不当な業務命令の断り方は?不安に感じたときの相談先も併せて紹介

会社で働いていると、何らかの業務命令を受けることがあります。中には不当と思えるような命令を受ける場合もあり、断れるのか迷うこともあるでしょう。会社から出る業務命令を断ることは可能なのか、可能だとしたらどのように断ればよいかを紹介します。

会社が従業員に業務命令を出す根拠

面談

(出典) pixta.jp

業務命令はやみくもに出されるものではなく、正当な根拠に基づいています。具体的な3つの根拠を見ていきましょう。

雇用契約に基づく労務指揮権を有している

企業で働いているということは、企業と従業員の間には雇用契約が存在することを意味します。雇用契約の定義は、民法によると以下の通りです。

雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

出典:民法 第623条 | e-Gov法令検索

雇用契約を締結することにより、企業は報酬を支払う義務を負う一方で業務遂行を命じる権利を獲得します。ここでいう業務遂行を命じる権利の中に、業務命令を出すことも含むという考え方です。

被雇用者は労務提供義務を有している

もう一方の契約当事者である被雇用者(労働者)は、雇用契約に基づいて報酬を受ける権利を獲得し、使用者(企業)に対して労務を提供する義務を負います。

上記の労務を提供する義務には、会社が出す業務命令に従うことも含まれるのが通常です。そのため、労働者は基本的に会社の業務命令に従わなければなりません。

雇用契約に基づいて報酬を受け取っている以上、業務命令に従って業務に注力するのは基本的な義務といえるでしょう。

就業規則に明記されている

企業では業務において従わなければならないルールとして、就業規則を定めているのが一般的です。就業規則は通常、労働者が負う義務として「労務提供義務」や「誠実労働義務」を定めています。

上記は単純に出勤して働けばよいというわけではなく、使用者である企業の指示に従って誠実に労働することを意味する言葉です。

そのため、従業員1人1人は就業規則上も、会社が出す業務命令に対して忠実に従って働く義務があるといえます。

業務命令を断れる場合もある

拒否のイメージ

(出典) pixta.jp

基本的には業務命令に従わなければならないとはいえ、状況によっては断れる場合もあります。代表的な理由を挙げると、以下の4つです。

違法性が疑われる場合

業務命令に従うと法令違反を犯す場合やその疑いがある場合は、業務命令を断っても問題ありません。具体例を挙げると以下の通りです。

  • 会社の資金を横領するように命じられた
  • 製品の安全検査結果を偽装するように命じられた
  • 取引先をだまして契約を締結するように命じられた
  • 裁判所で虚偽の証言をするように求められた

上記のような場合、業務命令に従うことでかえって罪に問われるリスクがあります。違法性が疑われる業務命令が出たときは、堂々と拒否しましょう。

雇用契約に含まれない場合

業務命令が有効なのは、当事者の間に雇用契約が存在するためです。そのため、企業が出す業務命令は、雇用契約に基づくものでなければなりません。以下のように、雇用契約に含まれないことを命じる業務命令は無効です。

  • ITエンジニアに飛び込み営業を命じる
  • 人事部の社員に工場での製造作業を命じる
  • 転勤なしで契約している社員に転勤を命じる

業務命令の内容がおかしいと思ったときは、雇用契約書の内容をチェックしましょう。雇用契約書に記載されていない業務に従事するよう命じられたら、問題なく断れます。

ハラスメントに該当する場合

嫌がらせを含め、パワハラやセクハラなどのハラスメントに該当する業務命令にも従う必要はありません。具体的な例は以下の通りです。

  • 正当な理由なく長時間労働や休日出勤を命じる
  • 業務に全く関係がない研修を受けさせる

職場で起こりがちなパワハラとは、業務上の権限や優位性がある地位があることを悪用し、業務の範囲を超えて苦痛を与えることを指します。

万が一パワハラなどのハラスメントに該当するのではないかと感じることがあれば、業務命令を拒否するだけでなく、社内の相談窓口などに相談するとよいでしょう。

出典:パワーハラスメントの定義について

大きな危険が予測される場合

企業には従業員の安全に配慮することが求められます。そのため、以下のような大きな危険が予測される業務を命じられたときは、業務命令の拒否が可能です。

  • ハーネスなしで高所作業をするように命じられた
  • 海賊が多発するエリアで護衛なしで商船を運航するように命じられた
  • 台風の中ヘリコプターを運航することを命じられた

命じられた業務に従事すれば大きな危険に遭遇する可能性が容易に想像できる場合、正当な理由があるとして断れます。

正当な理由があるときの業務命令の断り方

上司との面談

(出典) pixta.jp

業務命令を断るための正当な理由があると思われる場合、どのように断ればよいかを見ていきましょう。状況によってはスムーズに認められることもあるため、順番に対処するのがおすすめです。

企業側と交渉する

不当と思える業務命令を受けた場合、まずは企業側と交渉・相談しましょう。「転勤なしの契約なのに転勤を命じられた」など、明らかに契約違反である場合は比較的認められやすいといえます。

法令に違反するように求められた場合や、危険な方法で業務を遂行するように求められた場合も同様です。

まずは直属の上司や自分が所属している部署の責任者に相談してみましょう。

公的機関に相談する

企業側と交渉・相談しても拒否が認められなかった場合は、公的機関を頼るのも1つの方法です。相談できる公的機関には、労働基準監督署や都道府県の労働局があります。

公的機関に相談することで、中立の立場から状況を判断してもらえます。場合によっては、自分では正当な理由であると思っていても実際にはそうでないことが判明するケースもあるでしょう。

客観的な視点で、今後どのようにアクションしていくかを判断するのに役立ちます。

正当な理由なく業務命令を断るリスク

悩む男性ビジネスパーソン

(出典) pixta.jp

正当な理由がない場合、業務命令を断ることには大きなリスクがあります。代表的な2つのリスクを紹介します。

懲戒処分を受ける可能性がある

従業員は業務命令に従う義務を負うため、正当な理由なく断ると契約違反や就業規則違反に問われる可能性があります。契約違反や就業規則違反は懲戒処分の正当な理由であるため、以下のような処分を受ける可能性があると覚えておきましょう。

  • 戒告
  • けん責
  • 減給

何度も業務命令の拒否を繰り返した場合は、諭旨解雇や懲戒解雇に至る可能性もあります。従って、拒否する正当な理由がなければ、出された業務命令に従いましょう。

今後の評価に影響する可能性がある

何らかの懲戒処分を受けなかったとしても、人事評価に影響を及ぼす場合があります。正当な理由なく業務命令を拒否した従業員という評価が残れば、今後の昇給や昇進に影響することも考えられるでしょう。

なお、正当な理由に基づいて業務命令を拒否したにもかかわらず評価を下げられたときは、不当な扱いとして抗議できます。状況に応じて適切に対処しましょう。

業務命令を断って不当に扱われたときの対処

弁護士

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契約外の業務命令を受けたなど、正当な理由に基づいて業務命令を拒否しても不当な扱いを受けるケースがあります。そのようなときに有効な2つの対策について見ていきましょう。

弁護士などの専門家に相談する

違法行為を行うように求められた場合や業務命令に従うと明らかな危険がある場合など、正当な理由があるのにもかかわらず拒否が認められないなら、弁護士をはじめとした法の専門家に相談しましょう。

弁護士などに相談することで、拒否する理由が本当に正当なものとして認められるのかを客観的な目で判断してもらえます。

また、拒否したことによる企業側の扱いに法的な問題があるのか、あるとしたら損害賠償などを請求できるのかなども相談できるでしょう。

1人で考えているだけでは、企業側の扱いの正当性を正しく判断して次のアクションにつなげるのが難しくなります。スピーディーに解決するためにも、できるだけ早い段階で相談することをおすすめします。

転職する

不当な業務命令以外にも、パワハラやセクハラなどのハラスメント行為が日常的に存在していることから、そのまま働き続けたいと思わないこともあるでしょう。そのようなときは、転職を検討するのも1つの方法です。

ハラスメントがまん延する企業で働き続けるよりは、転職した方がその後の生活を豊かにできる可能性が高いといえます。

ハラスメントを理由とする退職の場合は、退職理由を会社都合にしたり損害賠償を請求したりできる場合もあります。退職後に争うことも可能なため、専門家に相談しつつ今後の行動を検討するとよいでしょう。

これまでの経験やスキルを生かせる転職先を探せば、ハラスメントから脱却できるだけでなく、キャリアアップや年収アップを実現できる可能性もあります。

正当な理由があれば業務命令でも断れる

考え事をするビジネスマン

(出典) pixta.jp

業務命令は雇用契約や就業規則に基づいて出されるもので、従業員として基本的には従う義務があります。しかし、法令に違反する行為を求められる場合や危険な業務を強要される場合、契約外の業務を求められる場合は例外です。

これらは、正当な理由があるとして業務命令の拒否が認められます。正当な理由に該当するか分からない場合は、公的機関や弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。

不当な業務命令やハラスメントで悩んでいるのであれば、この機会に転職するのも1つの方法です。転職を検討しているなら、自分の経験やスキルを生かしてキャリアアップできる企業を探すとよいでしょう。

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