宅建で何ができる?資格取得のメリットや宅建士の仕事内容などを解説

宅建は国家資格の中でも人気が高く、毎年多くの人が受験しています。宅建の資格を取得するメリットは何でしょうか?宅建士の仕事内容や、求められる資質・スキルとともに解説します。特に不動産業界に就職・転職を目指している人は、ぜひ参考にしてください。

宅建(宅地建物取引士)の資格は何ができる?

不動産屋

(出典) pixta.jp

宅建とは「宅地建物取引士(宅建士)」の略称であり、資格を取得して登録すれば、不動産取引の専門家として働けるようになります。まずは、宅建の基本的な知識を押さえておきましょう。

宅建士は不動産取引の専門家

不動産業の一部である宅地建物取引業者として不動産取引に関わるためには、宅建の国家資格が必要です。土地や建物の売買は専門知識が求められますが、取引の当事者となる人は、基本的に不動産に関する法的な知識を有していないものです。

そこで不動産取引の専門家として、宅建士が間に入ることにより、法律に準拠したスムーズな取引が実現できます。

なお、2015年までは「宅地建物取引主任者」の名称で知られていましたが、同年の宅建業法の改正により「宅地建物取引士」に改称されています。

出典:宅地建物取引士証への切り替えについて | 不動産業界団体 - 一般社団法人全国住宅産業協会

独占業務を有する国家資格として有名

宅建は、資格取得者にしかできない独占業務を有する国家資格です。不動産取引には宅建士の協力が不可欠であり、独占業務を有していることから、安定した仕事ができると考える人が多くいます。

実際、不動産業界への就職・転職を目指す人を中心に人気が高く、毎年20万人程度が受験する資格として有名です。また詳しくは後述しますが、宅建士の独占業務として、次のものがあります。

  • 不動産取引に関する重要事項の説明
  • 重要事項説明書や契約内容記載書面への記名

これらは宅建士にしかできない仕事で、不動産取引を証明する重要な役割を担います。

出典:一般財団法人 不動産適正取引推進機構 | 宅建試験 | 宅建試験の概要

独占業務を含む宅建士の仕事内容

不動産の説明

(出典) pixta.jp

宅建士の業務には、独占業務である重要取引説明書(35条書面)に関する説明・記名と、契約内容書面(37条書面)への記名があります。

さらに、不動産会社で働いている場合は、一般的な不動産関連業務を担うケースも少なくありません。それぞれ解説していきます。

重要事項説明書(35条書面)に関する説明

契約対象となる不動産物件について詳しく書かれた書面(重要事項説明書)に関する説明は、宅建士の独占業務の1つです。

不動産取引は多額のお金が動く場合が多く、関連する法律も複雑です。売り手・買い手の双方が損害を被らないように、不動産取引に精通した宅建士が、取引に関する重要事項を説明することになっています。

重要事項説明書には、不動産の登記に関する内容や契約の条件、手付金などに関する内容が含まれています。

これらは宅建士が責任を持って、契約の当事者に説明しなければいけません。取引物件と取引の条件に関して、さまざまな事項を分かりやすく伝える必要があります。

出典: 宅地建物取引業法 第35条(重要事項の説明等)|e-Gov法令検索

35条書面・37条書面への記名

重要事項説明書(35条書面)の内容を契約当事者に伝えた後、その内容が適切に説明されたことを証明するためには、説明を行った全ての宅建士が記名・押印する必要があります。

説明の分担は可能ですが、記名については関与した全宅建士によるものでなければなりません。これにより、説明責任を明確化し、契約当事者の保護を図ります。実際、同じ宅地建物取引業者内で役割を分担するケースは多いものの、記名に関しては説明に関わった全員が責任を負います。

また不動産取引の本契約に進んだ際、契約に関する内容が記載された書面(37条書面)への記名も、宅建士にしかできないものです。37条書面には、当事者の氏名や住所、物件に関する情報や支払金額などが記載されています。

出典:宅地建物取引業法 第35条(重要事項の説明等) | e-Gov法令検索

出典:宅地建物取引業法 第37条(書面の交付) | e-Gov法令検索

一般的な不動産関連業務

上記の独占業務を中心に、宅建士は不動産(土地・建物)の売買契約や仲介など、不動産に関するさまざまな業務をこなす場合も多くあります。

不動産業界をはじめ、働く業界によって仕事内容は変わってきますが、不動産取引の知識を有する者として仕事ができる点は変わりません。

例えば金融業界において、不動産を担保にした融資に関する仕事をしている宅建士もいます。ほかの業界でも、不動産の取引相手や宅地建物取引業者と交渉するために、宅建の資格を有する社員を担当に据える企業も珍しくありません。

宅建の資格を取得するメリット

電卓をたたく不動産屋

(出典) pixta.jp

宅建の資格を取得するメリットとしては、就職・転職に寄与する点や、収入アップを実現できる点などが挙げられます。さらに自宅を購入・売却する際にも、不動産取引に関する知識が役立つでしょう。

就職・転職やキャリアアップに寄与する

宅建士は独占業務を持つ国家資格なので、就職・転職やキャリアアップに役立ちます。

特に宅地建物取引業者は、事務所や案内所などに業務内容や従業員数に応じて一定数の宅建士を設置する義務があります。事務所ならば、5人の従業員のうち1人は宅建士でなければいけません。

ほとんどの場合、不動産関連事業には宅建士の有資格者が必要です。人材需要が高く、無資格者に比べて就職・転職がしやすいでしょう。実際、不動産業界への転職を目指して宅建の資格取得を目指す人は多くいます。

出典: 宅地建物取引業法 第31条の3 第1項(宅地建物取引士の設置)|e-Gov法令検索

収入アップにも結び付く

すでに不動産業界で働いている人が収入アップを目指す上でも、宅建の資格取得はおすすめです。

もともと多くの宅建士が活躍している不動産業界は、ほかの業界に比べて平均年収が高めですが、資格の取得により資格手当が支給されるケースも珍しくありません。

さらに、宅建士になれば昇給・昇進につながる可能性もあるので、業界で積極的にキャリアアップを目指すならば、資格の取得を目指してみるとよいでしょう。

自宅の購入・売却の際にも役立つ

業者として不動産取引に関わる場合だけではなく、自宅の購入・売却の際にも宅建の知識が活用できます。購入予定の不動産価格の妥当性や住宅ローンの返済計画など、業者に頼らず自ら判断・選択できるようになるでしょう。

自宅をはじめとして、不動産の購入は一生に関わる大きな買い物になるケースがほとんどです。失敗しないためにも、ある程度は不動産に関する知識を持っておく必要があります。

宅建の資格を取得しておけば、たとえ不動産関連の仕事をしていなくても、住宅の購入や売却はもちろん、賃貸マンションに入居する場合などにも役立つでしょう。

宅建士に必要な資質やスキル

不動産契約

(出典) pixta.jp

宅建士として働く場合に必要な資質やスキルを解説します。大金が関わる取引を担当するケースも多いので、計画的に業務を進めるスキルや、取引の当事者と良質なコミュニケーションを取れる力などが必要です。

慎重かつ計画的に業務を進めるスキル

不動産取引に関して、売り手と買い手に説明すべき内容はさまざまで、法律も細かく関わってきます。必要な事柄を漏らさず伝えるために、宅建士は慎重かつ計画的に業務をこなさなければいけません。

万が一、重要事項の説明が漏れてしまうと、取引が中止になったり、当事者に損失を与えてしまったりする恐れがあります。取引対象となる不動産や契約条件などを調査し、きちんと内容を確認しながら、責任を持って説明する姿勢が必要です。

コミュニケーションスキル

宅建士は不動産の売り手・買い手とうまく意思疎通を図りつつ、双方が納得した上で取引に臨めるように取り計らうスキルも必要です。

専門用語を分かりやすく説明したり、不動産の調査に必要な事柄を聞き出したりするためには、相手と良質なコミュニケーションを取らなければいけません。

とりわけ不動産取引では、難しい用語を分かりやすく説明すべき場面が多いので、人によって表現や話し方を変えるテクニックも重要です。宅建士として活躍したい人は、さまざまなタイプの相手とスムーズにやりとりできる力を身に付けましょう。

曜日に関係なく働けることも大事

不動産業界で宅建士として働く場合、曜日に関係なく仕事ができる点も重要です。土日や祝日などの一般的な休日を利用して、不動産取引の契約を結ぶ人が多いので、宅建士も顧客のスケジュールに合わせる必要があります。

これから宅建士の資格を取得して、不動産業界への就職・転職を目指すならば、土日出勤が当たり前になる点は想定しておきましょう。転職先の企業にもよりますが、休日が不定期になる可能性もあります。

宅建士に将来性はある?

不動産契約

(出典) pixta.jp

宅建は毎年20万人程度が受験する人気の資格であり、宅建士は将来性がある仕事といわれています。その理由としては、不動産取引の需要がなくならない点や、幅広い業界で活躍できる点などが挙げられます。それぞれ見ていきましょう。

不動産取引の需要はなくならない

公益財団法人不動産流通推進センターの「2023 不動産業統計集(3月期改訂)」によると、不動産の取引件数は1990年代初期に比べて全体として下がってはいるものの、ここ10年ほどは緩やかに増加傾向にあります。今後も、同じ水準を維持する可能性が高いでしょう。

不動産の売買や賃貸のニーズは基本的になくならないため、不動産取引に独占業務を持つ宅建士は常に必要とされる仕事です。

有資格者同士で案件の獲得競争が発生する可能性はあるものの、宅地建物取引業者の一員として仕事ができる立場ならば、安定した収入を得られるでしょう。

出典:2023 不動産業統計集(3月期改訂) PDF4枚目|公益財団法人 不動産流通推進センター

宅建士は幅広い業界で活躍できる

宅建士は多くの業界で活躍できるため、その意味でも将来性があります。不動産業界はもちろん、金融業界・建設業界・小売業界などでも多くの宅建士が活躍しています。

不動産を担保として融資をしたり、取引を実行したりする企業は少なくありません。さらに、店舗の計画や用地の確保など、不動産が絡む意思決定の場面でも宅建士の知識は役立ちます。

不動産の専門家として頼られる場面も多く、しっかりと実績を残せれば、昇進やキャリアアップにもつながるでしょう。

宅建の試験概要

試験勉強

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宅建の資格試験に関しても、基本的なところを押さえておきましょう。宅建の受験資格や試験内容、さらに合格後の手続きなどを解説します。

受験資格や難易度は?

宅建の資格試験を受けるのに、学歴や実務経験・年齢は関係なく、誰でも受験資格があります。試験は年に1回、10月の第3日曜日に実施されるのが慣例です。

合格率は約15.0~17.0%であり、受験者の5~6人に1人が合格しています。お試し受験も多いので、しっかりと要点を押さえて勉強していれば、十分に合格のチャンスがある国家試験です。

資格試験の内容は?

資格試験はマークシート形式(四肢択一)で、全50問の出題です。宅建業法や法令上の制限・不動産の権利関係に加えて、税金に関する問題もあります。

最も多いのが宅建業法に関する問題(全20問)です。基本的な内容が多く、点数を取りやすい科目といえます。次に多いのが不動産の権利関係の問題(全14問)であり、他の科目に比べて内容が難しい傾向にあります。法令上の制限や税金の問題は8問ずつが通例です。

特定の講習を受けることで、試験の解答が5問免除になる制度もあります。試験の詳細については、運営団体である不動産適正取引推進機構の公式ホームページを確認してみましょう。

出典:一般財団法人 不動産適正取引推進機構|宅建試験

合格後は登録手続きが必要

試験に合格しても、すぐに宅建士として仕事ができるわけではありません。実務経験がない(実務経験が2年未満)場合は、実務講習を受けた後、資格の登録が可能になります。資格取得の時点で実務経験が2年以上ある場合はそのまま資格の登録に進めます。

さらに試験に合格後、1年以内に資格の登録を完了させれば、宅地建物取引士証の交付申請が可能です。申請が通れば宅地建物取引士証が交付されるので、独占業務に従事できるようになります。

一方、合格日から1年を過ぎて資格の登録を行う場合は、法定講習の受講が必要となるので覚えておきましょう。

出典:一般財団法人 不動産適正取引推進機構 | 宅建試験 | 宅地建物取引士資格登録等の手続きについて

宅建の資格は転職や収入アップに有効

不動産鑑定

(出典) pixta.jp

宅建は人気の高い国家資格であり、不動産業界はもちろん、さまざまな業界で活躍できる資格です。

就職や転職に役立つのに加えて、年収アップにも結び付く可能性があります。これから宅建の資格取得を目指すならば、試験の内容をよく理解した上で計画的に勉強を進めましょう。

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