介護職員として実務経験を積むか、養成機関で専門知識を学ぶと、介護福祉士の受験資格が得られます。介護福祉士を含む介護職に、将来性はあるのでしょうか?介護業界の現状や今後の需要、活躍の場などについて解説します。
介護福祉士に将来性はある?
介護業界で働く上で取得できる国家資格「介護福祉士」に、将来性はあるのでしょうか?今後の需要や資格の特徴を紹介します。
高齢化社会によって需要が増加
日本では高齢化が進み、2022年時点で65歳以上の高齢者人口は29.1%になっています。少子化も進行しており、今後も高齢化は進んでいくでしょう。
高齢になると、介護を必要とする人の割合が増えていきます。厚生労働省の調査によると、2023年1月時点で65歳以上の19.0%が要介護の認定を受けており、高齢者が増えればその分人手が必要になるでしょう。
そのため、介護福祉士を含む専門職の需要は、今後ますます増加すると予想されています。働く場所や求められる場面も多くなっていくでしょう。
参考:統計局ホームページ/令和4年/統計トピックスNo.132 統計からみた我が国の高齢者−「敬老の日」にちなんで−|1.高齢者の人口|総務省
参考:介護保険事業状況報告の概要(令和5年1月暫定版)|厚生労働省
生涯有効な国家資格で長く働き続けられる
介護福祉士の資格は更新手続き不要で、一時的なブランクや別業界へ転職によって介護業界から離れても、資格は有効です。国家資格でもあり、介護の専門家としてさまざまな介護現場で活用でき、転職にも有利です。
また、介護業界でキャリアアップを考えている人にも適しています。上位資格としてケアマネジャーや認定介護福祉士があり、働きながら新たな資格取得が目指せるからです。
いずれは介護を担当するだけでなく、ケアプランの作成や責任者として活躍したいと考えるなら、介護福祉士の資格を足がかりにしましょう。
介護業界の現状
介護福祉士を含む介護人材は、高齢化社会の進行によって需要が増加しています。介護業界の現状や、人材を集めるためにどのような対策が取られているのかを見ていきましょう。
人材不足が深刻化している
介護業界では、人手不足が続いています。高齢化による需要の増加だけでなく、待遇面などで介護の仕事を選ぶ人材が少ないことも要因です。
公益財団法人介護労働安定センターによる「令和3年度介護労働実態調査」の「従業員の過不足状況」の調査でも、およそ6割の事業所が人材の不足を感じているとデータが出ており、大きな課題となっています。
介護福祉士を含む介護人材は、要介護者を支えるためにハードな仕事をこなしています。仕事に見合う収入が得られないことや、人手不足による業務量の増加などさまざまな問題により、良質な人材の確保が難しくなっているといえるでしょう。
今後はさらに高齢化が進み、人手不足が進むと予想されます。これから介護福祉士を目指すのであれば、必要とされる場面は多くなるはずです。
参考:令和3年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査 結果報告書|公益財団法人 介護労働安定センター
国も介護業界の人材不足に対策を始めている
介護人材の不足を対策するため、国はさまざまな取り組みを行っています。収入面の処遇改善や介護人材の育成など、職員の負担軽減が目的の取り組みも豊富です。
離職を防ぎ定着率を高めるために、ロボット導入による業務効率化や保育所の設置なども進んでいます。
外国人採用や研修制度の充実、資格取得支援など、多くの人材を集めるための工夫がされており、転職しやすい風土が整ってきているといえるでしょう。
介護福祉士が活躍できる主な職場
高齢化によって、介護福祉士が活躍できる場は広がっています。働く場所によって仕事内容が変わるので、自分に合う職場を見つけるためにも、それぞれの特徴を把握しておくのが大切です。有資格者を採用している主な職場と特徴を紹介します。
介護老人施設や障がい者施設
介護福祉士は、施設に入居している高齢者や障がい者の介護を担当します。主な施設は、介護老人保健施設・特別養護老人ホーム・介護付有料老人ホーム・ケアハウス・障がい者施設などです。仕事内容は、入居者の介護となっています。
介護老人保健施設では、リハビリを必要とする高齢者のケアを担当します。特別養護老人ホームは、要介護の度合いが高い「要介護3」以上の高齢者が中心に入居している施設です。
民間施設の介護付有料老人ホームには、介護専用型と混合型があります。民間施設には住宅型有料老人ホームやサービス付高齢者向け住宅もあり、介護福祉士を必要とする場面は多いでしょう。
そのほか、複数人が集まって生活するケアハウスやグループホームでも、介護福祉士が活躍しています。
訪問介護事業所
普段は自宅で生活し、必要なときに介護を受ける人たちからも、介護福祉士は必要とされています。訪問介護事業所では、訪問介護員として自宅を訪問し、食事や入浴のケア、買い物・料理など生活の介助を担当するのが主な仕事です。
自宅への訪問ではなく、要介護者が通所する「デイサービス」もあります。送迎や通所中の介助、レクリエーションの実施が主な仕事です。
入居型では24時間の見守りや介護が必要ですが、訪問型では複数の家庭を訪問し、短時間の介護を担当するケースもあります。デイサービスでは、朝から夕方まで高齢者を預かる形が主流です。
病院
病院にも、介護を必要とする人はいます。介護福祉士は医師・看護師の指示を受け、入院・通院患者の介護を担当するのが仕事です。
病院を含む医療施設では、基本的に介護よりも病気・ケガの治療が中心となっています。必要に応じて、医師・看護師のサポートを担うと考えておきましょう。
要介護度が高い入院患者が多い病院では、普段の体位交換や移動の付き添いを中心に任されるケースもあります。介護の専門施設と比べると、他職種との連携が重要です。
介護福祉士の将来性をさらに高める上位資格
介護福祉士は名称独占資格であり、独占業務がありません。つまり、資格がなくては行えない業務があるというわけではないのです。
そのため、キャリアアップや仕事の幅を広げるには、上位資格の取得が適しています。将来性の高い上位資格をいくつか見ていきましょう。
ケアマネジャー(介護支援専門員)
ケアマネジャーは、介護度や本人の希望などをヒアリングし、個人に合わせたケアプランを作成するのが主な仕事です。実際の介護を担当するよりも、要介護者や家族と面接し、自立や快適な生活を送るためのアドバイスをする役割が大きいでしょう。
介護福祉士の資格を取得していると、実務経験5年以上かつ900日以上の就業でケアマネジャーの受験資格が得られます。試験に合格し、研修を受けると登録が可能になります。
介護の仕事は体力が必要ですが、ケアマネジャーはプラン作成や要介護認定の調査など指示役としての業務が中心です。介護業界でより長く働いていこうと考えるなら、資格取得を検討するとよいでしょう。
参考:介護支援専門員/ケアマネジャー - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
認定介護福祉士
認定介護福祉士は、一定の基準を満たした介護福祉士が「認定介護福祉士養成研修」を受けて修了し、登録すると取得できる資格です。
認定介護福祉士養成研修の主な受講要件は、介護福祉士としての実務経験5年以上で、100時間以上の現場研修歴を持ち、研修で一定水準以上の成績を収めていることとなっています。
養成研修を受講することで、一定の技術・知識が証明できるのが利点です。事業所のサービスマネジャーや他職種との連携担当など、仕事の幅が広がります。
介護福祉士のリーダーとして技術を身に付けたいと考える人や、給料・待遇アップを求める人に向いている資格です。総合的なスキルを身に付ければ、マネジメントや周囲のスタッフへの指導もできるようになり、現場での貢献度も上がっていくでしょう。
参考:認定介護福祉士の役割と実践力 | 認定介護福祉士 認証・認定機構
参考:認定介護福祉士になるには | 認定介護福祉士 認証・認定機構
介護福祉士のニーズは高まり続けている
日本では高齢化が進み、介護福祉士を含む介護人材の需要が高まっています。待遇や仕事内容が厳しく人手不足にもなっており、国が対策を進めているところです。仕事の幅を広げ、将来性を高めるには上位資格の取得も検討していきましょう。
求人検索エンジン「スタンバイ」でも、介護福祉士の求人を見つけられます。老人施設・訪問介護事業所・病院など、活躍の場も多様です。転職を検討しているなら、自分の求める待遇や仕事内容の求人を探してみましょう。