労基が対応してくれるのはどんな問題?相談できる内容や注意点を解説

労基(労働基準監督署)は、職場の労働条件に関するトラブルを相談できる機関です。しかし、具体的にどのような問題に対応してくれるのか、あまり知られていないかもしれません。労基に相談できる内容や、知っておきたい注意点などを解説します。

労基とは

労働基準監督署

(出典) pixta.jp

「労基」とは、労働基準監督署の略称です。主な仕事内容や、混同されがちなそのほかの機関との違いについて解説します。

労働基準法に関連する相談受付・指導・監督などをする機関

ビジネスシーンで「労基」という用語がよく使われますが、正式名称は労働基準監督署といいます。労働基準監督署とは、全国に321署ある厚生労働省の第一線機関のことです。第一線機関とは、労基やハロワークなどとともに労働者を直接支援する機関のことをいいます。

労働基準監督署の主な仕事は、労働基準法などに違反する会社の監督指導や、不当な扱いを受けた労働者からの相談受付などです。

方面(監督課)・安全衛生課・労災課・業務課などの部署で構成されており、各課によって扱われる相談内容や監督指導の対象となる案件が異なります。

労働局との違い

労働局は、労働基準監督署の上層組織に当たる機関です。47都道府県に設置されており、下部機関には労働基準監督署のほかに、ハローワークなどがあります。

労働基準に関する相談対応のほか、職業安定業務や雇用環境・均等業務、労災補償業務などが労働局の主な仕事です。労働者から相談を受けたときは、労働者へのアドバイスや会社への指導だけでなく、両者の話し合いの仲介もします。

ただし、必ずしも労働者側の味方になるわけではなく、公平な立場で対応します。また、指導や助言には強制力がなく、あくまで労使が話し合うための手助けをするのが労働局の役割です。

労働基準局との違い

労働基準局は厚生労働省の中にあり、労働基準行政の最上層に位置する機関です。組織の相関関係でいうと、労働基準監督署の上層が労働局、さらにその上層が労働基準局となります。

労働基準局の主な仕事は、労働関係法令の制定や改廃・施策の企画や立案・労働局や労働基準監督署への指揮や監督などです。厚生労働省内の機関になるため、労働者から直接相談を受けることはありません。

労基に相談するとしてもらえることは?

商談

(出典) pixta.jp

労働基準監督署は、労働者と会社との間にトラブルが発生したときに相談できる機関です。具体的にどのような対応をしてもらえるのか、確認しておきましょう。

労働基準法などに違反している状態の是正

労働者から相談を受けると、トラブルが発生している職場に立ち入って、労働条件や環境などについて調査します。立ち入り調査の結果、労働基準法に違反していると見なされれば、会社に対してその是正を指導してもらえます。

司法警察としての権限もあるため、繰り返し是正を指導しても改善されない場合は、刑事事件としての捜査・逮捕・検察庁への送検も可能です。

労働者に危険が及ぶ可能性のある機械や設備を使っている工場などでは、その場で使用を停止するよう命ずることもあります。

相談内容へのアドバイスや労災保険の給付

労働者からの相談に対して、法令違反があればその内容についての説明や、解決するために利用できる制度などのアドバイスを受けられます。労働基準監督署では対応できない問題には、適切な相談窓口などを案内してもらえるでしょう。

また、労災保険の給付に関する相談に対応するのも労働基準監督署の役割です。労災と認められた被災者やその家族からの請求を受け、関係者への聞き取りや必要な調査をした上で、保険の給付を行います。

労基が対応している相談内容

労働条件

(出典) pixta.jp

労働基準監督署が対応するのは、労働基準に関する事案です。具体的にどのような相談が該当するのか見ていきましょう。

労働条件に関する問題

「法令に違反する状況下で働いている」「労働基準法で保障されている労働者の権利を行使させてもらえない」など、労働条件に関する相談は、労働基準監督署で対応してもらえる問題です。具体的には以下のようなことを相談できます。

  • 賃金や残業代が適切に支払われていない(現物支給を給与の代わりとしている場合も含む)
  • 客観的で合理的な理由がないのに、不当な解雇を受けた
  • 法令に反する時間外労働をさせられている
  • 仕事中の休憩や有給休暇を取らせてもらえない
  • 適切に退職の意思を伝えているのに辞めさせてもらえない

労災保険に関する問題

労災保険に関する問題の相談にも対応してくれます。労災と認められた場合の保険の給付だけでなく、被災したけがや病気が労災保険給付の対象になるのか分からないときの相談も可能です。労災保険に関する相談内容には以下のようなものがあります。

  • 仕事中にけがをしたのに会社が労災として扱ってくれない
  • 通勤途中で交通事故に遭ったので手続きの方法を知りたい
  • アルバイト中にけがをした。労災の対象になるか知りたい
  • うつ病と診断されたが労災に該当するか知りたい
  • 家族が過労死したのに会社が労災と認めてくれない
  • 会社で労災保険に加入させてもらえない

労働者の安全と健康に関する問題

会社が、労働者の安全や健康に配慮してくれないなどの相談も可能です。相談内容が労働安全衛生法などに違反している場合は、適切な措置を講じるよう職場に対して指導してもらえます。

  • 会社が定期的なストレスチェックを実施していない
  • 職場で健康診断を受けられない
  • 建設現場での安全教育が適切に行われていない
  • クレーンの運転免許や玉掛けなどの資格・講習に関する相談をしたい

労基に相談するメリットは?

残業過多

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労働条件に関する悩みを労働基準監督署に相談すると、どのような利点があるのでしょうか。主なメリットを3つ紹介します。

労働者なら誰でも無料で相談できる

労働条件などに関する相談を、無料で受け付けてもらえるというメリットがあります。労働条件などに関する相談は、弁護士や社会保険労務士などに受けてもらうことも可能です。しかし費用が発生するため、ハードルが高く感じてしまう人もいるでしょう。

労働者は、労働基準法に違反している事実を労働基準監督署に申告できる権利が認められています(労働基準法第104条第1項)。費用もかからないので、1人で悩んでいるより思い切って相談してみるのもよい方法です。

出典:労働基準法 第104条 第1項 | e-Gov法令検索

労働関連法の知識を持つ職員に相談できる

労働基準法や労働者災害補償保険法など、労働問題に関連する法律の知識を持っている職員に相談できます。会社の労働条件が法令に違反しているかどうかは、労働関連の法律の知識がなければ正しく判断できません。

仮に労働基準法などに違反している事実があったとしても、個人で会社に交渉するには、かなりの労力が必要です。

労働基準監督署は、労働者が安心・安全に働けるようサポートする機関なので、労働条件に問題があった場合は適切なアドバイスをもらえます。自分では判断できない問題があったときも、まず相談してみるとよいでしょう。

プライバシーが守られる

プライバシーを守りながら相談できるのもメリットの1つです。労働基準監督署の職員には、個人情報などに関する守秘義務があるため、基本的に相談者の情報や相談内容などが外部に漏れる心配はありません。

労働基準法第104条第2項では、労働基準監督署に相談した労働者に対する不利益な扱いを禁じているため、万が一相談したことが知られて不当な扱いを受けた場合、その扱いについても改めて相談できます。

それでも心配な場合や個人情報を知られたくないときは、匿名での相談も可能です。 

出典:労働基準法 第104条 第2項 | e-Gov法令検索

労基に相談するときの注意点

指を立てる男性会社員

(出典) pixta.jp

労働基準監督署への相談を検討している人は、注意事項についても確認しておきましょう。主な注意点を3つ挙げて解説します。

会社に命令はしてもらえない

相談内容が労働基準法に違反していた場合、会社に是正勧告をしてもらえます。しかし、是正勧告は行政処分ではなく、あくまで指導・助言の範囲になるため、法的な強制力はありません。

会社に労働条件を改善するよう命令してもらうことを期待して相談しても、労働基準監督署にはその権限がないので注意が必要です。

何度是正勧告を出しても従わない悪質な事業者に対して行政処分を行うこともありますが、会社側が「それでも構わない」という開き直りの態度を取ってしまう可能性もあります。

労使間の話し合いや民事訴訟には介入しない

会社への指導や相談者へのアドバイスはしてもらえますが、労使間の話し合いを仲介してくれることはありません。会社と話し合いをするには、自分で交渉の場を設定する必要があります。

また、労働基準監督署には司法警察事務を行う権限があるため、悪質な事案に対しては刑事事件としての捜査や差し押さえ、逮捕などが可能です。

しかし、民事訴訟には介入しないので、訴訟を起こす場合は弁護士に依頼するなど、自分で動かなくてはならないでしょう。

相談できない内容もある

相談できるのは、原則として労働基準関係法令に関する内容に限られます。労働に関連する問題であっても、労働基準法に違反していることが明白ではない事案に関しては、管轄外となるので注意しましょう。

以下は、労働基準監督署では相談できない内容の例です。

  • リストラ:業績悪化などによる整理解雇は、原則として労働基準法に違反しない
  • 職場のいじめや各種ハラスメント:労働基準法にはいじめやハラスメントに該当する条項がない。労働局への相談が適切
  • 異動によるトラブル:労働基準法に違反していない場合は相談の対象外
  • 懲戒処分:会社の就業規則に則した処分の場合は、労働基準法違反にならない
  • 育児休暇・介護休暇の取得に関する相談:ハラスメントと同様、労働基準法に記載されている条項がないため、労働局への相談が適切

労基に相談するには?

電話をかけようとしている男性

(出典) pixta.jp

労働基準監督署に相談する方法や、事前の準備についても確認しておくのがおすすめです。主なポイントを3つ紹介します。

相談する方法は直接訪問・電話・メールの3種類

労働基準監督署への相談は、直接訪問・電話・メールのどの方法でもOKです。直接窓口で相談したいときは、最寄りの労働基準監督署内にある「総合労働相談コーナー」で対応してもらえます。

総合的な相談窓口なので、ハラスメントやいじめなど、労働基準法違反に該当しない相談も可能です。

予約は不要ですが、タイミングによっては相談員が不在の場合もあるため、あらかじめ連絡しておくとスムーズに相談できるでしょう。相談可能な時間帯は、各地の労働基準監督署の開庁時間内です。

電話で相談したいときは「労働条件相談ほっとライン」を利用できます。対応時間は月~金の17~22時と、土・日・祝日の9~21時です。

メールの場合は、厚生労働省の「労働基準関係情報メール窓口」から専用フォームで相談できます。

出典:総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省

出典:労働条件相談「ほっとライン」(Working Hotline)|厚生労働省

出典:労働基準関係情報メール窓口

問題の証拠をそろえておく

相談したい問題が、労働基準法に違反していることを証明するための証拠をそろえておく必要があります。相談内容に関して立ち入り調査をするかどうかは、労働者が提出した資料を見て判断するためです。

会社側とやりとりしたメールや音声データなどがあるとよいでしょう。賃金の未払いや残業時間に関する相談には、給与明細書や勤務状況が分かる書類などをそろえておくのも効果的です。

違法性を証明する資料がそろっていないと、相談に対応してもらえない場合もあるので注意しましょう。

相談内容を具体的に伝える

相談内容を分かりやすく具体的に伝えることも大切です。問題が発生してから相談に至るまでの経緯を、時系列で整理しておくとよいでしょう。発生した状況やその後の会社側の対応などを、できるだけ詳しくメモなどに残しておくことがポイントです。

会社に改善の要望や相談などをしたことがあれば、会社側からの回答も含めて伝えられるように準備しておきましょう。また、会社に対して要求したいこともまとめておくと、適切なアドバイスをしてもらいやすくなります。

労働基準に関する問題は労基に相談しよう

男性会社員の後姿

(出典) pixta.jp

労働基準監督署は、労働基準に関する相談に対応してくれる機関です。誰でも無料で相談できるので、職場が労働基準法に違反している疑いがあるときは、最寄りの相談窓口・電話・メールなどで問い合わせてみましょう。

会社にバレるのではないかと不安な人は、匿名での相談も可能です。ただし、労働基準監督署には強制力がないため、相談しても改善されないケースもあります。どうしても労働条件が改善されないときは、転職を検討するのも1つの方法です。

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