精神保健福祉士の仕事とは?勤務先別の役割や資格の取得方法を解説

精神保健福祉士は、精神的な障害を抱えた人やその家族を支援する職業です。しかし、具体的にどのような仕事をしているのか、あまり知られていないかもしれません。精神保健福祉士が勤務する場所や仕事内容、資格の取得方法などについて解説します。

精神保健福祉士とはどんな資格?

福祉士の女性

(出典) pixta.jp

精神保健福祉士は、福祉系の国家資格の1つです。どのような資格なのか、またほかの福祉系国家資格である社会福祉士・介護福祉士とは何が違うのか、詳しく見ていきましょう。

精神保健福祉士は名称独占の国家資格

精神保健福祉士は、社会福祉士や介護福祉士と並ぶ福祉系国家資格の1つです。1997年に制定された「精神保健福祉法」に基づき定められました。

名称独占資格なので、資格を取得しなくても相談などの業務には携われますが、精神保健福祉士を名乗ることはできません。仮に、資格を取得せずに精神保健福祉士を名乗った場合、処罰の対象となります。

医療機関・福祉行政機関・司法施設などに勤務し、精神的な障害を抱える人やその家族の、生活問題・社会問題を解決するためのサポートが主な仕事です。

参考:精神保健福祉士|全国社会福祉協議会
  :精神保健福祉士法 第42条 第47条 | e-Gov法令検索

社会福祉士との違い

社会福祉士は、1987年に制定された「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づいて定められている国家資格です。

日常的に困難を抱えている人からの相談に乗るという点では、精神保健福祉士と同様ですが、社会福祉士が相談に乗るのは精神に障害を抱えている人だけではありません。

高齢者・低所得者・児童など幅広い層の相談に対応するのが、精神保健福祉士とは異なる点です。災害・失業によって生活が困難になってしまった人や、子育てに難しさを抱えている人の相談にも対応します。

医療機関・児童相談所・介護施設・障害者福祉関連施設などが、社会福祉士の主な勤務先です。

参考:社会福祉士|全国社会福祉協議
  :社会福祉士及び介護福祉士法 | e-Gov法令検索

介護福祉士との違い

介護福祉士も社会福祉士と同様に、「社会福祉士及び介護福祉士法」で定められた国家資格です。障害を抱えた人やその家族からの相談に乗り、生活をサポートする仕事ですが、主に介護を必要とする人を対象としている点が精神保健福祉士と異なります。

また、精神面だけでなく身体面に障害を抱えた人や、介護が必要な高齢者の身体介助・生活援助なども介護福祉士の仕事です。

介護福祉士は、デイサービス・居宅サービス・特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・グループホームなど、さまざまな場所で働いています。

参考:介護福祉士|全国社会福祉協議会

精神保健福祉士の役割

手をつなぐ

(出典) pixta.jp

精神保健福祉士は、精神的に障害を抱えた人とどう関わり、どのような役割を果たしているのでしょうか?精神保健福祉士の主な役割を2つ紹介します。

精神的な障害を抱えた人の相談援助

精神保健福祉士の主な役割の1つは、精神に障害を抱えた人やその家族からの相談に対応し、支援団体・医療機関などへの橋渡し役となることです。

相談に訪れる人は、自身の生活や社会との関わりにさまざまな問題を抱えています。問題の解決が大きな目的であるのはもちろんですが、まず当事者や家族に寄り添うことが重要です。

相談者の中には、当事者が障害を認識していない場合や、本人の意思より家族の意向が優先されていることも少なくありません。

双方が納得できる支援をするためには、細かい詮索は控えるなどの配慮をしながら、先入観・偏見を持たずに両者の意見にしっかり耳を傾けることが重要です。

社会復帰に向けた自律訓練や就労支援

知的障害を抱えている人や、精神障害による長期的な入院によって社会復帰に不安を抱えている人などの、自立・就労を支援するのも精神保健福祉士の役割です。

食事・排せつ・入浴など、自立的な生活を送るための訓練をしたり、仕事をする上で必要な知識・スキルの習得を援助したりします。

長期的な入院によって社会復帰が難しい人に、規則的な生活を送る訓練や基本的なマナーを指導するのも、精神保健福祉士の仕事です。

近年では、メンタル面の不調を理由に休職している社員の職場復帰支援など、企業のメンタルヘルス対策を担う役割としてもニーズが高まっています。

精神保健福祉士の仕事内容

福祉士の男性

(出典) pixta.jp

精神保健福祉士の具体的な仕事内容は、勤務する場所によって異なります。職場別の仕事内容について見ていきましょう。

医療機関での仕事内容

精神保健福祉士の勤務先で最も多いのが、医療機関の精神科・心療内科などです。受診に訪れる人や家族の相談に応じるほか、入院中の患者に対する支援もします。

医師と協力しながら、グループワークやレクリエーションなどの集団精神療法も行うので、専門的な知識・技術が必要です。退院後も、家庭訪問などをしながら社会生活への復帰をサポートします。

また、そもそも医療施設への入院が、人権擁護の観点に反していないかをしっかり見ていくことも、精神保健福祉士の重要な仕事です。

福祉行政機関での仕事内容

精神保健福祉士が働く福祉行政機関には、地域の保健所・精神保健福祉センター・障害福祉サービス事業所などがあります。

福祉行政機関では、心の問題を抱えた人の相談に対応し、法律に基づいた支援や手続きを進めていくのが主な仕事です。

例えば保健所では、まだ医療機関にかかっていない精神障害のある人を病院につなげるほか、地域住民への啓発活動なども行います。

障害福祉サービス事務所では就労支援や自律訓練のほか、職業リハビリテーションも行い、一般企業とつなぐコーディネート役・橋渡し役を担います。

司法施設での仕事内容

司法施設に勤務する精神保健福祉士は、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」に基づいて、保護観察所の社会復帰調査官などとして働くのが基本です。

社会復帰調整官とは、心神喪失などの理由で他者に重大な害を与えた精神障害のある人の社会復帰をサポートし、矯正・訓練などを行う職業のことをいいます。

近年、障害を抱えている人や疾患のある収容者の数が増加しており、刑務所・少年刑務所などの矯正領域にも、精神保健福祉士の設置が求められるようになりました。精神保健福祉士は、今後も矯正領域での活躍が期待されています。

参考:心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律 | e-Gov法令検索

精神保健福祉士に求められるスキル・適性は?

ケアマネージャーの女性

(出典) pixta.jp

精神的な障害を抱えている人を支援するには、どのようなスキル・適性が求められるのでしょうか?主なスキルを2つ挙げて解説します。

相手の立場になり真摯に向き合えること

精神保健福祉士には、精神に障害を抱えている人の立場・困難な状況を理解できる優しさが必要です。

相談者の中には、自分が置かれている状況を理解できていない人も少なくありません。本人の同意のないまま入院させられている人や、家族からも見放されてしまった人などさまざまです。

そのような人の話にしっかり耳を傾け、本人の意思を尊重しつつ、真摯に向き合う姿勢が求められます。具体的な支援や手続きを進める必要はもちろんありますが、その前に、当事者にとってよい相談相手となることが大切です。

客観的かつ冷静に対応できること

相談者に対し、客観的で冷静に対応できることも必要です。精神的な障害を抱えている人に寄り添う気持ちは必要ですが、それは同情とは異なります。

障害のある人を特別扱いするのではなく、冷静な目で見守りながら、社会復帰・自立を助けることが必要です。障害があるからといって、できないことを何でもやってあげてしまうと、自立の妨げになる場合があります。

また特別視することで、障害を抱える人に対する偏見の助長につながる可能性もあるでしょう。支援したい・助けたいという強い気持ちと、客観性・冷静さのバランスをうまく取ることが大切です。

精神保健福祉士になる方法は?

資格を勉強する女性

(出典) pixta.jp

精神保健福祉士になるには、所定のルートをたどって受験資格を獲得し、国家試験に合格することが必要です。資格取得までの方法を具体的に説明します。

所定の要件を満たし受験資格を得る

精神保健福祉士国家試験の受験資格を得るためのルートはさまざまにありますが、4年制の保険福祉系大学で指定科目を修了するのが近道です。

一般大学・短大や福祉系大学・短大などを卒業し、指定科目を履修していない場合は、養成施設等のカリキュラムを修了する必要があります。養成施設等には、一般養成施設と短期養成施設の2種類があります。

  • 一般養成施設:一般大学・短大を卒業した人が対象。1,050時間かけて基礎科目9科目・指定科目7科目を学習する
  • 短期養成施設:福祉系の大学・短大を卒業した人が対象。660時間かけて指定科目7科目を学習する

なお、短大の場合はいずれも、指定の施設で1〜2年の相談援助実務が必要となる点に注意しましょう。

参考:[精神保健福祉士国家試験]受験資格(資格取得ルート図):福祉系大学等:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
  :4.精神保健福祉士の養成カリキュラムについて|厚生労働省

2021年から教育内容等が見直されている

近年、精神保健福祉士を取り巻く環境や、果たすべき役割は大きく変化しています。勤務する場所も医療・福祉・保健の分野だけでなく、司法・教育・産業・労働の分野へも拡大しているのが現状です。

そのため、精神保健福祉士を養成するための教育内容などの見直しが行われ、2021年から新たな教育カリキュラムが順次導入されています。

見直しの方向性は、「養成カリキュラムの内容の充実」「実習・演習の充実」「実習施設の範囲の見直し」などです。

例えば、養成課程の科目の再構築によって科目数・時間数などが変わるほか、実習演習を担当する教員の質の向上を図るために教員の要件なども見直されています。

参考:精神保健福祉士について |厚生労働省

国家試験に合格する

精神保健福祉士国家試験の受験資格を得たら、国家試験の合格を目指します。精神保健福祉士国家試験は年1回実施され、「障害のある方等の受験上の配慮」がなされているのも特徴です。

2023年に実施された試験の合格率は71.1%と難易度はそこまで高くはなく、しっかりと学習すれば合格も夢ではないでしょう。

試験に合格し、公益財団法人社会福祉振興・試験センターに登録することで、精神保健福祉士を名乗れるようになります。

参考:第25回精神保健福祉士国家試験合格結果を公表します 

精神保健福祉士は福祉系国家資格の1つ

ケアマネージャーの女性

(出典) pixta.jp

精神保健福祉士は、社会福祉士・介護福祉士と並ぶ福祉系国家資格の1つです。精神的な障害を抱えている人の生活を支援し、社会とつなぐ役割を果たします。精神保健福祉士を名乗って仕事をするには、必ず国家資格を取得しなければなりません。

また、相談者に寄り添う気持ちとともに、冷静な視点で障害のある人を見守る姿勢も必要です。医療・福祉・保健分野に加えて、司法・一般企業などにも活躍の場が広がっています。

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