大学生が就活に向けて準備をする中で、就活解禁の意味やスケジュールが気になる場合もあるでしょう。就活解禁とは何か、どのようなルールがあるのかといった基礎知識から、就活解禁の後の日程や必要な準備まで詳しく解説します。
就活解禁とは
就活の準備が視野に入る学年になったら、就活にまつわる用語について知識を付けておくとスムーズです。スケジュールに大きく関わる「就活解禁」とは何を指すのか、どのようなルールに基づいているのかを見ていきましょう。
企業の採用活動が解禁されること
就活解禁とは呼び名の通り、政府が通達しているルールに基づいて、国内企業の新卒採用が解禁される(採用活動を開始できるようになる)ことです。
就活解禁の具体的な日付は「就活解禁日」「解禁日」と呼ばれます。就活解禁日は「卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請事項」に「就職・採用活動の日程」として記載され、日本経済団体連合会(経団連)を通じて企業に要請されます。
就活解禁日のルールを定めている理由は、企業の採用活動が前倒しになりすぎると、学生の本分である学業がおろそかになる可能性があるためです。ただし、この要請事項は法律と違って強制力はなく、判断はあくまでも企業に委ねられています。
実際、ルールに従わない企業が多かったり、経団連に加盟していない企業は前倒しで新卒採用を進めていたりといった状況がありました。その結果、2018年10月に就活解禁のルール撤廃が発表されています。
出典:2024(令和6)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請等について|日本経済団体連合会
2025年卒は現行ルールの時期で行われる
2018年に就活解禁のルール撤廃が発表されてからも、実際はまだ従来のスケジュールが残っている状態です。
経団連は本来2021年の時点で撤廃する予定でしたが、政府が主導する形となり、2025年卒までは混乱を避けるため、従来のスケジュールで進行することに決定しました。
ただ、新卒の一括採用という仕組み自体が世界では珍しく、終身雇用の日本型の人事システムが廃れるにつれて、就活スケジュールの変化が考えられることは覚えておきましょう。
実際、2026年卒からは、就活解禁の日程が変わる可能性があるとされています。今後は能力や専門性の高い学生が柔軟に就活に臨めるよう、既存のスケジュールにとらわれない動きが出てくるでしょう。
就活解禁後の日程
2025年卒までは従来通り、政府が主導する就活解禁日に沿って、企業が採用活動を進めることになります。就活を間近に控えている人は、具体的なスケジュールを押さえておきましょう。
4年制大学を例に取り、広報活動開始から内定日まで、それぞれのフローで何が行われるのかを交えて日程を紹介します。
大学3年3月~:広報活動開始
2025年卒の就活解禁日は、大学3年の3月1日です。企業の採用活動が解禁されるとすぐ、広報活動が始まります。広報活動は、企業が業界・企業の情報を学生に向けて発信する活動です。
経団連では、就活解禁日まではホームページでの情報公開や文書・冊子の配布など、不特定多数に向けた発信にとどめるよう呼びかけています。
広報活動の開始と見なされるのは、自社の採用サイトや就職情報会社が運営するサイトで、学生の登録を受け付けた時点です。就活解禁日には、会社説明会も始まります。
就活を控えた大学3年生は、就活解禁日にすぐサイトへの登録や会社説明会への参加ができるよう、あらかじめ企業ごとのスケジュールを確認して予約を済ませておきましょう。
大学4年6月~:採用選考活動開始
3月に広報活動が開始した時点では、まだ選考は始まりません。政府は、広報活動が実質的な選考とならないように呼びかけています。
採用選考活動を始めてよいとされるのは、大学4年の6月1日以降です。現行のスケジュールに従う企業は、この時点から筆記試験・面接など一定の基準を基に学生を選抜する試験を開始します。
6月は、一部の企業で内々定が出始める時期です。周囲の学生が内々定をもらっていて焦る人もいるかもしれませんが、内定を急ぎすぎず納得のいく企業にアプローチしましょう。
大学4年10月~:正式な内定日
就活は6月からの採用選考活動を経て、内定が出る段階に進みます。正式な内定日は、大学4年(卒業年度)の10月1日以降です。
多くの企業は、内定式を10月初旬に実施しています。内定式で出される企業からの内定証書に対し、学生側が入社承諾書を提出することで、正式に労働契約が成立したと見なされます。
一部の企業では、10月の内定式が終わった後に「秋採用」として採用活動を行っている点も押さえておきましょう。
中には、通年採用・夏採用・冬採用と既存のスケジュールにとらわれず採用活動を行っている企業もあるため、事前に企業の情報をチェックしておく必要があります。
就活のスケジュールは業界によって異なる
政府から企業に通達されている就活解禁日やスケジュールは、あくまでも目安です。採用選考の各フローが行われる時期は、企業ごとに変わる場合があるのはもちろん、業界によっても違います。
中でも特に内定が早い業界と、スケジュール通りもしくは遅い業界を知って、就活の計画に役立てましょう。
内定を出す時期が早い業界
内定が出るのが特に早い業界としては、主に以下が挙げられます。
- 外資系企業
- メガベンチャー
- 一部のマスコミ
- 広告業界
外資系企業は経団連に加入していないため、就活解禁やその他のルールに影響を受けません。一般的にはインターンが大学3年の8〜9月に始まり、3年の12月ごろから本選考や内定が進みます。
メガベンチャーも外資系企業に近いスケジュール感ですが、インターンがサマーインターンとウィンターインターンに分かれるのが特徴です。大学3年の夏にインターンに参加すれば、早期に選考に進めます。
一部のマスコミでは、大手企業の採用活動が落ち着いてから、地方での採用活動がスタートする業界の慣習から、大学3年の12月ごろの内定に向けて選考活動を実施します。広告業は、ここまでに挙げた業界よりは遅めですが、内定が4年生の4〜5月と早い業界です。
内定を出す時期が遅めの業界
内定の時期が、政府が要請するスケジュール通り、もしくは後ろ倒しになることが多い業界として、アパレル業界が挙げられます。アパレル系企業によって大学4年の7月ごろから内定が出始めますが、10月以降になる企業も少なくありません。
アパレル業界は、秋採用を実施している企業も多く余裕がありますが、不採用だった場合に他業界の企業に応募しようと思っても、既に採用が終わってしまっている可能性に注意しましょう。
公務員も、遅ければ大学4年の11月ごろと内定の時期が遅めです。公務員の採用選考には、出願後に1次試験の筆記試験・2次試験の面接があります。そのため、採用のフローが長くなり、内定の出る時期が遅くなるのです。
近年の就活における動向
これから就活に臨む学生は、企業の採用活動が近年どのように変化しているのかも、詳しく知っておく必要があります。注目したいポイントは、採用活動の早期化・多様化と、採用直結型インターンシップが公認されたことです。
採用活動が早期化・多様化している
2025年卒の就活では、まだ就活解禁のルールが残っているものの、近年は形骸化した就活スケジュールに縛られない採用活動を推し進める動きが活発化しています。現時点でも、就活解禁日を待たずに採用活動を始めている企業は少なくありません。
さらに、近年はスケジュールだけでなく、企業の採用手法そのものも多様化しています。各企業は、少子高齢化で学生の確保が難しくなっている中で、優秀な学生を採用するために多様な採用手法を駆使するようになりました。
今後はますます、従来の採用フローにとらわれず、ダイレクトリクルーティングサイトの活用やWeb面接の導入など、さまざまな採用手法に取り組む企業が増えてくるでしょう。
2025年卒から採用直結型インターンシップが公認
これまでも就活解禁に先駆けて実施されていたインターンシップには、2024年卒まで採用を目的とした実施の禁止要請が出されていました。しかし、2025年卒からは、採用直結型インターンシップが公認されています。
学生のキャリア形成を支援する活動は、以下の4種類に分類されており、タイプ3とタイプ4がインターンシップとされる活動です。
- タイプ1:オープン・カンパニー
- タイプ2:キャリア教育
- タイプ3:汎用型能力・専門活用型インターンシップ
- タイプ4:高度専門型インターンシップ
タイプ3と4のインターンシップについて、2025年卒から、就業体験の中で採用選考の評価材料を取得できるようになりました。
これまでも実質的に採用につながるインターンシップは多くありましたが、今後のインターンシップはますます採用に直結するものになったといえます。
出典:インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方|文部科学省・厚生労働省・経済産業省
就活準備でやるべきこと
就活解禁のスケジュールや近年の就活の動向をつかめたら、実際の行動に向けて済ませるべき準備も押さえておきましょう。応募先によって細かい準備は変わりますが、多くのケースで必要になる準備を紹介します。
自己分析
就活生にとって、エントリーシート(ES)を作成するためにも面接でアピールするためにも、自己分析は必須です。エントリーが始まる前に余裕を持って、自身の考え方や価値観、強みを整理しておきましょう。
自己分析のポイントは、記憶に残っているエピソードや人生における大きな出来事から、自分がどのように考えてどう行動したかを振り返ることです。思考・行動から、大切にしてきた価値観や判断基準が見えてきます。
企業研究
納得のいく就活には、自身の価値観や強みと、企業の求める要素を合わせていく必要があります。そのためには、自己分析をした上で、企業についても深く研究しなければなりません。
業界が決まっていない場合は業界研究から始め、候補とする企業をピックアップしましょう。その後、企業ごとに他と違うポイントを深掘りしていきます。
企業への理解を深めるには、WebサイトやSNSの公式アカウントなど、企業が発信している一次情報を積極的に収集する姿勢が大切です。
インターンシップへの参加
インターンシップは、就業体験を通じて、企業と学生が互いを知る機会となります。インターンシップに参加すれば、業界・企業への理解を深められ、入社後のイメージをつかみやすくなるでしょう。
インターンシップの内容は、業界・企業によって変わる上、スケジュールも多様です。中には、大学1年から参加できるケースもあります。早めに自分が働きたい分野は何かを考え、インターンシップの情報を積極的に取得しましょう。
応募企業の絞り込み
エントリーする前には、応募する企業の絞り込みも必要です。「とにかく数をこなせばよい」と手当たり次第にエントリーしてしまうと、エントリーシートの作成だけでも相当な時間がかかる上、1つの企業に割ける集中力が落ちかねません。
自己分析や業界・企業研究、インターンシップの所感を踏まえ、自分にマッチする企業をピックアップしていきましょう。
ただし、エントリー数を絞り込みすぎても、内定をもらえないリスクが高まったり、視野が狭まったりといったデメリットが生じます。状況にもよりますが、その後さらに絞り込んでいくエントリーの段階では、20社程度を目安としましょう。
応募書類準備
エントリーする企業を絞り込めたら、就活解禁までに応募書類を準備します。就活生が準備すべき応募書類は、履歴書とエントリーシートです。どちらも、簡潔に分かりやすく書くことを心がけましょう。
エントリーシートは、企業によってフォーマットが違いますが、共通するポイントは人柄が伝わるように作成することです。個人情報や経歴・スキルを伝える履歴書と違い、具体的なエピソードを盛り込んで人となりを伝える必要があります。
筆記試験対策
新卒採用のフローに、筆記試験を組み込んでいる企業は多くあります。代表的な試験の種類は、以下の通りです。
- 企業が独自に作成したテスト
- SPI(リクルートマネジメントソリューションズ)
- 玉手箱(日本エス・エイチ・エル)
- TG-WEB(ヒューマネージ)
内容としては、適性検査・常識問題・時事問題・小論文など企業によって変わります。応募先に筆記試験がある場合は、余裕を持って試験対策を進めましょう。
筆記試験対策には、過去問や模擬試験を解いたり、大学で提供されているSPI講座を受講したりなどの選択肢があります。
面接対策
就活の面接は、自分の強みを存分にアピールできる場です。しっかりと準備をした上で、本番に臨みましょう。
多くの企業が本格的な選考を進め始める時期は、スケジュールがタイトになるため、早めに対策を始めるのがおすすめです。
面接対策に有効な方法として、面接官役を置いた模擬面接が挙げられます。実際に受け答えをすることで場慣れする上、第三者からどのように見えるかもフィードバックしてもらえます。
また、就活解禁までに、スーツやバッグなどをそろえ、身だしなみを整える準備も済ませておきましょう。就活では、面接だけでなく会社説明会でもスーツが求められる場合があります。
就活解禁に向けて準備をしておこう
就活解禁日は、企業の採用活動が解禁される日であり、政府の通達を受けて企業・団体が判断するものです。今後撤廃される可能性もありますが、2025年卒までは従来通りのスケジュールで進むことになっています。
紹介した就活準備は、就活解禁日までに済ませるとスムーズです。業界・企業の研究が進まない場合は、求人サイトで実際の仕事内容をチェックしてみる方法もあります。
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