退職後のハローワークでの手続きを解説。給付金の受給方法と注意点も

退職後にハローワークで必要な手続きを行うと、失業中の生活をサポートし、求職活動に専念しやすくするための基本手当(失業手当)を受け取れます。基本手当の受給に必要な書類や条件などを確認し、スムーズに手続きを進めましょう。

退職後にハローワークで行う手続き

離職票

(出典) pixta.jp

基本手当は「雇用保険上の基本となる手当」という意味で失業手当の正式名称です。受け取るためには、ハローワークでの手続きが必要です。まずは基本手当を受け取るまでの流れを紹介します。

離職票の準備

ハローワークで手続きをするには、離職票が必要です。離職票は正式には「雇用保険被保険者離職票」といい、退職を公的に証明する役割があります。

離職票は企業がハローワークへ必要書類を提出することで、ハローワークから発行される書類です。会社を通して受け取るため、退職する際には、会社へ離職票の発行を依頼しましょう。

雇用保険法第76条3項によると、離職した人へ離職票を交付するのは会社の義務です。ただし離職した人が離職票の発行を希望していない場合には、会社が離職票発行の手続きを行う必要はありません。

あらかじめ「発行を希望している」と明確に伝えておくと安心です。

参考:雇用保険法|e-Gov法令検索

参考:雇用保険被保険者離職証明書についての注意|厚生労働省

退職理由を確認する

離職票が退職した会社から届いたら、退職理由が記載されている欄を確認しましょう。退職理由が「自己都合」か「会社都合」かで、給付制限期間や給付日数が異なるためです。

もし事実と異なる退職理由が記載されている場合には、ハローワークに異議申し立てできます。異議申し立てには「具体的事情記載欄」の「離職者記入欄」に具体的な離職理由を記載することに加え、その内容を証明する書類の提出が必要です。

実際は会社都合退職であるにもかかわらず自己都合退職として手続きを進めると、後から退職理由が異なるとの主張や証明をするのは難しいため、離職票を受け取ったタイミングで必ず確認しましょう。

求職の申し込み手続きをする

離職票が手元に届き、退職理由に誤りがない点を確認したら、ハローワークの利用登録者となるために求職の申し込みを行います。

ハローワークまで出向き、検索・登録用端末で求職情報を入力するか、求職申込書に記入し手続きしましょう。そのほかに、自宅のパソコンからハローワークインターネットサービスを通じた登録も可能です。

求職の申し込みを行ったら離職票を提出します。

参考:求職申込み手続きのご案内|ハローワークインターネットサービス

受給が決定したら7日間待期する

求職の申し込みと離職票の提出を行い、基本手当の受給資格を得たら、「雇用保険受給資格者のしおり」を渡され、雇用保険受給者初回説明会の日時が知らされます。

その後、7日間の待期期間を過ごします。待期期間中は失業している状態でなければいけないため、アルバイトや派遣でも、収入のある仕事はできません。

待期期間中に短期のアルバイトをした場合、働いた日数は待期期間にカウントされず、その分期間が延長されます。その分、基本手当の受給も遅れる結果になるので、注意が必要です。

雇用保険受給者初回説明会に参加する

失業保険の給付を受けるには、雇用保険受給者初回説明会への参加も必須です。受給を受ける上で理解しておくべき重要な項目について、説明が行われます。雇用保険受給資格者のしおりと筆記用具を持参して参加しましょう。

説明会が終わると「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」を受け取ります。どちらも失業保険を受け取るために必要な書類のため、紛失しないように注意しましょう。

失業認定を受ける

実際に基本手当を受け取るには、4週に一度のペースで指定される失業認定日に、失業状態にあることの認定をハローワークで受けなければいけません。認定を受けるには、原則として期間(約1カ月)中に2回以上の求職活動実績が必要です。

求人への応募や、ハローワークや民間事業者・公的機関が行う職業相談・職業紹介などの利用、再就職に役立つ国家試験や検定の受験などが、求職活動実績として認められます。

もし失業認定日にハローワークへ行けない場合には、失業認定を受けられず、その月の手当を受給できません。

失業認定日にハローワークへ行けないと分かった時点で、認定日の変更を申し出ましょう。変更が認められるのは特別な場合に限られ、自己判断せずハローワークに確認しましょう。理由は、アルバイトを含む就職、就職に向けた面接、資格試験の受験、本人の病気・けが、冠婚葬祭などです。

給付を受ける

失業認定を受けると、通常は1週間ほどで手当が支給されます。土曜・日曜・祝日・年末年始は金融機関が休業しているため、失業認定日が年末年始やゴールデンウィーク前だと、振り込まれるまでに1週間以上かかる場合もあるでしょう。

併せて振り込まれる手当の金額が、毎回一定ではない点も押さえておきましょう。認定日は4週に1回のため支給対象となるのは最大28日ですが、認定対象期間や就労の有無などによって、支給額が28日分より少ないケースもあります。

受給資格者証の第3面にある処理状況欄で、支給される金額の確認が可能です。

基本手当(失業手当)の受給条件

手当てを受け取るイメージ

(出典) pixta.jp

必要な手続きをしたからといって、全ての人が基本手当を受給できるとは限りません。基本手当の目的は、働ける能力と働きたいという意思があるにもかかわらず、就職できていない人をサポートすることです。

目的に沿った運用のため、手当を受給するには4つの条件を満たしている必要があります。

受給には条件がある

基本手当を受け取るには、「退職前2年間に雇用保険の被保険者期間が12カ月以上」なければいけません。かつての勤務先で雇用保険に加入していたとしても、働いていた期間が12カ月よりも短い場合には、手当の支給対象外です。

加えて「就職しようという積極的な意思」や、「就職できる能力」も持っている必要があります。その上で仕事探しに取り組んでいるにもかかわらず、就職できていない場合に受け取れるのが基本手当です。

参考:基本手当について|ハローワークインターネットサービス

用意すべき書類や持ち物は?

書類をチェックする男性

(出典) pixta.jp

求職の申し込みと受給資格決定のため、ハローワークを初めて訪れる際には、複数の持ち物が必要です。忘れると手続きが1日で終わらない可能性もあるため、事前にチェックして忘れ物がないようにしましょう。

必要な持ち物一覧

基本手当の手続きで初めてハローワークを訪れる際には、以下の書類を忘れずに持っていかなければいけません。

  • 雇用保険被保険者離職票‐1:ハローワークが作成し会社経由で届く退職者の情報が記載されている書類
  • 雇用保険被保険者離職票‐2:ハローワークが作成し会社経由で届く退職理由や賃金などについて記載されている書類
  • 個人番号確認書類:マイナンバーカード・通知カード・個人番号が記載された住民票など
  • 身元確認書類:運転免許証・マイナンバーカードなど
  • 写真(縦3.0cm×横2.4cm)2枚:毎回マイナンバーカードを提示することで省略可能
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード:一部指定できない金融機関あり

参考:雇用保険の具体的な手続き|ハローワークインターネットサービス

受給額はどれくらい?

通帳を見る男性

(出典) pixta.jp

基本手当はいくらくらいの金額を受け取れるのでしょうか?受給額の目安を把握しておくと安心です。

年齢や給与によって異なる

受け取れる受給額は、年齢や退職前6カ月の給与によって決まります。年齢が上がるほど、また給与をもとに算出する賃金日額が高いほど、1日あたりの支給額である基本手当日額が上がる仕組みです。

ここでは離職時に29歳以下である場合の、基本手当日額を紹介します。

  • 賃金日額2,746円以上5,110円未満:基本手当日額2,196円~4,087円
  • 賃金日額5,110円以上12,580円以下:基本手当日額4,088円~6,290円
  • 賃金日額12,580円超13,890円以下:基本手当日額6,290円~6,945円
  • 賃金日額13,890円超:基本手当日額6,945円

参考:雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ|厚生労働省

手当はいつまで受給できる?

資料を見ている男性

(出典) pixta.jp

基本手当の手続きを先延ばしにしていると、本来であれば受け取れるはずの手当を受け取れなくなるかもしれません。受給できる期間がいつまでなのかを確認し、できるだけ早めに手続きを行うのがおすすめです。

原則的に最長で約1年間

基本手当を受け取れる期間は、年齢や離職の理由、雇用保険の被保険者だった期間の組み合わせに応じて、最低90日から最高360日までのどこかに決まります。

例えば、会社の倒産を理由に離職した30歳未満の人の場合、被保険者だった期間ごとに以下の給付日数という設定です。

  • 1年未満:90日
  • 1年以上5年未満:90日
  • 5年以上10年未満:120日
  • 10年以上20年未満:180日

基本的に、会社都合で離職した人よりも自己都合で離職した人の方が、給付日数が短くなる点を知っておきましょう。

ただし受給期間内に、病気・けが・妊娠・出産・育児などで30日以上働けない状態が続くと、3年間を上限に、働けない日数分の受給期間を延長可能です。

参考:ハローワークインターネットサービス - 基本手当の所定給付日数

早いうちに申請しないと損をする

基本手当を受け取れるのは、原則として離職した翌日から1年以内のため、早めに手続きを行わなければ、受け取れるはずの基本手当を受け取れなくなる可能性があります。

2023年8月31日に自己都合で離職した人のケースで考えてみましょう。この場合、受給期間は2024年9月1日まであります。

基本手当の手続きのためにハローワークを訪れたのが2024年6月1日だったとすると、その後アルバイトなどの就労をしていなければ、6月7日に待期期間は終了です。

6月8日から2カ月間の給付制限があり、8月8日に給付制限が終了すると、8月9日から基本手当が支給されます。ただしこの場合、基本手当を受け取れるのは2024年9月1日までの分のみです。

もし90日の給付日数があったとしても、残りの日数分の手当は受け取れません。

参考:雇用保険受給者のみなさまへ|川崎公共職業安定所

ハローワークに関するよくある質問

ハローワーク

(出典) pixta.jp

退職にあたり初めてハローワークを利用する人もいるでしょう。慣れていないため不安に感じているなら、よくある質問をチェックしておくのがおすすめです。基本手当の申請や服装・離職票の紛失に関する疑問点に対して回答します。

基本手当はいつまでに申請すればよい?

退職した会社から離職票を受け取ったら、できるだけ早いタイミングでハローワークへ行き、基本手当の手続きを行いましょう。離職票に有効期限はないため、必ずしもすぐに手続きをしなければいけないわけではありません。

ただし、基本手当を受け取れる受給期間は、原則として離職の翌日から1年間と定められているため、手続きが遅れると、タイミングによっては基本手当を満額受け取れない可能性があります。

ハローワークを訪れる際の服装は?

ハローワークへ行くときの服装に特別なルールはなく、私服で訪れる人が多いでしょう。ただし、基本手当の手続きや求職活動をサポートする職員への印象を考慮し、清潔感のある服装を意識するのがポイントです。

同じ服でも洗濯で汚れを落とし、アイロンでシワを伸ばすと清潔感のある印象に近づきます。自分のサイズに合う服を選ぶことも重要です。

初回の手続きや失業認定日であれば私服でも構いませんが、面接練習を予定している場合には、本番と同じようにスーツを着用していくのがおすすめです。

離職票を紛失した場合はどうする?

基本手当の手続きには離職票が欠かせませんが、不注意から紛失してしまう恐れもあります。万が一なくした場合の手続きを知っておくと、慌てずに対処が可能です。

会社かハローワークに申請すれば再発行できる

離職票を紛失した場合には、退職した会社かハローワークへ申請することで再発行できます。手元にないことが判明したら、できるだけ早いタイミングで申請しましょう。

ハローワークに申請するときには、「雇用保険被保険者離職票再交付申請書」に必要事項を記入し手続きします。電子申請による届け出もできるため、ハローワークを訪れなくても再発行できます。

再発行に必要な書類

再発行の手続きをするには、以下の書類が必要です。本人が手続きを行うのであれば2種類、代理人が手続きを行う場合は3種類の書類をそろえなければいけません。

  • 雇用保険被保険者離職票再交付申請書
  • 運転免許証・マイナンバーカードなど顔写真付きの身分証明書
  • 代理人が申請する場合は委任状と代理人の身分証明書

また離職票を傷つけたり汚したりして再発行を申請する場合には、損傷した離職票も提出しましょう。

期間内に手続きを済ませて手当を受け取ろう

ネクタイを締める男性

(出典) pixta.jp

退職後は、ハローワークで速やかに手続きを行うことで、基本手当のスムーズな受け取りが可能です。離職票が会社から届いたら、必要な持ち物をそろえてすぐに手続きしましょう。

手続きが遅れると受給期間が終わってしまい、受け取れるはずの基本手当を満額受け取れなくなる恐れもあるため、注意が必要です。手続きの流れや必要書類・ルールなどを確認した上で、不備のないよう進めていきましょう。

次の仕事探しには「スタンバイ」の活用もおすすめです。雇用形態や勤務地・こだわり条件などを入力し、求人を検索できます。「スタンバイ」で希望に合う仕事を見つけましょう。

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