「エンジニアとタレントの仕事は相性がいい」平成生まれ・池澤あやかさんの好きなことで生きる極意

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女優・長澤まさみが所属する大手事務所の東宝芸能タレント・池澤あやかさん。2006年には東宝シンデレラオーディションで審査員特別賞を受賞し、NHKの番組出演などタレントとして華やかに活躍する一方、渋谷の人気カフェ『FabCafe』も運営するコミュニティのサイト制作を1人で手がけたフリーランスのエンジニアでもあります。

タレントとエンジニア。好きなことを仕事にして自分らしい働きかたを確立するにはどうすれば良いのか?池澤さんに尋ねると「バッファとアテが絶対に必要です」と答えました。自分らしい生きかたをするために挑戦しつづける池澤さんから、好きなことを仕事にするための心得を学びます。

1. 答えの見えない仕事でも「ぐぬぬ!」って言いながらやり遂げる

初体験の受託制作はデザインのやりとりに苦労した

慶應義塾大学を卒業した池澤さんは、タレント活動を続けるためにフリーランスで働くことを決めます。在学中にWeb制作会社でプログラマーのアルバイトをしていた経験からサイトのコーディングをする仕事を始めました。

池澤:「エンジニアの仕事は、今は完全にフリーランスでやっています。去年大学を卒業してからは3つ、受託制作をやりました。

最初は『文化庁メディア芸術祭』というイベントのWebサイト制作で、マークアップとプログラミングを担当しました。もう1つはTOKYO FABBERS(トウキョウファバーズ)というFabCafeも運営するものづくりコミュニティのサイト制作なんですが、デザインからサーバー、開発まで自分一人でまるっと受けたのは初めてでした。

よく足を運ぶFabCafeで「Webサイトつくっています」と話していたら共通の知り合いから「じゃあこのサイトを作ってください」と声をかけられたのがきっかけです。」

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学生時代はプログラミングを専門に学んできた池澤さんにとって、デザインやサーバー開発は未知の領域でした。池澤さんがつくった『TOKYO FABBERS』のサイトを見ながら、約6ヶ月間のプロジェクトを振りかえります。

池澤:「一番苦労したのはデザインの部分でした。答えがない分野なのでクライアントの方とのやりとりで「ぐぬぬ!」となることが多かったですね。(笑)

例えば、担当者さんから「サーチボックス使わないから抜いたほうがヘッダーのデザインすっきりしますよ」みたいな指摘をもらったんですけど、まさに実装しているときにデザインの修正がくると、またデザインして実装し直さなきゃいけない。

メインになるロゴと、地図やタグの色が調和するようにこだわっていたので、変えてくださいと言われると「またやり直しかぁ……」って落ちこんだりしました。変えるしか選択肢はないんですけどね。

でもフィードバックを受けてやり直してみると、良くなったなと感じる部分も多くて。例えばここのボタンは修正前より修正後のほうがずっと良くなりました。」

バックグラウンドのアプリ開発でわかったプログラミングの好きなところ

3つ目に受けたWebサイトのアプリケーション開発の仕事を振りかえると、2つ目にやったデザインの仕事を経験したおかげでずっと続けてきたプログラミングの魅力を再発見できたといいます。

池澤:「六本木にある美術館で開催された『21_21 DESIGN SIGHT』という企画展のWebサイトで、バックグラウンドのアプリケーション開発をしました。

私が担当したのは、サイトを運用する人が使うための画像収集システムです。Sinatraというフレームワークを使って、TwitterとInstagramから自動で画像を収集して表示させる・させないを決めるスイッチをつけるような仕様でした。

そのときに、やっぱり私はプログラミングのほうが好きだなって思ったんです。デザインに比べてプログラミングは答えがちゃんとある。答えがないと、どれくらい修正が出てくるかも読めないですからね。」

2. 同世代とちがっても気にしない。コミュニティは自分でつくる

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ギークな女友達と『NATURE OF CODE』を読む朝活してる

IT・Web界隈では「Rubyの女神」と呼ばれ、ギーク女子の代表的存在である池澤さん。そんな自分をどう思っているのか、率直に聞いてみると「女の子としてはギーク女子ってあんまりかわいい肩書きじゃないから恥ずかしい。(笑)」と意外な反応を見せました。

池澤:「女子ヒエラルキーがあって、上のほうにいるキラキラ系の女子に「私プログラミングやってるんだ〜」と言っても「あ、そうなんだ……」って反応しか返ってこないんですよ。(笑)

だから自分と話が通じるギーク女子コミュニティーをもっと増やしたくて、最近友達とプログラミング朝活を始めたんです!

Processingというプログラムを勉強するのが目的で『NATURE OF CODE』を読んでいます。グラフィックプログラミングの基本らしくて、最近のWebサイトは背景にきれいなグラフィックが使われていたりしているから、プログラミングの幅が広がりそうだなぁと思ってやっています。

マイクロマウスが可愛い!ハンダ付けの美しいやり方を勉強中

めまぐるしくトレンドが移り変わる技術の世界で生きている池澤さんは、新しい情報のキャッチアップを欠かしません。なかでも最近は、IoTやデジタルアートの領域に興味があるそうです。

池澤:「もう1つ、マイクロマウスを組み立てる女子会をしています。マイクロマウスは、小さなラジコンカーのような形でかわいい……いや、かわいくはないか。とにかくマイクロマウスがすべてのロボットプログラミングの基礎だと言っている、ロボット会社の女社長・中川友紀子さんに女子5人で教わりにいく活動なんです。

今習っているのはハンダづけです。コツは最初に基板とそこにくっつける金属の部分を両方熱してから流し込んだハンダが馴染むまで待つこと。ハンダをつけすぎると美しくないとする職人のセンスも問われるので、ギーク女子のなかではロボット界隈がアツいです!」

3. やりたい仕事をするための資金・人脈・知識があるか試算する

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つくりたい欲求があれば勉強は苦にならない

ロボットプログラミングの先には、まだ池澤さんが勉強したことのないC言語を学ばなければいけません。トレンドや仕事が変わるたびに1から勉強するのを面倒だと感じることはないのでしょうか?

池澤:「私の場合はつくりたい欲求が先に行くので、勉強もそのためにならやるしかないって感覚があります。これからは1人ではなく、チームに参加してもっと規模の大きいものづくりをしてみたいと考えています。

ソフト・ハードどちらでもいいんですけど、インスタレーションやデジタルアートのように技術を活用して人を驚かせる作品や、生活に馴染むようなプロダクトをつくってみたいです。

THE GUILD・深津さんから学んだ「バッファとアテ」の極意

これからもタレントとエンジニアの仕事を両方とも続けていきたいと話す池澤さん。最後に、好きなことを仕事にして自分らしく働いていくにはどうすれば良いのかを聞きました。

池澤:「好きなことを仕事にしたければ、まずはちゃんとその仕事で食べていけるのか試算したほうがいいと思います。その考えのもとになったのが、THE GUILDの深津貴之さんのブログです。」

2: 生活資金を半年分ためなさい

まず無収入状態でも3〜6ヶ月生存できる貯金を作りなさい。生活費の安全バッファは大型案件や、お金にならないチャンス案件を手に入れる最低条件です。安全バッファがなければ、常に生活費のために自分を切り売り仕事しつづけることになります。つまりチャンスが回ってきても掴むことができなくなります。また案件トラブルでの一発ゲームオーバーを防ぐ安全弁になります。

fladdict社員がフリーランスになる前に教えておきたいこと” より引用)

池澤:「中学3年生からタレント活動を始めたんですが、タレントっていつ呼ばれるのかわからない不安定な仕事なんですよね。「明日仕事が入った」とか直前になって撮影や出演が決まったりするものなので。

不安定なタレントの仕事を続けるために、併せてできる副業があったほうが安定するだろうなって考えがずっと昔からありました。

だからこの深津さんの言葉を聞いて、ハッとしたんです。仕事にはバッファとアテが必要なんだって。だからタレントとエンジニアどちらか一つではなくて両方やろうと決めたんです。

好きなことでずっと生きていくには、自分で勉強しなきゃいけないし、いろいろな人と知り合わなきゃいけないし、大変なところもあるのが現実。

やりたいことが明確にある人はどんどん好きにやってみたらいいと思うけど、事前に自分のバッファとアテがどれくらいあるのかきちんと試算してからのほうがより長く好きなことを続けられるのではないでしょうか。」

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池澤あやかさん

1991年東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。2006年に第6回《東宝シンデレラ》審査員特別賞受賞。多数の映画や番組に出演しながらも、プログラムができる女優としてWebメディアやハッカソンで積極的にクリエイター活動をおこなっている。著書に『アイディアを実現させる最高のツール プログラミングをはじめよう』(大和書房)共著に『小学生から楽しむ Rubyプログラミング』(日経BP社)がある。

Twitter:@ikeay
公式サイト:ikezawaayaka.com

執筆者

みんなのスタンバイ編集長。「エンジニアに萌えるお姉さん」として年間3,000人が訪れるテック系イベントスペースを運営し、企業のファンづくりを務めた。2015年からフリーランス編集者。IT・Web系企業のPR・採用事情を取材している。