雇用保険とは、労働者の雇用の安定や福祉を充実させるためのものです。加入条件を知ると、パートでも対象となるのかどうかが分かります。具体的な内容や加入対象者の条件、保険料の計算方法などを見ていきましょう。
雇用保険とは?パートでも加入が必要?
パートでも雇用保険への加入が必要になるケースがあります。しかし、どのような内容かが分からないと、抵抗を感じる人もいるかもしれません。雇用保険の詳しい中身について、見ていきましょう。
生活や雇用の安定を図るための保険
雇用保険は労働保険の一種で、雇用に関する総合的な機能を持ちます。失業した際や、働くのが困難になったときに失業手当の給付を受けられ、再就職までの生活を安定させる役割があります。
パートでも加入条件に当てはまれば、本人の意思とは関係なく雇用保険に加入しなければなりません。雇用保険への加入手続きは、雇用主によって行われます。
新しく採用した従業員が加入の条件を満たしている場合、雇用主は決められた期間までに管轄のハローワークに届け出る決まりです。
出典:事業主のみなさまへ 労働保険への加入について|厚生労働省
失業手当以外にも手当や給付を受けられる
雇用保険は、失業手当を受け取るためだけに加入するものではありません。加入すると、失業した際にさまざまな手当や給付を受けられます。
例えば、労働者が安定して働けるように設けられた、育児休業給付金や介護休業給付金なども、雇用保険によるものです。
求職者が能力開発のために職業訓練を受けた場合に支給される教育訓練給付金も、雇用保険から賄われています。そのほか、就職促進のための就業手当や再就職手当など、労働者を支援するための取り組みにも使われていることを覚えておきましょう。
雇用保険に加入する条件
同じパートでも、雇用保険への加入が必要な場合とそうでない場合があり、どのような違いがあるのか気になる人もいるでしょう。
次に紹介する条件を全て満たしていれば、雇用保険の加入対象者です。詳しい内容を見ていきましょう。
1週間の所定労働時間が20時間以上
雇用契約によって、週当たりの所定労働時間が20時間以上と決まっている場合は、雇用保険に加入します。
所定労働時間とは、休憩時間を除いた始業から終業までの労働時間のことです。「たまたま残業などで20時間を超える週があった」というケースは含まれません。
例えば、週に3回・1日5時間勤務で契約した場合の1週間の所定労働時間は15時間なので、条件から外れます。パートであってもフルタイムで働いているのであれば、条件を満たしていることになります。
出典:6.パートタイム労働者を取り巻く関連諸制度|厚生労働省
雇用期間の見込みが31日以上
期間の定めがなく雇われる場合や、31日以上働く場合は、雇用保険の加入対象です。パート・アルバイトなどの雇用形態に関係なく、加入しなければなりません。
1日だけの短期の仕事や、1週間の契約でクリスマスケーキを販売する仕事をした場合などは対象外です。
ただし、31日以内の短期契約を繰り返すことが決まっている場合や、自動更新となっている場合は、31日以上働く見込みがあると見なされ、加入対象となります。
「過去に31日以上雇用された」などの実績がある場合も、この条件に該当します。
昼間の学生ではない
昼間、高等学校や大学などに通っている学生は、臨時的に働いていると見なされるので、雇用保険に入れません。学生は学業が本分であり、もし仕事を辞めたとしても学業に専念する立場です。
離職後、積極的に就職活動が必要な状態にあるとはいえないため、雇用保険で定義する労働者から除外されています。ただし、継続的に雇用されていると見なされる夜間学校・定時制などの学生は、含まれません。
昼間の学校に在籍中であっても、勤務先に卒業見込みの届けを出しており、卒業後に働き続けることが決まっている場合は、雇用保険に加入できます。
また、休学中の人も、通常の労働者と同じように勤務していれば加入対象です。
雇用保険料は誰がいくら払う?
雇用保険は、失業した際などにさまざまな手当を受け取れるので、加入するメリットはあるといえます。しかし、具体的に保険料をいくら払えばよいのか、気になる人もいるでしょう。
雇用保険料を負担する人の定義や計算方法、保険料率について紹介します。
事業主と労働者の双方が払う決まり
雇用保険の保険料は、事業主と労働者の双方が負担する決まりです。労働者よりも、事業主が負担する割合の方が大きくなるように設定されています。
雇用保険料は労働者の毎月の給与から天引きされるので、給与明細を見て金額を確認しましょう。
保険料を払わない事業主には、追徴金の支払いや助成金を受けられないなどのペナルティーがあります。
また、労働保険には、仕事中や通勤中の事故・けがなどを補償する労災保険も含まれます。こちらは会社が全額を負担するので、労働者の負担はありません。
出典:事業主のみなさまへ 労働保険への加入について|厚生労働省
計算方法は「給与額または賞与額×雇用保険料率」
雇用保険料をいくら払うかは、「給与額または賞与額×雇用保険料率」で計算できます。収入が多い人ほど、多くの雇用保険料を負担する仕組みです。
雇用保険料率は見直される場合があり、毎年発表されています。2024年度の雇用保険料率の労働者負担分は、一般の事業の場合で0.006%です。
例えば、20万円の給与を受け取った場合の雇用保険料は、以下の通りです。
- 20万円×0.006=1,200円
また、ボーナスなどの賞与を受け取った場合にも、雇用保険料が徴収されます。
保険料率は事業の種類によって分かれている
保険料率は、「一般の事業」「農林水産・清酒製造の事業」「建築の事業」の3つに区分され、事業の種類によって異なる割合が設定されています。
一般の事業を除いた2024年度の雇用保険料率の労働者負担分は、0.007%です。就業状態が不安定になりやすく、失業手当などの給付を受ける可能性が高い事業は、一般の事業に比べ保険料率が高くなっています。
中でも、建設事業は建築物が完成するまでの期間で、労働者と雇用契約をすることが一般的です。他の事業に比べて失業手当などの給付を受ける機会が多いため、一般の事業よりも高い保険料率となっています。
また、建設事業主を対象とした助成金が充実している点も、保険料が高く設定されている理由だと考えられます。
雇用保険に加入したくない場合は
考え方は人それぞれであり、雇用保険に加入するメリットを感じない人もいるでしょう。反対に、入りたいと思っても、条件に当てはまらなければ加入できません。雇用保険に加入せずに働く方法を見ていきましょう。
季節的に雇用された労働者になる
働き方を変えると、雇用保険に加入せずに済みます。季節的に雇用されている人で、「雇用期間が4カ月以内と定められている」「1週間の所定労働時間が短い(30時間未満)」などの条件に当てはまる場合は加入できません。
季節的な雇用とは、積雪など自然現象の影響を受ける業務に従事することです。例えば、スキー場でのサービス業や水産加工業のように、冬季・夏季などその季節の間に偏って発生する仕事を指します。
季節によって従事する仕事や勤務先を変えれば、雇用保険に加入する義務がなくなるでしょう。
パートを掛け持ちして勤務時間を調整する
雇用保険に入りたくないのであれば、パートを掛け持ちして勤務時間を調整する方法もあります。複数の勤務先でパートをしている場合、所定労働時間は合算されません。
加入の有無は、1つの勤務先での労働条件で判断されます。例えば、勤務先Aで週に3回・1日5時間、勤務先Bで週に2回・1日5時間の労働をした場合、どちらの勤務先でも加入の条件を満たしていないことになります。
もし、勤務先Aで週に4回・1日5時間働き、31日以上雇用される見込みであれば、条件を満たしているので、勤務先Aで雇用保険への加入が必要です。このように、条件を満たす場合は、より多く収入を得ている方の勤務先で雇用保険に加入するのが一般的です。
会社側は新しくパートを採用する際に、その人が掛け持ちで働いているかどうかを確認する必要があります。
雇用保険加入でパートも各種給付を受けられる
雇用保険には失業した際の生活費を補てんする役割があり、職業訓練や育児休業などの手当の財源にもなっています。
加入していれば、失業した際や、育児・介護などで働けなくなったときに手当をもらえるところがメリットです。パートであっても一定の条件を満たしていれば、加入しなければなりません。
もし、どうしても加入したくなければ、複数のパートを掛け持ちするなどの方法があります。国内最大級の求人情報一括検索サイト「スタンバイ」では、多様な種類の求人を掲載しています。
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