該当するため、検査結果を基にスクールカウンセラーが断定的に診断名を口にすることはありません。検査結果を伝える際は、本人の人格を傷つけないように細心の注意を払いながら、分かりやすく説明することが大切です。

スクールカウンセラーになる方法は?

試験会場

(出典) pixta.jp

スクールカウンセラーになるためには、自治体に採用されることが必要です。採用条件は各自治体によって異なるため、ここではスクールカウンセラーを目指す一般的な方法について説明します。

参考:資料6 「スクールカウンセラー」について:文部科学省

必要な資格を取得する

文部科学省によるスクールカウンセラーの資格要件は、以下の通りです。

  • 財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する臨床心理士資格
  • 精神科医
  • 児童生徒の臨床心理に関して専門的な知識・経験がある人。学校教育法第1条に規定する大学の学長・副学長・教授・准教授・講師などの現職者。または過去にこれらの職に就いていた人

スクールカウンセラーを目指すために資格は必須ではありませんが、臨床心理士や公認心理師の資格を取得しておく方が有利でしょう。

参考:学校教育法 第1条 | e-Gov法令検索

心理に関する業務の経験を積む

臨床心理士などの資格がない人でも、一定の心理臨床業務経験があれば「スクールカウンセラーに準ずる者」として、仕事に就くことが可能です。文部科学省では「スクールカウンセラーに準ずる者」として、以下のように定めています。

  • 大学院修士課程を修了し、心理臨床業務または児童・生徒を対象とした相談業務について、1年以上の経験がある人
  • 大学もしくは短期大学を卒業し、心理臨床業務または児童・生徒を対象とした相談業務について、5年以上の経験がある人
  • 医師で、心理臨床業務または児童・生徒を対象とした相談業務の経験が1年以上ある人

スクールカウンセラーに向いている人は?

面談の様子

(出典) pixta.jp

スクールカウンセラーに向いているのは、守秘義務を守れる人や向上心がある人です。具体的な特徴を見ていきましょう。

守秘義務を厳格に守れる人

口が堅い人は、スクールカウンセラーに向いています。多くの相談内容はとてもデリケートな問題であり、スクールカウンセラーには守秘義務があります。

カウンセラーの責任で学校に報告するケースもありますが、基本的には相談者の家族にも、本人の許可なく伝えることはできません。

たとえ学校関係者ではない自分の友人・家族であっても、話を漏らすのはNGです。相談者から信頼されるためにも、守秘義務は厳格に守らなければなりません。

知識欲や向上心がある人

心理に関する新しい知識・技術を学ぼうとする、向上心がある人にも向いています。スクールカウンセラーになったら、そこで終わりではありません。常に、新しい知識・スキルへとアップデートすることが大切です。

相談内容によっては新たな専門知識や、似たような事例に関する情報が必要になるケースもあります。スキルを向上させたいという気持ち・知識欲がある人は、スクールカウンセラーとして長く活躍できるでしょう。

スクールカウンセラーは学校現場の心理専門家

面談の様子

(出典) pixta.jp

スクールカウンセラーは、児童・生徒や保護者、教師の困りごとに対して、心理の専門家としての立場からサポートする存在です。

社会の変化に伴い、学校現場での心理ケアが必要になる場面も多くなり、スクールカウンセラーの重要性も高まっています。スクールカウンセラーは資格がなくても目指せますが、心理学に関する深い知識・豊富な経験が必要です。