面接では、質問の意図をしっかり理解して答えることが大切です。長所や短所を聞かれる意図や自己PRとの違いを紹介します。好ましい答え方やNGな答え方、長所と短所の見つけ方についても確認し、面接本番に役立てましょう。
長所と短所を聞く面接官の意図とは?
長所と短所はよく聞かれる質問の1つであることは知っていても、どのような意図があるのか考えたことがない人もいるのではないでしょうか?
印象の良い答え方をするためにも、まずは質問の意図を知ることが大切です。
客観的な自己分析ができているか
面接官が見ているのは、自分自身の強みや弱みを客観的に分析できているかという点です。
強みを理解していれば、その能力を仕事にどう生かせばよいのかを知ることができ、仕事のパフォーマンス向上につなげられます。また、弱みを理解していれば、どのように克服してプラスに変えていけるかを知ることができます。
つまり、自己分析ができる人は『状況に応じて自分で考え、能力を生かして行動できる人』『どのような問題に直面しても、客観的な判断でベストな結果を出せる人』の指標とされているのです。
募集職種との相性
企業はさまざまな職種に対して募集をしており、求める人材もそれぞれに異なります。長所と短所を知ることで、職種との相性のよさや求める人材であるかを見極めています。
例えば、『細かい作業やコツコツとした作業が得意』という長所がある人は、経理の仕事に向いていると判断されるでしょう。
また、長所と短所から人柄を判断し、社風に合っているかどうかの判断材料にすることもあります。
例えば、主体性があることを長所としている人は、チームワーク(協調性)を重視している職場では本領を発揮できないこともあるでしょう。
向上心があるかを見極めるため
面接官が短所を聞いてくるのは、『短所は何か』ということよりも、向上心や意欲があり、将来的な成長性があるかどうかを見極めるためです。
短所を客観的に把握し改善のために努力する姿勢は、仕事で課題や問題点を見つけ、解決するために試行錯誤しながら結果を出すというプロセスに似ています。
そのため、自分の短所と向き合える人は、どのような問題に直面しても向上心を持ち、解決に向けて努力できる人と捉えられるのです。
長所と自己PRの違い
面接では、自己PRをするように促されることも珍しくありません。長所と自己PRには、どのような違いがあるのでしょうか?
自分視点で見るのが「長所」
長所とは『自分から見た強み』を指します。企業側は、応募者がどのような人柄なのか知りたいと思っているため、『ポジティブ思考』『真面目』『責任感が強い』など、人柄を伝えるのが一般的です。
また、一見短所に思えることが、見方を変えると長所になることも珍しくありません。例えば、『理屈っぽい』は論理的思考で物事を捉えられると言い換えられますし、『周囲に流されやすい性格』は協調性があると捉えることができます。
このように、短所を短所だと決めつけずに、さまざまな角度から考えてみましょう。
企業目線で見るのが「自己PR」
自己PRも自分の強みを伝えるものですが、長所とは違い『企業目線での強み』という点で異なります。
自分の強みが、企業においてどのように生かされ、プラスになるのかをアピールするのが自己PRです。つまり、『どれだけ企業に貢献できるのか』を伝えることがポイントです。
企業によって求める人材は異なるため、自分の強みと企業が求める強みがマッチしている必要があります。
自己PRは、応募企業とマッチするように必要に応じて変えることもありますが、長所は人柄的なことなので変わらないという違いもあります。
自分の長所と短所を見つけるには?
自分を客観的に見つめることは簡単ではないため、自分の長所と短所が分からないという人もいるでしょう。どのようにしたら長所と短所を見つけることができるのか、簡単な方法を3つ紹介します。
過去の経験を思い出す
誰にでも『頑張って成果を得られた』という経験があるのではないでしょうか?小さなことでもよいので、過去をさかのぼって成功体験を思い出してみると、長所が見えてくることがあります。
一方、失敗体験からは、なぜうまくいかなかったのかを考えてみると、短所が見つかるかもしれません。例えば『すぐに諦めてしまった』『計画性に欠けた』などは、短所といえるでしょう。
また、周りの人から褒められたり驚かれたりしたことから見つけることもできます。例えば「頼りがいがあるね」「優しいね」といった褒め言葉は、長所に該当します。「人見知りすぎるよ」「優柔不断だね」などは、短所になるといえます。
自分らしいエピソードの抽出
過去を振り返り、心に強く残っている自分らしいエピソードを探してみましょう。思い出深いエピソードであるほど、自分の長所や短所が見つかりやすくなるかもしれません。しっかり分析するために、できるだけ細かいところまで思い出してみましょう。
たとえ思うような結果が得られなかったエピソードでも、失敗した理由を考えることで、短所が見えてきます。失敗にはマイナスのイメージがありますが、失敗から学びその後に生かせたことは長所にもなっているはずです。
このように、失敗したエピソードから強みを見つけることもできるので、成功・失敗にこだわらず自分らしいエピソードを探しましょう。
人に聞いてみる
家族や友人など、自分をよく知る第三者に聞いてみるのもおすすめです。自分では自信がないと思っていることでも、「人より優れている」と思われていることもあります。
外では自分を出せない人でも、家族の前ではありのままでいられるという人は少なくありません。家族なら、短所を的確に言ってくれる可能性も高いでしょう。
人に聞くときは、『なぜそう思うのか』『どのような言動からそう思ったのか』など、質疑応答を繰り返すことで具体性を高めやすくなります。
面接で長所を伝える際のポイント
長所は、伝え方によって印象が大きく異なってくるものです。好印象を与えるためには、どのように長所を伝えたらよいのかを紹介します。
長所そのものを簡潔に伝える
長所を伝える際の重要なポイントの1つが、内容を簡潔にまとめることです。そのためには、まず『結論から述べる』のが効果的です。
結論を先に述べることで、その後の話に興味を持ってもらいやすくなります。途中で『何が言いたいのか分からない』という状況になりにくいのもメリットです。
また長所は、ほかの人とかぶってしまうことも少なくありません。そのため、長所を伝える際はありきたりな言葉ではなく、印象に残るように『自分らしさが光る言葉』を選ぶことも大切です。
例えば、単に「ポジティブ思考」と言うよりも、「周囲を明るくするポジティブ思考」と言うようにするとインパクトが強くなるでしょう。
具体的なエピソードを添える
単に長所を並べるだけでなく、根拠となる具体的なエピソードを付け加えることで説得力が増します。エピソードは、過去の成功体験や実績などがよいでしょう。
例えば、現職でプロジェクトチームの一員として成果を上げた経験を話すのであれば、『長所がどのような場面で、どう役立ったのか』を盛り込むことで説得力が高まります。
ただし、1つのエピソードに複数の長所を盛り込もうとすると、長所が伝わりにくくなってしまうことがあります。アピールしたい強みが多いほど、話のインパクトが薄れてしまうこともあるため、詰め込みすぎには注意しましょう。
入社後の業務とひも付ける
入社後にどのように長所を生かせるのか、業務とひも付けて明確にすることも大切です。そうすることで、入社後に活躍するイメージを抱かせやすくなり、好印象を残せます。
例えば、マーケティング業務であれば「協調性やコミュニケーション能力を生かし、営業部をはじめ他部署とも連携して円滑に業務を進め、目標達成に貢献できる」とアピールするなどです。
また、事務職であれば真面目さや正確さ、コツコツした作業が得意など、仕事との向き合い方をアピールするのもよいでしょう。
NGな長所の伝え方
長所を述べるときは、聞き手がどう思うか意識することも大切です。マイナスなイメージを与えやすい伝え方も把握しておきましょう。
話し方が自慢気
『常に成績優秀だった』など、自分がいかにすごいかを伝えるのが目的ではないため、自慢気にならないように注意することが大切です。
自分の強みを話す際、自分ではそのつもりがなくても、相手からすると上から目線の偉そうな話し方になっている場合もあります。「礼儀をわきまえていない」と思われないように気を付けましょう。
単なる自慢話で終わらないようにするには、主観ではなく『客観性を意識する』のがポイントです。長所を業務にどのように生かすことができるのかという、客観的視点で述べるとよいでしょう。
エピソードが古い・長すぎる
長所を裏付けるエピソードが古すぎないことも、大切なポイントです。幼少期や小・中学生時代の話だと、「最近は長所を生かせる出来事がないのかもしれない」と誤解されてしまうこともあるでしょう。
また、話が長すぎるのも「必要なことを簡潔に伝える能力に欠ける」と思われ、印象がよくありません。ビジネスでは、要点を簡潔に正しく伝えられる能力が重要です。
ダラダラと話が長いと要点が分かりづらく、『結局、何が言いたいのかつかめなかった』という結果に終わってしまうこともあるでしょう。ひいては、「コミュニケーション能力に欠ける」と判断されてしまうリスクもあります。
仕事と関係ない長所を挙げる
人にはそれぞれに長所がありますが、面接では仕事と関連性のあるものを選ぶことが大切です。仕事に関することでも、応募職種にマッチしていないとアピール力に欠けます。
例えば、接客業で論理的な思考ができることを長所に挙げても、あまりピンとこないでしょう。
また、説得力を高めるためには『長所を、入社後の仕事にどのように生かしていけるのか』を伝える必要があります。
仕事にどう生かしていくかを探るには、企業がどのような人材を求めているのかしっかり把握することが肝心です。募集要項だけでなく、企業の社風や具体的な業務内容について入念にリサーチして備えましょう。
面接で短所を伝える際のポイント
短所を伝えるときは、どのようにすれば好印象になるのでしょうか?具体的な伝え方や注意したいポイントを紹介します。
「短所はありません」はNG
自己分析している人の中には、特に短所が見当たらないという人もいるかもしれません。しかし、「ない」と言い切ってしまうと、『自信過剰』『誠実さに欠ける』といったマイナスのイメージを持たれてしまうこともあるでしょう。
また、面接官が短所を聞く目的の1つは、自己分析がきちんとできているかを見極めるためです。「ない」と返答することで、「客観的に自己分析する能力に欠ける」と思われてしまいます。
自分の弱みがよく分からない人は、身近な人に聞いてみましょう。
克服しようとしていることをセットで話す
短所とどのように向き合っているかを伝えることも、大切なポイントです。短所をどのように克服しようと努めているのか、どのように改善したのかを伝えることで、マイナスのイメージをプラスに変えることができます。
現在取り組んでいるのであれば努力している姿が伝わりますし、すでに改善できているのであれば成果をアピールできます。取り組みや経緯を盛り込むことで、より説得力のある内容になるでしょう。
面接で言わない方がいい短所
自分の心掛け次第で直せる短所を言ってしまうと、マイナスのイメージにつながるリスクがあります。『遅刻が多い』などは、社会人として自覚が足りないと思われ、不採用になってしまうことも考えられます。
『責任感に欠ける』『協調性がない』など、業務に支障が出る恐れがある短所も避けましょう。面接官は企業に貢献できる人材を求めているので、早々に不採用になるリスクがあります。
仕事と関係のない短所も「質問の意図を分かっていない」と思われるので、言わないようにしましょう。
質問の意図を理解してきちんと答えよう
面接で長所と短所を聞かれるのは、客観的に自己分析ができているかどうかや、職種との相性を見極めるためです。自分の強みや弱みがよく分からない人は、過去の経験から探ったり、人に聞いたりしてみましょう。
長所を伝えるときは、簡潔に述べることと、業務とのつながりを意識することが大切です。話が長くなったり、自慢話になったりしないように気を付けましょう。
また、社会人として常識を疑われるような短所はマイナスイメージにつながります。必ず克服しようとしていることや改善したことを伝え、ポジティブな印象が残るようにしましょう。
若者の就職支援を専門とするキャリアカウンセラー。アメリカの大学を卒業後、アクセンチュアを経てリクルートに入社し100社以上の新卒・中途採用のコンサルティングを経験。独立後は採用と就職活動の双方を知る「若者就職支援のプロ」として官公庁や人材企業の若年就労支援プロジェクトに携わる。全国の大学で教員やキャリアカウンセラー向けの研修を行うなど、若者支援者の養成にも力を入れている。
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著書:
美文字履歴書の書き方&マナー