ハラスメントをなくすために自分ができることは?加害者や被害者にならないための対策を紹介

近年、ハラスメントを防止するためにさまざまな対策を講じている企業が増えています。従業員1人1人も、ハラスメントをなくすために自分ができる対処法を知っておくことが必要です。加害者や被害者にならないための対策について解説します。

ハラスメントをなくすために自分ができることはある?

考え事をする男性

(出典) pixta.jp

ハラスメントをなくすためには、まず起こる原因から知っておくことがポイントです。原因には、個人的要因と組織的要因の2種類があります。それぞれの要因について詳しく見ていきましょう。

ハラスメントが起こる個人的要因を知っておく

個人的要因としてよくあるのが、ハラスメントに対する知識不足や意識の低さです。どのような行動がNGなのか知らずにいると、本人が無自覚のままハラスメントを起こしてしまう可能性があります。

例えば、自分の仕事がうまくいかないときに、同僚に対してつい感情的な態度を取ってしまうのもハラスメントに当たる行為です。

価値観の違いが原因となることもあります。「上司や先輩から飲み会に誘われたら断るべきではない」といった考えを押し付けてしまわないよう、注意が必要です。

ハラスメントが起こる組織的要因を知っておく

組織文化そのものが要因となっていることもあります。特に、現代ならハラスメントになってしまうような行動が、依然として許容されている職場は注意が必要です。

例えば、上司が部下に厳しく指導することが当たり前とされている、上司や先輩が残業していると帰りにくいといった職場は、ハラスメントの発生率が高まる可能性があります。

また、従業員同士のコミュニケーションが不足している職場や、休みが取りにくいなど労働条件が悪い場合もハラスメントが起こりやすいといえるでしょう。

ハラスメントをなくす必要があるのはなぜ?

悩む男性会社員

(出典) pixta.jp

ハラスメントが起こると、企業にもさまざまな悪影響が及びます。どのようなデメリットがあるのか詳しく見ていきましょう。

モチベーションや生産性が低下する

職場環境が悪化し、従業員のモチベーションや生産性に影響を与える恐れがあります。ハラスメントを受けた従業員は、精神的な苦痛やストレスを感じ、仕事への集中力が低下するためです。

ミスが許されないような雰囲気があれば、周りの従業員も、次は自分が被害者になるかもしれないという不安な気持ちで仕事をすることになるでしょう。

安心して働ける職場環境が損なわれてしまうと、従業員同士のコミュニケーションやチームワークにも悪影響が及び、効率的に仕事を進められなくなる可能性があります。

人材が定着しない

企業の人材定着にも大きな影響を与えます。被害者本人だけでなく、目撃した従業員もメンタルヘルスに不調を起こしたり、職場への不信感を抱いたりして、退職者が続く可能性もあるためです。

このような状況が続くと、優秀な人材が流出し、企業にとって大きな損失となります。さらに、ハラスメントが常態化した職場では、新たに人材を採用しても安心して働けず、早期退職につながる恐れがあるでしょう。

企業の社会的なイメージが悪くなる

企業の社会的なイメージにも悪影響を及ぼします。近年、社会的にハラスメントが問題視される傾向は高まっており、企業にとっては防止対策を講じなければならない重大な課題です。

ハラスメントの防止対策を講じることは、労働施策総合推進法によっても義務化されています(「パワーハラスメント防止措置」の義務化)。

対策を講じない企業は法令違反になるだけでなく、ハラスメントが起こっていることを公表されれば、社会的な信頼性も低下するでしょう。企業のイメージが低下すると顧客離れなども起こる可能性があり、事業そのものにも影響が及びます。

パワーハラスメント防止措置とは

2020年の労働施策総合推進法改正に伴い、全ての企業に対して以下の措置を講じるよう2022年4月1日から義務化されています。

  • 職場でのパワハラの内容・パワハラを禁止する旨・行為者は厳正に対処されることを就業規則などで規定し、従業員に周知・啓発する
  • 相談窓口を設置し、従業員に周知する。窓口の担当者は、相談者に対して適切に対応する
  • パワハラが発生したら正確に事実関係を確認し、迅速に被害者に配慮した対応をする。再発防止のための措置も講じる
  • 被害者・加害者のプライバシーを保護し、被害を訴えた従業員に対して不利益な取り扱いをしない。その旨を従業員に周知・啓発する

出典:労働施策総合推進法に基づく「パワーハラスメント防止措置」が中小企業の事業主にも義務化されます!

ハラスメントの加害者にならないために

打ち合わせをする男性

(出典) pixta.jp

ハラスメントをなくすには、まず自分が加害者にならないことが重要です。知らず知らずのうちに加害者にならないための注意点を紹介します。

自分の価値観を強要しない

自分の価値観を強要せず、他者の考えも尊重することが大切です。世代・ジェンダー・国籍などによって多様な価値観があり、自分の考え方や感じ方が唯一の正解ではないということを認識しましょう。

例えば、世代によって仕事に対する考え方や働き方のスタイルが異なることもあります。国籍による文化的背景が異なることで、コミュニケーションの方法や価値観に違いが生じる場合もあるでしょう。

自分の考えだけを押し付けるのではなく、お互いの違いを認め合い、理解を深めようとする姿勢が大切です。

指導とパワハラの違いを認識する

指導とパワハラの違いを正しく理解することも重要です。上司や先輩社員は、部下や後輩の育成のために指導する立場ですが、伝え方によってはパワハラに該当することを認識する必要があります。

例えば、部下の仕事ぶりに問題があった場合、冷静に具体的な改善点を指摘し、丁寧に説明することは適切な指導です。しかし、感情的に怒鳴ったり、他の従業員の前で厳しく叱ったりする行為はパワハラに当たる可能性が高くなります。

また、パワハラとの違いに対する認識不足から指導を超える言動をしてしまったときは、素直に謝罪して同じ行為を繰り返さないように注意することも大切です。

ハラスメントの被害者にならないために

相談窓口

(出典) pixta.jp

ハラスメントの被害者にならないための対策も知っておきましょう。主なポイントを紹介します。

断るスキルを磨いておく

上手に断るスキルを磨いておきましょう。ハラスメントに該当する行為を受けたときは、明確に拒否の意思を伝えることが大切です。相手が無自覚で行っているときは、その行為がハラスメントに当たることを分かってもらうためもあります。

人間関係を悪化させずに自分の意思を伝えるには、「アサーティブコミュニケーション」のスキルを磨いておくことが効果的です。

アサーティブコミュニケーションとは、相手を尊重しつつ、自分の意見や感情を率直に伝えるコミュニケーション方法のことをいいます。攻撃的になるのではなく、相手の立場を考慮し、敬意を払いながら自分の意思を伝えることが大切です。

相談できる場所を確認しておく

いざというときに相談できる人や場所を確認しておくことも大切です。上司や同僚など、社内で信頼できる相手を見つけておくとよいでしょう。上司や同僚に相談しづらい場合は、社内の相談窓口を活用するのも1つの方法です。

社内に相談できる人や窓口がない場合や、社内での解決が難しいときは、外部の専門機関に相談するという方法もあります。大切なのは、1人だけで抱え込んでしまわないことです。

早期に誰かに相談することで、被害の拡大を抑え、ハラスメントの常習化防止にもつながります。

ハラスメントが起きたときに自分ができること

手帳にメモをとる

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ハラスメントを受けたり目撃したりした場合は、適切に対応することが大切です。取るべき対策について見ていきましょう。

自分が受けたときは記録をつけておく

ハラスメントを受けたと感じたら、詳細を記録しておきましょう。ハラスメントが発生した日時・場所・そのときの状況を、メモなどでもよいので詳しく書き留めておきます。

可能な限り、相手の言動を正確に記録することが大切です。さらに、その場にいた人がいれば、その人の名前も記録しておきましょう。第三者の証言があれば、事実をより客観的に伝えられます。

メールでのやりとりがあった場合は、メールを保存しておくことが有効です。メールには日時や内容が明確に記録されているため、ハラスメントの客観的な証拠として残せます。

相談されたときはまず話を聞く

ハラスメントの相談を受けたときは、まず相手の話に耳を傾け、内容をよく聞くことが大切です。相談者は、ハラスメントによって心に深い傷を負っている可能性があります。

途中で言葉を遮ったり、憶測で判断したりせず、まず相手の話をしっかり受け止めることが重要です。また、相談を受けたからといって、すぐにアクションを起こすのは避けましょう。

アクションを起こす前に、相談者の意向を確認する必要があります。「ただ話を聞いてほしい」「相談窓口まで一緒に行ってほしい」など、相談者の要望に応じて対応しましょう。

ハラスメントが起きたときの注意点

考え事をする男性

(出典) pixta.jp

職場でハラスメントが起こったときに、やってはいけないことがあります。注意点についても確認しておきましょう。

セカンドハラスメントに注意する

セカンドハラスメントを起こさないよう注意することが重要です。セカンドハラスメントとは、被害者が相談した際に周囲から不適切な対応を受け、さらなる苦しみを経験することを指します。

以下のような行為は、セカンドハラスメントの代表的な例です。

  • 「そんなことうそだろう」と言って被害者の話を信じない
  • 「よくあることだ」「そのくらい我慢すべき」などと言う
  • 「あなたにも悪いところがあるのでは」などと、被害者を非難する
  • 「大ごとにすると仕事がしにくくなる」など、被害者に不利益になることを強調する
  • 「あの人はそんなことをする人ではない」など、加害者を擁護する

見て見ぬふりをしない

ハラスメントが起こっているのに見て見ぬふりをしたり、相談されたのに放置したりするのは避けましょう。これらの行為は、ハラスメントを黙認していることと同じです。

加害者の行動を助長し、新たな被害者を生む可能性もあるでしょう。また、ハラスメントが行われているのを認識しながら無視すると、間接的な加害者にもなってしまいます。

ハラスメントを目撃したり相談を受けたりしたら放置せず、適切な方法で対応することが大切です。

ハラスメントをなくすための対策を知っておこう

女性を見つめる男性

(出典) pixta.jp

ハラスメントをなくすためには、まず1人1人がハラスメントに対する認識を深めることが重要です。また、職場にはさまざまな人が集まっており、それぞれに異なる価値観や考えがあることを踏まえて行動する必要もあります。

ハラスメントに当たる行為が組織文化として許容されている場合は、社内のコンプライアンスを見直すことも大切です。どのような対策をしても職場のハラスメントがなくならない場合は、転職も視野に入れて考えてみましょう。

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