証券アナリストの仕事とは?向いている人の特徴や必要スキルを解説

証券アナリストになると、金融・投資の専門家として幅広いシーンで活躍できます。未経験者が目指すには、どのようなスキルを身に付ける必要があるのでしょうか?求められる役割や仕事内容、向いている人の特徴も解説します。

証券アナリストとはどんな職業?

株価の分析

(出典) pixta.jp

証券アナリストは、金融や投資に興味がある人が目指す職業の1つです。主に株式を発行している企業の業績や将来性を調査・分析し、投資価値を評価します。役割や仕事内容を詳しく見ていきましょう。

投資の意思決定に関わる金融のプロ

証券アナリストは、投資の意思決定に関わる金融のプロフェッショナルです。市場動向や企業の業績、将来の成長性などを調査・分析して、投資対象として価値があるかを評価します。

投資家や企業の運用担当者、ファンドマネージャーなどは、証券アナリストが作成したアナリストレポート(リサーチレポート)を基に投資の意思決定を行います。

投資家たちに有益な情報を提供し、投資の成功をサポートするのが役目といってよいでしょう。

証券アナリストは「金融アナリスト」とも呼ばれ、証券会社・資産運用会社・調査研究所などに勤務します。

証券アナリストの種類

ビジネス分析

(出典) pixta.jp

証券アナリストは所属先や業務内容によって、いくつかの種類に分かれます。ここでは、代表的な「セルサイドアナリスト」と「バイサイドアナリスト」を取り上げ、役割や業務内容を解説します。

セルサイドアナリスト

セルサイドアナリストのセルサイド(Sell-side)とは、「売る側」という意味です。主に、証券(株式や債券など)を売る証券会社や投資銀行などに所属し、個別証券の調査・分析・評価を行います。

評価の結果は、アナリストレポートにまとめられ、顧客である投資家に投資情報として提供されます。情報を分析するスキルに加え、投資家に対してプレゼンテーションするスキルも求められるでしょう。

セルサイドアナリストは、主に成長性や収益性を基に「ファンダメンタル・バリュー」を評価します。

ファンダメンタル・バリューとは、企業の実態を反映した株価の本質的な価値であり、株式が割高か割安かを判断する際の指標となるものです。

バイサイドアナリスト

バイサイドアナリストのバイサイド(Buy-side)とは、「買う側」という意味です。

証券を購入する立場にある投資信託会社・投資顧問会社・信託銀行・保険会社などに所属し、自社の資産運用のためにアナリストレポートを作成するのが主な仕事です。

資産運用を行う組織には、ファンドマネージャーが在籍しており、アナリストから提供された情報を基に運用判断を行います。

バイサイドアナリストは、さまざまな業種・企業でポートフォリオを組成するため、セルサイドアナリストよりもより広範な業種・企業を調査・分析する必要があります。

証券アナリストに向いている人の特徴

ビジネスミーティング

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どのような職業にも向き・不向きがあり、適性が高い職業であれば、自分の長所や強みを最大限に生かせます。証券アナリストには、どのようなタイプの人が向いているのでしょうか?

経済・金融・投資に興味がある

証券アナリストの仕事は、投資家やファンドマネージャーなどに投資情報を提供し、投資のサポートをすることです。市場動向や企業の業績などを分析する上では、経済・金融・投資の専門知識が求められます。

知的好奇心が旺盛で、経済・金融・投資に深い興味がある人でなければ、証券アナリストとして活躍し続けるのは難しいでしょう。知識・スキルを磨くための時間や手間を惜しまず、情熱を持って仕事に取り組める人が向いています。

コミュニケーション能力が高い

証券アナリストというと、分析やレポート作成を黙々と行うイメージを抱く人もいるかもしれません。実際は、さまざまな立場の人とやりとりをするシーンが多く、高いコミュニケーション能力が必要です。

例えば、証券会社や投資銀行などに所属するセルサイドアナリストは、投資家に評価した結果をプレゼンテーションする機会があります。

調査・分析に当たっては、企業の決算説明会に参加したり、経営者にインタビューをしたりして、自分で情報を集めなければなりません。

コミュニケーション能力が高い人は、相手と良好な信頼関係が築けるため、仕事がより円滑に進むでしょう。

集中力と根気強さがある

アナリストレポートを作成するには、企業の財務状況や業績はもとより、市場動向や政治・経済情勢といったさまざまな情報を収集する必要があります。膨大な情報を収集・調査・分析する上では、高い集中力と根気強さが欠かせません。

海外のマーケット情報をタイムリーに得るため、仕事が深夜や早朝に及ぶケースもあります。

体力・精神力があり、長時間の作業が苦にならない人でなければ、務まらない仕事といっても過言ではないでしょう。

証券アナリストに必要なスキル

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証券アナリストとして活躍するためには、どのようなスキルが必要なのでしょうか?求められるスキルは複数ありますが、特に重要視される「論理的思考力」「情報収集力・分析力」「語学力」について解説します。

論理的思考力

論理的思考力とは、複雑に絡み合う物事を体系的に整理し、矛盾や破綻のない筋道の通った考え方ができる能力です。

アナリストレポートは、投資をするか否かの意思決定に利用されるため、論理性と一貫性が求められます。証券アナリストを目指す人は、論理的思考力を磨きましょう。

顧客は必ずしも金融の知識があるとは限りません。難しい金融用語をかみ砕きながら、相手のレベルに合わせた分かりやすい説明をする上でも、論理的思考力が不可欠です。

情報収集力・分析力

証券アナリストは、最新情報を誰よりも早く入手し、アナリストレポートに反映させなければなりません。企業価値の評価や株価予測を行うためには、経済・金融・投資などの専門知識に加え、情報収集力も備えている必要があります。

情報の収集方法はオンラインだけにとどまりません。企業訪問や説明会への参加、経営者へのインタビューを通じて、生の情報を入手することも重要です。

また、企業の業績が変化する兆しを見逃さないためにも、証券アナリストは自らの分析力を高めていく必要があります。分析とは、物事をいくつかの要素に細分化し、新しい情報を引き出すことです。

分析力は一朝一夕で身に付くものではないため、日々の生活や業務の中で磨いていきましょう。

語学力

外国語ができる証券アナリストは、海外の情報を取り扱えます。投資家の中には外国人もおり、外国語でのテレビ会議やレポート作成を求められる場面も少なくありません。特に英語が堪能であれば、仕事の幅が大きく広がるでしょう。

入社時に英語力を問われない場合でも、ポジションがシニアクラスに上がると、ビジネスレベルの英語を求められる可能性があります。英語ができるかどうかで、シニア昇格が決まる場合もあるため、継続的な語学の学習を心掛けましょう。

証券アナリストの収入とやりがい

通帳と電卓

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証券アナリストには、専門的な知識とスキルが求められます。誰でも容易に就ける職業ではないだけに、社会的な評価は高く、収入も高水準です。収入や働き方、仕事のやりがいについて理解を深めましょう。

平均年収は約780万円

証券アナリストになる魅力の1つに、収入の高さが挙げられます。一般の会社員に比べて収入は高水準で、外資系企業ともなれば年収が1,000万円以上の大台に乗ることも珍しくありません。

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」において、証券アナリストは「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」に該当します。2022年の平均年収(※)は780万8,600円という結果でした。

パートタイマーや派遣社員で働く人は少なく、就業形態は正社員が大部分を占めます。フリーランスとして活躍する人もいますが、全体の10%前後に過ぎません。

※「きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別給与額」で算出

※企業規模計が10人以上の場合

参考:賃金構造基本統計調査 令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

証券アナリスト - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))

予測が的中したときの喜びは大きい

仕事のやりがいを感じるのは、自分の予測が的中したときです。予測通りに株価が上がり、投資家から感謝を伝えられたときは、大きな喜びと達成感を味わえます。

投資家にとって、証券アナリストは有益な情報をもたらしてくれる重要な存在です。多くの人々に信頼され、頼りにされることは、この上ない誇りでしょう。

高度な知識やスキルが求められる職業だけに、プロフェッショナルまでの道のりは平坦ではありません。期待を裏切らないためにも、日々努力を重ねる必要があります。

未経験者が証券アナリストを目指すには?

株価分析

(出典) pixta.jp

証券アナリストには、幅広い知識と経験が要求されるため、新卒者や未経験者がすぐに仕事を任せられることはほとんどありません。未経験者が証券アナリストを目指すには、どのようなルートをたどればよいのでしょうか?

証券会社や金融機関などに転職する

未経験者が証券アナリストのポジションで採用されるケースは少ないため、まずは証券会社や保険会社、投資銀行などに転職し、さまざまな部署・ポジションで実務経験を積むのが一般的です。

例えば、営業職として入社すれば、金融に関するさまざまな知識が身に付く上、金融アナリストに必須とされるコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力などが養われるでしょう。

各部署で経験を積んだ後、適性があれば証券アナリストとして活躍する機会を得られます。市場動向や企業の業績を分析する職種だけに、高学歴の方が採用されやすい傾向がありますが、学歴に制限は設けられていません。

CMA資格があると有利

証券アナリストに必須の資格はありませんが、公益社団法人日本証券アナリスト協会の「CMA資格」があると就職・転職に有利です。

CMA資格は、高い専門知識と職業倫理観を身に付けた金融・投資のプロであることを証明する資格です。資格を取得するには、2つのレベルからなる講座を受け、認定試験に合格しなければなりません。

最初に、第1次レベル講座を一括受講した後、第1次試験3科目を受験して合格すれば、第2次レベル講座を受講できる流れです。

第2次試験の合格後は、以下の要件を満たして、日本証券アナリスト協会に検定会員として入会すれば、資格称号として「日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)」が使えます

  • 証券分析業務などの実務経験が3年以上(合格前も含めた通算年数)
  • 証券分析に関する学識・経験・能力を充分に備えている(学識経験者)

実務経験が3年未満の人は検定会員補として登録でき、実務経験が3年に達した時点で検定会員として入会すれば、資格称号の取得が可能です。

CMA資格|日本証券アナリスト協会

証券アナリストへの一歩を踏み出そう

コンサルタントの男性

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証券アナリストは資格を必要としない職業ですが、深い専門知識と経験が求められます。新卒者や未経験者がこのポジションに就くのは難しく、いくつかのステップを踏む必要があるでしょう。

証券アナリストになるまでの道のりは長いですが、一人前になれば高収入・高待遇が期待できます。

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