50代の転職・キャリアアップには、どのような資格が役立つのでしょうか?独立・開業を目指せる国家資格や、今後の需要が見込める医療・介護系の資格など、おすすめ資格を厳選して紹介します。資格取得のメリットや留意点もチェックしましょう。
50代が資格を取得するメリットはある?
50代というと、会社では定年を意識し始める時期です。子育てが一段落し、新たなスタートを切りたいと考える人もいるでしょう。50代にとって、資格取得にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
キャリアアップや昇給につながる
資格を取得すると、できる仕事の範囲が広がったり、知識が深まったりして、キャリアアップや昇給につながるのがメリットです。業務に関連がある資格に対し、資格手当を支給する会社も少なくありません。
未経験の分野に挑戦するのもよいですが、難易度の高い資格は取得までに一定の期間を要します。
定年退職が迫っていることを考慮し、過去の経験が生かせる資格や、現職の業務と関連のある資格を選択するのが望ましいでしょう。専門性が深まり、転職や定年後の再就職でも有利になります。
転職に有利になる
若年層に比べ、50代の就職・転職はハードルが高めです。50代以上の人材は定年の時期が近いため、長期的な雇用やキャリア形成を考えると、企業は採用に消極的にならざるを得ないというのが実情でしょう。
しかし、50代だからといって、採用の可能性がゼロというわけではありません。ミドル層は社会経験・実務経験が豊富なので、若手に比べて教育コストが抑えられます。
難易度が高い資格・希少価値のある資格を持っていれば、採用の可能性はぐっと高まるでしょう。資格があることで、未経験の仕事にも挑戦しやすくなります。
独立すれば定年を気にせずに働ける
「いまさら資格を取得しても意味がないのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、資格によって第二の人生を切り開く人は少なくありません。
元気な限り働き続けたい人は、定年後を見越して、独立・開業できる資格を選びましょう。例えば、〇〇士という名称の「士業」には定年がなく、自分が好きなだけ働き続けられるのがメリットです。
定年後すぐにスタートを切れるように、50代のうちに資格を取得しておくのがおすすめです。
50代におすすめの国家資格3選
50代が国家資格に挑戦する場合は、年齢制限が設けられておらず、かつテキスト(独学)・通信講座などで知識を身に付けられる資格を選ぶのがおすすめです。仕事と勉強の両立が必要な人は、余裕のある学習スケジュールを立てましょう。
宅地建物取引士
宅地建物取引士は、宅地建物取引業法(以下、宅建業法)が定める国家資格です。不動産の売買・交換・賃貸借などの取引が公正に行われるように、顧客に当該不動産に関する重要事項を説明する義務を負います。
不動産取引では、重要事項説明書の交付が義務付けられていますが、「宅建業法35条に定める重要事項の説明」「重要事項説明書面への記名」「同法第37条に定める書面への記名」ができるのは、宅地建物取引士のみです。
宅地建物取引業を営む場合、事務所や国土交通省令で定める場所ごとに、専任の宅地建物取引士を置かなければなりません。そのため、有資格者は不動産業界での就職・転職に有利でしょう。
受験には年齢・学歴の制限がなく、基本的に誰でも受験できます。2022年度の合格率は17.0%です。資格登録にあたっては、一定の条件(宅建業法第18条)がある点に注意しましょう。
参考:一般財団法人 不動産適正取引推進機構 | 宅建試験 | 宅建試験の概要
中小企業診断士
中小企業診断士とは、中小企業の経営に関して診断・助言を行う専門家です。有資格者は専門知識を生かし、成長戦略の策定と実行のためのアドバイスを行えます。
経営コンサルティング系では唯一の国家資格なので、コンサルタントとして独立したい人にもおすすめです。
試験には、第1次試験と第2次試験があります。第2次試験は筆記試験・口述試験の2種類で、2022年度の合格率は18.7%でした。第2次試験の合格後は、実務補習または15日以上の実務従事を経て、中小企業診断士登録(経済産業大臣登録)を行います。
なお、1次試験の合格後、「中小企業基盤整備機構」または「登録養成機関」が実施する養成課程を修了すれば、第2次試験を受ける必要はありません。
参考:中小企業診断士資格取得を目指す方に中小企業診断士試験のご案内です
参考:中小企業診断士試験 申込者数・合格率等の推移|一般社団法人 中小企業診断協会
電気工事士
電気設備の工事は、電気工事士の有資格者でなければ行えない決まりです。電気工事士には第一種と第二種があり、作業できる範囲が以下のように定められています。
- 第一種 :第二種の範囲および最大電力500kW未満の工場・ビルなどの工事
- 第二種:600V以下で受電する一般住宅・店舗などの工事
誰でも受験可能ですが、第一種の免状を取得するには、3年以上の実務経験が必要です。業界未経験者は第二種からスタートし、実務経験を積みながら第一種を目指すのが望ましいでしょう。
2022年度の第二種電気工事士試験(技能試験)の合格率は72.5%と高く、50歳以上でも挑戦しやすいといえます。
参考:第二種電気工事士試験
転職・キャリアアップに役立つ事務系資格3選
事務職は、あらゆる世代に人気の職種です。事務系の資格は数多くありますが、中でも一定の知名度があり、転職・キャリアアップにつながりやすい資格をピックアップします。
日商簿記検定
簿記の資格は、複数の団体が認定しています。中でも知名度が高いのが、日本商工会議所と各地商工会議所が実施する、日商簿記検定(原価計算初級・簿記初級・3級・2級・1級)です。
初心者は3級からスタートし、2級を目指しましょう。経理・財務部門の求人では、応募条件・優遇条件に「日商簿記検定2級以上」を挙げる企業が少なくありません。資格手当が支給されたり、昇格の判断においてプラスに働いたりするメリットもあります。
2023年度の統一試験の合格率は、3級が34.0%、2級が21.1%、1級が12.5%です。1級は難易度が高いですが、合格すれば転職・キャリアアップにおいて強力な武器になります。
ファイナンシャル・プランニング技能検定
近年は、低金利・年金減で資産運用に不安を抱える人が増えています。ファイナンシャル・プランニング技能検定(FP検定)に合格すると、個人の相談者に対し、人生の夢・目標を実現するための資金計画や生活設計を、アドバイスできるようになります。
試験の実施機関は「日本FP協会」と「一般社団法人金融財政事情研究会」の2つで、等級は3級・2級・1級です。金融・保険業界への転職を考えている人は、2級以上を目指しましょう。経験を積めば独立も可能です。
日本FP協会で行う場合、3級と2級には学科試験と実技試験がありますが、1級は実技試験のみとなります。2023年9月に実施された試験の合格率は、以下の通りです。
- 3級:(学科)74.78%・(実技)77.67%
- 2級:(学科)53.54%・(実技)52.02%
- 1級:(実技)96.2%
マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)
事務職に従事する人にとって、Microsoft Officeのソフトウェアを扱うスキルは、必須といっても過言ではありません。
マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)では、文書作成・表計算・グラフ作成・データ管理といったMicrosoft Office製品のスキルを証明できます。
受験に向けた学習を通して実用的な能力が身に付くため、有資格者は即戦力と見なされるでしょう。WordとExcelの試験科目は、一般レベルと上級レベル(エキスパート)に分かれています。
参考:MOS公式サイト-マイクロソフト オフィス スペシャリスト
将来性が高い医療・介護系資格3選
世の中に求められる資格は時代とともに変わるため、未経験の分野にチャレンジする場合には、将来的な需要を考えなければなりません。
超高齢化社会の日本では、医療系・介護系の職種のニーズが高まっています。50歳からでも挑戦できる、おすすめの資格を紹介します。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)は、介護職の入門資格です。有資格者は、介護に関する一定の知識と技能を証明できるため、就職・転職では即戦力と見なされます。
業務の幅も広がり、無資格者に比べて給与・待遇のアップが期待できるでしょう。介護の仕事は資格がなくてもできますが、無資格者は有資格者のサポート業務にとどまります。
資格を取得するには、スクールで所定のカリキュラムを修了した後、筆記による修了試験を受ける流れです。不合格でも再試験を受けられるため、自分から放棄しなければ、ほぼ確実に資格を取得できます。
医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)
医療事務技能審査試験は、診療報酬請求業務や窓口業務(患者接遇)といった、医療事務の技能を審査する試験です。医療事務として働く上で必須の資格はありませんが、自分の能力を証明できるため、就職・転職において優遇されるでしょう。
試験は医科と歯科に分かれており、合格者には「メディカルクラーク」の称号が与えられます。試験日程は、医科が年12回(毎月)、歯科が年6回(奇数月)です。在宅試験のみで、受験資格に年齢・学歴の制限はありません。
公式テキストは販売されていないため、独学の場合は医療事務の基礎が学べる市販のテキストを活用しましょう。
参考:医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)|資格試験/技能認定|日本医療教育財団
登録販売者
登録販売者とは、ドラッグストア・薬局などで一般用医薬品の販売を行うための公的資格です。
医薬品を扱う資格には、薬剤師と登録販売者があり、登録販売者は「薬剤師に次ぐ医薬品販売のプロ」という位置付けです。主な仕事内容は、第二類医薬品と第三類医薬品の販売ですが、顧客へのアドバイスも行います。
かつては、受験の要件に実務経験が設けられていましたが、登録販売者制度の改正(2015年4月1日施行)により、誰でも受験可能となりました。試験は各都道府県にて年1回行われており、東京都の場合、2023年度の合格率は44.0%です。
ただし、実務経験がない未経験者の場合は、試験に合格しても「正規の登録販売者」として1人で売り場に立てません。ドラッグストア・薬局に就職後、登録販売者研修生として一定の実務経験を積む必要があります。
50代が資格を選ぶ上での留意点
一口に資格といっても、民間資格から国家資格までさまざまなものがあります。50代が資格を選ぶ上では、どのような点に留意すればよいのでしょうか?
受験資格や登録要件を確認する
国家資格や公的資格の中には、年齢・学歴・実務経験などの要件が設けられているものがあるため、試験概要をよく確認する必要があります。受験の要件を満たさない、あるいは資格登録ができない資格は、勉強してもあまり意味がありません。
また、難易度が高すぎるものは、取得までに時間がかかります。近々転職を考えている人は、ハードルがそれほど高くない資格にチャレンジするのが望ましいでしょう。
仕事と勉強の両立を考えている場合は、独学・通信講座で学べる資格を選ぶのがおすすめです。
将来的な需要を考える
世の中に必要とされる資格は、時代とともに移り変わります。人気がある資格だからといって、5年後・10年後も役に立つとは限りません。資格を選ぶ際は、将来的な需要についても考えましょう。
例えば、超高齢化社会の日本では、医療・福祉に携わる人材が不足しています。医療・福祉は、私たちの生活と切っても切り離せないため、需要はなくならないでしょう。
新興の民間資格・マイナーな資格は、転職市場ではあまり重視されない傾向があります。転職やキャリアアップ、再就職に活用したい人は、国家資格・公的資格・知名度が高い資格を選ぶのが賢明です。
50代だからこそ資格取得に挑戦しよう
50代の強みは、社会経験・実務経験が豊富な点です。自分の能力を生かせる資格を取得すれば、まさに鬼に金棒でしょう。
人生100年時代、定年後のセカンドキャリアを見据えて、資格の勉強を始める人も少なくありません。50代からの資格取得は遅いと諦めず、まずは行動することが重要です。
就職・転職を検討している人は、求人検索エンジン「スタンバイ」を活用するのがおすすめです。応募の際は、求人の募集要項に必須資格・優遇資格が記載されていないかチェックしましょう。