ロジカルシンキングとは何か?メリットとデメリット・鍛え方も紹介

ロジカルシンキングは、論理的思考とも呼ばれます。根拠を積み上げて結論を導き出す思考法で、分析力や問題解決能力の向上にもつながります。ロジカルシンキングの特徴や代表的な手法、メリット・デメリットについて理解を深めましょう。

ロジカルシンキングとは?

パソコンに向かい考え事をする男性

(出典) pixta.jp

ロジカルシンキングは、全てのビジネスパーソンが身に付けるべきスキルの1つです。文書作成・コミュニケーション・商談・データ分析といったあらゆる場面で活用できるため、仕事やビジネスが円滑に進みます。

日本語に訳すと「論理的思考」

ロジカルシンキングは、物事を結論と根拠に分け、論理的な筋道を考えながら展開していく思考法です。日本語に訳すと、ロジカル(logical)は「論理的」、シンキング(thinking)は「思考」を意味します。

上司やクライアントに「結局何が言いたいの?」「説明が分かりにくい」と伝えられた経験はないでしょうか?

ロジカルシンキングを身に付ければ、「AはBである、ゆえにCである」と、根拠を積み上げて分かりやすく話ができます。問題が発生した際も、物事の因果関係や相関関係を正しく把握しながら、最適な解決方法を導き出せるでしょう。

ロジカルシンキングの主な要素

考え事をするスーツの男性

(出典) pixta.jp

論理的思考と聞いても、いまいちピンとこない人もいるかもしれません。理解をさらに深めるために、ロジカルシンキングがどのような要素で成り立っているか見ていきましょう。

言葉・数字の適切な扱いと合理性

ロジカルシンキングでは、言葉や数字を適切に扱う必要があります。個人の主観・経験値に基づくのではなく、数値データや法令といった「誰もが知っている共通の基準」を参考に、定量的に思考を展開していくのが基本です。

また、ロジカルシンキングには合理性が欠かせません。合理性とは、「物事が道理や論理にかなっていること」や「行為が無駄なく能率的に行われること」です。

時間やコストをかければ一定の効果は見込めますが、ビジネスシーンでは費用対効果が重視されます。合理性があれば、問題が発生した際に、誰がどのように対応すればよいのかを迅速に導き出せます。

筋の通った考え方

ロジカルシンキングでは、筋の通った考え方が求められます。筋を通すとは、物事に一貫性があり、矛盾・破綻がないことです。

例えば、クライアントにプレゼンテーションをする際、主張する内容とその根拠に乖離があれば、相手の納得は得られません。明確な事実があり、かつ導かれる結論が論理的につながっている必要があります。

帰納法(きのうほう)や演繹法(えんえきほう)は、ロジカルシンキングの基礎となる推論法です。これらを身に付ければ、矛盾がない筋の通った主張が可能となります。

バイアスに引きずられない

ロジカルシンキングでは、バイアスに引きずられずに対象を見る必要があります。バイアス(bias)とは、偏見や先入観、思い込みを意味する言葉です。

例えば、先輩や上司がA社の悪い噂ばかりしていれば、利用したこともないA社の商品がよくないものに思えてくるかもしれません。

バイアスに引きずられると、偏った思考によって非合理的な判断をしてしまう可能性があります。自分にバイアスがあることを認識した上で、物事を俯瞰的に捉える癖を付けましょう。

適切な要素への分解・因果関係の正しい把握

ロジカルシンキングは、「物事には原因と結果がある」という考え方に基づきます。現象や問題は単独では生じず、常に何かの結果です。

そのため、物事の本質にたどり着くには、原因と結果の間にある因果関係を正しく把握しなければなりません。

また、物事は複数の要素によって成り立っています。例えば、売上が上がらないという問題に直面した際、売上を「客単価」「客数」「購入頻度」などに分解し、どこに問題があるのかを見極めます。

ロジカルシンキングは、物事を小さく切り分けて考えるのが特徴です。各要素に分解することでボトルネックが容易に見つかり、スムーズに解決方法を導き出せます。

ロジカルシンキングの代表的な手法

ノートに書き込む手元

(出典) pixta.jp

ロジカルシンキングには、いくつかの手法があります。代表的な手法として、「帰納法」「演繹法」「ピラミッドストラクチャー」を取り上げます。

帰納法

帰納法とは、複数の事実から共通点・法則を見いだそうとする論理的推論です。具体的には、目の前の事象をさまざまな角度から観察し、「〇〇という共通点(根拠)があるから、△△だろう」と結論を出します。分かりやすい事例を挙げましょう。

  • 事例1:秦の始皇帝は死んだ
  • 事例2:ソクラテスは死んだ
  • 事例3:ナポレオンは死んだ

上記の事例からは、「人間はいつか死ぬ」という結論が導き出されるでしょう。

なお、集めたデータが少なかったり内容に誤りがあったりすると、そこから見いだした共通点・法則の確実性が低くなる点に注意が必要です。

演繹法

帰納法は個別の事実から法則を見いだすのに対し、演繹法は既に知られている法則(一般論やルールなど)から個別の事実を導き出します。

演繹法の中でも、「大前提→小前提→結論」の順番で論理が展開するものは、「三段論法」と呼ばれることも覚えておきましょう。

  • 大前提:地球上の全ての生き物は死ぬ
  • 小前提:人間は地球上に存在する生き物である
  • 結論:ゆえに全ての人間はいつか死ぬ

演繹法において、法則(大前提)に誤りがあれば、導き出される結論も誤ったものになってしまいます。

ピラミッドストラクチャー

ピラミッドストラクチャーとは、伝えたい結論とその根拠をピラミッド式に展開していくフレームワークです。結論を頂点に置き、それらを支える根拠と、さらにその根拠を支える根拠を並べます。

ピラミッドの上段から下段は「Why So?(なぜそうなるの?)」、下段から上段は「So What?(だから何?)」の問いかけの繰り返しです。ピラミッドストラクチャーをうまく活用できれば、より論理的な提案・報告が可能となるでしょう。

例えば、「メンタルヘルス事業に参入すべきだ」という主張をする場合、「市場規模が拡大しているから」「自社製品の強みが生かしやすいから」といった根拠が導き出せます。

さらに、市場規模が拡大しているという根拠に対しては、「健康寿命が延びているから」「企業のストレスチェックが義務化されたから」といった説明ができるでしょう。

ロジカルシンキングを習得する方法

ビジネスマンの男性の後姿

(出典) pixta.jp

ロジカルシンキングは、日々の地道なトレーニングによって向上します。論理的推論やフレームワークを活用するほかに、以下のような方法を試してみましょう。

仮説を立てて考えることを習慣にする

仮説を立てて考えることを習慣化しましょう。アイデア出し・問題解決が必要になった際は、以下の手順で仮説と検証を繰り返します。

  1. 情報を集める
  2. 集めた情報が正しいかどうか精査する
  3. 情報に基づき仮説を立てる
  4. 仮説が正しいかどうか検証する

仮説を考え、その根拠となる事例を集めるプロセスにより、ロジカルシンキングは鍛えられます。主観や勘による行き当たりばったりの言動が減り、物事をより効率的に進められるようになるでしょう。

ディベートで練習する

ディベート(討論)とは、賛成派と反対派に分かれて意見を戦わせることです。

相手側もしくはジャッジと呼ばれる第三者を納得させるためには、根拠を用いて、論理的な主張を展開しなければなりません。相手に反論するときは、矛盾点を探し出し、議論を積み上げて主張を崩します。

複数人でディベートをする機会がない場合は、自分に対して反論・批判をする「セルフディベート」を試しましょう。ロジカルシンキングが身に付くだけでなく、自分自身の思考の癖・弱点にも気付けます。

シンプルで分かりやすい説明を心掛ける

相手に説明をするときには、シンプルで分かりやすい話の構成を心掛けましょう。話が下手な人は、思い付いたことをそのまま口にするため、「結局何が言いたいの?」と相手を困らせてしまうケースが多い傾向にあります。

以下は「PREP法」と呼ばれる文章の型です。「結論→理由→具体例→結論」の順番で話をすれば、相手に話が伝わりやすくなる上、ロジカルシンキングが自然と身に付きます。

  1. 結論(要点)を伝える
  2. 結論の根拠となる理由を述べる
  3. 具体的な事例を挙げる
  4. 結論を繰り返す

知っておきたいメリット・デメリット

考え事をするビジネスマン

(出典) pixta.jp

ロジカルシンキングには、メリットとデメリットがあります。活用に適した場面を見極めながら、他の思考法とうまく使い分けることが重要です。

【メリット】分析力・問題解決能力の向上

ロジカルシンキングでは、因果関係を明らかにしたり、情報を小さく切り分けたりして、さまざまな方向から物事を観察します。根拠を積み上げて論理を展開する過程では、分析力が養われるでしょう。

また、社会人に必須とされる「問題解決能力」も、ロジカルシンキングによって向上します。問題解決能力とは、問題の原因を洗い出して分析し、現実的な方法によって解決に導くスキルです。

ロジカルシンキングができる人は、問題がどんなに複雑化していても、「なぜその問題が起きているのか」をしっかり掘り下げられます。

【デメリット】使うシーンを選ぶ必要がある

ロジカルシンキングの特徴は、矛盾や破綻がなく、話が一貫していることです。既にある事実・根拠を積み重ねていく手法であるため、いわゆる「ぶっ飛んだアイデア」は生まれません。

斬新なアイデアが必要なときや、ゼロから新しいものを作り上げたいときには、アナロジー思考をはじめとする別の思考法を活用する必要があるでしょう。

また、論理的に正しくても、人の感情はロジックだけでは動きません。相手の気持ちに配慮がないと、「理屈っぽい」「融通が利かない」といった印象を与えてしまう可能性があるので注意が必要です。

ロジカルシンキングの活用で効率アップ

考え事をする男性

(出典) pixta.jp

ロジカルシンキングを活用すると、相手に自分の主張・意見を分かりやすく伝えられるようになります。さらに、分析力や問題解決能力が向上し、日々の業務効率もアップするでしょう。

ただし、飛躍したアイデアの創出にはつながらないため、ロジカルシンキングさえ身に付ければよいというわけではありません。

ロジカルシンキングは、トレーニングによって鍛えられます。セルフディベートをしたり、帰納法・演繹法を意識したりして、日常生活の中でスキルを向上させましょう。