公認会計士に向いている人とは?税理士との違いや生かせる強みを紹介

公認会計士には向き・不向きがあり、誰もが容易に従事できる職業ではありません。会計・監査の仕事に向いているのは、どのような資質・スキルを備えている人なのでしょうか?税理士との違いや生かせる強み、適性を見極めるときのポイントを解説します。

公認会計士に向いている人とは?

会計作業

(出典) pixta.jp

公認会計士は、会計・監査の専門家です。企業の財務諸表監査を中心に、会計・税務・コンサルティングに関わる業務を幅広く担います。公認会計士に向いている人とは、どのような資質や内面的特徴を備えているのでしょうか?

公正性を重んじる正義感の強い人

公認会計士は、会社の経理が正しく行われているかをチェックする「お目付け役」です。企業が公表した財務諸表を第三者の立場で監査し、法令遵守や有効性を評価・報告します。

監査は、いかなる状況でも公正かつ独立した立場で臨む必要があります。粉飾決算の不正に加担したり、不正を見逃したりする行為は許されません。会計処理に不正・誤りがある場合は、毅然とした態度で指導を行います。

そのため、公正性を重んじる正義感の強い人でなければ、公認会計士の職務は務まらないといえるでしょう。

論理的思考力が高い人

業務では常に数字と向き合うため、数字に苦手意識がなく、かつ論理的思考力の高い人が向いています。論理的思考力(ロジカルシンキング)とは、物事の因果関係を整理しながら、筋道を立ててわかりやすく考える能力のことです。

公認会計士の業務に、主観や感情は必要ありません。会計処理の誤りを指摘する際は「この数字が〇〇だから、△△」というように、具体的な数字・根拠を示すことが重要です。

論理的思考力は、本人の努力によって身に付けられるものでもあります。自分に欠けていると感じたら、フレームワークを活用して思考を鍛えるのも1つの方法です。

コミュニケーション能力がある人

業務上、顧問先の経理担当者にヒアリング・指導を行う場面が多いため、コミュニケーション能力が高い人の方が円滑に業務を遂行できるでしょう。専門用語・法律用語をむやみに使用せず、相手にとってわかりやすい言葉で説明する配慮も求められます。

また、公認会計士は会計業務に加え、経営戦略の立案・組織再編などのコンサルティング業務を行うケースもあります。経営者や担当者に問題改善のためのアドバイスを行うには、コンサルティング力やプレゼンテーション力、分析力なども必要でしょう。

経営や会計に興味がある人

公認会計士の主な業務は、会計・監査です。経営や会計に興味がある人なら、やりがいを持って仕事に取り組めるでしょう。逆に、「経営にも会計にもあまり興味がない」「数字を扱うのも苦手」という人には向いていないかもしれません。

とりわけ監査法人では、数字から経営体質を読み解く力(計数感覚)が求められます。社長や経営層と話をする機会が増えるため、経営・ビジネスに興味がある人にとっては、多くの学びがあるでしょう。

公認会計士のキャリアを経て、経営コンサルティング会社を興したり、ベンチャー企業のCFO(最高財務責任者)に就任したりする人も珍しくありません。

公認会計士に向いていない人とは?

書類をチェックする男性

(出典) pixta.jp

公認会計士は専門職なので、他のビジネス職に比べて、向き・不向きがはっきりと分かれる傾向にあります。公認会計士の仕事にあまり適していない人の特徴を、チェックしましょう。

地道な作業が苦手な人

監査では、膨大な決算資料に目を通す必要があります。細かな数字をチェックして、適正・不適正かを判断していくプロセスは、非常に骨が折れる作業であり、地道な作業が苦手な人は途中でギブアップしてしまうでしょう。

新しい商品・サービスを生み出す職業ではないため、仕事にクリエイティブさを求める人もあまり向いていないといえます。

公認会計士になるには、公認会計士試験を突破する必要があります。2022年度の合格率は7.7%で、数ある資格試験の中でも難関です。忍耐力・継続力があり、日々コツコツと努力できる人でなければ、合格は難しいでしょう。

参考:令和4年公認会計士試験の合格発表について|公認会計士・監査審査会

環境の変化に適応できない人

公認会計士には、さまざまな働き方の選択肢がありますが、代表的な就職先は「監査法人」です。5人以上の公認会計士を社員(※)とする組織で、監査業務のほかにコンサルティング業務も手掛けます。

監査法人では、チーム単位・クライアント単位で業務を遂行します。チームメンバーやクライアントは毎回のように変わるため同じ上司・同じメンバーで働きたい人には不向きです。

必要に応じて国内出張・海外出張もあるため、環境の変化に適応できない人は苦労するかもしれません。

※社員:業務執行についての権利を有する者を指す。株式会社でいう取締役に該当。

神経質すぎる人

公認会計士というと、几帳面で細かい性格の人が向いていると思われがちです。しかし重要なことは、財務諸表などの細かい数値の誤りの有無ではなく、ステークホルダー(利害関係者)の判断を誤らせるような要素が含まれていないかどうかです。

そのため、正確さはもちろん大切ですが、どちらかというと物事の対局を捉えられる「俯瞰的視点」を備えている人の方が向いています。神経質で細かすぎる人の場合、作業がなかなか進まない可能性が高いでしょう。

公認会計士に向いているか判断する際の留意点

電卓を手にしているスーツの人物

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公認会計士に向いているかどうかを判断する際は、多面的に自分を分析することが大切です。適性は単なる参考に過ぎず、絶対条件ではありません。判断時の留意点を解説します。

向き・不向きだけで進路を決めない

職業適性を基に、自分の進路を決める人は多いものです。適性があれば、自分の長所・能力を十分に発揮できる可能性は高いでしょう。とはいえ、適性条件に該当しないからといって、夢を諦める必要はありません。

向き・不向きは、職業のある一面に焦点が当たっているケースがほとんどです。例えば「自分は数字が苦手だから、公認会計士はやめておこう」と単純に判断すると、キャリアの選択肢の幅を狭めてしまいます。

自分に欠けているところがあれば、どうカバーできるかを考えましょう。実務経験を積むうちに、できることは増えていくものです。

働き方や仕事内容をよくリサーチする

一口に公認会計士といっても、働く場所によって仕事内容や求められるスキルは変わります。向き・不向きですぐに結論を出さずに、働き方や仕事内容をよくリサーチしましょう。公認会計士が活躍できるシーンは、以下の通りです。

  • 監査法人
  • 会計事務所
  • 企業の経理・財務
  • コンサルティングファーム
  • ベンチャー企業のCFO
  • 金融機関
  • 独立開業

例えば、監査業務をメインとする監査法人では、決められたルールに従って効率よく業務をこなせる人が重宝されます。経営コンサルティングをメインとするコンサルティングファームでは、課題解決力・プレゼンテーション力などが求められるでしょう。

公認会計士の仕事に生かせる強みは?

打ち合わせをする会計士

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異業種から公認会計士にキャリアチェンジする人は、自分の長所・強みを最大限にアピールしましょう。業務に生かせるスキルの一例を紹介します。

英語をはじめとした語学力

公認会計士に語学力は必ずしも必要ではありませんが、英語・中国語などが堪能だと業務の幅が広がります。

近年は、グローバル化が加速し、海外に子会社・支社を設ける企業が増加傾向にあります。国をまたいだM&Aも増えており、外資系企業がクライアントになるケースも珍しくありません。

ビジネスレベルの英語ができると、国際部やグローバル企業の担当を任される可能性が高まります。仕事はハードですが、キャリアアップの階段を着実に上っていけるでしょう。

事務処理能力とITスキル

監査法人では、パソコンや各種システムを活用し、膨大な量の書類をチェックする必要があります。作業をスピーディーかつ正確にこなせる事務処理能力の高い人は、即戦力として重宝されるでしょう。

また、近年はIT化に取り組む企業が増えています。監査やコンサルティングを通じて企業と関わる公認会計士にも、最低限のITスキルは欠かせません。

今後は、業務効率化・生産性向上の観点から、AI(人工知能)やRPA(ロボットによる業務自動化)が導入されるでしょう。最新テクノロジーをうまく活用できる人と、できない人の間で格差が生じる可能性があります。

公認会計士に関するQ&A

会計士

(出典) pixta.jp

公認会計士を目指す上で、多くの人が気になる疑問点をQ&Aでまとめました。公認会計士と税理士の違いについても、理解を深めましょう。

理系・文系のどちらが有利?

「公認会計士になるのに、理系・文系のどちらが有利か」については、一概にはいえません。ただし、大学の経済学部・経営学部・商学部では、講義の中で会計に関する知識を学ぶため、他の学部出身者と比べるとやや有利といえるでしょう。

一方、理系出身者の中には、公認会計士に必要なスキルの1つである「論理的思考力」を備えている人が多く見受けられます。

数学の知識はほとんど問われませんが、会計学や租税法では多くの数字を扱うため、数字に苦手意識がない人の方が有利といえます。

公認会計士と税理士の違いは?

税理士は、公認会計士と混同されやすい職業の1つです。公認会計士は、税理士登録をすることで税理士として税務業務に従事できます。

ただし公認会計士試験では、租税法の科目として数問が出題されるのみで、税理士との知識レベルには大きな差があります。税金面から顧客をサポートしたい人は、公認会計士ではなく税理士を目指すのが望ましいでしょう。

それぞれの独占業務は以下の通りです。

  • 公認会計士:財務諸表監査
  • 税理士:税務書類の作成・税務代理・税務相談

公認会計士の主な顧客は上場企業・大企業であるのに対し、税理士の主な顧客は中小企業・個人事業主です。

参考:税理士試験|国税庁
  :出題範囲の要旨について

公認会計士への理解と向いているかの見極めが大切

会計士の手元

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公認会計士には向き・不向きがあります。仕事をよく理解した上で、自分の適性に合っているかどうかを判断しましょう。適性の条件を満たさない場合でも、自分には無理と諦めずに、短所を克服する努力が大切です。

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