求人情報には、業種・職種・業界など、似たような言葉が数多く出てきます。それぞれの意味をしっかりと理解しておけば、転職活動を効率よく進められるでしょう。業種や職種の意味と、仕事探しへの生かし方について解説します。
業種とは?
企業研究や職探しをする際は、業種という言葉をきちんと理解しておくことが重要です。業種の意味や、職種との違いを紹介します。
事業の種類のこと
業種とは、事業の種類を意味する言葉です。企業や個人事業主が携わっている産業の分野を指します。世の中にある事業の大分類・ジャンルとも言い換えられるでしょう。
例えば「小売業」「接客業」「製造業」「建設業」などが具体的な業種の例です。自分に合った仕事を探すためには、業種をしっかりと理解しておく必要があります。
働きたい業種をあらかじめ決めておけば、好きな分野や得意な分野に業務で携われる可能性が高くなるでしょう。
職種との違い
業種と意味を混同しやすい言葉に、職種があります。職種は、個人が実際に行う仕事の種類を指す言葉です。
代表的な職種としては、営業職・技術職・事務職・販売職・企画職などが挙げられます。これらは大まかな分類であり、実際にはそれぞれの職種がさらに細かく分類されています。
仕事の種類を考える際、無意識のうちに業種・職種をイメージしている人も多いでしょう。例えば、IT企業のプログラマーとして働いている人は、業種がIT、職種がプログラマーの仕事をしていることになります。
転職活動に取り組む際は、業種・職種を組み合わせて仕事を探すのがおすすめです。両方をしっかりと理解しておけば、理想の仕事を見つけやすくなるでしょう。
業種や職種と似た意味の言葉
求人情報や企業情報では、業種・職種のほかにも似た言葉がいくつか登場します。それぞれの意味をきちんと理解すれば、記載されている情報の内容を正確に把握することが可能です。
業界
『同類の商品・サービス』を取り扱う企業や個人事業主の、大きなまとまりが業界です。基本的には、業種をより細かく分けたものとして扱われますが、業種と同じ意味で使われることもあります。
例えば、ホテル業界・外食業界・広告業界は、いずれもサービス業の業種を事業内容で分類したものの一部です。銀行を例に挙げると、業種は金融業、業界は銀行業界となります。
業界に明確な定義はありません。同類の商品・サービスを扱っている企業なら、同じ業界としてくくることが可能です。業界ごとに仕事を探せば、業種と同様に自分の好きな分野や得意分野で働けるでしょう。
職業
企業に勤めているなら会社員、役所で働いているなら公務員が職業です。自営業・パート・アルバイトも職業に該当します。
就職活動中に職業を記入する機会がある場合は、会社員や自営業のみ書けば問題ありません。業種・職種・会社名・部署の記入は不要です。
仕事をしていない人が職業欄を記入する際は、状況に合わせて学生・主婦・家事手伝いなどを書きます。
業態
商品・サービスの販売形式により、営業形態を分類したものが業態です。主に小売業や外食産業で用いられます。
小売業の代表的な業態が、スーパー・コンビニ・ディスカウントショップ・百貨店・オンラインショップなどです。外食産業の業態には、レストラン・居酒屋・バー・カフェ・デリバリーなどがあります。
業態は売り方の違いによる分類であり、業態ごとに消費者への訴求内容が異なります。例えば、コンビニは利便性や24時間営業、ディスカウントショップは低価格を訴求する業態です。
業種と職種の一覧表
業種・職種は、どのような項目に分かれているのでしょうか?それぞれの大分類と主な中分類を紹介します。
業種の一覧
業種の具体的な分類項目は、総務省の『日本標準産業分類』が参考になります。主な大分類と、それぞれの代表的な中分類を以下でチェックしましょう。
職種の大分類 | 職種の中分類 |
---|---|
管理的職業 | 法人・団体役員、法人・団体管理職員 など |
研究・技術の職業 | 研究者・農林水産技術者・開発技術者 など |
法務・経営・文化芸術等の専門的職業 | 法務の職業、経営・金融・保険の専門的職業 など |
医療・看護・保健の職業 | 医師・歯科医師・獣医師・薬剤師、看護師・准看護師 など |
保育・教育の職業 | 保育士・幼稚園教員、学校等教員 など |
事務的職業 | 総務・人事・企画事務の職業、一般事務・秘書・受付の職業 など |
販売・営業の職業 | 小売店・卸売店店長、販売員 など |
福祉・介護の職業 | 福祉・介護の専門的職業、施設介護の職業 など |
サービスの職業 | 家庭生活支援サービスの職業、理容師・美容師・美容関連サービスの職業 など |
警備・保安の職業 | 警備員・自衛官・司法警察職員 など |
農林漁業の職業 | 農業の職業(養畜・動物飼育・植木・造園を含む)・林業の職業 など |
製造・修理・塗装・製図等の職業 | 生産設備オペレーター(金属製品)・機械組立設備オペレーター など |
配送・輸送・機械運転の職業 | 配送・集荷の職業、貨物自動車運転の職業 など |
建設・土木・電気工事の職業 | 建設躯体工事の職業・土木の職業 など |
運搬・清掃・包装・選別等の職業 | 荷役・運搬作業員、清掃・洗浄作業員 など |
参考:総務省|統計基準・統計分類|日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行)-分類項目名
職種の一覧
独立行政法人『労働政策研究・研修機構』の資料を参考に、職種の大分類と主な中分類を以下の表で紹介します。転職活動の際に役立てましょう。
職種の大分類 | 職種の中分類 |
---|---|
営業・企画職 | 営業、企画、人事、広報、MR、PR、MD、マーケティング など |
事務・アシスタント製造業職 | 一般事務、会計事務、経理事務、秘書、受付 など |
販売・サービス職 | 販売、接客、フロアスタッフ、添乗員、フロント業務、エステティシャン、理美容師、コールセンター など |
専門職 | 医師、薬剤師、助産師、看護師、弁護士、教員、コンサルタント など |
技術職 | エンジニア、プログラマー、整備士 など |
保安職 | 自衛官、消防官 など |
生産工程職 | 製品製造、機械組立 など |
建設・採掘職 | 建設、電気工事、土木作業 など |
運搬・清掃・包装等職 | 運搬、清掃、包装 など |
参考:【職業名索引】第5回改定厚生労働省編職業分類|労働政策研究・研修機構(JILPT)
転職先は業種と職種を組み合わせて考えよう
転職先を探す際は、経験の有無を業種・職種で分けて考えるのがおすすめです。主な4つの考え方を紹介します。
同業種×同職種
業種・職種ともに経験がある仕事へ転職する場合は、転職先で行う業務をイメージしやすいことがメリットです。今まで培ったスキルや経験も存分に生かせるでしょう。
企業側も応募者のスキルを評価しやすいため、双方に納得感のある採用が成立しやすくなります。応募者側は、即戦力として働ける強みもアピールすることが可能です。
一方、業種・職種のいずれも経験がある場合、慣れにより向上心が生まれにくいデメリットがあります。さらなる努力ができなければ、市場価値の向上や年収アップは望めないでしょう。
同業種×異職種
異職種からの転職を積極的に受け入れている職種には、営業職や販売・サービス職、エンジニアの運用・保守業務などがあります。いずれも、労働市場において就業者数が多い職種です。
異職種への転職では、ポータブルスキルが役立ちます。ポータブルスキルとは、仕事の進め方や人との関わり方など、汎用性が高いビジネススキルのことです。
例えば、『コミュニケーション能力』『論理的思考力』『交渉スキル』などのことを指します。転職前にポータブルスキルを磨いておけば、応募時に強みとしてアピールできます。
なお、異職種への転職を検討している場合は、希望する職種の実態を正しく把握しておきましょう。憧れの気持ちが先行しているだけなら、実際の業務内容とのギャップが大きすぎて「こんなはずではなかった」ということにもなりかねません。
異業種×同職種
同じ職種の仕事に転職する場合は、異業種でも働きやすいケースが多くなります。実際に行う仕事内容が、基本的には同じだからです。
例えば、メーカーの営業から不動産会社の営業に転職する場合、営業として仕事をすることに変わりはありません。職種スキルをアピールできれば、業種が違っても採用されやすくなるでしょう。
また、転職先で異業種を経験して、視野を広げられることもメリットです。前職の業種に関するスキルや経験を生かせれば、成果が上がって年収アップも期待できます。
異業種×異職種
転職市場における異業種×異職種の募集は、これからの時代に備えていくために、異能人材を必要としている企業に多く見られます。成長性のある若い人材を、企業が積極採用したいというケースもあるでしょう。
業種・職種ともに未経験者として転職を成功させるためには、業界や企業を徹底的に研究することが大切です。イメージだけで応募するのではなく、業務内容を正確に把握した上で応募しましょう。
また、自分の長所や社会人としての経験値を、しっかりとアピールすることも重要です。今まで培ってきたスキルや実績を、転職先でも生かせるケースがあります。
自分に適した業種や仕事の探し方は?
やりたい仕事や自分に合いそうな仕事が見つからない場合は、業種・職種・企業を研究しましょう。自分に適した仕事の探し方について解説します。
業種の種類を知る
自分に合う仕事を探す際は、業種の種類を知っておきましょう。今まで知らなかった業種に興味を持てれば、応募先の選択肢を増やせます。イメージだけが先行していた業種の実態を知り、選択肢から外せるケースもあるでしょう。
業種によって、平均勤続年数や成長度合いに違いがあります。平均年収も業種によりさまざまです。安定して勤務できる業種や、売上が伸びている業種なら、応募先として選ぶ価値があるでしょう。
業種や業界の情報を詳しく調べたい場合は、経済新聞や業界研究本が役立ちます。関連団体のホームページや、会社情報誌もチェックしてみましょう。業種研究を徹底しておけば、説得力のある志望動機を作成しやすいこともポイントです。
職種について調べる
職種を研究すれば、自分に合う仕事かどうかや、自分の強みや経験を生かせるかどうかが分かります。まずは、世の中にある職種を知り、それぞれの職種の特徴を調べましょう。
職種を調べる際は、業務内容や必要なスキル、キャリアパスをチェックすることが大切です。自分の性格や生活スタイルに合いそうかも、考える必要があります。
同じ職種でも業種が異なれば、仕事内容が大きく違うこともあるため、業種や分野も併せて研究するのが理想です。職種研究で分かったことは、仕事探しに活用するほか、応募時の志望動機や自己PRにも反映させてみましょう。
企業を研究する
業種や職種を絞り込めたら、企業も研究する必要があります。志望企業が自分に合うかどうかを知ることが、企業を研究する最大の目的です。
興味のある業界から複数の企業を選び、研究の対象にしましょう。企業を選べない場合は、経営方針・戦略・規模・業務内容・福利厚生などを参考にするのがおすすめです。
情報の偏りを防ぐためにも、企業研究は多角的な視点で行わなければなりません。企業のホームページだけでなく、メディアに掲載された情報や取引先のホームページなども参考にしましょう。同業他社と比較し、強みや欠点を探ることも重要です。
希望業種に転職する方法は?
希望業種の会社を探す方法を紹介します。転職したい業種が決まったら、求人サイトやエージェントを活用して転職活動を行いましょう。
求人サイトで検索する
希望する業種が決まっている場合は、求人サイトでどのような仕事があるかをざっと見てみるのも良いでしょう。多くの求人サイトでは絞り込み機能が使えるため、希望業種の企業を楽に探せます。
業種で絞り込んだ後、さらに別の希望条件で絞り込んでいけば、数ある企業の中から理想の企業をスムーズに見つけられるでしょう。
また、複数の求人サイトを併用するのもおすすめです。より多くの候補の中から、自分が求める企業を探せます。
エージェントに相談する
希望業種の求人の探し方には、エージェントに相談する方法もあります。エージェントとは、ヒアリングを通してスキルや実績に見合った求人を探してくれるサービスのことです。
多くのエージェントには、得意とする業種があります。希望する業種に強いエージェントを活用すれば、求人サイトでは見つけられない企業を紹介してもらえることもあるでしょう。
また、企業との条件交渉・面接日程の調整などを任せることができる点も、エージェントを利用するメリットの1つです。
業種を理解して仕事探しに生かそう!
求人情報や企業情報には、業種・職種など似たような言葉が数多く出てきます。それぞれの正確な意味が分からなければ、希望する求人を見つけにくくなるでしょう。
業種・職種を組み合わせて考えることで、仕事の内容が分かりやすくなり、転職先の選択肢も広がります。言葉の意味をしっかりと理解し、仕事探しに生かしましょう。