人々が幸福な生活を送れるようにサポートする職を、まとめて福祉業界と呼びます。転職する場合、将来性の有無や自分に向いている仕事なのかも気になるでしょう。福祉業の種類と将来性を左右する要素、転職を成功させるためのポイントを解説します。
「福祉」とは?
まずは福祉の定義と、含まれる業種を紹介します。福祉業界が自分に合っているか正しく判断するためにも、転職を決断する前に確認しましょう。
公的な援助・サービスで生活の安定・充足を図ること
福祉という言葉には、「幸せ」「幸福」などの意味があります。職業や公的サービスで用いるときは、「必要とする人に適切な援助・サービスを提供することで、多くの人が幸福な生活を実現すること」を指すのが一般的です。
人間社会にはさまざまな状況の人が暮らしており、中には日常生活を送るために何らかのサポートが必要な人もいます。そのような人を適切に援助し、幸福で安定した生活を実現するのが福祉業界の役割です。
福祉業の分類は主に3種類
福祉業は、大きく「児童福祉事業」「老人福祉・介護事業」「障害者福祉事業」の3種類に分類されます。総務省が公表している「日本標準産業分類」では、2023年9月時点で以下の業種が含まれます。
- 福祉事務所:社会福祉事務所
- 児童福祉事業:保育所・児童相談所など
- 老人福祉・介護事業:老人ホーム・訪問介護など
- 障害者福祉事業:グループホーム・自立訓練事業所など
- その他の社会保険・社会福祉・介護事業:更生保護施設など
福祉に関する仕事をしたいと考えているなら、自分に合った業種を選ぶことが大切です。漠然と福祉業に就職したいと考えていると、適性に合わない職を選んで後悔する結果につながりかねません。
参考:総務省|統計基準等|日本標準産業分類(令和5年6月改定)(令和6年4月1日施行)
参考:福祉・介護 |厚生労働省
福祉業界の将来性
実際に転職するときは、業界の将来性が気になるものです。福祉業界でも、業種によって将来性に影響する要素が異なります。自分が目指す業種と関連性が高い要素をチェックしましょう。
高齢化で需要増が考えられる老人福祉・介護事業
日本国内では、高齢化が進展しています。内閣府が発表した資料によると、2023年10月時点で、全人口のうち65歳以上の高齢者が占める割合は29.0%です。
この数値は今後も上昇する見込みで、老人福祉・介護事業の需要も増えていくと予想されています。担い手不足が深刻化する可能性もあり、老人福祉・介護事業への転職を検討している人は、将来性を過度に心配する必要はないといえるでしょう。
参考:令和4年度高齢化の状況および高齢社会対策の実施状況 pdf.p5|内閣府
少子化の影響を受けやすい児童福祉事業
一方、内閣府発表の資料によると、2021年10月1日時点で全人口のうち年少人口(0~14歳)が占める割合は11.8%で、さらに年々減少しています。
児童福祉事業の中でも、保育に関わる業種については、こうした少子化の影響を受けやすいと考えてよいでしょう。
厚生労働省の調査では、保育サービスの利用者は2025年にピークに達した後、横ばいが続くと考えられています。
現状では働く女性の増加や待機児童問題などもあるため、すぐに仕事がなくなるリスクは少ないといえます。とはいえ、少子化の影響で緩やかに需要が減少していく可能性はあるでしょう。
参考:令和4年版 少子化社会対策白書 全体版(PDF版)|内閣府
参考:保育を取り巻く状況について pdf.p22|厚生労働省
有資格者の需要も高まると予測される
福祉業界で働くスタッフの中には、専門的な知識・スキルを学んで国家資格を取得している人材もいます。福祉関連の国家資格の一例は、以下の通りです。
- 社会福祉士
- 介護福祉士
- 精神保健福祉士
高度な福祉サービスを提供するにあたって、専門的なスキルを習得している有資格者の存在は欠かせません。そのため、福祉業界で長期的に活躍したいなら、資格を取得するのがおすすめです。
国家資格以外にもさまざまな資格があるため、自分が活躍したい分野で役立つものを選ぶのが大切といえます。
福祉業界に適性がある人の特徴は?
転職するにあたって、福祉業界が自分に向いているのかを見極めることも重要です。ここでは、福祉業界に適性がある人の特徴を2つ紹介します。
ミスマッチを防ぐためにも、この機会に以下で紹介する条件に該当しているか考えてみましょう。
コミュニケーションが得意
どの分野で働くとしても、他者とのコミュニケーションが欠かせないのが福祉業界の特徴です。必要なサービスを提供することで、幸福な生活を送れるようにサポートするという仕事の性質上、他のスタッフ・利用者との綿密なコミュニケーションが求められます。
相手が何を必要としているのか、何を伝えたいのかを正しく理解し、誤解がないように意思疎通を図ることが必要です。
転職前には、「他者とコミュニケーションを取ることが好きだろうか」と考えてみるとよいでしょう。もし他者とのやりとりを苦手に感じているなら、ミスマッチになる可能性があります。
十分な体力がある
福祉サービスを提供するにあたって、体力が求められるシーンも多々あります。介護分野で働くなら、入浴・食事といった日常生活の介助1つ1つに体力が必要です。
保育分野で働くのであれば、子どもを抱っこしたり、屋外活動に付き添ったりするのに体力が求められるでしょう。
職場によっては2交替制を採用していて長時間労働になるケースもあるため、そのような職場を選ぶのであればさらに体力が必要です。この点に不安があるなら、普段から体力づくりに励むことをおすすめします。
福祉業界への転職で意識したいポイント
転職してから後悔するのを防ぐためにも、以下で紹介する3つのポイントを前もって確認しておきましょう。それぞれどのように考えればよいかを紹介します。
本当に適性があるか見極める
異業種から福祉関係職への転職を検討しているなら、自分が本当に福祉に適性があるのかを吟味しましょう。
- 自分が目指す分野でどのような仕事が行われているのか
- 現場で活躍する上でどのようなスキルが求められるのか
- 自分の性格と合っているか
- 他者とコミュニケーションを円滑に取れるか
- 長期的に活躍できそうか
上記の要素を総合的に考え、自分に適していると判断できるなら、転職を決断してもよいかもしれません。
目指す職種で役立つ資格を取得する
福祉業界では、有資格者の需要が高まると考えられているため、自分が目指す分野で重宝される資格を取得するのもおすすめです。資格の中には、養成施設に一定期間通う必要があるものや、実務経験が求められるものもあります。
まずはどのような資格が役立つかをリサーチし、現実的に取得できそうなものを目指すとよいでしょう。
資格を取って転職した後も、経験を積みつつスキルアップすれば、新たな資格取得を目指せます。より上位の資格を持つことで、自分の市場価値が高まり、キャリアアップを実現しやすくなります。
重視する条件を明確にする
転職先を選ぶ段階になったら、重視する条件を明確にしましょう。年収アップを目的としているなら、提示される報酬水準に意識を向ける必要があります。ワークライフバランスを改善したいと考えている人は、福利厚生・労働時間を確認しましょう。
また、自分が目指すキャリアプランを実現できる環境が整っているか、スキル・経験を適切に評価してくれるかも重要なポイントです。転職先選びで重視する条件と、妥協できる条件を明確にすることで、ミスマッチを防ぎやすくなります。
福祉業界への転職では自分に合う職種を選ぼう
一言で福祉業界といってもさまざまな分野に分かれており、職種もたくさんあります。自分のキャリアプランを明確にした上で将来性などを考え、適した転職先を選ぶことが大切です。
すでに転職先を探す段階に進んでいるのであれば、多くの求人を比較・検討しながら、自分に合った企業がどこかを考えましょう。
「スタンバイ」では、福祉業界の求人も数多く掲載しています。扱っている職種も多種多様なため、よく吟味して後悔しない転職を実現しましょう。