運行管理者とはどんな仕事?なり方やメリットについて詳しく解説

運行管理者は、主に運送業界で活躍できる資格の1つです。しかし、具体的な仕事内容や資格取得の方法については、あまり知られていないかもしれません。運行管理者の資格を取得する方法や仕事内容のほか、メリットについても解説します。

運行管理者とはどんな資格?

トラックドライバー

(出典) pixta.jp

運行管理者は、運送を主な事業とする会社にとって不可欠な存在です。どのような資格なのか、詳しく見ていきましょう。

貨物や旅客の安全運行を管理する国家資格

運行管理者とは、貨物・旅客などの安全な運行を管理する国家資格です。トラック・バス・タクシーなどの事業用自動車を、一定数以上保有している会社では、営業所ごとに必要な人数を設置するよう義務付けられています。

運行管理者になるには、運行管理者資格者証が必要です。自動車運送事業者にとって、安全な輸送のために中心的な役割を果たす、運行管理者の存在は欠かせません。

なお、設置が必要な人数は、営業所が保有する車両台数などの条件によって異なります。

参考:自動車運送事業の運行管理者になるには

ドライバーの管理や運行計画作成が主な仕事

運行管理者は、道路運送法や貨物自動車運送事業法に則って業務を行います。主な業務は、ドライバーの管理や運行計画の作成です。

まず、乗務前のドライバー1人1人に対し、点呼を取りながら疲労状態・アルコールチェックも含めた健康状態を確認します。ドライバーが休憩・睡眠を取る施設の管理や、安全に運行するための指導・教育も行います。

また、運行計画を作成する際は、事業者が定める勤務時間内で作った乗務割に従い、ドライバーの負担とならないようなシフトを組まなければなりません。

参考:道路運送法 | e-Gov法令検索

参考:貨物自動車運送事業法 | e-Gov法令検索

運行管理者になる方法

試験

(出典) pixta.jp

運行管理者になるには、貨物・旅客など事業内容に応じた資格を取得することが必要です。資格を取得するには、2つの方法があります。それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。

参考:自動車運送事業の運行管理者になるには

運行管理者試験に合格する

運行管理者になるには、基本的に国家試験に合格しなければなりません。以下2つの要件のうち、いずれかを満たしている人が受験できます。

1つ目は、以下のいずれかの事業用自動車の運行管理の実務経験が、1年以上あることです。

  • 自動車運送事業(貨物軽自動車運送事業を除く)の用に供する事業用自動車
  • 特定第二種貨物利用運送事業者の事業用自動車(緑色ナンバーの車)

2つ目は、「独立行政法人 自動車事故対策機構」が実施する基礎講習を、修了または修了予定であることです。

試験は貨物と旅客の2分野に分かれており、運送事業の種別に応じて受験します。合格するには、総得点数が満点の60%以上で、なおかつ出題分野ごとに指定された正解数をクリアしていることが必要です。

出典:新規受験概要|受験概要|公益財団法人 運行管理者試験センター

参考:独立行政法人自動車事故対策機構 ナスバ(交通事故)

実務経験など一定の要件を満たす

以下の要件を満たしている人は、運輸支局に交付申請することで資格者証を取得できます。この場合、国家試験を受ける必要はありません。

  • 取得したい運行管理者資格の種類に応じた、運行管理の実務経験が5年以上ある
  • 実務経験の期間中に5回以上、「独立行政法人 自動車事故対策機構」が行う講習を受けている

2番目の要件については、5回のうち、少なくとも1回は基礎講習を受講していることが必要です。なお、受講回数は実務経験(基礎講習受講後)をスタートしてから数えるため、基礎講習を受ける前に受講した一般講習はカウントされません。

参考:独立行政法人自動車事故対策機構 ナスバ(交通事故)

運行管理者に関する注意点

倉庫とトラック

(出典) pixta.jp

運行管理者の資格取得を目指している人は、注意点についても確認しておきましょう。注意点を2つ紹介します。

運行目的や車両数によって選任数が異なる

設置が義務付けられている運行管理者の数は、運行目的や保有している車両数によって異なります。

  • 貨物:1~29台まで1人・30~59台まで2人・60~89台まで3人
  • 一般貸切旅客:1~39台まで2人・40~59台まで3人・60~79台まで4人・80~99台まで5人・100~129台まで6人
  • 一般乗用旅客:1~39台まで1人・40~79台まで2人・80~119台まで3人

一般乗合旅客・特定旅客については、乗車定員11名以上の車両が1台でもあれば1人以上必要です。乗車定員10名以下の場合は、5台以上で1人以上となります。車両数ごとの人数は、一般乗用旅客と同じです。

なお、保有台数が4台以下で、下記のいずれかに該当する事業者の場合、必要選任数は1人となっています。

  • 会葬者の輸送を許可条件とされている
  • 島しょなど需要の少ない地域にある
  • 車椅子用の乗降装置などを施した車両での輸送を条件とされている

参考:運行管理者の必要選任数が最低2名になります。|国土交通省

ドライバーと兼務するには条件がある

かつては、運行管理者とドライバーは兼務できませんでした。しかし現在は、「兼務するドライバーを点呼できる」「別の管理者・管理補助者が設置されている」などの場合に限り、可能となっています。

例えば、車両が20台ある貨物運輸の営業所でドライバーと兼務するためには、2人以上の運行管理者・管理補助者が必要ということです。なお、複数の管理者・管理補助者がお互いに点呼し合えば、それぞれがドライバーを兼務できます。

定期的に講習を受ける必要がある

運行管理者になった後も、「独立行政法人 自動車事故対策機構」が実施する一般講習を、2年に1回は受講する必要があります。この講習では、安全な運行管理に必要な法令や、業務などに関する知識を習得します。

新たに選任された場合は、その年度内に一般講習を受講することが必要です。また、万が一事故を引き起こした場合は、特別講習を受講しなくてはなりません。

参考:事業用自動車の安全対策:自動車総合安全情報

運行管理者になるメリット

履歴書と現金

(出典) pixta.jp

運行管理者になると、収入面や転職などにおいて、さまざまなメリットが期待できます。主なメリットを3つ見ていきましょう。

収入アップを期待できる

資格を取得することで、収入アップが期待できます。貨物・旅客の目的にかかわらず、事業用自動車を保有している会社では、必ず運行管理者を設置しなければなりません。

そのため、資格取得によって昇給・昇格が見込めたり、手当が支給されたりする会社もあります。安全運行に関する知識・技術が身に付くだけでなく、自分のスキルが収入・待遇に反映されることで、仕事に対するモチベーションも高まるでしょう。

転職で有利になる可能性がある

資格を取得していると、転職で有利になる可能性もあります。運送・旅客業務などを事業とする会社では、運行管理者の存在は不可欠です。

難易度が高い資格なので、取得しておけば転職の際に強みとしてアピールできます。入社後には即戦力として、重要なポストに任命される可能性もあるでしょう。

また、タクシー会社・運送会社などさまざまな業界で必要とされるため、事業用自動車を保有している異業界への転職にも役立ちます。

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内勤で働ける

運行管理者になると、主に内勤で働けるというメリットもあります。トラック・バスなどのドライバーは、体力的にも負担が大きい仕事です。

業務内容によっては、不規則な勤務体系での運転や、荷物の積み下ろしなどの重労働もあるため、長く続けるのは大変な職種でもあります。

しかし、内勤になれば体力的な負担が減り、年齢が上がっても仕事を続けやすいでしょう。また、「運送業界で働きたいけれどドライバーには不向き」という人にも適した資格です。

運行管理者は安全運行管理のスペシャリスト

トラック

(出典) pixta.jp

運行管理者は、安全運行管理のスペシャリストであり、トラック・タクシー・バスなど事業用車両を保有している会社が、スムーズに業務を行うために必要な存在です。

国家資格でもあることから難易度は高いものの、取得によって期待できるメリットも数多くあります。将来的なキャリアアップにも役立つ資格なので、挑戦してみてはいかがでしょうか。