年収に通勤交通費は含まれる?実は知らない年収の定義もチェック

面接などで前職の年収を答える際、通勤交通費も含めた金額を答えるべきか分からない人もいるかもしれません。年収に手当を含めるのか、意外と知らない通勤交通費との関係を解説します。面接で自信を持って答えられるよう、知識を付けておきましょう。

そもそも年収とは

給与を計算する

(出典) photo-ac.com

年収と通勤交通費の関係について考える前に、まずは年収が何を指すのかを正しく理解しておきましょう。年収の考え方や調べ方を解説します。

一般的には総支給額を指す

通常、年収は1年間の総支給額を指します。総支給額とは、社会保険料や源泉所得税などが差し引かれる前の額面給与のことです。ボーナスも総支給額に含まれます。

従業員の口座には、各種保険料や所得税・住民税などが差し引かれた後の給与やボーナスなどの賃金が振り込まれます。実際に振り込まれる金額が手取り収入です。

年収の確認方法

年収の調べ方には複数の方法があります。その中でも1番確実な方法は、職場から発行される源泉徴収票を見ることです。源泉徴収票は会社に在籍している場合は、一般的に、毎年12月に発行されます。退職した場合は最後の給与が確定した後に発行されます。退職後1ヶ月以内に発行されることが多いです。

源泉徴収票の支払金額という欄に書いてある金額が、ボーナスやその他の報酬を含む年収です。

源泉徴収票が見当たらない場合は、直近の給与明細からもおおよその額を計算できます。各給与明細の総支給額や支給額合計という欄に書かれている金額の12カ月分と、ボーナスやインセンティブなど毎月は支払われない報酬の社会保険料や税金等が差し引かれる前の支給額を合計したものが大まかな年収です。

  • (給与明細の総支給額)×12+(ボーナスやインセンティブなど)=年収

ただし、給与明細には年収に含めない場合もある手当が含まれます。給与明細から年収を割り出す場合は、ケースごとに計算に入れる項目を考えなければなりません。さらに1年の途中に昇給があると、計算が複雑になってしまいます。

正確な年収を簡単にチェックするためにも、発行された源泉徴収票はなくさないように保管しておきましょう。

意外と知らない交通費について

交通費の申請書

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年収と交通費の関係を知るには、交通費についての基礎知識も知っておく必要があります。毎月支給されているのに、実はよく知らないという人も多いはずです。交通費の種類や、非課税になる限度額について見ていきましょう。

支給される交通費には2種類ある

会社で働く上で発生する交通費には、毎日の通勤にかかる交通費と、業務中の移動や出張にかかる交通費の2種類があります。

通勤にかかる交通費は、自宅から職場に通勤する際にかかる費用を会社が補助するものです。必ずしも会社側が払わなければならないものではなく、社内規則や労働条件通知書などで規定されていれば、それに従って支給されるものです。

一方、出張などの際、移動にかかった会社からの指示によって発生した交通費は、会社に支払義務が生じるものであり、社内規則などに従って、実費支給されます。

ここでは、通勤にかかる交通費と年収との関係を解説します。

通勤交通費(通勤手当)の非課税枠を知ろう

通勤にかかる交通費には、所得税や復興税がかからない非課税枠(非課税限度額)が設けられています。

電車やバスなど公共交通機関を使って通勤している場合、支給された交通費のうち月15万円までは非課税です。15万円を超えた分にだけ所得税や復興税がかかります。

マイカー通勤や自転車通勤などの場合、通勤距離によって非課税枠が分かれているのが特徴です。片道55km以上なら31600円まで、45km以上55km未満なら28000円と、距離が短くなるにつれて非課税限度額が下がっていきます。

交通機関とマイカーを併用している場合は、定期や切符代とマイカー通勤にかかった費用の合計で15万円が非課税限度額です。

参考:通勤手当の非課税限度額の引上げについて|国税庁

年収に通勤交通費は含まれる?

給与明細と給料袋

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通勤交通費を年収に含めるかどうかは、場合によって変わります。それぞれのケースと、面接で聞かれたときの答え方を押さえておきましょう。

年収に含めて考えるケース

社会保険料の計算に使う年収には、通勤交通費も含めます。社会保険の計算でもととなるのが健康保険法や厚生年金保険法という法律です。同法では名前にかかわらず、手当も含めて労働者が、労働の対償として受ける全てのものを報酬、3ヶ月を超える期間ごとに受けるものを賞与(ボーナス)と定義されています。報酬と賞与をあわせたものが(総支給額=年収)と考えられます。

また、クレジットカードの審査を受けるときは、通勤交通費を含めて申告したほうが年収が高くなるため、審査がその分有利になります。

クレジットカードの審査の受けるにあたって、年収は自己申告です。嘘にならない範囲であれば、通勤交通費も含めて高く伝えておくに越したことはないでしょう。

参考:厚生年金保険法 第3条1項4号|e-Gov法令検索

年収に含めず考えるケース

社会保険を考えるときは通勤交通費も含めますが、所得税や住民税などの税金を計算する際、非課税分の通勤交通費は年収に含みません。ただし、もし通勤交通費が1か月15万円を超えるなど非課税限度額を越えた場合、超えた金額は課税対象となります。
なお、派遣社員の場合、通勤交通費込みの時給になっていることがあります。この場合は、全額課税対象となってしまうので注意が必要です。

ちなみに、ふるさと納税を利用するときの年収は控除前の総支給額ですが、非課税分までの通勤交通費は含めないとされています。

住宅ローンを組むときの年収申請も、基本的には通勤交通費を抜いて考えるケースです。

住宅ローンの年収を申請する際は、源泉徴収票の支払金額欄を参照します。支払金額欄に書かれた年収には、非課税分の通勤交通費は含まれていません。非課税の通勤交通費に対しては、所得税や復興税を徴収しないためです。

ケースごとに含める・含めないが違っていて複雑ですが、丁寧に理屈を理解していくと判断できるようになるでしょう。

参考:給与所得とはなんですか。給与収入との違いはなんですか。|よくあるご質問|ふるさと納税サイト「さとふる」

面接で年収を聞かれた場合は?

面接で前職の年収を聞かれた場合は、通勤交通費を除いた年収を伝えましょう。企業側が前職の年収を聞く理由は、自社の給与水準とマッチしているかを見たり、年収から候補者の働きぶりを大まかに判断したりするためです。

支給される通勤交通費は住む場所によって決まるもので、その人の能力を判断する材料にはなりません。そのため、年収から経験やスキルを測られることもある面接では、通勤交通費を含めずに伝えた方がよいといえます。

同様に希望の年収を聞かれた場合も、通勤交通費を含めない金額を伝えましょう。

社会人としてお金回りの知識をチェック

お金を数える女性

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年収や交通費の意味と関係・それぞれの計算方法は、社会人として備えておきたい知識の1つです。面接の場においては、基本的に通勤交通費は入れない年収を伝えるのがよいとされます。

ただし、社会保険料を計算するときやクレジットカードの審査を受ける際は、年収に通勤交通費を含めるケースです。今までぼんやりとしか理解していなかった人も、この記事をきっかけにお金回りの知識を付け、社会人としてのスキルを底上げしておきましょう。

長友秀樹
【監修者】All About 社会保険労務士試験ガイド長友秀樹

医療機関の人事・労務はお任せ!元製薬会社MRの社会保険労務士
社会保険労務士。社会保険労務士法人NAGATOMO代表社員。MR、人事コンサルタント、医療業界を熟知した社会保険労務士の経験をいかし、病院・クリニックの規模に合わせた人事制度の構築、人事・労務問題をサポートしている。
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