退職の相談は誰にすべき?スムーズに進めるために気をつけたいこと

退職の相談をする際、相手を間違えると思わぬトラブルに発展する可能性があります。最初に相談をする相手は、誰を選ぶべきなのでしょうか。スムーズに退職するためのコツや、社会人としてのマナーを紹介します。

退職の相談は誰にすべき?

話す男女の社員二人

(出典) photo-ac.com

会社を辞めようと思ったとき、誰に話すべきか迷う場合があります。最初に退職の意思を打ち明ける相手は誰がベストなのでしょうか。

最初は直属の上司に相談するのが一般的

退職の意思は最初に、直属の上司に伝えましょう。直属の上司は、仕事に関する直接的な指導やサポートをする立場にあり、最も身近な上司です。辞めたいと思う理由やこれまでに起きたトラブルなどや職場の状況をよく知っているはずなので、相談相手として適任です。

社内にはさまざまな役職の人がいるので、誰が自分の直属の上司にあたるのか分からない人もいるでしょう。普段、直接仕事上の指示をくれる相手が直属の上司であることが多いです。

直属の上司と話がつけば、さらに上の役職の上司や人事に話が伝わり、場合によっては引き止めや職場環境の改善などが行われます。

退職の相談を持ちかけた段階では、ほかの社員は退職の意思を知らない状態が好ましいでしょう。退職の相談後、退職届が受理され、退職日が具体的に決まってから、社内に発表する流れが一般的です。

まず上司に伝えるべき理由

退職日までは同じ職場で働き続けることになります。引き継ぎをしたり、取引先に挨拶したりといった業務もあります。直属の上司を差し置いて、ほかの社員に相談を持ちかけると直属の上司と関係が悪いから言い出せないのではないかと、思われてしまうかもしれません。もし本当に関係が悪かったとしても、印象がよくありません。

また、「なぜ自分に真っ先に言わなかったのか」と機嫌を損ね、関係が悪化した状態で働かざるを得なくなるかもしれません。円満退職をするためには、直属の上司に相談するのが得策です。まだ退職すべきかどうか思い悩んでいる状態であれば、信頼のおける同僚に話して意見を聞くこともできますが、口が軽い人に相談するのはやめましょう。何かの拍子に話がもれて噂になるリスクがあります。

 

退職相談で上司を呼び出す際のポイント

通話する女性

(出典) photo-ac.com

退職の相談をするために、上司に時間を作ってもらうにはどのように話を切り出せばよいのでしょう。相談の持ちかけ方を紹介します。

面談のアポを取る流れ

まず直属の上司に話を聞いてもらうために、アポイントを取るのが一般的です。話しかけたその場で、いきなり退職の相談をするのはマナー違反です。

できれば口頭で面談をしてもらえないか持ちかけましょう。業務の都合ですれ違いが起きやすい場合は、メールでアポを取っても構いません。この段階ではまだ退職の相談をすることは伝えないでおきます。

上司への声のかけ方

業務が落ち着いているタイミングを見計らって「お疲れ様です。今よろしいですか?」などと声をかけましょう。

「ご相談したいことがあるので、少々お時間をいただけないでしょうか?」と続け、直近でスケジュールが空いている日時を尋ねます。

できれば周りに人がいないタイミングで極力目立たないように声をかけます。休憩時間中や業務終了後など、就業時間外がおすすめです。

メールでアポを取る場合の文面例

上司が忙しく話しかけるタイミングがない場合は、メールでアポを取りましょう。タイトルや本文で退職の意思を伝えるのはマナー違反ですが、アポを取る目的でメールを送るのであれば問題ありません。書き方の一例を見ていきましょう。

【例】

件名:面談のお願い
本文:
○○課長

お疲れ様です。○○(氏名)です。
お忙しいところ大変申し訳ないのですが、ご相談したいことがあります。
○月○日以降に、10分程度のお時間を作っていただけないでしょうか。
何卒よろしくお願いいたします。

(署名)

 

当日に話したい場合は、上記の例の「○月○日以降に」の部分を「本日」に変えましょう。

退職相談をするタイミング

スケジュール帳

(出典) photo-ac.com

退職希望日が決まっている場合もあれば、そうでない場合もあります。会社を辞める相談をしたいとき、どのタイミングで切り出せばよいのか見ていきましょう。

退職希望日の1〜3カ月前に共有

退職の意思を伝えるタイミングは、退職希望日の1~3カ月前が一般的です。民法では2週間前までに退職の意思を伝えればよいことになっていますが、会社側が後任を探したり引き継ぎをしたりする時間が必要なので、就業規則や社内慣習などに従って、会社に迷惑やトラブルが生じることのないよう余裕をもって伝えたほうが安心です。

繁忙期は業務で手一杯になり、落ち着いて話ができないため、可能であれば避けたほうがよいでしょう。相談しようとしても「後にしてくれ」と言われる可能性があります。

人事異動の直後も、退職相談に向いていないタイミングです。新しいチームが動き出した直後では退職を切り出しにくくなってしまうので、おすすめできません。

契約社員は原則更新時期に相談

契約社員は最初に就労する期間を決めた状態で契約を結んでおり、契約期間満了まで勤めることが前提です。更新時期が近づくと更新の意思を確認する場が設けられるので、更新せずに退職する旨を伝えましょう。

法律上は、1年以上の契約期間がある場合、契約期間の初日から1年を経過した後は、契約期間の途中でも辞められる決まりになっています。

また、やむを得ない事情がある場合は、契約期間の初日から1年未満でも退職が可能です。ただし、やむを得ない事情とは途中退職するほどの重大なケースであり、例えば労働者自身とその家族に関する健康面の深刻な問題や、ハラスメントを受けていることなど非常に限定的なものです。

企業側と労働者が話し合って、円満に辞められる場合も問題ありません。

相談から退職までの流れ

退職届を提出する女性

(出典) photo-ac.com

退職をどのように進めていけばよいか分かっていると、前もって十分に準備ができます。退職の相談をした後の流れや必要な手続きを確認しましょう。

退職日と今後のスケジュールの決定

退職の相談をした後は、具体的な退職日を決めて残務整理や有給休暇の消化などをします。転職先で働き始める時期が決まっているのであれば、その旨も伝えて退職日を調整しなければなりません。

会社と労働者双方にとって都合のよいタイミングで退職できるように、擦り合わせを行いましょう。自分が担当していた業務を、後任に引き継ぐための期間も必要です。

また、有給休暇が残っているのであれば退職時にまとめて消化することもできます。業務の引き継ぎが長引き有給休暇を消化できないといったことがないように、退職日から逆算してきちんと引継ぎが終わって休めるよう会社と調整をしましょう。

退職届を提出

退職日の調整ができてから、就業規則に沿って提出します。

退職届には書類名・書類を提出する日付・宛名・氏名・退職日・退職理由などを記載します。退職理由の詳細を書く必要はありません。

会社で退職届の書式が決まっている場合は、それに従って記入します。特に書式を指定されていないのであれば、以下のように書きましょう。

【例】

退職届

○○○○年○○月○○日(※右揃え)

株式会社○○
代表取締役社長 ○○殿

営業部営業一課(部署名) ○○(氏名)印鑑(※右揃え)

私儀(または私事)(※右揃え)

このたび、一身上の都合により、誠に勝手ながら○○○○年○○月○○日をもって退職いたします。

以上(※右揃え)

 

業務の引き継ぎを実施

退職日が決まり退職届が受理されたら、業務の引き継ぎを進めます。引き継ぎマニュアルを作っておくと、後から誰が引き継ぐことになっても安心です。

退職日が決定したら、辞める2週間前を目安に、関係者に会社を辞める事実を伝えます。

お世話になった人には直接あいさつへ出向くのが理想ですが、難しい場合は電話やメールであいさつをしましょう。会社から指示がある場合はそれに従います。

社外へは お世話になったことへのお礼、退職の日取り、いつまで連絡可能か のほかに、後任の氏名や連絡先も伝え、不安を与えないようにしましょう。

健康保険・年金・失業等給付・住民税など公的な手続き

転職先が決まらないまま退職すると、転職先が決まらないまま退職すると、下記のような手続きが必要となります。

《健康保険》

健康保険については、1.任意継続健康保険、2.国民健康保険、3.ご家族の健康保険(被扶養者)のいずれかに加入する手続きが必要です。

「1.任意継続健康保険」は要件を満たせば2年を限度として、それまで加入していた健康保険に引き続き加入し続けられます。手続きは、加入者本人が行います。(申請期限は、資格喪失日から20日以内)

「2.国民健康保険」は、住所地の役所の国民健康保険担当窓口にて加入者本人が手続きをします。健康保険資格喪失証明書、マイナンバーのほか、身分証や印鑑など必要なものを確認して持っていきましょう。

「3.ご家族の健康保険(被扶養者)」は、ご家族が加入する健康保険に被扶養者として要件を満たせば加入できます。手続きに必要な書類等は加入する健康保険組合にご確認してください。

《国民年金》

退職後しばらく次の会社に入らない場合、20歳以上60歳未満であればその期間は国民年金へ加入し国民年金保険料を納めなければなりません。また、扶養している60歳未満の配偶者がいる場合は、配偶者も同時に国民年金への加入が必要になります。手続きは、住所地の役所にて加入者本人が行います。

《失業等給付(基本手当)》

退職後、働く意思と能力を有し、求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない場合で、一定の要件を満たせば失業等給付(基本手当)を受給することが可能です。の受給手続きに必要な離職票は、会社から、退職後2週間程度で送られてくるので管轄のハローワークへ行って手続きします。

《住民税について》

退職する月の支払い分は特別徴収(給与天引き)で徴収されますが、退職する月以降に支払うはずだった住民税は、普通徴収(自分で納付)に切り替えて納税することになります。住所地の役所から納付書が送られてきますので、納付書が届いたら期限を確認し、指定された方法で住民税を納めましょう。

なお、1月1日~5月31日に退職した場合、退職時に5月までに支払うはずだった残りの住民税は一括徴収されるのが原則です。

退職交渉をスムーズに進めるコツ

話をするスーツの男性

(出典) photo-ac.com

伝え方を間違えると、退職交渉がうまく進まない可能性があります。予定通りに退職するための注意点を押さえておきましょう。

退職意思を固めてから相談する

退職するかはっきりと決めていない段階で相談を持ちかけると、引き止めにあう可能性があります。意思が固まるまで在籍していた方がよいという流れになるのが普通です。

曖昧な状態で伝えると、話がこじれる原因になるので注意しましょう。

人間関係のトラブルで感情的になっているときに「辞めます」と伝えれば、「冷静になれ」と諭されるでしょう。また、一時の感情で辞めてしまうと後悔する可能性があります。

退職が確定する前に社内で気軽に話さない

退職の話題はデリケートです。社員のモチベーションや取引先への影響が大きいので、慎重に進めなければなりません。

同僚や社外の人には、話し合いを経て退職届が受理されてから伝えるのがマナーです。職場によっては、上司からのOKが出るまで口外しないルールになっている場合もあります。

「実は会社を辞めることになりました」と取引先に伝えたときに後任が決まっていないのは大問題です。取引先は「今後、誰を窓口にして、どのように取引をすればよいのか?」と混乱し、会社への信頼が落ちる原因になります。

「どうせ辞めるのだから関係ない」とは考えず、最後まで会社の利益になるような行動を心がけましょう。

納得感のある退職理由を用意する

退職の相談をする際、上司から辞める理由を聞かれます。納得のいく答えを用意しておくことが大事です。業務内容が気に食わない、人間関係が悪いといった、ネガティブな理由では納得してもらえないかもしれません。

「不満を解消するように努めるから残ってほしい」と引き止められたり、もっと努力するように諭されたりする可能性が高まります。

夢をかなえたい、新しいことに挑戦したい といった前向きな理由であれば、退職に納得してもらえるはずです。

長友秀樹
【監修者】All About 社会保険労務士試験ガイド長友秀樹

医療機関の人事・労務はお任せ!元製薬会社MRの社会保険労務士
社会保険労務士。社会保険労務士法人NAGATOMO代表社員。MR、人事コンサルタント、医療業界を熟知した社会保険労務士の経験をいかし、病院・クリニックの規模に合わせた人事制度の構築、人事・労務問題をサポートしている。
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