料理人になる方法には、学校で調理技術を身に付ける方法と見習いとして修業を積む方法があります。料理人の種類やポジションによって働き方や修業期間が異なるため、目標を明確にすることが肝要です。必要なスキルや調理師免許についても解説します。
料理人になるには
料理人は、お客さまに料理を提供する職業です。シェフやコック、板前などの料理人になりたい場合、何から始めればよいのでしょうか?
大学や専門学校で技術を身に付ける
料理人として働くには、調理技術を身に付ける必要があります。独学でも学べますが、調理・栄養系の大学や調理師専門学校に通うのが望ましいでしょう。生きた知識やノウハウを講師から効率的に学べます。
調理師専門学校のカリキュラムは、「講義」と「実習」から構成されているのが一般的です。講義は、食文化や栄養、食品の衛生管理などについて理論的に幅広く学びます。
実習では、西洋料理・日本料理・中国料理などの調理技術を学ぶのに加え、調理師としての心構えを身に付けます。
「日本料理専攻」や「フランス・イタリア料理専攻」など、専攻が分かれている学校もあるため、どのような料理人になりたいのかをはっきりさせておきましょう。卒業後は、飲食店に就職して料理人としてのスタートを切ります。
飲食店で料理人として働く
大学や専門学校に通わずに、飲食店で「料理人見習い」として経験を積む方法もあります。未経験者がすぐに調理を任されるケースはほとんどなく、皿洗いや食材の下処理といった雑務からスタートするのが通常です。
プロの技術を間近で見られるのはメリットですが、下積み時代は想像以上に厳しく、忍耐力が必要です。
インターネットの普及により、近年は動画で簡単にレシピや調理技法を検索できます。「独学でも料理人になれるのでは?」と思われますが、実際に調理場に立ち、直接的な指導を受けなければ、センスや技術はなかなか磨かれないでしょう。
料理人になる上で修業は絶対に必要ではないものの、そこから得られる学びは大きいといえます。
料理人の種類
料理人は、作る料理の種類やポジションによって呼び名が変わります。「シェフ」「コック」「板前」「料理研究家」の役割と仕事内容について、理解を深めましょう。
シェフ
シェフは、レストランで働く料理人です。調理場における最高責任者で、料理長とも呼ばれます。
基本的に、1つの調理場にシェフは1人のみで、他のスタッフに指示を出す指揮官のような役割を担います。具体的な仕事内容は以下の通りです。
- 食材の仕入れ・選択
- 調理場における指示・監督
- 料理のクオリティーチェック
- メニューの開発
- コース料理の考案
- 部下の指導
コック
コックは、オランダ語で料理人を意味する「kok」が語源で、レストランで働く調理スタッフ全般を指します。前述の通り、調理場にシェフは1人のみなので、他のスタッフは全員がコックです。
コックは、シェフが決めたメニューや調理法に従って調理を担当します。肉担当・魚担当・ソース担当など、技術や経験に応じて役割が分かれている調理場もあり、仲間と連携しながら料理を完成させます。
未経験者がすぐにコックとして働けるケースはまれで、見習いからスタートするのが一般的です。店舗の方針や規模にもよりますが、メインディッシュを担当する「ストーブ前」になるまでには、7~8年ほどかかるとされています。
板前
板前とは、料亭・割烹・日本料理店などで料理を作る、和食のプロフェッショナルです。一人前の板前になるまでには10年以上かかるとされており、誰もが容易に就けるポジションではありません。
板前は、素材選びから調理の盛り付けまでの全てをこなします。学歴や職歴は重視されませんが、素材を見極める目や繊細な調理技術、盛り付けの感性が求められるでしょう。学校に通って調理師免許を取得したとしても、板前になるには修業が必要です。
板前修業中の料理人は板前ではなく、「裏方」と呼ばれます。すしやてんぷらなど一部の料理に特化するプロは、「職人」と呼ばれる点も覚えておきましょう。
料理研究家
料理研究家の主な仕事は、調理方法やレシピを考案し、人々に情報を発信することです。飲食店で料理人として働くケースは少なく、基本的にはメディアからの依頼を受けて仕事をします。
例えばテレビの料理番組の場合、テーマに沿ったレシピを考案し、撮影に向けて料理を作ります。解説しながら実演するケースも多いため、手際の良さや言葉で伝える力が求められるでしょう。
キッチンスタジオを構える個人事業主が多く、料理教室の開催や店舗へのメニュー提案なども行います。
料理人に求められる能力は?
調理技術以外にも、料理人として必ず備えておきたい能力があります。これから料理人を目指す人は、普段の生活の中で以下の2つの力を磨きましょう。
段取りよく調理を進めるスキル
自宅で料理をする分には、いくら時間がかかっても問題はないですが、顧客に料理を提供する限りはスピードが求められます。
時間内に料理を仕上げるためにも、段取り良く調理を進めるスキルや、複数の物事を同時に進めるスキルを身に付けなければなりません。手際が悪い人やマルチタスクが苦手な人は、普段の生活の中でスキルを磨く努力をしましょう。
例えば家事をする際は、何をどの順番でやれば効率的に終わるかを考えます。作業の時間配分を考え、優先順位を付けて進めるのがポイントです。
長時間の立ち仕事も苦にならない体力
料理人は立ち仕事が基本です。仕入れのために早朝から出掛けたり、翌日の仕込みのために遅くまで準備をしたりと、休憩時間以外はほぼ動きっぱなしです。
空調設備が整っていたとしても、火のそばでの調理はかなりの体力を消耗するため、体力に自信がない人は、今のうちから体を鍛えておきましょう。
料理人に限らず、プロフェッショナルとして仕事をする上では「自己管理能力」が欠かせません。食材の管理だけでなく、心身の健康管理がきちんとできてこそ、一人前の料理人といえます。
調理師免許を取得するには
料理人になるのに取得が義務付けられている資格はありません。ただし、調理師免許を取得すると、就職・転職で有利になったり下積み期間が短くなったりと、多くのメリットがあります。調理師免許を取得する方法を解説します。
調理師試験の受験資格
調理師免許を取得する方法は、大きく2つに分けられます。
- 厚生労働大臣が指定する調理師養成施設で学び、卒業と同時に調理師免許を申請する
- 調理師試験に合格した後、調理師免許を申請する
調理師養成施設で学べば、卒業と同時に調理師免許を取得できます。調理師養成施設に通わない場合は、調理師試験を受験しましょう。調理師法に基づく国家試験であり、学歴と職歴に関する以下の受験資格を満たさなければ受験できません。
- 学歴:中学校卒業以上の学歴がある人
- 職歴:調理師法施行規則第4条に定める施設で2年以上調理業務に従事した人
「調理師法施行規則第4条に定める施設」とは、以下の通りです。その他の注意事項については、公益社団法人調理技術技能センターのWebサイトを確認しましょう。
- 旅館・簡易宿泊所を含む飲食店営業(喫茶店営業を除く)
- 魚介類販売業(販売のみを除く)
- そうざい製造業
- 複合型そうざい製造業
- 寄宿舎・学校・病院などの給食施設
調理師試験の試験概要
調理師試験は、公益社団法人調理技術技能センターが実施しています。試験はマークシートによる四肢択一方式で、実技試験はありません。試験科目は以下の通りです。
- 公衆衛生学
- 食品学
- 栄養学
- 食品衛生学
- 調理理論
- 食文化概論
2022年度の受験者数は2万1,547人で、合格者は1万4,091人でした。合格率は約65.4%で、国家試験としてはそれほど難易度は高くないといえます。ただし、合格ラインは6割以上で、1科目でも得点が平均点を著しく下回れば不合格となる点に注意しましょう。
合格後は、住所地を管轄する保健所などで「調理師免許の申請」を行います。申請先は都道府県ごとに異なるため、事前の確認が必要です。
参考:合格後の手続きについて(調理師免許の申請)調理技術技能センター
多くの人を幸せにする料理人になろう
プロの料理人になるまでの道のりは長く、調理師専門学校を卒業したからといってすぐにメイン料理を任せてもらえるわけではありません。料理人の種類によっては、一人前になるまでに10年以上かかる場合もあり、目指すのであれば覚悟が必要です。
「おいしい料理で人を幸せにしたい」という強い気持ちがある人は、料理人への一歩を踏み出してみましょう。
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