銀行員は転職先として人気がある職種の1つです。実際に転職するとなると、将来性やどのようなスキルが求められるかが気になります。これから銀行員を目指そうと考えている人は、銀行員の将来性や転職で意識したいポイントを確認しましょう。
銀行員の将来性が懸念されている理由
さまざまな理由により、銀行員の将来性について懸念されています。将来性に影響を及ぼしそうな3つの要素を見ていきましょう。
技術の進歩で環境が大きく変わる可能性
多くの業界で最新技術の活用が進んでおり、銀行を含む金融業界も例外ではありません。ブロックチェーンを活用した暗号資産やNFTなど、金融業界を大きく変化させる可能性がある存在について、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
また、AIの活用も進んでいます。金融業界では、不正取引の検知システムや帳票類のスキャン、融資審査などの分野でAIが活躍しています。
金融に先進技術を活用する試みをFinTechと呼び、世界中でこの動きが加速しているのが特徴です。テクノロジーの進歩に伴って、銀行業務の一部が機械化される可能性があります。
銀行の統合・再編が急速に進んでいる
規模の大小を問わず、銀行の統合・再編が進んでいます。過去には17行存在していた都市銀行が、2023年時点では4つのメガバンクに統合されているのは象徴的な事例です。
メガバンクに限らず、地方銀行でも統合・再編が進んでいます。統合・再編の動きが加速すれば、収益力が低い銀行や必要な設備投資をできない銀行が生き残るのは難しくなるでしょう。
銀行員として就職したとしても、勤務先の銀行が長期的に存続するとは言い切れません。この点も将来性が懸念される材料の1つです。
ネットバンクの存在感が増している
街中に店舗を構えて営業する従来型の銀行に加え、オンラインでさまざまなサービスを展開するネットバンクの存在感が増しています。ネットバンクの一般的な特徴は、以下の通りです。
- ほとんどの取引がオンラインで完結する
- 手数料が安い
- 預金金利が高い
- 融資金利が低い
営業するために必要なコストが低い分をユーザーに還元しているケースが多く、利用者にとっては多くのメリットがあります。利便性が高いのも大きなメリットで、今後も発展する分野と考えられるでしょう。
ネットバンクがさらに多くのユーザーを集めれば、従来型の銀行を利用するユーザーが減少する可能性が高いといえます。
銀行員の仕事で将来性がある分野
銀行にはさまざまな業務があり、中には将来性に期待できる分野も存在します。銀行員が担当する主な業務の中から、将来的に有望と考えられているものを見ていきましょう。
国際業務
国境を越えてビジネスを展開している銀行も多数あります。日本国内で営業している外資系銀行や国外に展開している日系銀行があることを考えると、国際業務の需要が高いことが分かるでしょう。
銀行の国際業務には、以下のようなものが含まれます。
- 現地法人の設立・売却支援
- 市場調査・投資のサポート
- 現地で展開する事業戦略の策定サポート
- パートナー企業の選定・提携サポート
- 輸出・輸入取引のサポート
グローバルビジネスを展開する企業にとって、銀行の国際業務は欠かせない存在です。この分野は今後も拡大すると考えられており、将来性にも期待できるでしょう。
ディーリング・運用業務
銀行では、自己資金を為替や株式などの金融商品に投資し、収益を上げるビジネスを展開しています。自己資金を運用する業務をディーリングと呼び、この分野を専門に担当するのがディーラーです。
収益を上げるために重要な役割を果たしており、十分な成果を出せる人材の需要は高いといえます。世界中の経済状況を分析する力や、高い判断力が求められる分野です。
ディーラーの需要が大きく低下する可能性は低いため、長期的に活躍できる分野の1つといえます。
銀行員の仕事で将来性に注意が必要な分野
銀行員が担当する仕事の中にも、将来的に需要が大きく減少したり機械化が進んだりすると予想されている分野があります。以下で紹介する2分野は将来性が懸念されているため、これから転職を検討している人は注意が必要です。
窓口・出納業務
店舗のカウンターで顧客対応を担当する窓口業務や、入出金を担当する出納業務は機械化される可能性が高い分野です。機械化の具体例には、以下のようなものがあります。
- RPAを利用した入出金処理や口座開設をはじめとした事務作業の自動化
- AIを利用した各種帳票の読み取り・データ化
今後さらにテクノロジーが発展すれば、上記の業務は完全に自動化される可能性も考えられます。窓口・出納業務を担当する銀行員の数は、削減される可能性が高いでしょう。
融資業務
個人・法人に対する融資も自動化が進むと考えられている分野です。融資には申し込みの処理や審査などの業務がありますが、AIに置き換えられる可能性が高いと考えられています。
2023年時点ですでに融資審査を支援するためのAIシステムが存在しており、審査スピードの向上や適正化に貢献しています。
今後は、融資を申し込む人はオンラインで必要なデータを入力・送信し、受け付けたデータをAIで処理して審査結果を回答するようになる可能性が高いと考えられるでしょう。
融資業務に人の手が加わる部分が減れば、この分野を担当する銀行員の需要は低下します。
将来性がある銀行員に必要なスキルセット
将来有望と考えられている分野の銀行員を目指すために必要なスキルセットを紹介します。長期的に銀行員として活躍したいと考えているなら、ここで紹介する3つの分野を意識するとよいでしょう。
国際業務で求められる語学スキル
国際業務を担当して世界中で活躍したいと思っているなら、十分な語学スキルが欠かせません。英語やスペイン語、中国語をはじめとした需要が高い言語を複数扱えると、より自分の市場価値を高められます。
ただし、言語を習得するには長い時間がかかるため、普段から継続的に勉強することが大切です。
語学スキルは国際業務に携わる場合だけでなく、国外マーケットの情報を素早く入手したい際にも欠かせません。運用業務などの別分野を担当するときにも、強力な武器になります。
資産運用に関する広範なスキル
ディーラーを目指す場合は、資産運用に関するスキルが求められます。経済に関する世界中の情報を効率的に収集するスキルや、チャートのテクニカル分析に必要なスキルなどが必要です。
ほかにも、トレードするタイミングを見計らうスキルや発注する数量を見極めるスキル、的確な判断力も求められます。証券会社や保険会社など、金融業界で運用に携わった経験がある人なら、これまでに培った運用スキルを生かして働けるでしょう。
高いレベルのポータブルスキル
銀行員としての経験を積んでキャリアアップすると、コンサルティングやマネジメントに携わるケースがあります。上記の業務に携わるには、高度なポータブルスキルが欠かせません。
ポータブルスキルは、どのようなビジネスにも共通して必要とされるスキルの総称です。具体的には、コミュニケーションスキルやヒアリングスキル、マネジメントスキル、交渉力などが含まれます。
コンサルティングやマネジメントに携わる場合は、他者と綿密にコミュニケーションをとる必要があるため、普段からスキルアップに励みましょう。
銀行員を目指す人が意識したい銀行の課題
銀行には解決しなければならない課題がいくつか存在します。多くの銀行が抱えている課題を2つ確認しましょう。下記の課題に対してどのように対処するかは、将来性を左右する大きな要素です。
収益力が低い状態が続いている
銀行は手数料や金利、運用によって収益を上げていますが、思ったように収益を上げられていない状態が続いています。収益力の改善は、多くの銀行が解決しなければならない喫緊の課題です。
運用で高い収益を狙ったり、融資の利ざやを高めることで収益を改善する必要があります。収益力が高いビジネスに注力するなどの対策も有効です。
銀行が今後生き残るためには、収益力の低さをどのように改善するかが大切といえます。
過剰な人員や設備などを抱えている
機械化の進展に伴って必要な人員が減少したにもかかわらず、過剰な人員を抱えているのも銀行の課題です。店舗をはじめとした設備を必要以上に抱えているケースもあります。
過剰な人員や設備は銀行にとって大きな負担になるため、適正化することが必要です。2023年時点では、店舗削減や人員削減で対処しています。
しかし、今後さらにテクノロジーが進展すれば、ビジネススタイルの変革や業務体制の見直しといった、根本的な対策が求められるようになるでしょう。
転職前に把握すべき銀行員のキャリアパス
長期的なキャリア形成を考えるにあたって、銀行員の経験を生かせるキャリアパスについても考えておく必要があります。銀行員の経験は、金融業界内で転職する際の武器として有用です。銀行員のキャリアパスとしておすすめの道を2つ紹介します。
金融業界内で転職するなら「証券会社」
銀行員の経験を生かせる代表的な転職先が、証券会社です。証券会社にはさまざまな業務があるため、経験に応じた職種を選ぶとよいでしょう。
銀行で営業を担当していた人であれば、証券会社でも営業職として活躍できます。ディーラー経験者なら、証券会社の運用担当者を目指せます。
銀行と証券会社は必要なスキルにも共通している部分があるため、経験者にとって活躍しやすい転職先といえるでしょう。
営業経験があるなら「M&A仲介会社」
銀行で法人営業を担当していた人は、M&A仲介会社もおすすめの選択肢です。法人営業を担当していたのであれば、企業経営者と接する機会も多かったと考えられます。その経験は、M&A仲介会社への転職で高く評価されるでしょう。
金融機関という立場上、企業の財務面を知る機会が多いのも特徴です。M&A仲介会社に転職する場合、基本的にM&Aアドバイザリーとして働くことになります。
M&Aアドバイザリー(財務アドバイザー)の業務は、依頼を受けて方針を策定したり、実行案を提示したりするのがメインです。銀行員と似たようなスキルが要求されるのも、活躍しやすい理由の1つといえます。
将来性を正しく把握して銀行員を目指そう
銀行員にはさまざまな仕事があり、将来性に期待できる分野とそうでない分野があります。これから銀行員への転職を目指す人は、将来性に期待できる分野で求められるスキルを習得するとよいでしょう。
実際に転職する場合はさまざまな求人情報に触れ、自分に合った求人を探すことも大切です。
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