CGデザイナーは、コンピューターグラフィック(CG)を使ってデザインをする職業です。CGの需要は増加しているため、スキルを生かして活躍できる業界は広く、映画業界やゲーム業界での映像制作のほか、さまざまな業界で必要とされています。
CGデザイナーとは
CGデザイナーとは、「CGクリエイター」とも呼ばれ、コンピューターグラフィック(CG)を使ってCGデザインを行う職種です。
近年では、あらゆるメディアでCGが使われています。スマートフォンの起動画面、ゲームキャラクター、テレビドラマの特殊効果など、CGを使っていないメディアを見つけるのは困難ともいえるでしょう。
CGの世界では、現実では不可能な表現や、逆に現実と錯覚するほどの実在感を伝えることができます。これらの技術が発展して、現実を拡張するAR(Augmented Reality)、仮想現実を体験するVR(Virtual Reality)、そして現実に仮想を投影するMR(Mixed Reality)といった技術が生まれました。
VRは一般家庭にも普及し、自宅でも仮想現実を楽しめる時代が到来しており、CGは非常に身近な存在といえます。
あらゆる局面で利用されるCGの需要は、増加傾向にあります。スキルを生かして活躍できる業界は広く、映画業界での映像制作からゲーム業界でのキャラクター制作、雑誌の表紙やポスターで使われる二次元CGの制作など、CGデザインのスキルが高い人はさまざまな業界で引く手あまたです。
CGデザイナーになるには
CGデザイナーになるために必要な資格はなく、学歴を重要視されることもありません。初心者・未経験者など誰もが目指せる職種です。
しかしながら、CGデザイナーの求人は即戦力の募集が多く、これらの求人に応募するためには制作のスキルが必要です。求人数は多くありませんが、初心者・未経験者OKという求人もあります。すぐに働きたい人は、スキルを磨ける職場を探してもよいかもしれません。
CGデザイナーとしてのスキルを身に付けるには
ここでは、CGデザイナーとしてのスキルを身に付けるための、3つの方法を紹介します。
学校に通ってCGデザインを学ぶ
CGデザインの制作スキルを身に付ける方法の1つとして、学校に通うことが挙げられます。CG制作の工程ではデッサンを行うこともあるため、芸術系の大学で絵画や彫刻などを専攻すれば、より専門的な技術が身に付くでしょう。
また、より直接的にCGデザイナーを養成するための専攻を設けている専門学校で学べば、CGデザインの勉強に集中できるかもしれません。
「公益財団法人画像情報教育振興協会」では、CGクリエイター(CGデザイナー)を養成するためのカリキュラムを作り、それを取り入れている教育機関を「認定教育校」としてリスト化しているので、参考にしてみましょう。
制作現場で働きながら学ぶ
「Illustrator」や「Photoshop」などの画像処理ソフトがある程度使えるのであれば、制作現場のアシスタントとしてCGデザインのアルバイトが見つかる可能性があります。
最初は画像上のノイズを消したり、画像合成用のマスクを切るといった地味な作業が続きますが、制作現場で働けば現場の環境を把握できますし、よい先輩に出会えば知識・技術を教えてもらえるかもしれません。
ただし、並行して独学は必須です。本気でなりたいと思う熱量を職場にも伝えましょう。
独学で学ぶ
学校に通ったとしても、制作会社で働いたとしても、一流のプロフェッショナルを目指すのであれば独学は必須です。CGデザインを行うソフトウエアやOSは日々進化するので、学び続けることがプロには求められます。
各ソフトウエアは、チュートリアルやガイドブックが多数存在するので、独学で読み解いていくだけでも多くの知識・スキルが身に付くでしょう。
しかし、独学だけでは学べないこともあります。大規模なCG制作は多くの工程に分かれているため、役割分担や作法を独学で習得するのは困難なのです。
独学による知識・経験の不足を少しでも解消するには、インターネット上に点在しているCG制作現場の動画などを通して学ぶのもよいかもしれませんが、現場に足を運ぶ機会を作るのが一番です。
制作ツールは初めから有料のソフトを導入するのではなく、「Blender」などの無料ソフトを使って慣れることをおすすめします。「Blender」は、モデリングやアニメーション映像の編集などを無料で制作できる、オープンソースの統合環境アプリケーションです。無料といえども、プロのCGデザイナーが実務に利用することもある本格的なものです。
また、制作スキルを高めるために、CG制作に関連する資格・検定の受験を検討してもよいでしょう。CGデザイナーになるために役立ちそうな資格としては、CGの制作理論などを出題する「CGクリエイター検定」や「Photoshopクリエイター能力認定試験」「Illustratorクリエイター能力認定試験」などがあります。
CGデザイナーの仕事内容
CGデザイナーは、CGについての総合的な知見によって、あらゆるアウトプットに合わせた制作を推進できる技術者ともいうべき職種です。
純粋にデザインだけを行うのではなく、最終的なアウトプットにCGをつなぎ合わせるための「発想力」や、制作内容をメンバーに伝える「画力」、ファイル容量や処理性能などの制約条件をカバーできる「技術力」など、デザイン以外のスキルも求められるでしょう。
ただし、初心者・未経験者が最初に求められるのは静止画の基本的な画像処理操作です。アドビシステムズが販売する「Illustrator」や「Photoshop」は、画像処理に関する業界標準のツールとなっており、どの制作会社や制作部門に行っても、これらのツールのスキルは必須となるでしょう。
業界標準であるがゆえに、会社間でのファイルのやりとりがIllustratorやPhotoshopのファイル保存形式で行われることが多いのです。アドビシステムズ公式の無料チュートリアルや学習教材を使えば、独学でもソフトウエアの理解を深めることができます。
2DCGと3DCGについて
CGは「2DCG」と「3DCG」で、制作内容が大きく異なります。
2DCGは、二次元の制作を指し、スマートフォン向けゲームなどのキャラクターデザインや背景デザイン、UI(ユーザー・インターフェース)の制作のほか、写真の加工やロゴ制作など平面のデザインを行います。
「Illustrator」や「Photoshop」といったソフトウエアを駆使してグラフィックを制作することが多く、両ソフトへの深い理解が必要です。
例えば、紙媒体の絵・図をスキャナーでスキャンし、Illustratorでトレース(ベクトルデータ化)し、ほかのデータと合わせてデザインを作るなどです。
ゲーム業界では、ドット(点)を集めてキャラクターを描く「ドット絵」に関するスキルが求められるケースもあります。同じCGでも、3DCGとは一部異なる知識が求められるといえます。
一方、3DCGの制作は複雑です。3DCGの制作を行う企業では、「3ds Max」「Maya」「CINEMA 4D」「LightWave」「Shade3D」など、高額で高度なスキルが必要なソフトウエアを導入しているケースが多くなっています。
これらのソフトウエアを使い、写真素材・イラスト・デッサンなどの2Dデータから、3Dオブジェクトを制作する「モデリング」から始めます。
各ソフトウエア間でモデリングデータの互換性があるので、モデリングに関しては使いやすいソフトウエアを決めて、1つのモデリングプログラムの操作に慣れた方が作業効率がよいかもしれません。
モデリング後は、データに色や質感を持たせるための「テクスチャー」の設定を行います。無機質な3Dオブジェクトのモデルに、色や質感を与えて現実味を持たせるための作業で、「マテリアル」などとも呼ばれます。
例えば、ガラスであれば透過率や屈折率を設定したり、動物のモデルには体毛を表現するプラグインの設定をしたりといった具合です。モデルに合わせて画像情報を細かく調整しながら貼り付ける必要があり、地道な作業に耐える根気と集中力が必要になります。
また、3DCGの制作では仮想の「カメラ」が存在し、そのカメラの設定も必須です。仮想空間上の撮影となりますが、絵コンテに合わせてカメラの画角・レンズ・位置などを設定します。
さらに、空間に光を当てる「ライティング」も行います。仮想のライトや太陽を設定して、光の強弱や照らし方を工夫し、陰影に富む画を作り出すのです。仮想空間に存在する撮影シーンにより、一層のリアリティーを生み出します。
現実の撮影現場と同じく、ライティングは最も重要な要素の1つです。仮想上とはいえ、そのカメラが切り取った画に、作品としての息吹を与える重要な作業です。日々の「光」に関する観察力が試される場面となります。
3Dソフト上の最終工程は「レンダリング処理」です。ここまで設定した仮想空間上の撮影シーンについて、テクスチャー・カメラ・ライトなどを設定通りに計算して、CGの出力を行います。
レンダリングは、コンピューターの処理量が大きく、出力するまでに多くの時間を要することがほとんどです。通常は、ドラフト印刷のような簡易なレンダリングを繰り返して、前工程のテクスチャー・カメラ・ライティングなどの微調整を行い、最後に最も高画質となるレンダリングを行います。
静止画の納品であれば、この出力結果をPhotoshopなどの画像処理ソフトで読み込んで、最終的な成果物を作ります。3Dソフトで出力できるのは、基本的に仮想空間で設定した撮影シーンに対する撮影の結果です。
動画を制作する場合、工程はさらに複雑になります。「CGアニメーション」であれば、モデルに仮想の骨を割り当て、モーションをつける方法が一般的です。仮想空間のXYZ座標と、時間に対してキーフレームを設定して仮想の骨の関節を曲げることで、自然な動きを表現します。
そのほか、重力やぶつかったときの物理演算など、設定項目は静止画に比べて飛躍的に増えます。モデルだけでなくカメラも移動する場合は、カメラの動きの設定も行わなければなりません。計算量が増えるので、レンダリングが1週間で終わらないこともよくあるようです。
大規模な3DCGの制作現場では、上記の工程の全てを1人のCGデザイナーが担当することは少なく、各制作工程に担当者がおり、チームで制作を進めます。
ただし、CGデザイナーは、それらの工程について一通りの知識を持っている必要があります。同時に、チームでの制作やクライアントとの折衝をこなすための、コミュニケーション能力も要求されるでしょう。
CGデザイナーをはじめとする制作系の職種は、業界を問わず労働時間が長くなる傾向にあります。しかし、成果物が仕上がった際の達成感もまた、制作系の職種ならではのものではないでしょうか。
将来性
CGデザイナーの需要は、今後も増加していくと見込まれ、将来性のある職種といえます。
従来の活躍の場である映画・ゲーム・アニメなどの制作会社に加え、近年では家電・食品・住宅などの各種メーカーでも需要が高まっているようです。広告やパッケージデザイン、顧客プレゼン用の資料を制作する際に、CGを必要とする場合があるためです。
さらに、CGの制作スキルや成果物は、国をまたいでも価値が変わらないため、努力次第では海外でも働くことができます。
また、フリーランスで働くという選択肢があるのも、この職種の特徴です。CG関係のコンテストでの受賞や、評価の高い作品に携わることで実績を上げ、個人のポートフォリオ(作品集)を充実させれば、独立の道が見えてきます。実力次第の厳しい世界ではありますが、これもCGデザイナーという職業の大きな魅力ではないでしょうか。
CGデザイナーからのキャリアチェンジを考えることになった場合、3D制作ソフトやプロフェッショナル向け動画編集ソフトのスキルを生かす機会は、減るかもしれません。
しかし、IllustratorやPhotoshopなどのスキルは、制作系の職場や職種にも普及しているため、別の制作系の職場でも働きやすいといえます。
CGデザイナーに向いている人
どのような人が、CGデザイナーに向いているのでしょうか?CGデザイナーは、クリエイター要素の大きい職種です。CGクリエイターに必要な資質や性格について見ていきましょう。
デザインに興味がある人
CGデザイナーの主な仕事は、ソフトを使ってデザインを制作することです。「デザイナー」という仕事柄、デザイン制作に興味があることは必須条件といえるでしょう。
絵を描くだけでなく、ロゴ作成や3D画像の制作など内容は多岐にわたります。全てのデザインを1人で作り上げることは難しいため、作業が何段階にも分かれているケースも多いでしょう。
「背景画像を作る」「場面を盛り上げる効果を制作する」など、一部の作業を任される可能性もあります。どのような作業を任されたとしても、デザイン制作自体に興味がある人は前向きに取り組めるはずです。
もちろん、デザインへの興味だけでなく、センスや技術といった要素も重要となってくるでしょう。
パソコン操作に抵抗がない人
CGデザイナーは、コンピューターを使ってデザインを作り上げます。基本的な作業はほとんどパソコン上で行うため、パソコンを使いこなせることが必須です。
CGデザインに使われる画像編集ソフトは、パソコン上で使用します。タイピングやソフトの使い方など、一通りの知識は必要になってくるでしょう。素早く作業を行うため、ショートカット機能やキーボード操作を覚えておくことも大切です。
アナログで絵を描いたりデザインを制作するのと、CGデザインではやる作業が全く違います。CGデザイナーを目指す場合は、普段からパソコンでの作業に慣れておくのがベターでしょう。
体力面に自信がある人
クリエイター業務は締切前に業務量が増え、忙しくなりやすい仕事です。繁忙期には残業が続くこともあるでしょう。毎日同じ分量の仕事が来るとは限らず、短い納期で作品を仕上げるよう求められるケースも少なくありません。
外で体を動かす仕事ではないものの、長時間の業務に耐えられる基礎体力は必要です。1日中パソコンに向かって、黙々と作業をこなす精神力の強さも求められるでしょう。
繁忙期や締切前に体調を崩すと、業務の面でも支障が出やすくなります。基本的な体力だけでなく、体調管理やストレス発散がうまくできる人がCGデザイナーに向いているでしょう。
CGデザイナーの年収
※スタンバイ掲載中の全求人データ(2017年6月時点)から作成
CGデザイナーの求人の給与情報から、CGデザイナーの年収帯を独自に集計しました。以上のグラフの通り、400万円台が26.3%と最も多く、次に500万円台が21.8%と続きます。
日本人の平均年収が男性532万円、女性が293万円で男女合わせると433万円(2020年分の「民間給与実態統計調査」より)なので、ごく一般的な年収か、やや低額といえそうです。
ただし、スキル次第で高額の報酬を稼ぐ人もいるようで、年収800万円台から1,000万円台が併せて6%以上存在します。
CGデザイナーの求人
CGデザイナーの求人は、映像やゲーム制作会社などが中心です。広告制作会社の求人も見られます。インターネット上では中途採用の割合が多く、数年間の実務経験を必須条件とすることが多いでしょう。
ただし、CG制作の実務経験さえあればよく、映像業界からゲーム業界への転職といった、業界をまたぐ転職も比較的容易なようです。
新卒募集はあまり見られませんが、専門学校などで直接募集しているため、クローズドな求人になっているといえます。
出典:
Blender.jp
一般財団法人 デジタルコンテンツ協会
公益財団法人 画像情報教育振興会
CG-ARTS「CGクリエイター検定」
資格検定のサーティファイ「Photoshop(R)クリエイター能力認定試験」
資格検定のサーティファイ「Illustrator(R)クリエイター能力認定試験」