何らかの理由で仕事を休まなければならなくなったとき、公休扱いにできるケースがあります。欠勤扱いとの違いを理解し、働く上で知っておきたい休日の知識も併せて身に付けておきましょう。公休扱いの意味や他の休日との違いについて解説します。
公休扱いとは
まずは公休についての基礎知識を押さえ、公休扱いになるメリットを知っておきましょう。
欠勤ではない休日として扱うこと
公休とは会社が定めた休日(法定休日+法定外休日)のことです。一般的には就業規則に規定されています。
- 法定休日:法律で定められた休日
- 法定外休日:会社が任意で定めた休日
労働基準法第35条で定められた法定休日は、「週1日以上または4週間のうち4日以上」です。大半の会社では、週1日を法定休日に設定しています。
公休以外の日に休むと欠勤扱いになりますが、公休扱いの日は会社が定めた休日として扱われるため、欠勤にはなりません。
公休扱いになるメリット
欠勤扱いになると本来働くべき日に休むことになるため、会社からの評価が下がったり収入が減ったりするケースがあります。
年次有給休暇を取得できなくなる恐れがある点にも注意しましょう。年次有給休暇の取得には出勤率80%以上が必要であり、欠勤数によってはその数値に達しない恐れがあります。
欠勤扱いによるこれらのリスクを回避できることが、公休扱いになるメリットです。
残業や休日出勤で欠勤分を挽回するのは難しいでしょう。従業員が残業や休日出勤を行うことで、会社側に残業手当や休日手当といった余計な支払いが発生するためです。
公休の最低日数
労働基準法第32条では、労働時間の上限を1日8時間・週40時間と定めています(1日8時間勤務の場合)。公休の最低日数は以下のように計算することが可能です。
- 年間労働時間の上限:40時間×52週(年間の週の数)=2,080時間
- 年間労働日数の上限:2,080時間÷8時間=260日
- 公休の最低日数:365日-260日=105日
労働基準法では年間260日以上働くことを認めていないため、105日の休日が最低限確保されることになります。
年間休日105日というのは、週2日のペースで休めるイメージです。祝日が休みで夏季・年末年始の休暇がない場合は、隔週の週休2日や月2~3回の週休2日といったパターンになります。
公休と他の休日との違い
会社の休日には公休以外にもさまざまあります。代表的な休日の意味を押さえておきましょう。
公休と年次有給休暇の違い
年次有給休暇とは給与が支払われる休暇のことです。以下の条件を全て満たせば、年次有給休暇を取得できます。
- 半年以上継続して働いている
- 全労働日の80%以上出勤している
年次有給休暇の付与日数は、継続勤務年数や1年間の所定労働日数により変わります。取得条件を満たしていれば、正社員だけでなくパートやアルバイトも年次有給休暇の取得が可能です。
なお、公休日に年次有給休暇の取得はできないため、退職時は注意が必要です。例えば、20日後に退職日を設定して20日分の年次有給休暇を消化しようとしても、その間に公休日があれば未消化の年次有給休暇が残ることになります。
公休と特別休暇の違い
一般的に福利厚生の一環で付与される休暇が特別休暇です。労働基準法で定められている年次有給休暇と違い、特別休暇は会社が独自に設定しています。慶弔休暇・病気休暇・リフレッシュ休暇・ボランティア休暇などが代表例です。
そもそも「休暇」とは、社員の申し出により労働を免除される日を指します。もともと労働義務のない「休日」ではないため、公休には該当しません。
年次有給休暇では給与が発生するのに対し、特別休暇で給与が発生するかどうかは会社により異なります。通常は就業規則で確認することが可能です。
公休と祝日の違い
祝日とは国が定める記念日のことであり、国民の祝日に関する法律第2条で定められています。2024年は振替休日を含むと年間21日の祝日があります(2024年4月時点)。
祝日を法定休日にしなければならない決まりはないため、祝日の扱いは会社によりさまざまです。業種によっては土日や祝日を出勤日にしているケースも数多く見られます。
会社が祝日を公休に設定していない場合、祝日に働いても割増賃金は発生しません。祝日が公休であるかどうかは、就業規則で確認してみましょう。
出典:国民の祝日に関する法律 第2条 | e-Gov法令検索
公休についてのよくある疑問
公休に関して抱かれがちな疑問とそれぞれの回答をまとめました。会社の休みについて考える際の参考にしましょう。
公休扱いになると給与はどうなる?
給与支払いの基本的な考え方は、民法第624条を根拠とした「ノーワーク・ノーペイの原則」にのっとっています。ノーワーク・ノーペイの原則とは、労働が発生していなければ報酬を支払う義務はないという考え方です。
公休は労働義務が発生しない休日であるため、ノーワーク・ノーペイの原則により、基本的には給与が発生しません。
ただし、結婚式や葬儀で従業員が会社を休む場合、会社によっては給与が発生するケースがあります。この場合は公休ではなく特別休暇として扱われるのが一般的です。
パートやアルバイトにも公休はある?
法定休日は、全労働者に与えられる休日です。正社員だけでなくパートやアルバイトにも法定休日は適用されます。
会社は法定休日を順守した上で、パートやアルバイトを含む全労働者に公休を与えなければなりません。例えば、パートやアルバイトの公休を月1回のみとした場合は、労働基準法違反となります(労働基準法第35条第1項)。
なお、法定外休日は会社が自由に決められるため、パートやアルバイトに法定外休日を設定しなくても違法ではありません。
自然災害による休日は公休扱い?
地震や台風などの自然災害が発生した場合、状況によっては出社できなくなることもあるでしょう。自然災害による休日を公休扱いにするかどうかは、会社の判断によります。
公共交通機関がストップして出社できない場合は、不可抗力による休みと判断され、公休扱いになるケースがほとんどです。従業員を出社させるのは危険だと会社側が判断した場合も同様です。
一方、従業員自らの判断で仕事を休むケースでは、欠勤や年次有給休暇として扱われることもあるでしょう。会社によっては、自然災害時の対応について就業規則に定めている場合もあります。
公休日に働いた場合は休日出勤?
公休日の労働は休日出勤扱いとなり、労働基準法第37条第1項により休日の種類に応じた割増賃金が発生します。
- 法定休日労働:割増率35%以上
- 法定外休日労働:割増率25%以上
例えば、法定休日が日曜日の会社で土日に働いた場合、賃金の割増率は土曜日は25%以上、日曜日は35%以上です。働いた公休日が法定休日と法定外休日のどちらに該当するのかは、会社に確認する必要があります。
なお、法定休日労働ではいかなるケースでも割増賃金が発生しますが、法定外休日労働では週40時間以上働いていなければ割増賃金は発生しません。法定外休日労働は時間外労働の扱いになるためです。
また、会社によっては休日出勤に代休や振替休日を適用できるケースもあります。代休や振替休日は義務ではなく、会社が任意で定めるものです。代休と振替休日のどちらもある場合は、就業規則の規定に従うことになります。
出典:時間外、休日及び深夜の割増賃金(第37条)事業場外労働のみなし労働時間制(第38条の2) | 愛媛労働局
公休扱いを正しく理解しよう
公休とは法定休日と法定外休日を合わせたものです。法定休日は法律で定められた休日、法定外休日は会社が任意で定めた休日を指します。
休みが欠勤扱いになると、評価が下がったり収入が減ったりする恐れがあるほか、年次有給休暇の付与に関係する出勤率も下がってしまいます。これらのリスクを回避できることが、公休扱いのメリットです。
会社はパートやアルバイトにも公休を与える義務があります。また、公休は労働義務がない休日であるため、基本的には無給です。自然災害による休日が公休になるかどうかは会社によります。
公休扱いを正しく理解し、他の休日・休暇についても理解を深めておきましょう。