救急救命士の将来性を解説!現状や活躍の場所、キャリアパスもチェック

医療職として知られる救急救命士は、主に消防署で救急医療に携わっています。職業的な将来性は高いのでしょうか?これから資格取得を目指す人や、転職を考える人には気になるポイントです。活躍できる場所やキャリアパス、仕事のやりがいを解説します。

救急救命士の将来性は高い?

救急車

(出典) pixta.jp

救急医療現場で活躍する救急救命士の需要は、どのような傾向があるのでしょうか?これから将来性が見込める職業なのか、今後の方向性について解説します。

救急車の出動回数は増加傾向に

救急車の出動回数は、年々増加傾向です。東京都では「東京都救急搬送患者受入体制強化事業」として、救急医療の受け入れ体制を整えるため、救急救命士の配置試験を行っています。2017年度の調査対象における救急搬送件数は、前年と比べて増加傾向です。

また、総務省消防庁の「令和4年中の救急出動件数等(速報値)」によれば、2022年中の救急自動車による救急出動件数は722万9,838件で、前年比16.7%増となっています。現状においても、増加傾向が続いていることが分かるでしょう。

救急医療のニーズは今後も高まっていくと予想されるため、救急救命士は将来性の高い仕事といえます。

参考:救急救命士が医療機関で業務する必要性と課題解決のための提言|厚生労働省

参考:報道発表 「令和4年中の救急出動件数等(速報値)」の公表 | 総務省消防庁

救急車に救急救命士の乗車が必須になる可能性も

消防庁では救急医療の高度化に対応できるよう、救急隊のメンバーのうち、少なくとも1人以上は救急救命士を配置できるよう体制を整えています。

すでに多くの自治体では、救急車が出動する際に救急救命士が必ず乗車しており、今後はさらにニーズが高まる見込みです。

救急車の出動が増加している点も踏まえ、救急救命士の増員や資格取得のサポートは、今後も進んでいくでしょう。

東京都ではすでに、潜在的な有資格者を活用するため「デイタイム救急隊」の制度を設け、夜間勤務が難しい救急救命士を積極的に採用しています。救急医療のニーズが高まるに伴い、多様な働き方や資格の活用も可能になるでしょう。

参考:刊行物 令和4年版 消防白書 | 総務省消防庁

多くの場所での活躍が期待されている

救急救命士は、命に関わる病気・ケガなどで搬送を必要とする人の、救命措置・応急処置に携わる職業です。

現状は医療機関での業務には制限がありますが、救急医療の疲弊や看護師不足の解決策として、潜在救急救命士の採用・掘り起こしが検討されています。

潜在救急救命士だけでなく、今後資格を取得していく人も同様です。不足しているリソースを補うため、さまざまな場での活躍が期待されています。

医療機関との連携やイベントでの救護措置など、活躍できる場所は増加傾向です。今後さらに活躍の場が広がり、医療現場・救護活動で救急救命士の資格が生かせるようになれば、セカンドキャリアも考えやすくなるでしょう。

救急救命士の現状

救急隊

(出典) pixta.jp

現状、救急救命士の働く場所や仕事内容には、どのような特徴があるのでしょうか?主な活躍の場である消防署での扱いや、担当できる医療行為について解説します。資格取得後に、スキルアップを目指す方法も見ていきましょう。

救急救命士の採用枠は少なめ

救急救命士の勤務先は、大半が消防局です。しかし、自治体により採用枠には差があり、資格を持っていても就職が難しいケースがあります。

厚生労働省の発表資料「救急救命士が医療機関で業務する必要性と課題解決のための提言」では、潜在救急救命士に関して厚生労働科学研究「救急医療体制の推進に関する研究」が紹介されており、2018年3月末時点で全体の16%です。

潜在救急救命士には、定年・途中退職者以外に、消防局に就職できず他の仕事に就いている人も含まれます。

上記の資料では、全国救急救命士養成施設協議会(JESA)に属する救急救命士養成施設の卒業生の状況も調査しており、2018年3月末時点で約30~40%の免許取得者が、資格を生かせない職業に就いている状況です。

民間の就職先が多い国家資格と比べると選択肢が少なく、採用数の問題で資格を生かして働けない事態も発生していると考えられるでしょう。

参考:救急救命士が医療機関で業務する必要性と課題解決のための提言|厚生労働省

担当できる医療行為が限定的

救急救命士が担当できるのは、緊急時の救命や一部の医療行為に限られます。医師・看護師とは対応できる分野が異なるため、医療機関での幅広い活躍は難しいのが現状です。

しかし、救急救命士の知識・技術を生かす目的で、処置範囲の拡大が進んでいます。ワクチン接種業務や、医師の指示のもと気管挿管・薬剤投与・静脈路確保など緊急性の高い医療行為への従事が可能となり、今後も対応できる業務は増えると考えられるでしょう。

救急救命士が対応できる医療行為が拡大していけば、資格を生かして働ける場も広がっていくと予想されます。

参考:救急救命士が医療機関で業務する必要性と課題解決のための提言|厚生労働省

参考:刊行物 令和4年版 消防白書 | 総務省消防庁

スキルアップを実現する方法

救急医療では、生命の危機に瀕している傷病者に対して、蘇生・治療を試みなければなりません。現場で経験を積むのが基本ですが、救急救命士向けの講習・研修に参加し、知識を身に付けるのもおすすめです。

積極的に新しい技術を学ぶ意思を持ち、勉強を続けていれば、さまざまな事例に対応できます。

また、関連資格を取得・受講するのもよいでしょう。救急医療従事者向けのライセンスはいくつかあり、災害医療について学ぶ「MCLS」や、蘇生トレーニングを学ぶ「ICLS」などがよく知られています。

救急救命士に必要な実技を学べるだけでなく、キャリアアップ・キャリアチェンジにも生かせるトレーニングです。

多数傷病者への対応標準化トレーニングコース MCLS|一般社団法人 日本集団災害医学会

日本救急医学会・ICLS

救急救命士が活躍できる場所

救急車と救命士

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救急救命士は、どこで働いているのでしょうか?主な勤務先や、活躍できる分野を紹介します。現状は働く場所が限定されていますが、今後は活躍の場が広がる可能性も高いでしょう。

消防署

消防庁は、救急車による救急医療を管轄しています。消防庁が管轄する「消防署」は、多くの救急救命士が活躍する職場です。

消防署で働く救急救命士は、救急車内で救急治療を行います。出動の依頼があればチームを組んで現場に向かい、患者・負傷者を医療機関に搬送するのが仕事です。

搬送中には、医師の指示に従って心肺蘇生・応急処置を担当します。医療機関への搬送後は、引き継ぎも必要になるでしょう。

医療機関

救急救命士は、医療に関する知識・技術を備えているため、医療機関で働くケースもあります。基本的には幅広い医療行為に対応する看護師資格を取得し、救急治療と合わせて活躍するケースが多いようです。

救急救命士が担当できる医療行為の拡大に伴い、一般の救急病院で働いている人もいます。病院搬送後の救急医療や、医師の指示による一部の医療行為が可能となっており、今後はますます救急救命士のニーズが高まっていくでしょう。

救急救命士の働き方はほかにも

民間救急や自衛隊、警察でも救急救命士は活躍しています。そのほか、救急救命士を養成する学校・施設で、指導にあたる専門家として働くケースもあるでしょう。

現状、活躍の場は消防署が大半を占めるものの、救急医療体制のひっ迫により、民間機関・養成施設の採用枠も増える可能性があります。

日本は少子高齢化が進んでおり、働き手の減少と救急医療のニーズの高まりがさらに加速する傾向です。現状では消防署の採用枠が少ないとしても、救急救命士の勤務先は広がっていくと考えられます。

救急救命士のやりがい

救命隊

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救急医療に携わる仕事は、大変な分やりがいもあります。現役の救急救命士はどんなときにやりがいを感じるのか、主なパターンを見ていきましょう。

救急救命士の判断が命を救うケースも

救急車内での医療行為は、搬送後の生存率・回復に大きく関わります。現場に駆け付けた救急救命士の判断によって傷病者の命が救われれば、大きなやりがいにつながるでしょう。

多くの人を助ける救急救命士は、本人や家族から感謝される場面も多いものです。お礼の言葉や元気になった傷病者の姿を見て、仕事を頑張っていく気持ちが呼び起こされる人もいます。

誰かをサポートしたい、困っている人を助けたいと考える人であれば、命を救う仕事にやりがいを感じられるでしょう。

救急医療現場での活躍

救急救命士は平時だけでなく、災害・事故・事件の現場でも活躍します。負傷した人を助けるため前線で活動する仕事は、社会に貢献できるだけでなく、充実感も大きいでしょう。

地震・台風といった自然災害の現場でも、救急医療は重要な役割を果たします。トラブル時にも出動が求められる救急隊には体力・精神力が求められますが、やりがいも大きいものです。

多くの人が助けを求める現場で、自らのスキル・経験を生かせるのは、最前線に立つ救急救命士ならではの魅力といえます。

救急救命士のキャリアパス

救急車

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救急医療に携わる中でキャリアを積むには、何をすればよいのでしょうか?一般的なキャリアパスや、ステップアップにつながる道を紹介します。

試験を受けて階級を上げる

救急救命士のキャリアアップのパターンは、いくつかあります。まずは、経験を積んで要件を満たし、「指導救命士」となる方法です。一定の実務経験・研修を経た上で、消防長の推薦を受けると指導ができる立場になります。

消防署に勤める救急救命士であれば、消防組織で定められている「昇任試験」を受けるのも、キャリアを積む方法です。経験を積んで試験に合格すると、隊長・指揮隊長のように、隊をまとめる役割を任されるようになります。

本部でキャリアを積んでいけば任される仕事も変化し、現場での仕事から組織の管理職へとステップアップが実現するでしょう。

参考:指導救命士の要件|総務省消防庁

海外で活動する道も

救急医療は、世界的にもニーズの高い仕事です。海外で日本の資格を生かすにはある程度要件がありますが、現地の日本人向けレスキューサービスも普及しています。救急救命士の資格を生かし、現地派遣で働く方法もあるでしょう。

救急医療の知識を生かし、発展途上国で救急システムの構築や現場での指導を任されるケースもあります。

本格的に海外で活動したいと考えているのであれば、その国で定められた資格の取得も検討しましょう。語学スキルや学力、養成機関への所属など要件が厳しいケースも多いですが、すでに学んだ知識に加えて、海外で活躍できるスキルを身に付けられます。

社会的ニーズが高まる救急救命士

救命救急士

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少子高齢化や救急医療の高度化に伴い、救急救命士はさまざまな分野で活躍が期待されています。現状では消防署が主な活躍の場ですが、今後はさらにニーズが高まるものと考えられるでしょう。

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