職場で不幸があった人に、どのような声かけをすればよいか迷う人も多いでしょう。遺族や故人に対して失礼のないように、お悔やみの言葉の正しい使い方を知っておくことが大切です。相手別の声かけの言葉や、お悔やみを述べる際のマナー・注意点を紹介します。
職場で不幸があった人への声かけの言葉
不幸があった人に声をかける際は、遺族や故人に対して失礼のない言葉を選ぶことが大切です。お悔やみの言葉に用いられる、代表的な表現を3つ紹介します。
「お悔やみ申し上げます」
「お悔やみ申し上げます」は、不幸があった人にかける一般的な言葉です。故人が亡くなったことを悲しみ、弔いの意を表現する言葉で、どのような立場の人に対して使っても失礼に当たりません。
また、文章や口頭にかかわらず使える言葉です。実際に声をかける際は、「心より」や「謹んで」などの言葉を付けることもあります。
ただし、基本的に通夜や葬儀など、故人が亡くなったすぐ後にかける言葉なので、四十九日や年忌法要の際には使わないよう注意が必要です。遺族や故人がキリスト教徒の場合にも、失礼に当たるため慎みましょう。
「ご愁傷様です」
「ご愁傷様です」は、遺族の心の傷を思いやり、悲しみに対して寄り添う気持ちを伝えるときに使います。「このたびは」という言葉の後に続けて、述べるのが一般的です。
敬語表現でもあるのでビジネスの場でも使えますが、上司や取引先などに対して、より丁寧に伝えたいときは「ご愁傷様でございます」という言い方もあります。
通夜・葬儀の場で使われることの多い言葉ですが、故人の訃報を知ったときに使用しても問題はありません。ただし、相手に対して直接声をかけるときの言葉になるため、メール・弔電などの文章には使わないよう注意しましょう。
「哀悼の意を表します」
「哀悼の意を表します」は、故人が亡くなったことを悼む気持ちを表すときに使う言葉です。「故人様のご逝去の報に接し」「謹んで」などの言葉を、文頭に添えて使うのが一般的で、どのような宗教にも使用できます。
ただし、メール・弔電などの文章に使われる言葉なので、口頭で声をかけるときに使用すると、マナーを知らないと思われてしまうため注意しましょう。
また、「哀悼」の代わりに、同様の意味を持つ「追悼」という言葉を使うこともあります。しかし、「追悼」はどちらかというと、公的な場で悲しむ気持ちを発信するときに使われる言葉なので、個人的に声をかける際は「哀悼」を使いましょう。
職場で不幸があった人に声をかけるときのマナー
声をかけるときに使う言葉以外にも、知っておきたいマナーがあります。どのような注意点があるのか、具体的に見ていきましょう。
敬語や敬称を使うのが基本
不幸があった人とどんなに親しい間柄であっても、声をかける際は敬語を使うのがマナーです。親密な相手に対する場合も、堅苦しくならない程度に丁寧な言葉を選んで伝えましょう。
例えば、「お父さんの突然の不幸を聞いて」と言うのではなく、「お父様の突然の不幸をお聞きして」または「お父上様の突然の不幸を伺い」などの言い方にするのがベターです。
また、メール・弔電などの文章の場合、故人の続柄は敬称を使います。一般的に弔電は喪主に対して送るので、敬称は差出人と故人の関係性ではなく、喪主と故人の関係性を表す敬称や呼び方を使いましょう。
- 父:ご尊父様・お父様
- 母:ご母堂様・お母様
- 夫:ご主人様・旦那様
- 妻:ご令室様・奥様
- 祖父:ご祖父様・おじい様
- 祖母:ご祖母様・おばあ様
- 息子:ご令息様・ご子息様
- 娘:ご令嬢様・ご息女様・お嬢様
なるべく短い言葉で伝える
お悔やみは長々と話さずに、なるべく短い言葉で伝えましょう。家族・身内を亡くしたばかりの遺族は、悲しい気持ちを抱えながらも、葬儀の準備などさまざまな手続きで忙しいものです。
また、大切な人を失って落胆している精神状態で、お悔やみの言葉をかけてくれる人に対応するのは負担がかかります。特に、通夜・葬儀の場では多くの人から声をかけられることもあるため、なるべく手短に済ますのが相手に対する配慮です。
故人と親しかった場合などは、伝えたいことも多くあるかもしれませんが、お悔やみの言葉以外は避けて、落ち着いた頃に改めて話をするようにしましょう。
死因を詮索しない
お悔やみの言葉を伝える際に、故人が亡くなった理由について、声をかける側から話を切り出すのはタブーです。死因について話してくれるかどうかは、遺族の判断に任せます。
たとえ病気・事故など理由が分かっている場合でも、亡くなったときの状況を詳しく尋ねるのはNGです。「ご愁傷様です」など、お悔やみの言葉だけを伝えましょう。
また、死因について聞いた場合も、不用意なことを言わないように「とても残念です」など、悲しむ気持ちを伝えるだけにとどめるのが無難です。
職場で不幸があった人に言ってはいけない言葉
お悔やみの気持ちを伝える際に、使ってはいけない言葉があります。知らずに使って失礼に当たらないよう、NGな言葉についても確認しておきましょう。
縁起の悪い言葉
一般的に、冠婚葬祭の場では、縁起の悪い言葉は使わないのがマナーです。「不吉だから」という理由だけでなく、悲しみに暮れている遺族を傷つけないためもあります。
「生きる」「死ぬ」など、生死に関する直接的な言葉は使わないようにしましょう。ほかにも、日常で使う分には問題がないものの、不幸があった人に声をかける場合には避けた方がよいとされる、「忌み言葉」にも注意が必要です。
例えば、「苦しい」「つらい」「浮かばれない」などが忌み言葉に当たります。また、数字の「四」や「九」は、読み方によって「死」や「苦」を連想させてしまうため、基本的に使わないのがマナーです。
宗教上の忌み言葉にも注意
日本では、仏式による葬儀が多いものの、キリスト教式や神式で行われることもあります。死生観は宗教によって異なり、忌み言葉も宗教ごとに違いがあるので注意が必要です。
基本的に、キリスト教式や神式では、仏教で使われる言葉がタブーとされると考えてよいでしょう。また、同じ仏式でも、宗派によって忌み言葉となるかどうかが異なります。
<仏式>
- 浮かばれない
- 迷う
- 冥福(浄土真宗では「ご冥福をお祈りします」は不適切になる)
<キリスト教式>
- 成仏
- 供養
- 冥福
- 冥土
- 往生
- お悔やみ
<神式>
- 成仏
- 供養
- 冥福
- 往生
重ね言葉
同じ言葉を繰り返す「重ね言葉」も、不幸があったときには不適切とされています。不幸な出来事が繰り返して起こることを連想させるため、別の言葉への言い換えが必要です。
例えば、「重ね重ね」や「度々」などが重ね言葉に当たります。普段何げなく使うことも多い言葉なので、お悔やみの場でうっかり言ってしまわないように注意しましょう。
<重ね言葉の言い換え例>
- 重ね重ね:加えて・深く
- 度々:よく
- くれぐれも:十分に・どうぞ・よく
- いろいろ:多くの・もっと・さらに
- わざわざ:あえて
- ときどき:時折
- 日々:毎日
- 次々:立て続けに・休みなく・たくさん
- 返す返すも:誠に・本当に・振り返ると
- つくづく:心から
励ましの言葉
不幸があった人を励まそうと、つい「頑張って」「元気を出して」などの励ましの言葉をかけてしまいがちです。しかし、悲しんでいる人に対する励ましの言葉は、逆効果になってしまうこともあります。
大切な家族・身内を亡くした遺族が、悲しみから立ち直るには時間が必要です。安易に励ましの言葉をかけてしまうと、ただでさえつらい状況の中で、精神的な負担を与えてしまうことにもなりかねません。
また、喪失感の中にいる遺族に対して、「泣かないで」という言葉をかけるのも避けましょう。どうしても励ましてあげたいと思ったときは、「ご自愛ください」などのいたわりの言葉をかけるだけで十分です。
不幸があった人への声かけの例文
上司や同僚など相手との関係性別に、かける言葉の例文を紹介します。基本的なマナーは相手が変わっても同じですが、お悔やみの気持ちを伝える際の参考にしてみましょう。
上司・取引先への声かけの例文
上司や取引先などには、語尾を変えたり最初に言葉を付け加えたりと、丁寧な言い回しで相手の気持ちに寄り添うことが大事です。
このたびは、誠にご愁傷様でございます。突然の訃報に接し、本当に残念な気持ちです。部長もどうぞお体に気を付けてください。お手伝いできることがあれば、何なりとお申し付けください。
お忙しい中、ご連絡ありがとうございます。お父様のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます。〇〇さんも、どうぞお体を大事になさってください。
同僚・部下への声かけの例文
同僚・部下に対して声をかける際も、正しく敬語を使うのがマナーです。お悔やみの気持ちに加えて、仕事の心配はしなくてよいというひと言を添えるとよいでしょう。
急なことで言葉が見つかりません。心からお悔やみ申し上げます。仕事で手伝えることは、何でも言ってくださいね。会社の方は心配せずに、体を休めてください。
このたびは、心からお悔やみ申し上げます。お母様ご逝去とのこと、本当に残念です。何かと忙しいと思うので、仕事のことは心配しなくてよいからね。疲れをためないよう、体を大事にしてください。
メールやLINEで声をかけるときの注意点
場合によっては、職場で不幸があった人に、メールやLINEで声をかけることもあります。メールやLINEで、お悔やみの言葉を伝えるときの注意点についても、確認しておきましょう。
正式なマナーではないことを知っておく
まずメールやLINEでの声かけは、正式なマナーではないことを知っておきましょう。特に、目上の人や関係性の薄い相手に対してメールやLINEを送るのは、失礼に当たるので注意が必要です。直接会って声をかけられないときは、電話で伝えるとよいでしょう。
ただし、メールやLINEで訃報をもらったときや、口頭でお悔やみの気持ちを伝えきれなかった場合には問題ありません。メールやLINEで訃報の連絡をもらったら、なるべく早く返信するのがマナーです。
タイミングを逃してしまったときは、お悔やみの言葉に加えて、返信が遅れたことへのおわびのひと言も添えましょう。口頭で伝えた後にメールなどを送る場合は、いったん落ち着いてからでも構いません。
顔文字・絵文字・スタンプは使わない
どんなに親しい相手であっても、お悔やみのメッセージには、顔文字・絵文字・スタンプは使わないのがマナーです。
顔文字や絵文字などは、感情を伝えるのに便利ですが、不幸があったときには軽率な印象を与えてしまいます。自分が意図することと違う受け取り方をされて、相手との関係性が悪くなる可能性もあるでしょう。
仮に相手からのメールに顔文字や絵文字が使われていたとしても、こちら側からの返信には使用しない方が無難です。また、機種によって文字化けする記号なども、誤解を生む場合があるので避けましょう。
件名や本文は簡潔で丁寧に書く
受け取った相手が、お悔やみのメールだと気付けるような件名にします。「このたびはご愁傷様です」と、お悔やみの言葉をタイトルにするのがおすすめです。
職場の上司や同僚宛てなら、部署名と名前を書けばさらに分かりやすくなります。取引先の相手宛てには、自社名と名前を入れましょう。
本文は、口頭で伝えるときと同様に、お悔やみの言葉だけを簡潔にまとめて書くようにします。取引先に対しても、時候のあいさつを書く必要はありません。
また、相手に対して返信の負担をかけないように、「返信は不要です」というひと言を添えるとよいでしょう。
メールやLINEで声かけするときの例文
メールやLINEで弔意を伝えるときの、書き方についても確認しておきましょう。相手との関係性別に、例文を紹介します。
上司や取引先に送るときの例文
役職が上がるほど、多くの人からメールでの弔文をもらう可能性があるため、本文にも自分の部署・名前をしっかり記載することが大切です。また、取引先に対しては、基本的にビジネスメールであることを意識して書きましょう。
〇〇部の〇〇です。このたびはご尊父様ご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます。本来であれば直接お伝えすべきところ、メールでのご連絡になりましたことをお許しください。
仕事のことは私たちにお任せいただき、ご無理をなさらないようお体をお大事にしてください。なお、こちらのメールへの返信も、お気遣いなさいませんようお願いいたします。
このたびは、お身内にご不幸があったとのこと、心よりお悔やみ申し上げます。本来であればお電話を差し上げるべきところ、略儀ながらメールにて失礼いたします。
どうぞお疲れが出ませんように、ご自愛ください。なお、こちらのメールへのご返信は無用です。
〇〇株式会社
〇〇部 〇〇
同僚や部下に送るときの例文
メールやLINEを送る際も、口頭で伝えるときと同様に、仕事の心配はいらないことを伝えると相手は安心できます。また、相手が部下の場合、返信の負担を感じさせないように「返信不要」というひと言を添えることも大切です。
ご母堂様のご逝去の訃報に接し、心よりお悔やみ申し上げます。葬儀などでお疲れのことと思います。仕事のことは心配せずに、今はゆっくりお休みください。
手伝えることがあればサポートしますので、遠慮なくご連絡くださいね。なお、メールへの返信は不要です。
ご祖父様ご逝去とのこと、心よりお悔やみ申し上げます。仕事のことが気になるかと思いますが、皆でサポートするので安心してください。疲れをためないよう、よく休んでくださいね。このメールにも返信は不要です。
不幸があった人には言葉を選んで声をかけよう
身内に不幸があった人へ声をかける際は、遺族に対するいたわりの気持ちを忘れないことが大切です。お悔やみの言葉には、今回紹介したほかにも定番とされている言い回しがいくつかあるので、伝えるシーンや宗教などに配慮しながら選ぶとよいでしょう。
遺族や故人に対して失礼のないよう、一般的に縁起が悪いとされている言葉や、弔意を伝える場面では不適切とされている言い回しなどを、知っておくことも大事です。