そうだ、パリに住もう。—苦労の家探し。鍵よ、どうぞ壊れないでくれ。

夫婦でパリに移住してから1ヶ月半が経ち、やっと生活のリズムができてきました。今回は私が住む家を探すなかで体験したパリの住まい事情についてお伝えします。フランスでは鍵が壊れると大変なことになります。

さぁ、理想のパリの部屋を探そう

パリの景色

(出典) photo-ac.com

STEP1:賃貸が比較できない不動産サイトで検索する

日本人がパリで物件を探すときは、日本語の物件紹介サイトを使うのが一般的。「パリ不動産」「ユーロエステート」が有名どころです。ただ注意しなければいけないのは、日本の不動産サイトのように間取りや写真が充実していないこと。

また掲載されている家賃も、電気代や通信費が含まれていたり、仲介手数料が均一でなかったりと、並列で価格を比較することが難しく、幾度もサイトとにらめっこをしては一体賃料はいくらになるのかと計算しなければなりません。

2人部屋の平均的な広さは20平米ほど。たま〜に30平米の部屋もありますが、1Kくらいの部屋に大人ふたりとなると、さすがに狭いです。

気になる家賃は1200ユーロ(約16万円程度)くらい。東京で20平米だと10万円ちょっとで探せるところもあるので、正直いって割高です。

パリで部屋を安く借りたい場合は、不動産会社を経由せずに個人オーナーから借りる仕組みを利用します。しかし今回は初めての部屋探しということもあり、個人間トラブルを避けるために不動産会社経由で部屋を借りることにしました。

STEP2:築100年超えビンテージアパートの螺旋階段を登る

パリの賃貸は、日本のウィークリーマンションのような家具家電付きが当たり前。オーナーの趣味で揃えられたソファー、ベッド、洗濯機に加えてフライパンやお皿まであります。

使えればよいという発想のため新品ピカピカの家電が揃っているわけではありませんが、初期費用が少なく済むので海外移住者にとってはありがたい仕組みです。

パリ市内のアパートは、よっぽど開発されたものでなければほとんどの建物の築年数は100年を超えています。古い建物を長く使っているのが当然なので、築年数を気にするフランス人は滅多にいません。日本で流行っているビンテージ感というよりは、古くて当たり前みたいな感覚でしょうか。

外観だけではなく、美術館のような内装もパリのアパートならでは。写真の螺旋階段はたいていどこの建物にもあり、昇り降りするときはくるくる回りながら歩きます。

私が見にいったアパートは3階建てでしたが、エレベーターがなければ毎日の買物やお出かけは相当大変なことでしょう……。

STEP3:20区をくまなく歩いてみる

どの街に住もうかなと考えながら歩くと、観光で訪れていた街とはまったく顔つきが違うように見えます。パリには区が20個ありますが、街の雰囲気も区によって多種多少。

日本大使館のあるエリアは、道も広くすっきりとしていて綺麗な公園も近くにあり、毎日清々しい気持ちで暮らせそうなところです。逆に外装が壊れかけている店が連なっていたり、道路が狭くて込みいったエリアは住むのにはあまり向いていなそうな雰囲気。

20区内をくまなく散策しているうちに「街の雰囲気で選びたい!」という要望が高くなっていきました。そして最終候補に上がったのが、夫の職場にも近い6区というエリア。

家賃相場は高いですが、最初のパリ暮らしで嫌な印象をもってしまうのは絶対に嫌だったので多少の出費は仕方なしと折り合いをつけることにしました。

STEP4:問い合わせても来ないお返事を1ヵ月待つ

少しでも気になった物件は、物件の空きがあるか、内見はできるかをこちらから問い合わせます。押しの強い営業スタイルが多い日本と真逆で、パリの不動産会社はお客さんが動かなければ連絡がまったく来ないのです。

しかし時期が悪かった。その頃のパリはちょうど長い夏休み(バカンス)の真っ只中。問い合わせをしてから返事をもらえたのは1ヶ月後でした。しかもさんざん待ったあげくにもらった返事は「その物件は契約済みです」という残念な結果に。

結局は1週間だけ仮住まいのような形で、個人オーナーから部屋を借りることにしました。
なかなか見つからない理想のお部屋。そうはいってもパリに住むことは決めたわけですから「家なき子だけにはなりたくない!」という一心で物件の空きや内見の問い合わせをしつづけます。

さて、内見から契約にこぎつけるぞ

住宅の内装

(出典) photo-ac.com

STEP5:3日以内に内見を済ませる

契約前の部屋の内見はパリでも一般的。ただ内見のスタイルは、日本のように不動産会社が同行してくれるケースもあれば、内見アポイントの手配のみで、実際の訪問は自分たちのみで進めなければいけないケースもあります。

私たちに部屋を案内してくれた管理人は、親切な対応をしてくれたものの英語はまったく話せなかったので、フランス語で部屋の説明を受けました。指を差しながら説明してくれたので、なんとか理解できました(と思っています)。

1週間限定の部屋から退去する日まであと3日。焦りと不安のなか、3件目に内見した物件は幸いにも希望の条件である「6区・低層階・バスなしでもOK」に当てはまっており即借りることに。

短期アパートの大家さんに部屋が見つかったことを伝えると「条件にあった部屋が見つからずにホテルや短期のアパートを転々とする暮らしが長引いている人もよく見かけるから本当にラッキーだったね」とのこと。家なき子にならなくて良かったと胸をなでおろしました。

STEP6:署名(サイン)に怯えながら賃貸契約する

タイムリミットが迫っていたため、内見後そのまま物件を管理している不動産会社へ向かいました。またもや新しいフランス人の登場で緊張しつつも、こちらは流暢な英語で説明をしてくれて、必要書類であった夫の研修協定書、私の長期VISA、銀行の残高証明書を提出します。

ちなみにフランスには印鑑がありません。契約するときは「lu et approuvé (内容を読み、承認しますという意味) +名前」のサインがお決まりの流れ。

印鑑に慣れ親しんだ私からすると、サインだけでは改ざんされるのではないかという一抹の不安が残りましたが……内見した当日に契約し鍵まで受け取るハイスピードで部屋を決めることができました。

STEP7:鍵が壊れないように祈る

契約が完了しほっとしたのも束の間、住宅保険が必要といわれ慌てて銀行へ駆け込みます。保険プランの見積もりを出してもらい、保証範囲と金額を選ぶのは日本と変わらない部分でしょうか。

住宅保険の説明を受けるなかで驚いたのは、家の鍵が壊れた際に必要な “鍵屋を呼ぶ費用” がなぜか保険の対象外だということ。

しかもこの鍵屋、違法請求する悪質な業者があるそうです。銀行から紹介された鍵屋でなければ安心できないと説明され、なんだかとっても面倒くさそう。「鍵よ、どうぞ壊れないでくれ!」と祈るばかりです。

いよいよ、新居での生活が始まる!

家具のない部屋

(出典) photo-ac.com

STEP8:好みの小物をちょっとずつ揃える

選んだ部屋が道路側だったので、週末は酔っ払いのおしゃべりや歌声が深夜2時過ぎまで通りに響いています。不動産会社からはうるさくて眠れないよと忠告されましたが、まだパリでの生活が心細い私にとっては、人の温かみを感じる音になっています。

もう少しパリの生活に慣れたら、少し広くて家賃が休めの部屋に引っ越そうかなと思います。次に部屋を探す時には、地元の不動産会社での部屋探しにチャレンジしてみたいなぁ。

■そうだ、パリに行こう。バックナンバー
vol.1 ゼロから始める、わたしの海外移住計画。
vol.2 フランス人は残業しないって本当?現地で聞いた労働環境のリアル
vol.3 苦労の家探し。鍵よ、どうぞ壊れないでくれ。