歯科技工士とはどんな仕事?仕事内容から求められるスキルまで

歯科技工士は、歯科の専門知識と精巧な手技を要する職業です。国家資格の一種であり、仕事に従事するには歯科技工士国家試験に合格する必要があります。歯科技工士の役割や仕事内容、求められるスキルを解説します。

歯科技工士の主な仕事内容

マウスピースをはめる女性

(出典) pixta.jp

歯科技工士は、歯科医療に関わる医療技術専門職です。歯科医師や歯科衛生士と違い、患者への直接的な治療は行いません。歯科医師の指示書に基づき、治療で使用する技工物の作成・加工・修理を行います。具体的な仕事内容をチェックしましょう。

歯科治療に必要な技工物の作成

歯には再生能力がなく、欠けた歯や虫歯で穴が開いた歯、抜けた歯は元には戻りません。歯が失われると、食べ物をしっかり咀嚼(そしゃく)できなかったり、顔の見た目が変わったりと、健康や生活に大きな影響が及びます。

歯科技工士の仕事は、歯科医師が作成した指示書を基に、歯科治療に必要な技工物を作成・加工・修理することです。口の大きさや歯の形状は、患者ごとに異なるため、一人ひとりに適したものを作成しなければなりません。

高度な技工技術が求められるポジションであり、国家資格である「歯科技工士免許」を取得した者だけが歯科技工士を名乗れます。

歯科技工士が作成する代表的な技工物

歯科技工士が作成する代表的な技工物には、以下のようなものがあります。

  • インレー(詰めもの)
  • クラウン(かぶせもの)
  • 総義歯(入れ歯)
  • 局部義歯(部分入れ歯)
  • ブリッジ
  • インプラント
  • マウスガード
  • エピテーゼ
  • 矯正装置

技工物には「保険適用のもの」と「保険適用外のもの」があり、両方を作成する歯科技工士もいれば、保険適用外に専念する人もいます。

基本的に、矯正装置やインプラントといった「審美目的」の技工物は、保険適用外(自由診療)です。強度はもちろん、見た目の美しさも重要なため、高い技術力と経験値、審美的な感覚が求められます。

メンテナンスも歯科技工士の仕事

技工物は強度の高い材質で作られますが、破損や形状の変化によって、患者の口や歯に合わなくなるケースがあります。技工物の新規作成だけでなく、修理やメンテナンスも歯科技工士が行います。

歯科技工士が歯科診療に立ち会わなければならない決まりはありませんが、技工物の精度を高めるために、立ち会いを基本とする歯科医院も少なくありません。要望や装着感、気になる点を直接ヒアリングできるので、患者の安心感や満足度が高まります。

歯科技工士になる方法は?

入れ歯

(出典) pixta.jp

歯科技工士になるには、歯科技工士養成施設などで必要な知識とスキルを学び、歯科技工士国家試験を受ける必要があります。合格すれば歯科技工士の免許を取得でき、プロとしての一歩を踏み出せます。

国家資格の取得が必須

歯科技工士として働くには、歯科技工士国家試験に合格し、歯科技工士免許を取得しなければなりません。歯科技工士になるまでの流れは以下の通りです。

  1. 文部科学大臣の指定した歯科技工士学校、都道府県知事の指定した歯科技工士養成所を卒業する
  2. 歯科技工士国家試験を受験し、合格する
  3. 指定登録機関(一般財団法人歯科医療振興財団)に登録申請をし、歯科技工士名簿に登録される
  4. 歯科技工士の免許証が交付される

歯科技工士国家試験を受けるには、受験資格を満たす必要があります。歯科技工士に必要な知識や技術を備えていない人の場合、「文部科学大臣の指定した歯科技工士学校」または「都道府県知事の指定した歯科技工士養成所」で規定のカリキュラムを修了し、卒業資格を得る必要があります。

参考:一般財団法人 歯科医療振興財団

一般財団法人 歯科医療振興財団 |歯科技工士登録

歯科技工士国家試験の概要

歯科技工士国家試験は、厚生労働大臣から指定試験機関として認められた「一般財団法人歯科医療振興財団」が実施しています。試験は年に1回で、試験科目は学説試験と実地試験(歯科技工実技)です。

2022年度の歯科技工士国家試験の受験者数は904人で、うち合格者数は820人でした。合格率は90.7%と高く、国家試験の中ではハードルが低めです。学校で指定のカリキュラムをきちんと学べば、合格する可能性が高いと考えてよいでしょう。

参考:令和4年度歯科技工士国家試験の合格発表について|厚生労働省

歯科技工士に求められる能力

銀歯

(出典) pixta.jp

歯科技工士国家試験の合格率は高いものの、プロとして認められるまでには、多くの経験を積む必要があります。精巧な技工物を作るポジションだけに、さまざまな能力が求められるでしょう。

細かい作業が好き・得意

歯科技工物は、指の先ほどの小さなものです。口の形や歯の形状は患者ごとに違うため、大量生産やコピーはできません。

そのため、歯科技工士には、手先が器用なことが求められます。近年は、デジタル技術を使った歯科技工が増えていますが、最終的な調整は人の手で行います。細かい作業が苦にならず、集中力が高い人でなければ、プロとして活躍し続けるのは困難でしょう。

例えば、プラモデル作りやアクセサリー作りが趣味の人は、歯科技工士としての資質を備えているといえます。

スケジュール管理と仕上がりの両立

歯科技工士が手掛ける技工物には必ず納期があります。時間をかければかけるほど、クオリティーは高くなりますが、決められた期日までに完成できなければ、患者対応に支障を来します。

丁寧で精密な仕上がりを追求しながらも、スケジュール通りに作業をこなしていく手際のよさが求められるでしょう。

これから歯科技工士を目指す人は、納期を意識しながら物事を段取りよく進めていく「スケジュール管理能力」を磨く必要があります。

なお、歯科技工士に求められるのは、芸術的な技術やセンスではなく、医学的知識に基づいた正確な技術です。職人芸に近く、トレーニングの繰り返しと努力によって身に付きます。

学習意欲が高く自己研さんができる

歯科医療の最前線で活躍する歯科技工士は、新しい技法や材料に対する先行投資を惜しみません。学習意欲が高く、主体的に知識や技術を吸収できる人に向いている職業といえます。

歯科医療の進歩は目覚ましく、日々新たな技法や材料が開発されています。歯科用のCADシステムや3Dスキャナ、3Dプリンタなどの導入もスタートしており、常に知識・技術をアップデートする必要があります。

近年は、審美歯科治療で歯を美しくしたい人が増加傾向にあります。人々のニーズに合った最先端の技術を学ぶ姿勢も重要でしょう。

歯科技工士の基本情報

入れ歯

(出典) pixta.jp

歯科技工士の免許を取得した後は、どのような場所で活躍できるのでしょうか?主な勤務先や働き方、年収について解説します。

歯科技工士の勤務先

歯科技工士の働き方はさまざまです。日本で技術を習得して海外で活躍をする人もいれば、個人事業主として開業する人もいます。

実務経験がない歯科技工士は、歯科技工士を募集する歯科技工所や医療機関などに就職し、実務経験を積むのが一般的です。主な勤務先は以下の通りです。

  • 歯科技工所
  • 病院や診療所の技工室
  • 歯科器材や材料を扱うメーカー

歯科技工所とは、歯科医院から受注した技工物を作成する施設です。厚生労働省の資料によると、2020年時点では、歯科技工士の約7割が歯科技工所に勤務しています。

歯科器材や材料を扱うメーカーでは、専門知識を生かして、研究や開発に携わるケースが多いようです。

参考:令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況|厚生労働省

気になる年収について

「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、歯科技工士の平均年収は429万8,700円(※)です。

1年を通じて勤務した給与所得者の平均年収は約458万円(令和4年分 民間給与実態統計調査)であり、歯科技工士の平均年収は、給与所得者の平均年収よりも28万円ほど低いことがうかがえます。

就業形態は正規の従業員が最も多く、パートタイマー・契約社員・期間従業員は全体の5%以下です。少数派ではありますが、自営業やフリーランスを選択する人もいます。

※「きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別給与額」で算出

※企業規模計10人以上

参考:賃金構造基本統計調査 令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

令和4年分 民間給与実態統計調査

歯科技工士 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))

手に職をつけたいなら歯科技工士も狙い目

マウスピースをはめる女性

(出典) pixta.jp

歯科技工士は歯科医療の技術職で、歯科技工所や医療機関、一般企業などで需要があります。

精密かつ正確な技術が求められ、誰でも容易にできる仕事ではありませんが、歯科技工士免許を手にすれば、ライフワークとして一生続けられる可能性が高いでしょう。ライフステージが変わっても復職しやすく、腕を磨けば磨くほど評価が上がります。

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