グラフィックデザイナーになるには?アピール方法とおすすめの資格

グラフィックデザイナーとは

デザイナーの女性

(出典) photo-ac.com

グラフィックデザイナーとは、各種メディアや商品などで発信したいメッセージや意図をビジュアルを使って効果的に伝えられるよう、デザインを手がける職種です。デザインセンスはもちろんのこと、クライアントの意図を汲み取って的確にデザインに反映する力が必要です。

「グラフィックデザイナー」とよばれる職種は、雑誌の広告や誌面、新聞、商品パッケージ、パンフレット、チラシといった印刷媒体を中心にデザインを手がける人を指すことが多いでしょう。それ以外にもWeb業界やゲーム業界でグラフィックデザインを専門的に扱うデザイナーや、ブランドやプロダクト全体の方向性を取り仕切る「アートディレクター」という職種もあります。フリーランスやベテランのグラフィックデザイナーのなかにはそれらを兼務している人もいますが、本ページでは印刷媒体のグラフィックデザイナーに絞って紹介します。

グラフィックデザイナーになるには

カフェで話す女性たち

(出典) photo-ac.com

グラフィックデザイナーは、美術系の専門学校・短大・大学などを卒業して、出版社のクリエイティブ部門やデザイン事務所などの制作会社に就職することからキャリアをはじめるのが一般的です。勤務先で先輩グラフィックデザイナーのアシスタントをしながら仕事の経験を積み、デザインコンペなどに参加しながら一人前のグラフィックデザイナーを目指します。

広告代理店や大企業のクリエイティブ部門や制作会社、デザイン事務所への就職は、美術系の学校で美術を専攻することが必須条件とは限りません。しかし、有名なグラフィックデザイナーは美術系の専攻出身者も多く、着実にグラフィックデザイナーになることを目指すのであれば、美術系の専攻がある学校に進学して、美術の基礎から学んだほうが就職先は見つかりやすいでしょう。また、大企業出身のグラフィックデザイナーは芸大・美大の出身者が多いため、大企業のクリエイティブ部門でグラフィックデザイナーとしての入社を目指すなら、大学で美術を専攻するのが有利だといえます。

就職するために、もっとも注力すべきはポートフォリオ(作品集)の制作です。デッサン力や画力、デザインソフトを扱う技術をはじめとするグラフィックデザイナーとして欠かせないスキルを、一目瞭然の状態でアピールできるからです。学生であれば、学校の課題制作を活用するのもよいですし、個人でデザインコンペに応募するのもよいでしょう。公益財団法人日本デザイン振興会などが学生向けのコンペを開催しています。

ポートフォリオの制作にあたっては、自分の描きたいものを書くアート作品だけでなく、テーマに沿ったメッセージや意図を伝える「商業デザイン」を念頭においた作品を多く準備しておくことがポイントです。そのため、あらかじめテーマが設定されているコンペに参加することが、ポートフォリオの充実に役立ちます。

グラフィックデザイナーとして働くために必要な資格はありませんが、近年のデザイン制作業務で多用する「Photoshop」や「Illustrator」「InDesign」などのデザインソフト・DTPソフトに関連した以下のような資格を取得しておくと就職で有利になる可能性もあります。

  • アドビ認定プロフェッショナル試験
  • Illustratorクリエイター(R)能力認定試験
  • Photoshopクリエイター(R)能力認定試験
  • CGクリエイター検定(映像やWebなどの領域も扱う可能性があれば)

キャリアパスについて

広告制作会社やデザイン事務所、デザイン部門のある印刷会社などにアシスタントとして就職した場合、会社の規模や風土によって任される仕事は異なります。最初はデザインのための調査やデザインの素材集めを行うこともあれば、ロゴマークや素材の利用についての権利確認をすることもあるでしょう。

その後、経験を積んで一人前のグラフィックデザイナーとなりポートフォリオが充実してくれば、転職してキャリアアップすることも、独立して事務所を構えることも可能です。
勤務先でグラフィックデザイナーから仕事の幅を広げ、全体の方向性を決めるアートディレクターやプロデューサーなどに転身する人もいます。さらに、印刷媒体から出発してデジタルメディアの領域まで手がける人もおり、グラフィックデザインを切り口にさまざまな業務へ進出することが可能です。

仕事内容について

ビジネスウーマン

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グラフィックデザイナーは、ディレクターやプランナー、フォトグラファーなど制作分野のプロフェッショナルとチームを組んで働くのが一般的です。主な仕事内容や働き方を見ていきましょう。

クライアントとの打ち合わせ

まずはクライアントと打ち合わせを行い、企画意図やデザインの要望を引き出します。業務効率化のためにディレクター、プランナーなどチームの一部メンバーだけがクライアントと打ち合わせをすることもあります。ディレクターは打ち合わせの結果をもって作品全体の方向性を決め、成果物の要件を定めます。

制作

決まった要件をもとに、グラフィックデザイナーはデザイン原案を何点か制作します。原案は制作チームで議論され、採用案が決定します。たとえばポスターの制作であれば、グラフィックデザイナーは図案・全体構成・レイアウト・フォント・配色などを提案するのが役割です。コピーライティングが必要な作品なら、図案に合わせてコピーを適正な文量・配置にすべくコピーライターと意見をすり合わせたり、ディレクターなど作品の方向性を決める立場の人とも意見を交換したりしながら仕事を進めます。この過程では、クライアントの意見も適宜取り入れながら、何度も修正が入ることが普通です。

働き方

特に受託制作の案件では、クライアントやチームからの緊急の修正依頼などに対応しつつ納期は厳守しなければなりません。締め切り前は勤務時間が不規則になることが多いでしょう。さらに、同時並行でいくつもの作品を制作する場合や、別の作品を制作中に新規のデザインコンペに出品しなければならないケースもあり、そのような場合は激務になりがちです。作品ひとつひとつの細部までこだわり最後まで手を抜くわけにはいかないといったプロ意識から、時間を忘れて仕事に没頭してしまうということもあります。

このように仕事時間が長くなることもありますが、手がけた作品に反響があったときの喜びは大きく、何物にも替えがたいものです。さらに、制作した作品が自らの実績となってポートフォリオが充実していくことも、グラフィックデザイナーとして働くうえで大きな励みになります。

求められる資質やスキル

カラーチャート

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グラフィックデザイナーになるには、それなりの資質やスキルがなければ務まりません。もともとの興味関心から後天的に身に付けられるスキルまで、主なものを3つ紹介します。

デザインやイラストに対する興味

グラフィックデザイナーは、パソコンを使用してグラフィックを作り上げます。「デザイン」または「イラスト」への興味・関心が高ければ高いほど、熱意を持って仕事に取り組めるでしょう。

デザインやイラスト制作に興味がある人は、趣味を通してグラフィックデザイナーに必要となる知識やスキルを学べます。美しく見えるデザイン制作の方法やソフトウェアの使い方は、経験を重ねるごとに身に付くでしょう。

グラフィックデザイナーとして勤務する前に知識を蓄えておくと、大きなアドバンテージになります。

ソフトウェアに関する知識

グラフィックデザイナーは、主に画像編集ソフトを使用してデザインを制作します。「Photoshop」や「Illustrator」が有名です。どちらも、パソコン上でデザイン画やイラストなどを制作できます。

Photoshopは、主に「写真加工」「CG画像作成」など、デザイン制作全般に使えるツールです。Illustratorは「イラスト制作」「ロゴ・アイコン制作」など、二次元的なデザイン制作を得意としています。

ソフトウェアには、下書き・色付け・画像の取り込みなど豊富な機能が搭載されています。グラフィックデザイナーとして働く前に、基本的な使い方は押さえておいたほうがよいでしょう。

論理的思考と理解力

グラフィックデザイナーは、デザイン制作だけでなくクライアントやユーザーとの関わりが大きい仕事です。「クライアントが求めるデザイン」や「ユーザーに受け入れられるデザイン」を作るには、論理的に考える力が欠かせません。

現在のトレンドを取り入れながら、クライアントが持っているイメージを聞いて形にするには、デザインに対する深い知識や理解力も必要になるでしょう。

また、グラフィックデザイナーとして独立する場合、ユーザーが求めていることを知るために、マーケティング知識も必要になる可能性があります。

グラフィックデザイナーの年収

※スタンバイ掲載中の全求人データ(2017年6月時点)から作成

厚生労働省が発表する賃金構造基本統計調査(2021年分)によると、グラフィックデザイナーを含む「デザイナー」の平均年収は470万円程度です。職種を問わない全国の平均年収が400万円台であることを考えると、平均よりやや高めの年収といえそうです。

グラフィックデザイナーはアシスタントと高度なスキルを持つ熟練デザイナーとの年収に開きがあるため、立場や年齢によって差は出てくると考えられるでしょう。

グラフィックデザイナーの求人傾向

デザイナーのデスク

(出典) photo-ac.com

本ページでは、主に印刷媒体のグラフィックデザイナーについて説明しましたが、ゲーム会社やWeb制作会社などでもグラフィックデザイナーの職種を募集しています。

グラフィックデザイナーの中途採用は、経験者採用が多いです。ただし、グラフィックデザイナーとしての経験さえあれば、前職で手がけていた業界はあまり問わない傾向で、印刷媒体をメインに扱っていた人がWebに転身することも可能です。

小規模な広告代理店などでは未経験者も募集しています。未経験者の場合でもポートフォリオがあれば有利になるため、キャリアチェンジでグラフィックデザイナーを目指すならば、ポートフォリオは準備しておきたいところです。また、Photoshop・Illustratorのスキルは必須条件であることがほとんどです。

雇用形態については、正社員のほか、契約社員やバイトの求人もあります。一部、在宅の案件もあるようですが、正社員雇用ではなかなか難しいようです。

出典:
公益社団法人 日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)
アドビ認定プロフェッショナル「Adobe Certified Professional」
資格検定のサーティファイ「Illustratorクリエイター(R)能力認定試験」
資格検定のサーティファイ「Photoshopクリエイター(R)能力認定試験」
CG-ARTS「CGクリエイター検定」
国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査」