職場で発生するハラスメントには、さまざまなものがありますが、その中の1つにテクノロジーハラスメントがあります。テクノロジーハラスメントとは、どのようなものを指すのでしょうか。具体的な内容と原因・対処法を詳しく紹介します。
テクノロジーハラスメントとは何？
社員間に存在するITリテラシーの差に起因するハラスメントを、テクノロジーハラスメントと呼びます。広義のパワーハラスメントに含まれ、職場環境を維持するためにも撲滅することが大切です。テクノロジーハラスメントの内容を見ていきましょう。
ITリテラシーが低い人に業務を押し付ける
よくあるテクノロジーハラスメントの一例は、ITリテラシーが低くPCや業務用ソフトウェアをうまく使えない人に対し、それらが必要な業務を押し付けるというものです。具体的には以下のような状況が該当します。
- 使い方を教えずに複雑なPC操作が必要な業務をやらせる
- 業務の進みが遅いことを過剰に責める
- 理解できない用語を意図的に使用して説明する
相手のITリテラシーが低いことを知っているのにもかかわらず業務を押し付け、業務をこなせないことを過剰に責めるのもテクノロジーハラスメントに該当します。
ITリテラシーが高い人に業務を押し付ける
ITリテラシーが低い人が高い人に対して、PC操作やソフトウェアの知識が必要な業務を押し付けることも、テクノロジーハラスメントです。このパターンは逆テクハラと呼ばれることもあります。
上記に該当する例は以下の通りです。
- 必要な知識を身に付けようとせず業務を他人に押し付ける
- 同じことを何度も繰り返し聞いて他人の業務遂行を妨害する
いずれも、自分のスキルレベルを高めようとせず、他人の負担を過剰に増やしています。
職場でテクノロジーハラスメントが起きる原因
職場において、テクノロジーハラスメントが起きる背景にはどのような原因があるのでしょうか。状況によって理由は異なるものの、多くの場合は以下で紹介する3つのいずれかが原因になっていることが多いでしょう。
業種を問わずIT技術の活用が進んでいるため
IT技術の進歩に伴い、業務効率化の実現や新ビジネスの創出などを目的として、社会全体でDXが進んでいます。それに伴い、これまでIT技術の採用に積極的でなかった業界・企業においても、さまざまなテクノロジーが導入されています。
そのように、テクノロジーの導入が進む一方で、企業によっては社員の教育が遅れていて、人によってITリテラシーに大きな差があるのが現状です。
DXに対応できる人材とできない人材に分かれたことで、テクノロジーハラスメントが発生しやすい環境になったといえるでしょう。
一定レベルのITスキルがあると思い込んでいるため
テクノロジーハラスメントの加害者は、ITリテラシーにある程度の差があることを理解していても、自分が期待する理解度と相手の理解水準に差があることがあります。
上記の状況になると、「ITスキルが低めではあるものの、この程度ならできるのではないか」と思って業務を割り振りがちです。しかし、その思い込みが正しいとは限らず、テクノロジーハラスメントにつながるケースもあります。
根拠がない思い込みは無意識のテクノロジーハラスメントにつながるため、「自分にとっての当たり前は相手にとっても当たり前である」と考えるのは危険です。
生産性を高めなければならないため
企業にとって市場の競争に勝ち抜くには生産性を高めることが求められます。生産性を高める手段の1つが、IT技術の活用です。定型業務の自動化やAIシステムの活用などが該当します。
状況によっては、企業の経営層からIT技術の活用を推し進めるように指示が出ることもあるでしょう。そのような状況では、ITリテラシーが低い社員が足手まといになります。
そのため、できるだけITリテラシーを高めてほしいという思いが強まり、テクノロジーハラスメントにつながるケースがあります。
テクノロジーハラスメントを解消する方法
社内にテクノロジーハラスメントがはびこると職場環境が悪化して働きにくくなるため、速やかに解消しなければなりません。ここでは、テクノロジーハラスメントを防ぐためにできる3つのことを紹介します。
採用段階で一定のITリテラシーを要求する
テクノロジーハラスメントは社員間に存在するITリテラシーの差が大きいことが理由で発生するため、その差を小さくする必要があります。
そのため、採用段階で一定のITリテラシーを要求するのが効果的です。ITリテラシーが必要な水準に達していない人材をはじめから入社させないことで、テクノロジーハラスメントを防ぎつつIT技術の活用を推し進められます。
採用基準にITリテラシーについての内容を定めるときは、できるだけ具体的な内容にしましょう。「基礎的なスキル」などと抽象的に表現すると人によってイメージするレベルが異なり、ITリテラシーに差が出る原因になるためです。
Accessでクエリを使ってデータをグループ化して集計できる程度など、明文化しておくと認識違いを防げます。
全社的な研修を実施する
すでに社内で大きなITリテラシーの差が生じているのであれば、全社的な研修を実施しましょう。業務の一環として研修を受けてもらうことで、全体的なスキルアップを図りつつITリテラシーの差を解消できるでしょう。
また、研修を活用して全体のITリテラシーを高められれば、IT技術の活用をさらに推し進めやすくなります。
全体の業務生産性を高めるためにも、定期的に研修の機会を設けるなどして社員のITリテラシー向上を意識しましょう。
詳しいマニュアルを整備する
PCの具体的な操作方法や業務用ソフトウェアの使い方、不具合発生時のトラブルシューティングに関するマニュアルを整備するもの1つの方法です。マニュアルはできるだけ詳しいものに仕上げることが大切です。
具体的には、一通り読めば他人に聞かなくても大半のことが分かるクオリティーのマニュアルを目指しましょう。
そのようにしておけば、誰でもマニュアルを見ながら業務を遂行できるようになるため、テクノロジーハラスメントを予防できます。質問の数を減らす効果も期待でき、全体の生産性向上にもつながります。
テクノロジーハラスメントに悩んだときの対処
現在進行形で自分がテクノロジーハラスメントを受けて困っているなら、そのまま放置せずに適切に対処する必要があります。ここでは、テクノロジーハラスメントの被害を受けたときにできる2つの対処法について見ていきましょう。
社内の相談機関に相談する
多くの企業では、社内に各種ハラスメントをはじめとした労働問題に関する相談を受け付ける窓口を用意しています。そのような相談窓口を利用してみるのも一手です。
当事者同士で直接話し合うのは難しいと感じている場合でも、相談機関が相手なら落ち着いて話しやすいでしょう。相談を受けた企業側が適切に対処してくれれば、それだけでテクノロジーハラスメントが解消することもあります。
1人で悩んでいるだけでは改善しないため、積極的に活用するのがおすすめです。
転職を検討する
企業側がきちんと対応してくれない場合や、改善する兆しが見られない場合は転職するのも1つの選択肢です。テクノロジーハラスメントが発生している状況を我慢し続けていると、精神的な問題に発展する可能性も考えられます。
そのため、よりよい環境で意欲的に働くためには転職という選択肢も考慮してみましょう。転職先をきちんと選べばテクノロジーハラスメントから解放されるだけでなく、同時にキャリアアップを実現できる可能性もあります。
テクノロジーハラスメントを解消して生産性を高めよう
社員間でITリテラシーに大きな差があると、業務量の偏りや偏見などからテクノロジーハラスメントが発生する可能性があります。テクノロジーハラスメントを防いで業務の生産性を高めるには、全体的なITリテラシーの向上が欠かせません。
もし、自分がテクノロジーハラスメントの被害を受けていて解消するのが難しい場合は、転職するのも1つの選択肢です。転職を検討しているなら、併せて自分のスキルや経験を高く評価してくれるところを選び、同時にキャリアアップを目指すとよいでしょう。
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