MRの将来性や需要減少の要因を解説。主な働き方や目指し方も紹介

医療分野の営業職として働くMRは、将来性がある職業なのでしょうか?現状と今後について解説します。需要が減少している要因と、転職を考えている場合に身に付けておきたいスキルも確認しましょう。未経験から目指す方法も解説します。

MRの需要と将来性

打ち合わせをする医者とビジネスマン

(出典) pixta.jp

MR(医薬情報担当者)の需要や、今後の将来性について関係者はどのように判断しているのでしょうか?現状の需要や、今後の動向を解説します。

継続的な需要が見込める

MRは「Medical Representative」の略語であり、製薬会社の営業担当者として、自社の医薬品情報を医療従事者や医療機関に提供するのが仕事です。医療は病気やけががある限り必要となるもののため、今後も継続的な需要が見込めます。

特に日本は高齢化が進み、今後も医療や医薬品の需要が増加すると予想されます。専門家による医薬品情報の提供も、引き続き求められるでしょう。

DXやAIの活用で必要人員の減少は考えられますが、将来的にも求められる仕事です。需要の高い分野で働きたいと考えるなら、医療関係の営業職は候補となるでしょう。

採用人数は減少傾向

MRの採用人数や募集企業は減少傾向です。「MR白書」によると、MRの数は2020年は5万3,586人、2021年には5万1,848人となっています。以前は増加していた就業者数は、減少に転じているようです。

2019年にはファイザー、2023年には中外製薬が早期退職を募集しており、他の製薬会社でも同様の傾向が見られます。

大手製薬会社による早期退職推進や採用人数の削減により、これからも減少または停滞傾向が続くと考えられるでしょう。

出典:MR白書|公益財団法人MR認定センター

MRの需要が減少している主な要因

握手をする医師

(出典) pixta.jp

MRは、需要が減少しています。なぜ需要が減ってしまったのか、主な要因と今後の展望を確認しましょう。仕事がなくなるわけではありませんが、需要の減少を頭に入れて転職活動を進める必要があります。

デジタル化による需要の減少

MRは医療機関に出向き、医薬品の説明や売り込みを行うのが仕事です。一般的には、自分の担当エリアにある医療機関を訪ね、薬の安全性や特徴を伝えることになるでしょう。

しかし、コロナ禍の影響でオンラインでのコミュニケーションが普及し、営業活動の世界でもデジタル化が進んでいます。

遠方の医療機関を訪ねる必要がなくなり、1人の担当者がカバーできる範囲が広がったこともあり、人員の削減を検討する企業も増えているようです。

就業者数の増加とコロナ禍やデジタル化の流れが重なり、供給過多になったのも要因とされています。

薬価の引き下げや研究開発費の高騰

MRは、開発された新薬を医療機関に取り扱ってもらうために仕事をしています。しかし、研究開発費の高騰により大規模な開発が難しくなり、多くの人員が必要なくなったのも需要減少の要因です。

薬価の引き下げが行われ、新薬を開発しても利益が生まれにくくなったのも、MRの人員削減と関係しています。同じように薬を開発し販売しても、開発費と販売による利益が見合わなければ、MRに支払う人件費も少なくなるでしょう。

仕事内容に見合った収入を維持するには、人員削減とデジタル化が求められます。

MRが活躍できる場所や働き方

医療従事者のミーティング風景

(出典) pixta.jp

MRへの転職を考えている場合、転職先の候補は気になるところです。主な働き方と、活躍の場を紹介します。どのような働き方であっても一定のスキルや経験が求められるケースが多いため、条件を確認するのが大切です。

製薬会社やメーカーで働く

製薬会社や医薬品を扱うメーカーに勤務するのが、MRの一般的な働き方です。直接雇用で、正社員や契約社員として働きます。

MRを自社で雇用する製薬会社は大手の企業が多く、生活が安定しやすいのが特徴です。資本力や開発力の高い製薬会社を選び、一定の成績を残せば長く勤められます。

特定のメーカーや医薬品にこだわりがある場合や、長期で働きたい場合に向いている転職先です。

複数の会社への派遣

医薬品の営業やマーケティング業務を専門的に扱う「CSO」に登録し、コントラクトMRとして勤務するのも、一般的な働き方です。CSOは複数の製薬会社・メーカーと提携し、必要なときにMRを派遣します。

開発された新薬には特許期間が設けられており、一定期間内に販路を拡大するのがMRの役割です。一時的に人員を増やしたい製薬会社は多く、派遣先を変えることで安定した仕事量が維持できます。

製薬会社の人員削減が進む現状では、CSOに登録し能力や実績を磨くのが、長く働き続ける近道となるでしょう。

未経験からMRを目指す方法

打ち合わせをする医師とビジネスウーマン

(出典) pixta.jp

医療関係の仕事は、経験やスキルが重要とされます。MRは未経験からでも就ける職業なのでしょうか?一般的な傾向と、異業種からの転職を進める方法を解説します。

未経験可の求人を探す

求人情報の中には、「未経験可」と記載されているものがあります。MRは国家資格を必要としない職種のため、未経験や資格なしでも就業が可能です。

しかし、大卒程度の学歴や普通自動車免許、営業関連の仕事での実績は求められるケースが多いでしょう。

学歴が求められるのは、医薬品の特性を理解し、医療関係者に適切に説明するためです。普通自動車免許は、営業として活動する上で欠かせません。

未経験であれば、営業実績やコミュニケーション能力など、何かしらのスキル・経験が問われます。スタンバイでは未経験可の求人情報が探せるため、まずは募集条件を確認してみましょう。

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若いうちに中途採用を目指す

職業を問わず、若いうちはポテンシャル採用の見込みがあります。実績や経験がなくても採用の可能性がある20代のうちに、転職活動を始めるのが重要です。

特にMRは、現場で営業活動を行う仕事のため、肉体的・精神的にハードな面があります。体力・精神力が充実している若い世代は、採用の可能性が高くなるでしょう。

知識を身に付け、キャリア形成を進めるためにも、年齢が高くなってからの転職活動は不利になります。MRの中途採用を目指すには、20代から遅くとも30代前半が目安です。

MRに求められる資格やスキル

医療セミナー

(出典) pixta.jp

MRの需要が減少傾向にある現状では、どのような資格やスキルが必要になるのでしょうか?今後ますます競争率が高くなる可能性も踏まえ、転職活動が成功したとしても能力を身に付けなければなりません。必要とされる資格やスキルを覚えておきましょう。

医薬品や医療に関する専門知識

医薬品の営業には、販売する医薬品の知識だけでなく、医療全般に関する専門知識が求められます。医師の質問に答え、正確に情報を提供しなければならないため、専門知識は必須です。

現状では腫瘍の治療を中心とするオンコロジー、バイオ医薬品を中心とするアッヴィなどの専門分野が活発化し、MRの需要が高まっています。

今後は一般的な医療知識だけでなく、特定の分野に対する深い見識が求められるシーンが増えてくるのでしょう。

営業担当として生き残るには、注目が高まっている専門分野を理解し、積極的に学ぼうとする意識が必要になります。

英語を中心とした語学力

国内のMRに求められる語学力は、論文に書かれた専門用語の理解や医学系の知識に限られますが、外資系の場合は英語を生かした仕事を任される可能性もあります。

また、いずれキャリアアップやキャリアチェンジを検討しているなら、英語を中心としたスキル・知識があると有利です。

MRの経験と語学力があれば、医療関係のマーケティング部門や臨床開発モニターなど、候補となる職業が増えます。

転職前に実用的な英語スキルを身に付ける必要性は低いものの、営業職として現場で働きながら語学力を磨いておくと将来の選択肢が増えるでしょう。

普通自動車免許

普通自動車免許は、営業職に欠かせない資格です。徒歩で担当エリアを回るケースはほとんどないため、必須条件となっている求人が多くなっています。

オンラインでのやり取りも増えているとはいえ、基本は複数の医療機関を回らなければなりません。効率的に仕事を進めるためにも、免許の取得は求められると考えておきましょう。

普通自動車免許を持っていない場合は、転職活動前に取得しておく必要があります。

MRのキャリアプラン

MRのイメージ

(出典) pixta.jp

競争率が上がっていくMRとして働くなら、現状だけでなく将来のキャリアプランについても考えておかなければなりません。主な方向性と、身に付けておきたい知識やスキルについて紹介します。

MRのスペシャリティ領域で活躍する

今後の成長や需要が見込める「スペシャリティ領域」は、がん治療やバイオ医薬品など専門知識を必要とする分野です。

中長期で働ける安定した仕事が多く、特定の分野に精通した担当者が求められています。キャリアアップを目指すなら、専門知識を身に付けるのがおすすめです。

以前は生活習慣病のように、多くの人が対象となる大規模な新薬開発が中心となっていましたが、現在は傾向が変化しています。時代の変化に適応し、ニーズに合わせた知識を学ぶ意識が必要です。

管理職へのステップアップを目指す

MRとしてある程度の経験を積むと、現場で営業を担当するだけでなく、管理職にステップアップする道も生まれます。新人教育やマネジメントを中心に、売上や経営に携わるのが管理職の役目です。

人材育成が可能な管理職には、経験やスキルが求められます。営業としての能力に加えて、部下をマネジメントするサポート力も必要となり、能力を発揮できれば企業にとって欠かせない人材として重宝されるでしょう。

仕事の需要が減っても、実力のある管理職は活躍できます。キャリアを積み、管理職を目指すのも、医療業界で長く働くコツです。

コンサルタントへのキャリアチェンジ

医薬品の情報提供と営業で実績を積むと、同業界のコンサルタントとしてキャリアチェンジする道も開けます。

学歴や実績は求められるものの、医療に関する専門知識と営業力はコンサルティング分野でも評価されるスキルです。

企業のコンサルティングだけでなく、個人のキャリアアドバイザーとして活躍もできます。コンサルティング分野へのキャリアチェンジを目指すなら、経営についての知識も身に付けていくのがポイントといえるでしょう。

MRの需要を意識してスキルを身に付けよう

医療従事者との会議

(出典) pixta.jp

医薬品の情報を医療機関に伝え、営業職として活躍するMRの需要は、減少傾向にあります。しかし、専門知識を生かしたスペシャリティ領域など、成長が見込める分野もあり、仕事自体がなくなるリスクは少ないでしょう。

これからMRを目指す人だけでなく、今働いている人も、変化する状況に合わせてスキルを身に付けキャリアプランを描いておくのが大切です。評価される知識やスキルを身に付ければ、需要の変化に左右されず長く活躍できます。