モラトリアムとは?意味と主な原因、脱却するコツを解説

転職しようと考えてはいるものの、自分のやりたいことが何か分からず、前に進めないことがあります。そのような状況を、「モラトリアム」と呼びます。モラトリアムに陥ったときはどのように対処すればよいか、脱却のコツは何かを見ていきましょう。

モラトリアムとは?意味と具体的な状態

空を見上げる男性

(出典) pixta.jp

モラトリアムという単語は、さまざまなシーンで用いられます。同じ単語でも、状況によって指すものが異なるため、正しく理解することが大切です。モラトリアムが意味する代表的なものを、2つ紹介します。

金融用語で債務の返済を猶予する措置を指す

もともとモラトリアムという単語は金融用語で、法令の定めに基づいて債務の返済を猶予することを指します。大規模な災害・紛争などの非常事態が発生し、平常通りの経済活動が難しくなったときに発動する措置です。

非常事態が発生すると債権を回収するのが難しくなり、モラトリアムを発動しないと、信用や秩序を維持するのが難しくなります。緊急時に社会の混乱を防ぐ、重要な措置の1つです。

この措置を他のモラトリアムと区別するため、「金融モラトリアム」と呼ぶケースもあります。

転職ではやりたいことが分からない期間を指す

転職をはじめとして、人生の転機に関連する話題で「モラトリアム」という単語が登場するときは、「アイデンティティーを確立するために必要な時間」という意味で用いられます。

本当にやりたいことが分からないが故に、自分のことを深く理解し、自分ならではの価値観を持つために必要な期間ともいえるでしょう。

誰しもが陥る状況と考えられているものの、モラトリアム期間の長さや時期は人によって異なります。モラトリアムからなかなか脱却できない状況は、「モラトリアム症候群」と呼びます。

モラトリアムに含まれる5つの要素

一般的に、モラトリアムと呼ばれる状況は、以下の5つの要素を含んだものです。自分がモラトリアムに陥っているのではないかと不安になったときは、以下に該当していないかチェックしてみましょう。

  • 回避:自分の人生を考えることを避けようとする
  • 拡散:多くの選択肢を前にしたことで、自分の方向性をどのようにするか決断できなくなる
  • 安易:確固とした自分の意見を持っていない
  • 延期:決断が必要なことは理解しているが、決断のタイミングを先延ばしにする
  • 模索:モラトリアム脱却の意志を持っていて、試行錯誤している

上記のように、ひと言でモラトリアムといっても、具体的な状況は人によって異なります。どの要素が強いかによって、脱却するのに必要な期間や取り組みは異なるでしょう。

まずは、十分な時間を確保して自分自身を見つめ直し、どのような状態なのかを知るところから始めるのがおすすめです。

モラトリアムに陥る主な原因

悩む男性

(出典) pixta.jp

モラトリアムに陥る原因は、多種多様です。自分が抱えている原因によって、モラトリアムから脱却するための具体的な対処法は異なります。代表的な原因を3つ見ていきましょう。

自分のことを正しく理解していない

自己分析が不十分なことにより、自分がどのような人間なのか正しく理解できていない場合があります。特に、自分のことを客観的な視点で分析できない場合に、陥りがちです。

きちんと自己分析していないと、今後どのように活動すればよいのか方向性が定まらず、具体的なアクションを起こしにくくなります。そのまま何をすればよいのか分からずにいると、モラトリアムに陥るでしょう。

ほかにも、思ったように評価されないことを恐れていたり、うまく社会に溶け込むのが難しいと感じていたりするケースもあります。

やりたいことが明らかになっていない

自己分析に取り組んでいても、やりたいことが明らかにならず、次のアクションを起こせないケースもあります。

この状況が長期化すると、モラトリアム症候群に陥りかねません。そのため、できるだけ早い段階で、自分のやりたいことを見つける必要があります。

まずは、今までにやったことを振り返り、自分が好きなこと・得意なことは何かを考えてみましょう。できるだけ具体的に書き出し、好きなこと・得意なことを生かせる職業がないかを考えます。

できること・やりたいことがある程度明らかになれば、今後の方向性を定めやすくなるでしょう。

将来の明確な目標がない

具体的な目標を持てず、何をすればよいか分からなくなるケースもあります。やりたいと思うことがあっても、目標がないためにやる気を出せない状況もありがちです。

自分にとって達成したいと思える明確な目標があれば、実現するために方向性を定めて努力できます。

やりたいことがあるなら、5年後・10年後にどのようになっていたいかを考えてみましょう。思い描いたことを達成するためには、短期的な目標としてどのようなものを掲げると効果的かを考えます。

やりたいことから長期的な目標を定め、マイルストーンになる短期的な目標もセットで定めることで、どのように努力すればよいか、次に何をすればよいかが明確になります。

モラトリアムから脱却する方法

ソファに座る男性

(出典) pixta.jp

すでにモラトリアムに陥っている場合、そこから脱却するには何をすればよいかを見ていきましょう。自己分析に取り組んで状況を可視化し、具体的なアクションにつなげることが必要です。以下で、具体的な取り組みの例を紹介します。

自分と向き合う十分な時間を確保する

モラトリアムからの脱却を決断したら、最初に自己分析に取り組みましょう。まずは、自分の考えを明確にするところから始めます。

その日に起きたことや、それに対する自分の考えを文章化し、まとめてみるのがおすすめです。朝起きてすぐや寝る前など時間を決めて、自分について詳しく考えるのもよい方法です。

自分の考えや感情、興味・関心があるものを可視化することで、やりたいことや将来の姿がある程度見えてくるでしょう。そこからキャリアの方向性を定めて行動につなげると、モラトリアムから脱却しやすくなります。

期限を決めて行動する

自己分析でやりたいことが決まったものの、行動に移そうとしても取り組めなかったり、やる気が出なかったりすることがあります。そのようなときは、明確な期限を定めて行動しましょう。

「12月までは遊び、1月から転職活動をスタートして、2月下旬までには転職する」「6月のTOEICで600点以上取る」など、できるだけ具体的に決めることが大切です。

いつまでに何を達成するかが定まれば、今やらなければならないことが明確になります。

モラトリアム期間後の転職は不利になる?

履歴書とパソコン

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これから転職しようと考えていても、モラトリアム期間によりブランクが生まれ、選考に不安を感じている人もいるでしょう。実際、モラトリアム期間後の転職は不利なのかを紹介します。

ブランクが長くなると不利になりやすい

基本的に、離職していた期間が長くなるほど、選考において不利になりがちです。一般的に、離職期間が3カ月以上になると不利といわれています。

一定期間働いていなかったという事実があることで、選考担当者が本当に働く意欲があるのか不安に感じるのが、代表的な理由です。スキル面に不安を抱く選考担当者もいます。

何もせずに3カ月以上離職していたのであれば、選考で不利になる可能性が高いことは留意しておきましょう。

納得できる理由があれば不利にならないことも

3カ月以上の離職期間があったとしても、選考担当者が納得できる理由があれば、不利になるとは限りません。納得してもらいやすい理由の例は、以下の通りです。

  • 海外留学していた
  • 転職活動に専念していた

離職期間中の取り組みを転職後に生かせる場合は、積極的にアピールしましょう。例えば、海外留学で培った語学力を活用できる企業に、応募した場合などが該当します。

まずは、離職期間中にやっていたことを全て書き出し、アピールポイントになりそうな要素がないか探してみましょう。

スキルアップに励めば有利になりやすい

離職期間があっても有利に転職したいと考えているなら、スキルアップに励みましょう。スキルアップにつながる具体的な取り組みには、以下のようなものがあります。

  • 資格を取得する
  • ビジネススキル研修やスクールに通う

特に、難関とされている国家資格を取得したなどの実績があれば、アピール材料として役立つでしょう。スキルアップに励んでいたことを転職でアピールしたいなら、習得したスキルを生かせる職種・企業に応募することが大切です。

モラトリアムと似た2つの状態

首をかしげる男性

(出典) pixta.jp

世の中には、モラトリアムとよく似た状態がいくつか存在します。代表的な状態として、「アイデンティティ拡散症候群」と「ピーターパン症候群」の2つを見ていきましょう。

1. アイデンティティ拡散症候群

自分が何者か分からない状態が続き、大人になりきれずに低迷していることを「アイデンティティ拡散症候群」と呼びます。「モラトリアムから脱却できない状況」とも言い換えられるでしょう。

アイデンティティ拡散症候群に陥った人には、「自分がどのような人間なのか」「何をしなければならないのか」といったことに関する決断を、先延ばしにする傾向が見られます。モラトリアムの、回避・拡散・延期の要素が強い状態です。

いつまでもアイデンティティ拡散症候群から脱却できないのであれば、医学的処置が必要になる場合もあります。

2. ピーターパン症候群

精神的に成熟することを自ら拒否し、精神面が子どものままである状態を「ピーターパン症候群」と呼びます。

ピーターパン症候群に陥ると、現実逃避に走るようになり、自分が安心できる環境から外に出ようとしなくなるのが特徴です。就職をはじめとした、社会的な活動への参加を拒否するケースもあります。

ピーターパン症候群からの脱却が難しい場合は、アイデンティティ拡散症候群の場合と同様に、医学的な処置が必要になることもあります。

モラトリアムから脱却して転職を成功させよう

就職活動をする男女

(出典) pixta.jp

モラトリアムは、誰もが陥る可能性のある状態とされていますが、長引くと転職をはじめとした次のステップに移行するのが難しくなります。まずは、徹底的に自己分析をしてやりたいことを見つけ、期限を決めて行動することが重要です。

自分のやりたいことを見つけたら、実現できる転職先を探しましょう。そのためには、多くの求人を比較・検討することが大切です。

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