サプライヤーという言葉は知っていても、意味については曖昧にしか理解できていない人も多いのではないでしょうか。主に製造業界で使われている言葉ですが、近年ではさまざまな業界に存在します。サプライヤーの業界別の具体例や役割などを見ていきましょう。
サプライヤーとはどういう意味?
製品やサービスの製造・提供に関わる業界には、サプライヤーという役割が存在します。取引の流れを適切に把握するためにも、正しい意味を知っておきましょう。
商品やサービスを提供する仕入れ業者のこと
サプライヤー(supplier)には、「商品やサービスの供給者」という意味があります。ビジネスの現場では、製品を作るために必要な資材や部品を納入する業者のことを指すのが一般的です。
「仕入れ先」というと、理解しやすいかもしれません。もともとは、製造業界で仕入れ業者を指すのが一般的でしたが、近年ではさまざまな業界でサービスなどを提供する企業に対して使われています。
また、提供を受ける側が別の業者にとってのサプライヤーになるなど、立場が固定されないのも特徴の1つです。
サプライチェーンとは
サプライチェーンとは、1つの製品が原材料の調達から生産・流通を経て、最終的に消費者の手に届くまでの一連の過程を指します。製造物だけでなく、農産物や海産物などが生産者から消費者に届くまでの過程もサプライチェーンの1つです。
例えば、コンビニで売られているお弁当の場合は、原料となる食材の調達から調理や加工・店舗への配送・店頭での販売までの過程全体がサプライチェーンに当たります。
農産物の場合は、収穫された米や野菜が生産者の元から卸売市場に運ばれ、そこから店舗に配送されて販売されるまでの過程全体です。
【業界別】サプライヤーの具体例
さまざまな業界にサプライヤーは存在します。業界別の具体例を見ていきましょう。
製造業界
製造業界の場合、製品を組み立てるための部品を製造し、メーカーに供給する業者のことをいいます。自動車業界を例に挙げると、自動車の製造に必要な部品をメーカーに納める業者がサプライヤーです。
ただし、自動車を完成させるために必要な部品にはさまざまな種類があります。ねじのように単体の部品だけでなく、エンジンやカーナビなどの製品も、メーカーから見れば部品の一部です。
さらに、エンジンやカーナビを製造している企業に部品を納めている業者も、サプライヤーになります。このように、1つの製品が完成するまでにはさまざまな役割を果たすサプライヤーが存在します。
旅行業界
旅行業界では、旅行会社が作る旅行プランに必要なサービスを提供する、バス・航空会社・ホテル・レストランなどの企業がサプライヤーに当たります。
旅行会社が顧客に旅行プランを販売するには、宿泊施設や交通手段などをあらかじめ確保しておかなければなりません。旅行を実施するために旅行会社が確保を依頼した企業が、仕入れ業者に当たるということです。
また、代理店を通じてプランを販売する場合は、旅行会社が代理店にとってのサプライヤーになります。
アパレル業界
アパレル業界には、消費者の手元に届くまでにいくつかのサプライヤーが存在します。まず、製品のデザインや素材集めをするアパレルメーカーに糸や生地を提供する商社や問屋は、メーカー側から見たサプライヤーです。
しかし、商社や問屋が糸や生地の素材を仕入れている場合は、その仕入れ先が商社や問屋にとってのサプライヤーとなります。少しでも外部から素材を仕入れていれば、その取引先が全てサプライヤーに該当するというわけです。
また、アパレルメーカーが作った服を小売店に提供する場合は、アパレルメーカーも小売店のサプライヤーとなります。
IT業界
IT業界は、複数のサプライヤーが存在しやすい傾向があります。顧客からソフトウエアの開発を依頼された企業が、開発工程の全てや一部を、下請けとなる別のソフトウエア開発業者に任せることが少なくないためです。
例えば、大手IT企業から依頼された開発の工程に対して、A社からB社・B社からC社へと下請けが繰り返されることもあります。この場合は、A社にとってはB社が、B社にとってはC社がサプライヤーです。
つまり、大手IT企業の下にいるソフトウエア開発業者は、基本的に全てサプライヤーの役割を担っているといえます。
サプライヤーと似ている用語
サプライヤーと似ている用語に、「メーカー」や「ベンダー」があります。正しく使うためにも、それぞれの意味を知っておきましょう。
メーカー
メーカーとは、サプライヤーから仕入れた資材や部品を使って、製品を設計・製造する企業のことです。業種でいうと製造業に分類される企業で、自動車・食品・アパレルなど、製造する製品によってさまざまな業界に分かれます。
製造工程によっても分類され、製品の素材を製造する「素材メーカー」、部品を作る「部品メーカー」、素材や部品を組み立てて製品を完成させる「加工(組み立て)メーカー」の3種類があります。
一般的に、自動車・食品・アパレル業界などで「メーカー」と呼ばれているのは、この分類の中の加工メーカーのことを指します。
ベンダー
ベンダーは、サプライヤーから供給された商品を販売する業者です。サプライヤーとベンダーは、どちらも製品や商品を販売・供給するという点では同じですが、供給する相手が異なります。
サプライヤーはメーカーや中間加工業者などの企業に対して製品を供給しますが、ベンダーが販売する相手は一般消費者です。また、ベンダーの主な役割は仕入れた商品の販売であり、製造や加工には直接関わりません。
ベンダーにも、ソフトウエアベンダー・ハードウエアベンダーなど、扱う商品や販売形態によってさまざまな種類があります。
サプライヤーの対義語とされる用語
サプライヤーの対義語とされる用語は、「バイヤー」や「ディストリビューター」です。それぞれの意味についても確認しておきましょう。
バイヤー
バイヤーは、購入する側を指す言葉です。サプライヤーから供給を受ける立場という意味で、対義語とされています。バイヤーと聞くと、アパレル業界で商品を買い付ける担当者をイメージする人も多いでしょう。
しかし、さまざまな業界にバイヤーは存在します。企業ごとに「調達」「購買」など呼び方はさまざまですが、自社で販売する製品・商品・資材・部品などの仕入れ担当は全てバイヤーです。
企業によっては、バイヤーが商品の企画や開発・販売計画・予算管理などを担当する場合もあります。
ディストリビューター
ディストリビューターとは、サプライヤーから提供された商品を「リセラー」と呼ばれる2次代理店に卸す1次代理店のことです。サプライヤーが商品を供給する相手という意味では対義語といえます。
ディストリビューターの大きな特徴は、消費者には直接販売しないことです。商品が消費者の手に渡るまでに、2次代理店のリセラーの先に3次代理店を挟むケースもあります。
またディストリビューターは、供給を受けるサプライヤーとパートナー契約を結んでいるのが一般的です。契約を結んでいるパートナーの数が多いほど、扱う商品やサービスの種類も多くなります。
サプライヤー管理とは
資材や部品の調達には、適切なサプライヤー管理が必要です。サプライヤー管理の意味や重要性、適切な管理のためのポイントなどを解説します。
サプライヤー管理の意味と重要性
サプライヤー管理とは、さまざまな情報からサプライヤーを評価して、調達戦略の策定に生かす活動のことです。資材や部品の仕入れ業者は、情報を基に価格・品質・納期・サービスなど、さまざまな観点からの総合的な評価によって決められます。
サプライヤー管理の目的は、コスト削減や安定供給の実現です。取引先の信用度を評価するというリスク管理の目的もあります。
製品やサービスの品質を向上させ、他社に対する競争力を維持するには、最適なサプライヤーを選択することが重要です。
サプライヤー管理のポイントと注意点
サプライヤー管理の主なポイントは、「属人性の排除」「非公開も含めた情報入手」「情報入手の効率化と情報の更新」の3つです。
- 属人性の排除:特定の担当者の知識や経験に依存しないために、評価項目や基準を明確にして客観的に判断する。
- 非公開も含めた情報入手:企業のサイトや業界内で公開されているものだけでなく、クレームやトラブルの発生状況など非公開の情報も入手する。
- 情報入手の効率化と情報の更新:情報を効率的に入手し、更新するための仕組みを構築する。
優良なサプライヤーを選ぶためのポイント
製品の品質向上や戦略的なコストダウンを実現するには、最適な仕入れ先を選ぶことが必要です。優良なサプライヤーを選ぶためのポイントを3つ挙げて解説します。
情報を集める
優良なサプライヤーを選ぶには、まず業者の情報を数多く集める必要があります。インターネットで企業が公開している情報を集めるほか、見本市や展示会などのイベントに参加するのもよい方法です。
セミナーに参加して、競合企業や取引先の担当者から有益な情報を得られることもあります。より多くの情報が集まるほど選択肢が多くなり、自社の選定基準を満たす業者が見つかりやすくなるでしょう。
評価基準を明確にする
業者を評価するための基準を明確にしておくことも大切です。自社のニーズに合った業者を選ぶには、QCD(品質・コスト・納期)のうち、どれを優先させるか決めておくと効率的に選定できます。
資材や部品の調達において、コスト削減は重要なポイントです。しかし、納期や品質とのバランスが取れてこそ、真のコスト削減につながります。
見積金額は安くても、納期に時間がかかったり品質に満足できなかったりすれば、安定的な供給の実現は難しいでしょう。
評価軸を増やす
自社にとって最適なサプライヤーを選ぶためには、評価軸を増やしてより細かくチェックすることも効果的です。評価軸を増やすと、業者ごとの短所や長所を見極めやすくなります。QCDに加えて、QCDに加えて、「7つのC」とも呼ばれる、以下7つのチェック項目を設定するとよいでしょう。
- Competency:管理や技術に関する能力があるか
- Capacity:供給に必要な資金力・物量・マンパワーなどのキャパシティーがあるか
- Commitment:安定的な供給を約束できるか
- Control:情報システムや管理が構築されているか
- Cash resources:財務的な安定性や利益率の高さはどの程度か
- Cost:トータルでコストはどのくらいかかるか
- Consistency:品質や流通の安定性を確保できるか
サプライヤーと交渉するコツ
資材や部品の調達において適切な取引をするには、サプライヤーへの対応方法も知っておくことが大切です。さまざまな交渉に対応するためのコツを解説します。
寡占化への対応
寡占化とは、自社のニーズに応えられるサプライヤーの選択肢がない状態のことです。この状態になると売り手側が有利になり、価格交渉などがしにくくなるというデメリットがあります。
寡占化に対応するには、まず原因を見極めて対策を講じることが必要です。例えば、技術面によって寡占化している場合は、製品の仕様を変更して特定のサプライヤーだけに依存しないなどの方法もあります。
また、供給量や納期面の要求に応じられるサプライヤーがほかにいなければ、自社の要求を変更することで寡占化を解消できる可能性もあるでしょう。
製品の仕様や要求の変更によるデメリットと、寡占化を解消した場合のメリットを比較して対応策を考えることが大切です。
値上げ交渉への対応
人件費や原材料費の高騰などによって、資材や部品の価格が値上げされることもあります。値上げ要求に対応するには、まずその製品や部品の適正価格(相場価格)を調べてみることがポイントです。
適正価格より高く、値上げが妥当ではないと判断した場合は、適正な価格で取引するよう交渉します。交渉の結果によっては、新規サプライヤーの開拓を検討する必要もあるでしょう。
なお、サプライヤーから値上げ要求があったら、必ず対応しなければなりません。拒否すると、買いたたきになる可能性があるので注意が必要です。
サプライヤーの意味を知っておこう
サプライヤーとは、製品やサービスを供給する業者を指します。扱う製品や業界によって、サプライヤーの種類はさまざまです。供給を受ける側の企業がサプライヤーとなることもあるため、供給に関する立場を表す言葉だと考えてよいでしょう。
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