SESとはどのような仕事?主な職務内容とキャリアパスを解説

IT企業で働くエンジニアには、SESを呼ばれる契約形態で働く人も含まれます。SESで働くエンジニアはどのような働き方をしているのでしょうか。SESの定義とメリット、経験を積んだ先に開かれるキャリアパスを詳しく解説します。

SESとはどのような仕事?

プログラミング

(出典) pixta.jp

そもそもSESとは、どのような働き方を意味するのか見ていきましょう。一般的なITエンジニアの働き方とは異なる部分もあるため、転職してから後悔しないためにも、事前に詳しくチェックしておくことが大切です。

準委任契約に基づいて働くエンジニア

SESは「System Engineering Service」の略称で、システムやソフトウェアなどの開発業務に関連する契約形態を指し、業務委託契約をクライアントと結んで、業務に当たります。SESのエンジニアは特定の企業と雇用契約を締結していますが、自社内ではなくクライアント企業が働く場所であるのが特徴といえます。

契約形態はさまざまですが、最も一般的な準委任契約はベンダー企業とクライアント企業との間で締結する契約で、エンジニアを派遣して一定の仕事を行わせることに対して報酬を支払う契約形態です。

仕事をすることが報酬の支払い条件になるため、システムやソフトウェアといった何らかの成果物を納品することを要求するものではありません。一般的に、エンジニアの報酬額は人月単価と呼ばれ、スキル、業務難易度、工数、人数などに応じて報酬額が決まります。

業務の指揮命令権を持つのはベンダー企業

クライアント企業に出向いて働くとはいえ、業務に関する指揮命令権を持っているのはベンダー企業のみです。クライアント企業から直接指示を受けて業務を遂行することはありません。

上記でいう指示には、仕事の進め方や作業時間、業務範囲などの一切が含まれます。これらをクライアント企業が直接エンジニアに指示するとトラブルに発展するだけでなく、労働派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)による偽装請負と見なされ法令違反になるリスクもあります。

言い換えれば、クライアント企業から直接業務に関する指示を受ける場合は、SESではなく派遣や契約職員といった別の働き方です。

参考:

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 | e-Gov法令検索

SESと勘違いしやすい業種・労働形態

オフィスワーク

(出典) pixta.jp

IT業界には、SESと勘違いしやすい業種や労働形態がいくつか存在します。勘違いしたまま転職するとミスマッチにつながりかねないため、それぞれの違いを正しく理解しておきましょう。SESと混同しやすい3つの用語を解説します。

SIer(System Integrator)

IT業界についてリサーチしていると、SIer(System Integrator)という用語を目にすることがあります。SIerとSESが指すものは、それぞれ以下の通りです。

  • SIer:システムの受託開発を手がける企業の総称
  • SES:業務委託契約に基づいて働くエンジニアリングサービス

SIerは企業を指す用語、SESはサービスを指す用語であることが分かるでしょう。まったく異なるものであるため、混同しないように注意が必要です。

派遣エンジニア

派遣会社と雇用契約を締結し、クライアント企業に出向いて働くエンジニアを派遣エンジニアと呼びます。SESと似ている部分も多い働き方ですが、業務に関する指揮命令権がクライアント企業にあるのが大きな違いです。

クライアント企業と派遣会社が締結する契約は、派遣契約です。SESは準委任契約であるため、契約形態そのものが違う点も覚えておきましょう。提供したエンジニアの仕事に対して報酬が発生するのは共通です。

請負エンジニア

請負エンジニアとは、案件単位で契約を締結して働くエンジニアの総称です。締結する契約は業務委託契約における請負契約で、SESや派遣エンジニアとは異なり、どこかの企業と雇用契約を締結することはありません。

請負契約では、システムやソフトウェアなどの成果物を納品することが求められます。提供した労働力や労働時間ではなく、成果物の仕様に応じて報酬が決まるのも大きな違いです。

成果物と引き換えに報酬を受け取る性質上、物品やサービスの売買に近いイメージの契約といえます。

SES企業のエンジニアとして働くメリット

デスクワーク

(出典) pixta.jp

エンジニアとしてSESで働くメリットには、どのようなものがあるのか見ていきましょう。人によってはメリットが大きいため、下記で紹介するポイントを魅力的に感じるのであれば、転職を検討してもよいでしょう。

未経験でも比較的転職しやすい

数あるITエンジニアの中でも、未経験者にとって転職しやすいのがSESです。未経験者を対象にしている求人も多く、きちんと選べば実務経験がなくても転職できるでしょう。

ただし、開発に携わるため、プログラミングスキルをはじめとした一定のスキルが必要です。

未経験からSESへの転職を目指すのであれば、事前にプログラミングスクールに通うなどして、スキルを一通り習得しておきましょう。必要なプログラミング言語は目指す分野によって異なるため、事前に需要が高い言語を調べることも大切です。

ワークライフバランスを確保しやすい

SESのビジネスモデルは、提供した労働力に応じた報酬を受け取ることによって収益を生み出すものです。そのため労働時間がきちんと管理されており、極端な長時間労働や休日出勤が発生しにくい環境といえます。

IT業界への転職においてワークライフバランスの確保を重視するのであれば、SESも検討する価値のある選択肢といえるでしょう。

何らかの成果物を完成させることを担保しないという契約上、予期せぬ不具合や開発の遅れで時間外労働が発生するリスクも小さい環境です。

ある程度スキルアップできる環境がある

システム開発や保守・アップデートをはじめとしてさまざまな案件を経験できるため、ある程度スキルアップしやすい環境であるといえます。経験を積みながら新しい技術を学ぶことで、さまざまな案件を担当できるようになるでしょう。

さらに、案件を通じて人脈を構築できるのもSESの魅力です。構築した人脈をきっかけにしてスカウトを受けるケースもあり、転職やキャリアアップにも役立ちます。

ただし、SESとしての経験を積むだけでスキルアップできるわけではありません。日頃から自分で最新技術について学ぶ時間を確保し、スキルレベルを高め続ける必要があります。

SESとして働く上での注意点

プログラマー

(出典) pixta.jp

多くのメリットがあるSESですが、見逃せないデメリットもあるため、転職を決断する前にチェックしておきましょう。SESを検討している人が覚えておきたい、2つの大きなデメリットを紹介します。

偽装請負状態に陥りやすい

SESは準委任契約に基づいて働くエンジニアですが、業務の実態が派遣契約や請負契約と変わらない状態になっているケースがあります。その場合、労働派遣法違反と見なされる可能性が高いでしょう。

具体的には、SESという形を取りながら以下の状態に陥っている場合が、偽装請負に該当します。

  • 業務に関する指示をクライアント企業から直接受ける
  • クライアント企業の独断で、契約に含まれていない業務を追加する
  • 成果物の納品を報酬支払い条件とする

ただし、判断が難しい場合もあるため、偽装請負なのかどうか気になる場合は、ベンダーに確認したり、専門家に相談したりする必要があるでしょう。

偽装請負が常態化している職場への転職を避けるには、管理体制がきちんとした企業を選ぶことが大切です。

上流工程を担当するのが難しい

一般的に、SESで働くエンジニアは、開発業務の下流工程を担当するのが一般的です。コーディングやテスト、デバッグなどがメインで、要件定義や設計といった上流工程を担当する可能性は低いでしょう。

状況によっては、契約期間などの関係で、担当しているシステムやソフトウェアが完成するまで携われないケースもありがちです。

そのため、上流工程の経験を積みにくく、キャリアアップにおいて支障が出やすいというデメリットがあります。

将来的に上流工程を担当したいと考えているのであれば、SESで積んだ経験を生かして、上流工程を担当できる企業や職種への転職を検討しましょう。

未経験からSESに転職する方法

履歴書を見せる

(出典) pixta.jp

SESは未経験者でも転職しやすいものの、実際に転職するには事前準備が必要です。どのような事前準備が必要なのか正しく理解し、計画的に転職活動を進めましょう。

ある程度のプログラミングスキルを習得する

システム開発に携わるため、プログラミングスキルを習得しておくことが欠かせません。まずは自分がどの分野を目指すのか、明確にしましょう。分野別に需要が高いプログラミング言語の例を挙げると、以下の通りです。

  • Web業界:JavaScript・PHP・Python
  • ゲーム業界:C++・C#
  • AI業界:Python・R

プログラミングの学習に取り組むのであれば、よく用いられている言語から学びましょう。習得している言語があるなら、構文が近いものを学ぶと効率的に習得できます。より効率的に学びたい場合には、プログラミングスクールに通うのがおすすめです。

未経験者を対象にした求人に応募する

ある程度のプログラミングスキルを習得したら、未経験者を対象にした求人を探して応募しましょう。IT業界は全体的に人手不足の傾向にあり、未経験者を積極的に採用している企業も数多く存在します。

特にSESは未経験者でも転職しやすいため、比較的求人を見つけやすいでしょう。まずは気になった求人をいくつかピックアップしてみるのがおすすめです。

その後、通勤面・条件面・スキル面などを比較・検討して応募先を決めるといいでしょう。

SESで経験を積んだ先のキャリアパス

プログラミング

(出典) pixta.jp

上流工程を担当したいなど、キャリアアップを目指すのであれば、SESの経験を生かしてキャリアアップする必要があります。SESの経験を生かせるキャリアパスを、2パターン紹介します。

より専門性が高いITエンジニアを目指す

技術レベルを高めて開発現場で活躍したいと考えているのであれば、エンジニアのスペシャリストを目指しましょう。SESの経験を生かせるエンジニアの具体例は、以下の通りです。

  • Webエンジニア
  • アプリケーションエンジニア
  • サーバーエンジニア
  • ネットワークエンジニア
  • クラウドエンジニア
  • AIエンジニア

まずは自分がどの分野に興味があるのか、明確にします。その上で、関心がある分野で必要とされるスキルのレベルを高めながら、転職を目指すとよいでしょう。

スペシャリストを目指すのであれば、新たなプログラミング言語や最新の技術トレンドを学び、使いこなせるようにすることが大切です。

PMやPLを目指す

エンジニアのスペシャリストではなく、上流工程を担当するマネジメント層を目指すのもキャリアパスの1つです。具体的には、プロジェクトリーダー(PL)やプロジェクトマネージャー(PM)を目指す場合が該当します。

プロジェクトリーダー(Project Leader、PL)とプロジェクトマネージャー(Project Manager、PM)は、それぞれ以下の業務を担当する職種です。

  • プロジェクトリーダー:開発現場の責任者としてプロジェクトをスケジュール通りに進める
  • プロジェクトマネージャー:プロジェクト全体の管理者として、計画から完遂までのマネジメント全般を担当する

上記の職種にはSESから直接転職するのは難しいため、システムエンジニア(SE)を含めた別のITエンジニアに転職し、そこで経験を積んでさらにキャリアアップするとよいでしょう。

SESを足掛かりにエンジニアを目指そう

タイピングをする手元

(出典) pixta.jp

これからITエンジニアを目指したいと考えているのであれば、未経験者でも比較的転職しやすいSESを検討するのも1つの方法です。SESで一定の経験を積めば、別のITエンジニアに転職する道が開ける可能性があります。

まずは必要なスキルを学んだ上で、自分に合った求人を探してみましょう。スタンバイでも多くの求人を扱っており、SESを含めたIT業界の求人も豊富です。全国の求人を網羅的に扱っているため、探したいエリアを問わず利用できます。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら