歯科医院では、さまざまなスキルを持つスタッフが活躍しています。歯科治療を提供する上で欠かせない職業の1つが、歯科衛生士です。歯科衛生士に向いている人とは、どのような人なのでしょうか?向いていない人の特徴や仕事内容も見ていきましょう。
歯科衛生士に向いている人に共通する特徴
以下で紹介する3つのポイントに合致する人は、歯科衛生士への適性が高いといえます。歯科衛生士として活躍するには国家資格が必要で、取得するためには一定の時間がかかります。
資格取得・転職を実現してから後悔しないためにも、早い段階で向いているかどうかチェックするのがおすすめです。
細かい作業の繰り返しが苦にならない
歯科衛生士の仕事は、診療補助・予防処置などさまざまですが、細かい作業を繰り返すことが多いという特徴があります。
また、患者1人の治療にかけられる時間は決まっているため、スピーディーかつ正確に処置することも大切です。
長時間同じ作業をし続けることが多いため、高い集中力を維持できなければなりません。そのため、細かい作業を飽きずに続けられる人に向いているといえるでしょう。
誰に対しても平等に対応できる
歯科医院には、さまざまな患者が来院します。歯科衛生士として働く上では、患者が接しやすい人・接しにくい人に関係なく、誰に対しても平等に処置することが求められます。
患者と性格が合わないからといって、処置するときに手を抜くことは認められません。どんな患者であっても柔軟に対応でき、平等性を保った上で業務を行える人は、歯科衛生士に向いているでしょう。
他者とのコミュニケーションが得意
良質な歯科サービスの提供には、患者や歯科医師・歯科助手や受付スタッフとの綿密なコミュニケーションが欠かせません。患者がどのような治療・処置を必要としているのかをヒアリングし、歯科医師と連携しながらチームとして医療を提供する必要があります。
人とのコミュニケーションが得意かつ好きでなければ、務まらない仕事といえるでしょう。コミュニケーションが苦手な人は、努力して歯科衛生士になったとしても、ミスマッチに後悔する結果に陥りかねません。
歯科衛生士に向いていない人の特徴
歯科衛生士に向いていない人の特徴には、どのようなものがあるのでしょうか?もし、自分が以下3つの条件に該当しているのであれば、本当に歯科衛生士が自分にとって理想的なキャリアか、見つめ直してみるとよいでしょう。
長時間集中力を維持できない
治療・処置では、細かい作業を長時間継続することが多いため、集中力を一定時間維持できない人は歯科衛生士に向いていません。1つ1つの作業を丁寧で正確、かつスピーディーに行い、安全に処置することが求められるためです。
作業中に集中力を維持できなくなると、処置がずさんになったり、事故の原因になったりすることがあります。
飽きっぽい人や細かい作業が苦手・嫌いな人も、同様の理由で向いていないといえるでしょう。
学習意欲が低い
歯科医療に関係する技術は日々進歩しており、新たな治療法が開発されたり、既存の治療法がアップデートされたりします。歯科衛生士も歯科医療に携わる専門家の1人として、最新の技術を熟知しておくことが必要です。
そのためには、たとえ忙しかったとしても毎日学習する時間を確保し、最新の知識を取り入れてスキルアップしなければなりません。
従って、学習意欲が低く技術にあまり興味がない人は、歯科衛生士に向かないといえるでしょう。
状況に応じた柔軟な対応ができない
人によって抱えている疾患はさまざまで、具体的な症状・原因も異なります。似たような症状を抱えて来院した患者でも、背後に違う原因を抱えていることもあるでしょう。
歯科衛生士は、歯科医師の指導を受けつつ一部の治療行為を担当します。その際、1人1人の症状・原因に合わせて、適切に処置する柔軟な対応力が求められます。
状況に応じて柔軟な対応ができなければ、歯科衛生士として長期的に活躍するのは難しいでしょう。
歯科衛生士が担当する主な仕事内容
クリニック・総合病院など、歯科医療を提供している場所でさまざまな仕事を担当するのが歯科衛生士です。歯科衛生士の仕事は、以下で紹介する3つの分野に分けられます。
ミスマッチを防ぐためにも、それぞれの分野でどのようなことを担当するのかを理解し、イメージと違っていないかチェックしておきましょう。
歯科予防処置
虫歯・歯周病といった疾患の予防処置を提供することは、歯科衛生士が担当するメインの仕事の1つです。具体的な予防処置としては、以下が挙げられます。
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歯石除去・歯面清掃の実施
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フッ化物歯面塗布の実施
定期検診時に受けることが多い、歯肉縁上の歯石除去や歯の着色を除去する歯面清掃などが予防処置に含まれます。
歯科診療補助
歯科診療は、歯科医師を中心としたチーム医療です。歯科衛生士は歯科医師と協働で診療にあたります。その中で、歯科医師の指示を受け、歯科衛生士は治療の一部を担当することがあります。
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歯周組織検査
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歯周ポケット内への薬物塗布
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患者への説明
このほか、歯科医師に手術器具の受け渡しをしたり、必要な準備を整えたりなど、処置をスピーディーに進めるためのサポートをするのも、歯科衛生士の重要な仕事です。
歯科保健指導
予防処置・診療補助だけでなく、保健指導を担当するのも歯科衛生士の特徴といえます。保健指導に含まれる仕事の一例は、以下の通りです。
- 歯磨き指導
- 訪問口腔ケア
- 食育支援
- 摂食・嚥下(えんげ)機能訓練
歯科保健指導の中でも、歯磨き指導を中心とした口腔内の清掃方法の指導は、セルフケアのスキルアップを専門的に支援する大切な仕事で、むし歯や歯周病を予防するために欠かせません。
歯科衛生士が活躍する主な職場
歯科衛生士の転職先には、主に医療機関と行政機関の2つがあります。多くの歯科衛生士は、個人開業医に勤めることとなりますが、どこに転職するかによって担当する仕事に違いが出るため、自分のキャリアプランを実現できる転職先を選ぶことが大切です。それぞれの特徴を見ていきましょう。
医療機関
個人開業医や口腔外科のある総合病院・大学病院などの医療機関が、歯科衛生士の代表的な勤務先です。現状8割の歯科衛生士が個人開業医へ勤務しています。
主に、歯周病の検査・PMTCの実施・定期検診の実施・歯科医師の診療補助などを担当します。歯科医療の最前線で働きたいと考えている人に、おすすめの職場です。
最新技術に触れてスキルアップするために、新技術の導入に積極的な医療機関を選ぶのもよい方法です。
行政機関
医療機関で働く歯科衛生士と比べると少ないものの、保健所などの行政機関で活躍している人もいます。行政機関で働く場合、医療の提供ではなく保健指導がメインの業務です。
母子対象の歯磨き指導や、要介護者の口腔ケアなどを担当する機会が増えるでしょう。場合によっては、学校をはじめとした教育機関に出向き、歯科保健指導などの教育を担当することもあります。
ただし行政機関は、臨床経験を積んで活躍したいと考えている人には向いていません。自分のキャリアプランを考慮した上で、最適な職場を選択しましょう。
歯科衛生士になるためのルートは?
歯科衛生士として活躍するには、決められたルートに従って国家資格を取得しなければなりません。
最後に、歯科衛生士の資格を取得するまでの流れを紹介します。一定の時間がかかるため、現実的なスケジュールを立てて資格取得を目指すことが大切です。
歯科衛生士養成機関で所定のカリキュラムを修了する
歯科衛生士国家試験を受験するには、所定の要件を満たさなければなりません。2023年時点における、歯科衛生士国家試験の受験資格を得るための要件は、「歯科衛生士養成機関で3年以上のカリキュラムを修了すること」です。
歯科衛生士養成機関は数多く存在しており、大学や短期大学、専門学校のいずれかに通うことになります。
大学・短期大学では歯科衛生士学科や口腔保健学科、専門学校であれば歯科衛生士専門学校や医療専門学校の歯科衛生士学科が入学先の候補です。
歯科衛生士国家試験に合格する
歯科衛生士養成機関で所定のカリキュラムを修了して受験資格を得たら、歯科衛生士国家試験を受験して合格しなければなりません。国家試験は年1回、毎年3月頃に実施されます。出題内容の一例は以下の通りです。
- 人体の構造と機能
- 歯および口腔の構造と機能
- 疾病の成り立ちと回復過程
- 臨床歯科医学
- 歯科保健指導論・診療補助論
試験に合格するためにも、養成機関で学んだことは一通りマスターしておきましょう。なお、2023年に実施された試験の合格率は93.0%でした。学んだことをきちんと理解していれば、合格しやすいといえるでしょう。
参考:第32回歯科衛生士国家試験の合格発表について|厚生労働省
向き不向きを確認して歯科衛生士を目指そう
歯科衛生士は、クリニック・総合病院などの医療機関で、歯科医師と連携しながら医療サービスを提供したり、行政機関で保健指導を担当したりする職業です。長時間同じ作業を繰り返すなどの特徴があり、高い集中力と作業の丁寧さが求められます。
これから歯科衛生士の国家資格を取得して転職することを考えているのであれば、自分に向いている仕事なのかきちんと考えることが大切です。向いている人・向いていない人の特徴と自分を照らし合わせ、判断するのをおすすめします。
すでに歯科衛生士の資格を取得していて転職先を探しているのであれば、自分に合った職場を選びましょう。「スタンバイ」では医療関連の求人も数多く取り扱っており、歯科衛生士の求人も多数掲載しています。
雇用形態や勤務地のほか、こだわり条件でも検索できるので、ぜひこの機会に利用してみてはいかがでしょうか。
東京医科歯科大学歯学部附属歯科衛生士学校卒。早稲田大学大学院創造理工学研究科修了。歯科衛生士として歯科医療の品質、効率化向上の新手法を追求。噛む重要性を訴え、表情筋エクササイズや口もとの美の提案に尽力。全国での講演、ミスユニバースセミナー担当、NHK「朝イチ」や「きれいの魔法」等メディア出演多数。
著書:
顔の老化は咀嚼で止められる
監修者のコメント
歯科医衛生士の仕事は、体の一部ではありますが、健康の入り口を支える仕事です。患者とのコミュニケーションを大切にし、信頼関係を築けるコミュニケーション能力を持つ人や、手指の巧緻性があり細かな作業を丁寧に行える人、チームワークを重視し協調性を持って仕事に取り組める人、向上心を持って専門知識を常に学び、更新していく人が適しています。介護予防における口腔ケアのニーズも高まって、歯科衛生士の活躍できる場がますます広がっています。興味のある方は、ぜひ専門学校や大学の資料を取り寄せて情報収集を行ってみてはいかがでしょうか。