歩合制と完全歩合制の違いは?メリット・デメリットや主な仕事も紹介

求人情報の給与形態で、歩合制や完全歩合制という表記をよく見かけます。歩合制はメリットが大きい一方、よく理解しないまま応募すると失敗してしまいかねません。希望の仕事に出合えるように、歩合制の意味やメリット・デメリットについて紹介します。

歩合制の基礎知識

給与明細

(出典) photo-ac.com

まずは、歩合制の意味について解説します。定義を知ることで、歩合制のイメージが湧きやすくなるでしょう。

歩合制とは

歩合制(ぶあいせい)とは、個々の労働者が働いて生み出した成果に応じて、給与が支払われる制度です。

働いた時間に応じて決まった給与が支給される固定給とは違い、歩合制にもとづく歩合給では、勤務時間にかかわらず成果によって給与が決定します。

成果の指標は売上高や契約高など、企業によってさまざまです。成果の基準も企業ごとに異なり、同じだけ売上に貢献しても、受け取る給与が同じとは限りません。

例えば、会社Aでは売上の5%が歩合給として支払われる一方で、同じ商品を販売している会社Bでは売上の10%が歩合給として支給されるというケースもあります。100万円の売上を出した場合、会社Aでは5万円、会社Bでは倍の10万円の給与となるのです。

また、成果に応じて報酬率が変動するケースもあります。歩合制の仕事選びに失敗しないためには、会社ごとの歩合制の仕組みを理解することが大切です。

歩合制における2つの給与形態

給料袋

(出典) photo-ac.com

歩合制には異なる2つの給与形態があり、それぞれ適用されるケースが異なります。仕事選びの際は、両者の特徴を把握しておくことが大切です。

固定給と歩合給

1つ目の給与形態は、固定給と歩合給が組み合わされた2階建ての仕組みです。労働者として会社に雇われて働く場合は、この形態が一般的です。

固定給には各種手当が含まれるほか、残業代が上乗せされます。固定給では、働いた時間に応じて一定の金額が支給されるため、給与がゼロになる恐れがありません。

また、会社ごとに固定給と歩合給の比率はさまざまです。固定給の割合が高い方が収入は安定しますが、成果に応じて収入アップを狙いたいなら歩合給の割合を高くする必要があるでしょう。

完全歩合制

完全歩合制は、給与が全て歩合制によってのみ決まる給与形態で、フルコミッション制とも呼ばれます。

一般的な雇用契約において、完全歩合制は採用できません。個人事業主が、業務委託契約の下で業務を請け負うときに用いられることが大半です。

固定給がないため、全く成果が出せなければ給与がゼロになる恐れがあるでしょう。全てが個人の実力によって決まるためリスクが高いですが、成果に応じてリターンも大きくなるのが特徴です。

歩合制のメリット

通帳を眺めるスーツの男性

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歩合制には、固定給のみの働き方にはないメリットがあります。歩合制の3つのメリットについて解説します。

成果に応じて収入を増やせる

歩合制では、成果を上げた分だけ収入が増えます。努力して成績に結びつけられれば、短期間で高収入も狙えるでしょう。

固定給のみの会社では、収入アップには時間がかかります。地道な努力を重ねて、昇給のタイミングを待たなければいけません。年功序列で年収が決まるケースも多く、若いうちから高い収入を得るのが難しいことも珍しくないでしょう。

一方で、歩合制は年齢に関係なく実力次第で、すぐに高収入を目指せる点が大きなメリットです。

時間や場所の自由がきく

歩合制では、出社の必要がないケースも見られます。特に完全歩合制の場合、固定の勤務時間や働く場所の指定がなく、自分の裁量で自由に決められます。

短時間で成果を出せれば、勤務時間を短くしても問題ありません。休憩も自由に取れるため、短時間で集中して仕事に取り組み、数時間まとめて休むのもよいでしょう。

さらに、朝と夕方のラッシュ時間を避けて出社・退社することができるのも魅力です。カフェやコワーキングスペースで仕事をし、一段落ついたら自分の時間を楽しむといった働き方も実現可能です。

仕事への意欲やスキルが向上する

歩合制は、個人の実力がものをいう世界です。努力して成果につなげた分だけ、収入に直接的に結びつきます。

そのため歩合制で働くと、高収入を狙って積極的に行動するようになるものです。仕事への取り組み方を工夫するほか、資格を取ったり、スキルアップのために勉強をしたりするのもよいでしょう。

また、成果が出ることは自分の努力や作品が認められた証になります。評価を得たことで仕事への自信ややりがいを感じ、次の仕事にも意欲を持って取り組めるでしょう。

歩合制のデメリット

電卓で収支計算をする女性の手元

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メリットだけで判断して歩合制の仕事を選ぶと、失敗してしまうことは少なくありません。歩合制のデメリットもしっかりと覚えておきましょう。

収入が安定しない

歩合制は、成果を出せれば高収入が狙える一方で、成果を出せなければ稼ぎはよくありません。誰でも必ず成果を出せるわけではないことを、理解しておくのが大切です。

ある月に成果を出せたとしても、毎月のように同じだけの成果を上げられるとは限りません。顧客との兼ね合い次第で売上高が100万円の月もあれば、5万円に満たない月もあるでしょう。

月によって成果が大きく変動すれば、安定した収入とは程遠いものです。収入が安定しないと、精神的な負担も大きくなるでしょう。

また、固定給ももらえるなら最低限の給与は保証されますが、完全歩合制では保証がありません。体調を崩してしばらく働けなくなると、収入はゼロになります。

そのため、十分な成果を上げられない月が続いても生活を維持できるように、ある程度の貯蓄を用意しておくことが重要です。

歩合制は能力が高ければ成功する見込みはありますが、まだ十分な能力やスキルがなければ固定給で働いた方が無難といえます。

プライベートとの両立が難しくなる

歩合制で成果を出すためには、多くの時間を費やして仕事に取り組む必要があります。特に最初の頃は勝手が分からず、必要以上に時間と手間がかかるものです。時間を問わず1日中働くようになり、プライベートとの両立が難しくなる恐れがあります。

また、十分な成果が出ないと焦ってしまい、より長時間働くようになってしまうほか、労働時間に見合った結果がついてこないとモチベーションが下がることもあるでしょう。

歩合制で働く場合、モチベーションを維持しつつ、時間配分も自分で行うといった自己管理をしっかりする必要があります。

同僚との関係性が悪くなる恐れがある

個人の成果が直接的に収入に結びつく歩合制では、社内の同僚はライバルです。顧客の対象がかぶったときは、顧客の奪い合いになってしまい、関係性が悪化してしまう恐れがあります。

また、同僚が成果を上げることで、自分の成果が下がってしまうケースもあるでしょう。成果を上げるための仕事の取り組み方を教えてもらえず、苦労するケースも少なくありません。問題に直面しても、自分1人で解決する能力が求められます。

このように、歩合制の職場で協調性を期待することは、基本的に難しいといえるでしょう。周りの雰囲気に巻き込まれず、自分のことは自分で行い、さらに強い競争心を持っている人が歩合制に向いているといえます。

経費を自分で負担するケースも

固定給の会社で働く場合、一般的に売上アップのために使う経費は会社負担です。しかし、歩合制を導入している会社では、経費が個人持ちになるケースもあります。

そういった場合は、パソコンやスマホなどの物品のほか、営業先までの交通費や接待費などを全て自分の財布から払わなければなりません。

仮に高収入を得られたとしても、経費の出費が大きければ、所得は少なくなってしまいます。プライベートで自由に使えるお金を確保するためには、経費の削減が重要です。

ただし、経費をあまりにも節約すると、成果につながらなくなる恐れもあるので、上手にバランスを取ることが大切です。

完全歩合制なら会社の社会保険に入れない

完全歩合制は、雇用契約ではなく『業務委託契約』にもとづいて仕事を請け負います。雇用された労働者ではないので、労働者の権利が保障されず、会社の社会保険の適用外となります。

雇用保険・労災保険に加入できないほか、健康保険・厚生年金保険なども適用されません。代わりに、国民健康保険・国民年金の手続きが必要です。

国民健康保険は、社会保険の健康保険で対象となる出産手当金や傷病手当金の制度がないことに加え、世帯人数に応じて保険料が変わります。国民年金は、厚生年金と比べて年金の支給額が少なくなります。

歩合制が導入されている職種

打合せをする男性と女性

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実際に、歩合制はどのような職種で採用されているのでしょうか?歩合制が導入されている、代表的な3つの職種を紹介します。

営業職

歩合制が採用されている代表的な職種として、営業職が挙げられます。特に、高額な商品を取り扱う保険業や不動産業の営業職では、歩合制が導入されていることがほとんどです。

人生において重要な高い買い物をするシーンにあたるため、顧客の信頼を得ることが大切です。顧客数を増やすことで収入をアップさせることができ、高収入を狙えるでしょう。

ただし、厳しいノルマが設定されているケースもあるので、求人に応募するときは注意が必要です。

また、反響営業やルート営業など、営業の種類によって得意不得意はあるものです。ノルマの有無に加えて、営業方法についてもあらかじめ確認しておきましょう。

ドライバー

タクシーやトラックなどのドライバーも、歩合制が採用されていることが多い職種です。

特に荷物を運ぶトラックのドライバーなら、乗客を探す必要がありません。接客サービスも必要なく、黙々と働くことが可能です。ただし、トラックのドライバーは力仕事を求められる場面もあります。

タクシーには法人タクシーと個人タクシーがあり、基本的にどちらも歩合制が導入されています。個人タクシーの場合は完全歩合制で働くことになり、個人の成果がそのまま自分の収入に結びつくのが一般的です。

美容師

美容師は、固定給と歩合給を組み合わせた給与形態を導入しているケースが多く見られます。このうち、美容師に適用される歩合制には、2種類のパターンがあります。

1つ目は、『指名料』が歩合給として支給されるパターンです。指名料の何割かが歩合給になるほか、指名料の100%が歩合給になることもあります。何割が支給されるかは、店舗によって違ったり、昇進のランクによって変動したりします。

もう1つは、指名料にかかわらず、単純な売上から歩合給が決まるパターンです。売上の一部が、そのまま歩合給として支給されます。

どれだけ多くの顧客を獲得できるかで給与が決まるため、勤務時間が長いほど収入アップにつながるでしょう。また、カラーやトリートメントなどのオプションや、シャンプーといったアイテムの販売などの売上も歩合給に反映されます。

これら2つの歩合制のうち、片方あるいは両方が適用されるのが一般的です。

歩合制の仕事で収入アップを目指そう

お金を数える手元

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歩合制には、固定給と歩合給を組み合わせた制度と、完全歩合制があります。歩合制が採用されている代表的な職種には、金融・保険・不動産会社などの営業職のほか、美容師・ドライバーなどが挙げられます。

歩合制の仕事は、収入の不安定さや自腹の経費などデメリットが少なくないですが、その分メリットも大きいでしょう。成果に応じて収入が決まるため、努力次第では短期間での収入アップが期待できます。

現在働いている会社の給与制度に納得がいかず、能力に見合う給与が支給されていないと感じているなら、歩合制の仕事に挑戦してみるのも1つの手です。