高校教師になるには?必要な免許や適性、社会人から目指す方法も解説

高校教師になるには、どのような方法があるのでしょうか?教員免許の取得条件や方法、採用試験の難易度などを確認しましょう。高校教師に求められる適性や、社会人から目指す方法および採用の現状についても併せて紹介します。

高校教師になるには何が必要?

高校教師

(出典) pixta.jp

民間企業への転職・就職とは異なり、教師として働くためには免許を取得しなければなりません。まずは、高校教師になる一般的な方法を紹介します。

教員の養成課程や専門学部で免許を取得

日本の学校で教えるなら、各学校に対応した教員免許の取得が必須です。高校で教えられる免許を取得するには、基本的に4年制大学の養成課程や専門学部を卒業しなければなりません。

教員免許自体は短期大学でも取得できますが、2年で取得できる「二種免許」では、高校教師にはなれないのです。教員免許を持っていない状態から高校教師を目指すなら、免許取得のために4年間大学へ通うのが前提となるでしょう。

教員採用試験に合格する

教員免許を取得しただけでは、高校教師として働くことはできません。免許取得後、都道府県の教育委員会や私立高校が実施する採用試験に、合格する必要があります。

公立高校の場合、採用試験合格後は候補者として名簿に登録され、面接などを経て配属先の高校が決まる仕組みです。

受験希望者は、働きたい都道府県や私立高校を決め、募集に合わせて申し込みを進めます。新卒では、免許取得見込みの年度に採用試験を受けるのが基本です。

採用試験の内容やスケジュール

採用試験の内容は、自治体によって異なります。私立の場合は、学校によって違いがあると考えておきましょう。

一般的な内容は、筆記試験・面接・実技です。筆記試験では、科目に関する専門知識を問われます。面接は、人柄・熱意を確認する場になるでしょう。実技では、模擬授業や音楽・技術などのスキルが必要な科目の試験が行われます。

受験の申し込みは春頃から始まり、初夏から夏にかけて1次試験・2次試験が行われるのが一般的です。秋頃に合否が発表され、配属先が決まれば翌年の春から勤務開始となります。

高校教師に必要な教員免許の種類

生徒に教える教師

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教員免許は、指導の範囲が細かく設定されています。大学を選ぶときは、取得できる免許の種類を確認しなければなりません。

高校教師として働くために必要な、「高等学校教諭」に特化した免許の種類を見ていきましょう。

普通免許状

高校教師になるには、大学の教育課程や専門学部で取得できる「普通免許状」のうち、「高等学校教諭一種免許状」または「高等学校教諭専修免許状」が必要です。

普通免許状には小学校・中学校向けもあるため、大学で取得できる免許が高校向けのものかを確認しておきましょう。数学・英語・社会など、どの科目を教えたいのかを決めた上で大学を選ぶのが基本です。

なお専修免許状は、専門的なスキル・知識を有することを証明するものです。基本的には一種免許状があれば高校教師になれるため、まずは一種免許状を取得し、働きながら専修免許状を取得してもよいでしょう。

特別免許状

特別免許状は、特定の社会的経験を持つ人に対し、教育職員検定を経て授与されるものです。例として、高校の看護の授業で「看護師」が指導するケースが挙げられます。

特別免許状が発行されると、教員免許がなくても高校教師として指導が可能です。ただし、発行の条件が厳しいケースが多く、何らかの実績・経験・知識があり、教育職員検定に合格した場合に限ります。

どの科目であっても、指導が可能と判断される経験・知識を持つことが条件です。難易度は高く、民間企業で専門的な科目に携わっていた経験や、高度な知識が求められます。

応募条件を満たせるほどのスキルを持っていない場合には、大学での普通免許状の取得を検討しましょう。

臨時免許状

臨時免許状は、普通免許状を持つ人材が確保できない場合に、期限付きで発行されます。臨時免許状があれば高校でも教えられますが、発行には条件があります。

教育職員免許法第5条によると、高校教師向けの臨時免許状は、短期大学士の学位を持つ者以外には授与されません。教育関連の短期大学で学び、何らかの教員免許を取得しているか、指定の単位を取得している場合のみ発行が可能なのです。

近年、臨時免許状を取得して高校教師になる人は増えているものの、もともと小学校・中学校で教えていたり、特殊なスキルを持っていたりするケースが多く、未経験者は少ないと考えてよいでしょう。

教員免許を持たない人が高校教師を目指すのであれば、やはり4年制の大学に通い普通免許状を取得するのが近道です。

参考:教育職員免許法 第5条 | e-Gov法令検索

高校教師を目指すための学校・学科とは

勉強する男性

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高校教師の免許は、小学校・中学校向けの免許とは取得の条件が異なるため、学校選びには注意が必要です。どこで取得できるのか、高校教師を目指すための学校・学科を紹介します。

教育大学や教育学部

教育大学・一般大学の教育学部では、教育学の講義以外に、教員免許取得のための専門的な講義を実施しています。学部によるものの、高校教師の免許ももちろん取得できます。

大学や専攻コースによって取得可能な科目は異なりますが、教育大学・教育学部なら選択肢も多く、希望する学部・コースに進みやすいでしょう。

希望の科目が決まっている場合は、大学の特徴を把握して絞り込むのがポイントです。ただし、高校教師向けの免許が取得できるのは、4年制の教育大学・教育学部なので、短期大学を選ばないように注意しましょう。

一般大学の教職課程

一般大学の中には、教員免許を取得できる「教職課程」が設けられているところがあります。例えば、工業大学・情報大学では、教職課程の単位も取ることで、工業・情報・商業など専門的な科目の免許を取得できます。

教育大学とは異なり科目の選択肢は狭まりますが、学びたい分野が決まっている人には適しているでしょう。

ただし、一般大学で教職課程を選択する場合、取るべき単位数が増えます。教員免許取得を目指さない学生に比べて、学ぶ内容が多くなる点も理解しておきましょう。

大学院の研究科

高校で指導する内容は、小学校・中学校と比べると高度です。難しい内容を教えるためには、当然ながらハイレベルな知識が求められます。高校教師を目指すなら、大学院での専修免許状の取得も視野に入れるとよいでしょう。

大学院では、大学に比べてより専門的で高度な知識を学べます。研究科の中で、教員免許の取得に対応しているところを探し、進学しましょう。自分が研究を進めたい科目を絞り込み、進学前に検討しておくのが大切です。

専修免許を取得していると、スキル・知識の証明になるだけでなく、評価にもつながります。管理職を目指す場合など、持っていると有利になるケースも少なくないでしょう。

高校教師の免許取得や採用試験の難易度は?

試験を受けるスーツの女性

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教員免許の取得や採用試験は、難易度が高いのでしょうか?これから免許取得を考えている人は、本当に高校教師になれるのか心配もあるはずです。どの程度難しいのか、免許取得の条件と採用試験の競争率を確認しましょう。

免許状は単位を取れば取得できる

教員免許取得に際して、特別な試験はありません。大学または大学院で必要単位を取得し、卒業することで取得できます。

講義への出席と課題提出をこなし、卒業に向けてコツコツと努力できる人なら、特に心配する必要はないでしょう。

ただし、専修免許は大学院進学相当の知識が求められるため、一種免許に比べると難易度は上がります。高校教師になるには一種免許のみでも問題はないので、どこまで取得しておくかは、かかる時間や目的に合わせて検討しましょう。

採用試験の競争率は高め

免許の取得には試験が設けられていないものの、教師として働くには高校の採用試験に合格しなければなりません。2023年度の公立高校の競争率(採用倍率)は4.9倍です。

公立小学校は2.3倍、公立中学校は4.3倍のため、高校教師の競争率は小学校・中学校に比べて高いことが分かります。採用試験を受けても必ず合格するとはいえず、状況によっては複数の都道府県・私立高校への応募も検討しなければならないでしょう。

また、教員免許を取得する人の多くが採用試験を受けるため、同時期に学んでいる学生が多いほど競争率は高くなります。

参考:令和5年度(令和4年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況のポイント|文部科学省

社会人から高校教師になるには?

社会人の女性

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社会人になり、一定の経験を積んでから教師に転職したいと考えた場合、何をすればよいのでしょうか?社会人向けの特別選考の概要や、教員免許を取るための方法を解説します。

働きながら教員免許を取得

高校教師になるには、基本的に教員免許が必要です。どれほど社会人として経験を積んでいようとも、教師を目指すならまず教員免許を取得しなければなりません。

特殊なスキル・知識があれば、特別免許状・臨時免許状を取得する方法もありますが、ない場合は4年間教育大学・専門学部で学び、普通免許状を取得するのが基本的なルートです。

働きながら無理なく免許を取得するためには、場所・時間にとらわれず受講可能な、通信制大学の利用も視野に入ってきます。教員免許を取得できる通信制大学もあるので、検討するとよいでしょう。

社会人向けの特別選考を探す

教員の採用試験には、社会人向けの特別選考枠が設けられているケースがあります。教員免許・教師経験を持たない人を対象としており、転職したい人にはチャンスといえるでしょう。

ただし、ほとんどの場合、合格後一定期間内に教員免許を取得することが条件となっています。そのため、2年で取得できる小学校・中学校の教師枠が多く、取得に4年かかる高校教師の枠は少ないのが現状です。

また、枠があるとしても、何らかの経験・スキルが条件として設定されているケースがほとんどです。

なお、特別なスキルを持つ人なら、「特別非常勤講師制度」を活用する方法もあります。例えば、調理師免許を生かして、高校で調理実習の授業を担当する非常勤講師として採用される可能性があるでしょう。

高校教師に求められる適性・資質

授業をする高校教師

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高校教師になるには、職場に合った適性・資質が求められます。教師に必要とされる資質や、職場の特徴を見ていきましょう。

ストレス耐性と根気強さ

高校教師は、生徒・保護者・同僚・上司など関わる相手が多い仕事です。特に指導を受け持つ生徒の数は多く、思春期でもあることから、人間関係が複雑になりやすいのが特徴です。

多くの人と関わっていくうちに、トラブル・悩みが増えるケースは十分に考えられます。生徒に対しては根気強く指導を続ける必要もあり、ストレス耐性と忍耐力が求められる仕事です。

また、教師は多忙になりやすい職業でもあります。残業や部活動の対応、試験期間・イベント期間の忙しさもストレスにつながるでしょう。そのため、強い精神力と体力も必要です。

専門分野に対する知識欲

専門分野に対する興味・知識欲が旺盛であることも、高校教師に求められる資質の1つです。高校では、教師は専門の科目を受け持ち、生徒の指導にあたります。知識をアップデートし、最新の情報をもとに授業を組み立てるのも教師の役割です。

生徒の信頼を得るには、その科目についての深い知識が求められるため、免許取得の際はもちろん、採用された後も気は抜けません。

専修免許の取得やステップアップを目指すときも、自分が専門とする学問への興味や勉強を続ける意欲は欠かせないでしょう。

仕事に対する熱意

教師の仕事は、生徒とのコミュニケーションや指導が多くなります。部活動・文化祭・体育祭など、授業以外の活動に参加するケースもあるでしょう。

教師という仕事が好きで、熱意を持って業務ができれば、多忙な日が続いてもやりがいを感じられます。一生懸命頑張り、真摯に生徒と向き合っていると、相手にも気持ちが伝わるはずです。

生徒からの信頼を得られれば、指導の結果も出やすくなり、さらに仕事が楽しくなります。採用試験の面接でも、熱意が表現できれば魅力を感じてもらえるでしょう。

高校教師になるには免許の取得が必須

生徒に指導する教師

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高校教師になるには、基本的に4年制の大学・大学院を卒業し、高校の教員免許を取得しなければなりません。まずは大学に通い、普通免許状を手に入れましょう。

社会人向けの特別採用枠を設けている自治体もあるものの、高校教師の募集は数が多くありません。特別な経験・スキルを求められるケースも多いため、正規のルートで免許を取得し、採用試験を受けるのが基本です。

これから就職を目指す人は大学を無事に卒業できるよう、しっかり学ぶ意志を固めておきましょう。