社会保険労務士の将来性は?業務の種類やAIの影響についても紹介

社会保険労務士は、労働・社会保険・年金に関する法律のエキスパートです。国家資格で独占業務も持っていますが、将来性はあるのでしょうか?AI発達の影響や、業務内容について見ていきましょう。今後活躍するためのポイントや、方向性も解説します。

社会保険労務士の将来性

男性ビジネスマン

(出典) pixta.jp

国家資格である社会保険労務士は、どのような分野で活躍できるのでしょうか?需要や現状、今後の展望を解説します。国家資格の取得を目指す人はもちろん、社会保険労務士として働いている人も、どの分野で需要が増えているのか把握しておきましょう。

複雑化する人事労務

企業の人事労務を担当する部署では、社会保険の手続きや就業規則の整備など、幅広い業務を担っています。しかし、法改正によって知識のアップデートが必要になると、一般の職員だけではなかなか対応ができません。

社会保険や労務の専門家である社会保険労務士は、複雑な業務に対応できるスペシャリストとして需要が高まっています。

企業の従業員として働く道だけでなく、コンサルタントとしてアドバイスを提供する役割もあり、活躍できる場所は今後も増えていくでしょう。

個人からの相談業務も増加

社会保険労務士は、企業だけでなく個人からの相談にも対応します。年金の申請代行や保険相談など、個人向けの仕事でも活躍できるのが特徴です。

職場の悩みや労働相談を受け付け、状況によっては企業との話し合いにも対応します。法律・制度に関する専門知識を武器に、個人の課題を解決するサポートが可能です。

特に個人の場合、専門知識がなければ判断が難しい障害年金の申請のために、社会保険労務士を頼るケースが多くなっています。

制度が複雑になり、自分での申請や判断が難しくなると、全体的な依頼の増加が考えられるでしょう。

社会保険労務士の業務の種類

セミナーの様子

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法律に関する国家資格には、それぞれ独占業務があります。社会保険労務士が対応できる独占業務と、独占業務以外の3号業務について確認しましょう。資格を取得すればどの業務も担当できますが、何を中心に請け負うのか、方向性を考えておく必要があります。

1号業務

社会保険労務士の独占業務である1号業務は、労働保険・社会保険に関する申請書の作成と手続きの代行です。

社会保険や厚生年金に関わる手続きの場合、専門家として代行できるのは基本的に社会保険労務士のみとされています。弁護士は一部の業務を兼任できますが、それぞれ専門の担当分野が異なるため、業務の奪い合いになる可能性は考えにくいでしょう。

社会保険の加入や脱退など、従業員の入社・退社時に必要な手続きは複雑になりやすく、専門家に任されるケースが多いでしょう。ミスや法律の認識不足を防ぎ、スムーズに手続きを進めるために、多くの企業から依頼があります。

参考:社会保険労務士法 | e-Gov法令検索

2号業務

企業は、就業規則・労働者名簿・賃金台帳・雇用契約書などの作成を行います。労働基準法で定められている書類の作成代行は、社会保険労務士の独占業務です。

労働社会保険諸法令に基づき、就業規則の整備や書類作成を行います。企業の顧問として全ての書類作成に関わるだけでなく、スポット対応で必要な書類のみの作成を請け負う場合もあるでしょう。

就業規則は経営者が自分で作ることもできますが、法律に反する内容ではないか、労働者に対する配慮はできているかなど正確にチェックしなければなりません。

企業の要望を組み込んだ上で、法律的に問題がないように提案するのも社会保険労務士の役割です。

参考:労働基準法 | e-Gov法令検索

3号業務

3号業務は、企業のコンサルティングや個人向けの相談業務が該当します。セミナー形式のコンサルティングや講演会も、3号業務です。

独占業務ではありませんが、どの業務も保険・年金に関する専門知識が必要とされるため、対応できる有資格者は限られます。

書類作成や手続きの代行といった事務作業ではなく、企業の課題や個人の悩みを解決するサポート役として活躍するのが特徴です。

コンサルティング業務では、人事労務管理のトラブル解決や法律に関する相談が多くなるでしょう。ハラスメント問題や人員削減の方法など、企業の担当者だけでは解決しにくい問題も増えています。

個人向けの相談では、公的年金や健康保険の手当金に関する相談などが一般的でしょう。申請・請求・代行は1号業務となり、相談から手続き代行に移行するケースもあります。

社会保険労務士へのAIの影響は?

コンサルタントの女性

(出典) pixta.jp

近年はAIの開発が進み、法律に関する専門家にも影響があるといわれています。社会保険労務士の業務にも、AIの影響はあるのでしょうか?今後の可能性と、影響を受けにくい業務について紹介します。

一部の業務が簡略化する可能性も

手続きの申請や企業内での労務管理はAIによって簡略化が可能になるといわれており、社会保険労務士の仕事にも影響を与える可能性があります。

AIで法律に基づいた入力作業や申請書の作成ができるようになると、専門家に依頼しなければならない業務は大幅に減少するでしょう。

機械化によって業務量が少なくなれば、少人数で多くの依頼に対応できます。申請代行や企業の書類作成といった1号、2号業務は、いずれ減っていくものと予測されるでしょう。

AIに代替されない3号業務

企業のコンサルティングや相談を含む3号業務は、AIに代替される可能性が低い仕事です。人とのコミュニケーションや、それぞれの状況に合わせたこまやかな対応が必要になり、定型作業とは性質が異なります。

現状、AIが対応できる分野は「決まったフォームに沿った入力・作成」や「個別の事情を考慮しない一律の対応」に限られており、人の話を聞いて判断する業務には人の手が必要です。

今後、簡単な書類・帳簿作成の需要が減ったとしても、コンサルティングや相談業務は残っていくと予想されます。

求められる社会保険労務士になるには

女性コンサルタント

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企業や個人のアドバイザーとして活躍できる社会保険労務士は、需要の多い職業です。しかし、今後ニーズが変わっていくことを考えると、資格を持っているだけでは仕事の確保が難しくなる可能性もあります。

専門職として活躍を続けるために、何をすればよいのか、主なポイントを確認しましょう。

専門性を高める

専門性を高めると、特定の分野でサポートを求めている企業・個人からの相談が増えます。基本的な知識を身に付けるだけでなく、得意分野を作るのが活躍するためのコツです。

社会保険や年金の制度は不定期に改正があり、基本的な知識も常にアップデートが求められます。最新の知識を取り入れ、特定の分野で自分の強みをアピールできれば、依頼者側も「この人には何を依頼すればよいか」を判断しやすくなるでしょう。

ダブルライセンスを取得する

資格を複数取得しておくと、社会保険労務士の独占業務以外にも仕事の幅が広がります。対応できる業務が多ければ、必要とされる機会も増えるはずです。

申請代行を独占業務とする資格は多く、行政書士や司法書士が該当します。複数の書類作成・手続き代行が可能になれば、依頼者側もまとめて手続きができるようになり、メリットが大きいでしょう。

コンサルティング業務に特化したいのであれば、中小企業診断士の資格もおすすめです。個人向けの相談を主に受け付ける場合は、FP技能士の資格も向いています。どの分野を中心に活躍したいか考えた上で、取得を目指すライセンスを検討しましょう。

ニーズが高まる社会保険労務士

コンサルタントの男性

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企業と個人の両方から必要とされる社会保険労務士は、今後もニーズが高まっていくことが予想されます。AIに代替される可能性が否めない業務もあり、これから転職を考えている場合には、専門性を高める努力やダブルライセンスの検討も必要です。

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