不機嫌ハラスメントは、パワハラに発展する可能性があり、職場で問題になることがあります。具体的にどのような行為が該当するのか、疑問に思う人もいるでしょう。不機嫌ハラスメントの具体例や、対処法などを紹介します。
この記事のポイント
- 不機嫌ハラスメントとは何か
- イライラした態度などで周囲を威圧する行為のことです。
- さまざまな方法で機嫌の悪さを表す
- 直接的な暴力行為や怒鳴るなどはしないものの、ため息・無視・わざと大きな音を立てるなどの行動をします。
- 効果的な対処法
- 過剰な反応はせず冷静に対応し、相手のペースに巻き込まれないようにすることが大切です。
不機嫌ハラスメント「フキハラ」とは?
不機嫌ハラスメントは、略して「フキハラ」とも呼ばれ、職場や家庭で問題になる行為です。まずは、モラハラやパワハラとの違いを見ていきましょう。
不機嫌な態度で威圧するモラハラの一種
不機嫌ハラスメントとは、その場にいる人に気を使わずに機嫌が悪い様子を見せ、不愉快にさせる行為を指します。精神的な暴力で相手を支配しようとする、モラハラ(モラルハラスメント)の一種です。
職場や家庭で不機嫌ハラスメントが横行すると、「居心地の悪い空気になる」「生産性が下がり離職率が上がる」などの弊害があります。本人がハラスメントの認識を持っていない場合や、被害者側が気付いていない場合もあるでしょう。
パワハラとは違って対象が幅広い
パワハラ(パワーハラスメント)は、主に職場で行われます。自分の立場を利用して、不当に攻撃したり圧力をかけたりする行為です。
例えば、「チームリーダーがメンバーに対し、人格を否定するような言動をする」などがパワハラに該当します。
上司と部下の関係だけでなく、優越的な関係にある同僚なども対象です。労働施策総合推進法により、事業主の義務としてパワーハラスメント防止措置を取ることが求められています。
一方の不機嫌ハラスメントは、社内で起こるとは限らず、友人・家族などに対しても行われるケースもあります。
出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第30条の2 | e-Gov 法令検索
職場や家庭で見られる不機嫌ハラスメントの具体例
不機嫌ハラスメントは、「特定の人にだけする」「誰に対しても無意識にする」などのパターンがあります。以下、具体的な例を見ていきましょう。
イライラした態度をわざと表に出す
イライラしている気持ちを隠そうとしない言動は、不機嫌ハラスメントに該当します。例えば、「わざとため息や舌打ちをする」「仕事を頼んだときに嫌な顔をする」などの行為です。
具体的なシーンは、「同僚に業務上必要な仕事を頼んだにもかかわらず、舌打ちをされた」「家庭で洗濯物を取り込んでほしいとお願いしたら、大きなため息をつかれた」などです。
不機嫌な態度をわざと表に出すのは、「自分にばかり嫌な仕事を押し付けている」と思っているなどの理由が考えられます。
仕事でミスをした相手に対してイライラした態度を取ることもあれば、特別な理由もないのに機嫌が悪い様子を見せる場合もあります。
存在を無視する
「あいさつをしない」「話しかけても答えない」など、存在を無視するのも不機嫌ハラスメントの1つです。無視は、相手に大きな精神的苦痛を与える行為です。
無視された側は、攻撃されているように感じる場合があります。「嫌われたのかもしれない」「何かしたかな?」と、困惑するでしょう。
嫉妬・怒りなどから特定の相手を無視する人もいますが、特別な理由がないのに存在を無視する場合、自分の態度によって相手をコントロールしようとしている可能性があります。
話し合って問題を解決する気がなく、無視することで自分の気持ちを表しているのです。
そのとき次第で冷たい反応をする
完全な無視以外にも「無表情で接する」「普段より冷たい態度を取る」など、そのとき次第で不機嫌を表す人もいます。
常時無視や嫌な顔をしているわけではなく、気分により対応が激しく変わるのも不機嫌ハラスメントの1つです。周囲の人は、その人の機嫌を気にして接することになるので、ストレスを感じるでしょう。
特定の相手を決めず誰にでもそのときの気分で接する場合もありますし、立場の弱い人にだけ冷たい反応をするパターンもあります。
故意に音を立てる・物に当たる
「机を叩く」「ドアを乱暴に開け閉めする」「わざとタイピング音を大きくする」などの行為で、不機嫌さを表す人もいます。
周囲の人を不安にさせているという自覚なく行っている場合があり、本人に指摘しても「わざとじゃない」と返されることもあるでしょう。
人に対して直接的に暴力を振るっていなくても、相手が威圧されていると感じるのは問題です。自分の立場を利用し、故意に乱暴な振る舞いをしていると認められれば、パワハラとして認定されることもあり得ます。
不機嫌ハラスメントへの対処法
不機嫌ハラスメントの被害者になったとき、どのように対処すればよいのか悩む場合があります。対応を間違うと、悪い方向に行ってしまうこともあるので注意が必要です。ここでは、不機嫌ハラスメントへの主な対処法を紹介します。
冷静な対応を心掛ける
急に不機嫌な態度をぶつけられると慌ててしまいがちですが、まずは冷静になることが大切です。
「過剰に謝る」「機嫌を取ろうとする」などの態度を取ると、相手を刺激することがあります。自分に非がないことに対し、謝るのは避けましょう。
また、こちらも不機嫌な態度を取ったり無視したりすると、状況が悪化する恐れがあります。相手の気持ちに引きずられず、建設的に話をするように努めましょう。
物理的な距離を置く
不機嫌ハラスメントをする相手とは、できるだけ距離を取りましょう。同じ空間にいる時間を少しでも減らせば、被害を受ける可能性が減ります。
「業務上、必要なこと以外は話さない」というように、なるべく関わらないようにすれば被害を抑えられるでしょう。
攻撃の対象になった際は、いったん別の部屋に行くなどの方法も効果的です。特定の人にだけ不機嫌ハラスメントをする人は、対象が目の前にいるだけで機嫌が悪いことをアピールする場合があります。
周囲に相談する
距離を置きたくても、同じ職場の上司・部下・同僚などの関係だと難しい場合があるでしょう。不機嫌ハラスメントを受けているときは、信頼できる人に相談することが大切です。
上司に直接相談できないときは、人事部や職場の相談窓口などに助けを求めましょう。その行為のせいでまともに働けないなど、度を超えている場合はパワハラだと認められる可能性があります。
1人で悩みすぎると思い詰めてしまいがちですが、相談をすれば良い解決法が見つかるでしょう。
不機嫌ハラスメントをしないようにする方法
個人差はありますが、誰でも機嫌が悪くなることはあります。「もしかしたら、不機嫌ハラスメントをしてしまっているかもしれない」と、不安になる人もいるでしょう。最後に、加害者にならないための方法を紹介します。
原因を突き止め対処する
不機嫌ハラスメントをする主な原因は、ストレスや疲労の蓄積、現状への不満などです。まずは、なぜ不機嫌になっているのか原因を究明しましょう。
ストレスが原因の場合、ストレスの元に対処することが大切です。疲労が蓄積していると、感情のコントロールが難しくなる場合があります。休暇を取り、よく睡眠を取って、心身の状態を回復させましょう。
仕事で思うような評価を得られないなど、現状に不満があるなら「もっと自分に合う部署への異動を願い出る」「転職をする」などの方法があります。
自分で自分の機嫌を取る
不機嫌な態度が表に出てしまうのは、自分で自分の機嫌を取る方法を実践していないからだと考えられます。「好きな音楽を聴く」「サウナで汗を流す」など、前向きな気持ちになれる方法を見つけましょう。
日記を付けて、自分の感情を客観的に評価する方法もおすすめです。「電車の遅延が原因で遅れたのに、叱責された(怒り60%)」「晴れていて、気分が良かった(嬉しさ70%)」というように感情の記録をしましょう。
自分が何にストレスを感じやすいのかを判断できれば、回避することも可能です。また、文字としてマイナスの感情を吐き出すことで、自分の中にため込まずに済みます。
不機嫌ハラスメントには冷静に対処しよう
不機嫌ハラスメントが問題になる場所は、職場や家庭などです。職務上の関係に限定されない点が、パワハラとの違いとなります。
機嫌の悪さを周囲にぶつける人がいると、人間関係がギクシャクしてしまいがちです。冷静に対応し、距離を置いたり周囲に相談したりする方法を実践しましょう。
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