職安とは?ハローワークとの違いや受けられるサービスについて解説

職安では、求職者や雇用保険の受給者に対して総合的な雇用サービスを提供しています。転職を検討している人は、具体的にどのようなサポートを受けられるのでしょうか?ハローワークとの違いや職安を活用するメリット、求人を探すコツを解説します。

職安とはどんな場所?

職安の窓口

(出典) pixta.jp

職安(しょくあん)の正式名称は「公共職業安定所」です。職業紹介や職業相談をはじめとする就職支援を無償で行っており、失業中かどうかにかかわらず誰でも利用可能です。初めて職安を利用する人は、機関の概要やハローワークとの違いを確認しましょう。

国が運営する雇用に関するサービス機関

職安は、国(厚生労働省)が運営する総合的雇用サービス機関で、地域の人々の就職支援や雇用促進を目的に設置されました。求職者や雇用保険の受給資格者は、以下のようなサービスを無償で受けられます。

  • 職業相談
  • 職業紹介
  • 求人の検索
  • 職業訓練の案内・申し込み
  • 雇用保険の受給手続き

職安の開庁時間は平日の8時30分~17時15分が原則です。平日になかなか足を運べない人のために、開庁時間を土曜日や夜間に拡大している施設もあります。

参考:ハローワーク |厚生労働省

ハローワークとの違い

ハローワークを利用したことがある人は、「職安とハローワークは何が違うの?」と疑問に思うかもしれません。

職安はハローワークの別名です。かつては公共職業安定所と呼ばれていましたが、地域住民に親しまれる存在でありたいという目的から、国が愛称を公募しました。

約4,000点の応募の中から「ハローワーク」が優秀賞として選ばれ、1990年から広報活動に名称が使われるようになった経緯があります。呼び方は人によって異なりますが、平成以降はハローワークの名称が定着しているようです。

参考:公共職業安定所の愛称について

職安で受けられるサービス

職業安定所のイメージ

(出典) pixta.jp

職安で受けられるサービスは、「就職支援に関するもの」と「雇用保険の受給に関するもの」に大別されます。失業した人が手続きに行く場所というイメージを持つ人もいますが、就職支援に関連するサービスは在職中でも利用可能です。

具体的なサービス内容をチェックしましょう。

働き先を探す求人の検索・紹介

就職や転職を検討している人は、ハローワーク内に設置されたPCを使って求人の検索ができます。職業安定法の第17条には、以下のような記載があります。

第十七条 公共職業安定所は、求職者に対し、できる限り、就職の際にその住所又は居所の変更を必要としない職業を紹介するよう努めなければならない。

職安の求人は全国規模ですが、居住地の変更をしない職業の紹介が前提なので、どちらかというと「地元の中小企業で働きたい」「地域の発展に貢献したい」という人に向いています。

希望する企業があれば、職員が応募先に連絡をし、面接日の調整を行う流れです。

出典:職業安定法 第17条 | e-Gov法令検索

職員による職業相談

職員によるマンツーマンの職業相談を実施しており、仕事やキャリアに関することなら何でも質問できます。例えば以下のような内容に関して相談が可能です。

  • どんな仕事に就いたらよいのか分からない
  • 転職活動の進め方が知りたい
  • 希望する職業があるが、未経験なので不安

窓口相談は予約なしでも受け付けてもらえますが、待ち時間が長くなる恐れがあります。求職申し込みや相談には30~40分程度を要するため、時間に余裕があるときに足を運びましょう。職業相談を受けた後、自分に合う求人を紹介してもらう手もあります。

履歴書・面接などの選考対策

職安では、求職者に対する選考対策を実施しています。相談員とのマンツーマンが基本で、料金はかかりません。転職エージェントのように企業の利益が絡んでいないため、より丁寧な指導が受けられます。

履歴書による書類選考は、転職の第一関門です。選考を突破できない人は、職業紹介を受ける前に履歴書の添削をお願いしましょう。面接指導では、自分の強みを上手にアピールするコツを教えてもらえるため、本番では自信を持って受け答えができます。

職安によっては、書類の添削や面接指導は予約制です。予約不要の場合は、混雑する時間帯を避けて来所するといいでしょう。

失業中に受給する雇用保険の手続き

職安では、失業中に受給する雇用保険の手続きを行っています。雇用保険とは、失業した人や職業訓練を受ける人に対し、国が失業等給付を支給する制度です。

離職後、住所地を管轄する職安で受給資格の決定手続きを行い、受給者説明会に参加します。原則として、4週間に一度の頻度で職安を訪れ、失業認定(失業の状態にあることの確認)を受けなければなりません。条件がそろえば、以下の給付も受けられます。

  • 就職促進給付
  • 教育訓練給付
  • 雇用継続給付
  • 育児休業給付

参考:ハローワークインターネットサービス;雇用保険手続きのご案内

スキルアップにつながる職業訓練

求職者や在職者は、以下に挙げる職業訓練(ハロートレーニング)を受けられます。職業訓練を希望する人は、住所を管轄する職安の窓口に相談しましょう。

  • 離職者訓練:主に雇用保険の受給者が対象
  • 求職者支援訓練:主に雇用保険を受給できない人(受給が終わった方も含む)が対象
  • 在職者訓練:主に中小企業に在職している人が対象(有料)
  • 学卒者訓練:主に中学・高校の卒業者や専門課程を修了した人が対象(有料)
  • 障害者訓練:障害のある人が対象

離職者訓練と求職者支援訓練は、再就職の実現に向けて必要なスキルを身に付ける訓練です。受講が必要と認められた場合に限り、求職者は無料(テキスト代は自己負担)で所定の講座を受けられます。

参考:ハロートレーニング|厚生労働省

職安で求職する手順

申し込み手続き

(出典) pixta.jp

職安で求職する際は、一連の手順に則って手続きを行います。職安の窓口を介さず、「ハローワークインターネットサービス」で職探しをする手もありますが、企業の中には「職安の紹介状」を必須とするケースも少なくありません。

求職の申し込みを行う

職安の求人に応募するには、「求職の申し込み」をする必要があります。申し込みの方法は以下の2パターンから選択が可能です。

  • 最寄りのハローワークに出向き、窓口で求職申し込み手続きをする(利用登録者)
  • 自宅のPCからハローワークインターネットサービスにアクセスし、求職者マイページアカウントを登録する(オンライン登録者)

ハローワークインターネットサービスを通じて登録した人は、「オンライン登録者」として自主的な就職活動ができますが、一部の機能が制限された状態です。

オンライン登録後、職安に行き職業相談を行うと、求職区分が「利用(来所)登録者」に変更され、全ての機能が使えるようになります。

利用登録の完了後は、「ハローワーク受付票(ハローワークカード)」が発行されます。職安を利用する際は必ず持参しましょう。

参考:ハローワークインターネットサービス;求職申込み手続きのご案内

求人検索・職業相談を行う

職安には、求人検索用のPCが複数台設置されています。求人を探す際は、職安の窓口で用件を伝え、ハローワーク受付票を提示しましょう。希望する求人があれば、PCで求人票を印刷し、窓口に提出します。

「気になる求人があるが、応募条件を満たしていない」という場合、すぐに諦めてしまわずに職員に相談することをおすすめします。職員が企業の担当者に連絡をし、応募できるように働きかけてくれる可能性があるためです。

「応募先を自分なりにリサーチしたい」という人は、応募はせずに求人票を持ち帰っても構いません。職員と相談しながら応募先を決める手もあります。

紹介状を作ってもらう

求人に応募する際は、「紹介状」を発行してもらう必要があります。職安経由の人材であることを証明する書類であり、書面には求職者の氏名や応募先の所在地、面接日などが印刷されています。紹介状発行の流れは以下の通りです。

  1. 求職者が職員に応募する企業を伝える
  2. 職員が企業の担当者に電話をし、面接日の調整をする
  3. 求職者に紹介状の控えが手渡される
  4. 紹介状の控えを持参して面接に臨む

ハローワークインターネットサービスのオンライン自主応募を利用すれば、企業に直接応募できます。ただし、求人情報に紹介状を必須とする旨が記載されている場合は、職安を通じて応募しなければなりません。

職安で雇用保険の手続きを行う手順

説明会を受ける

(出典) pixta.jp

国の雇用保険制度は、失業者の生活の安定と、1日でも早い再就職を目的としています。雇用保険の基本手当(以下、基本手当)を受給するには、決められた期日に職安に足を運び、「失業中であること(失業の認定)」と「求職活動を行っていること」を職員に示す必要があります。

受給資格の決定と初回説明会へ出席

離職後は、受給資格の決定を行います。住居を管轄する職安で求職の申し込みを行った後、雇用保険被保険者離職票などの必要書類を提出しましょう。

受給要件を満たした人は雇用保険説明会に参加し、受給手続きの進め方や就職活動のルールなどの説明を受けます。

受給資格の決定後、すぐに基本手当の受給がスタートするわけではありません。受給資格の決定を受けた日から7日間が経過するまでは「待期期間」と呼ばれ、この間は支給が行われないのがルールです。

人によっては、雇用保険説明会の参加が待期期間満了後になるケースもあります。自己都合や懲戒解雇による離職の場合は、待期期間が経過した日の翌日から2カ月または3カ月の「給付制限」が設けられる点にも注意しましょう。

参考:雇用保険の失業等給付受給資格者のしおり

失業の認定を受ける

受給資格が決定した後は、決められた日時に職安に出向き、失業の認定を受ける必要があります。失業状態ではないと判断された場合、基本手当の支給が打ち切られる点に留意しましょう。

失業の認定日は職安が事前に決定します。1回目の認定日は待期期間を経た後に設定されます。2回目の認定日は4週間に1回が原則です。認定日までに一定の求職活動の実績を積まなければ、失業の認定は受けられません。

実績として認められる活動には、職安での職業相談や各種セミナーへの参加、職安を通じた求人への応募などがあります。

待期期間などを経て受給

待期期間の満了後、失業認定されると、対象者の口座に基本手当が振り込まれます。入金日は認定日当日から約1週間と考えておきましょう。

基本手当の日額は、離職される直前の6カ月に支払われた賃金の合計金額を180で割った金額の約80~45%が原則です。基本手当が受給できる日数の上限(所定給付日数)は、離職日の年齢や雇用期間、離職理由などによって異なります。

失業認定日に職安に来所しなかった場合、認定日までの期間と来所しなかった認定日当日の認定が受けられません。病気やけが、面接日などのやむを得ない事情がある場合は、職安に認定日の変更を申し出ましょう。

参考:~失業給付は、いつから、いくら、いつまで~

職安で求人を探すコツ

ネクタイを整える男性

(出典) pixta.jp

ネット上では、「職安は優良案件が少ない」「自分に合う仕事がなかなか見つからない」といった声も聞かれます。無数の求人案件の中から、自分にぴったりの仕事を探すには、どのような点を意識すればよいのでしょうか?

条件をしっかり入れて検索する

職安で取り扱う求人は数が多く、明確な目的なく閲覧していると、あっという間に時間が経過してしまいます。混み合う時間帯は利用時間に制限をかける職安もあるため、仕事探しの軸を明確にした上で、効率的に検索する必要があります。

自分の希望要件を全て満たす求人は少ないことを前提に、譲れない条件を決めておくのがポイントです。詳細検索条件をしっかりと入力して検索しましょう。

相談窓口では、ハローワークインターネットサービスでは公開されていない求人を紹介してもらえます。求める条件やキャリアビジョンなどを事前に洗い出しておくと、職員との話がスムーズに進みます。

職安の求人票だけで決めない

職安の求人票には、業務内容や給与、勤務時間などの基本的な情報しか記載がないケースがほとんどです。求人票の情報だけで応募を判断せずに、企業のWebサイトや公式SNS、口コミなどをチェックしましょう。

年間を通じて求人が掲載されている企業の場合、必ずしも業績が堅調で常に増員中であるとは限りません。労働環境が過酷で、離職者が絶えない職場という可能性もあります。

求人票と実際の仕事内容が異なるケースもあるため、安易に応募に踏み切らず、職員に詳細を確認するのが賢明です。

職安を利用するメリット・デメリット

面談

(出典) pixta.jp

職安での職探しには、メリットとデメリットの両方が存在します。職安の利用が適している人もいれば、他の手段を活用した方がスムーズに仕事が見つかる人もいるため、サービスの特徴や求人の傾向をよく把握した上で、賢く利用することが重要です。

地元に強いというメリット

職安では、住居の変更を伴わない求人を紹介するのが原則です。本人の希望がない限り、紹介される求人の大部分は地元密着の中小企業が中心となります。地元に貢献したい人やUターン転職を望む人にとって、職安は情報の宝庫といえるでしょう。

地元の中小企業の中には、エージェントや求人サイトを利用せず、職安のみで人材を採用するケースも少なくありません。焦らずにじっくりと活動を続ければ、自分の理想の職場に巡り合える可能性が高いでしょう。

求人・相談員の質が一定でないデメリット

地元に強い一方で、求人の質にはばらつきがあるのがデメリットです。職安では求人掲載に料金がかかりません。掲載に伴う審査もそれほど厳しくなく、労働関係法令に抵触しなければ、不受理になるケースは少ないといえます。

ブラック企業が混じっている可能性がゼロではないため、応募前の調査は念入りに行う必要があるでしょう。

また、相談員の能力にもばらつきがあり、有意義な指導をしてくれる人もいれば、対応が事務的で素っ気ない人もいるようです。

よりきめ細かい支援を受けたい人は、「わかものハローワーク」や「新卒応援ハローワーク」の利用も検討しましょう(年齢制限あり)。

仕事探しは職安と民間サービスを併用しよう

履歴書とペン

(出典) pixta.jp

雇用保険の手続きや求職活動の実績作りのために訪れる人もいますが、本来職安は、求職者の就業支援や企業側の雇用促進を目的としています。誰でも無償でサービスを利用できるため、転職では職安のサービスを最大限に活用しましょう。

職安にしか求人を出さない企業もあれば、転職・求人情報サイトだけを利用して採用活動を行う企業も存在します。優良案件を逃さないように、仕事探しは職安と民間サービスを併用しましょう。

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